Amazon、手持ちの紙書籍をスキャンしてデジタル化するアプリ、Kindle Convertをリリース

愛書家にとって、大量の紙の書籍をいずれKindle版に買い替えなければならないという展望は憂鬱なものだ。そこでAmazonは新しい選択肢を用意した。Windows向けのKindle Convertというソフトは紙の書籍をKindleのフォーマットでデジタル化できる。フォントサイズの調整、手持ちのどのデバイスからでも続きが読めるWhispersync同期機能、Amazonクラウドへの無料バックアップなどの機能が提供される。

ただし、手間はかかる。ソフトの料金はキャンペーン価格で19ドル(定価は49ドル)にすぎないが、手持ちの本をKindleファイルに変換するためにはスキャナーで各ページをスキャンしなければならない。フラットベッド・スキャナーでも一度に最大2ページしかスキャンできない。またThe Ebook Readerによれば、このサービスが提供されるのは当面アメリカのみだという。

幸いなことに、ハードウェアに対する要求は高くない。Kindle Convertは.jpeg、.tiff、.pdf、300-600 DPI、カラーなら24bit、グレースケールなら8bit、あるいは白黒2値 のファイルをサポートする。このフォーマットであれば、オールインワンのプリンターに内蔵されているスキャナーを含め、ほとんどすべての市販のプリンターで対応可能だ。

一生その作業にかかりきりになってもよいという修道院の図書係僧でもないかぎり、Kindle Convertで蔵書をすべてデジタル化しようというユーザーはいないだろう。いくら金の節約になるといっても手間がかかり過ぎる。

しかしそれでもKindle Convertは大いに役立つに違いない。通常ではデジタル化が望めない絶版本や稀覯本のKindle版を製作できるわけだ。またKindle Convertは写真、図版も含めてデジタル化されるので日記その他の個人的な文書や写真をデジタル書籍にするにも便利だ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


「読書」を「ソーシャル化」する新たな電子書籍リーダーのGlose

スマートフォンやタブレット、あるいはノートPCなどでも利用できる電子書籍リーダーのGloseをご存知だろうか。これまでの電子書籍リーダー(Kindleなど)にソーシャル要素を加えたものだ。書籍の内容を友だちや、他のGlose利用者と話し合ったり、あるいは簡単にメモを共有したりすることもできる。友だちの書いた注釈メモなどを眺めて、その本を読む前からいったいどのような内容なのかを理解することもできる。ある本に興味を持った人たちを、ソーシャルに繋ぐサービスを展開しようとしているわけだ。

それに加えて、電子書籍ストアとしてのサービスも展開している。サービス開始時点で、Penguin Random House、HarperCollins、HachetteおよびMacmillanなど、5大出版社中の4社などの、30万冊を扱っている。価格はKindleストアやiBookストアと同程度だ。他の電子書籍販売サービスと同様に、一度購入すれば対応しているさまざまなデバイスで本を読むことができる。

最初に登録すると、Gloseはいくつかの本をレコメンドしてくるようになっている。レコメンドされた本には、より多くの注釈などが登録されていて、サービスの機能をよりわかりやすく楽しめるようになっている。

当方ではBen HorowitzのThe Hard Things About Hard Thingsを試してみた。ベータサービス段階で多くの人がこの本を読み、そしてたくさんのメモを残している。興味深いメモも多く、ぜひとも続きを読んでみたいという気持ちになった。どうやらGloseはノンフィクションとの親和性が高いようにも感じる。このTha Hard Things About Hard Thingsの場合、テック業界で働いていて、本書の内容を実際に体験した人の話なども掲載されていた。

「本を読むときはメモを手元において、後で暗唱したい言葉などを抜き書きしていたものでした」と共同ファウンダー兼CEOのNicolas Princenが電話インタビューに応えて言っていた。「そして、そのノートはなくしてしまったのです」だそうだ。

そんなことがあってPrincenは、デジタルツールを探し始めた。もちろんEvernoteなども試してみたそうだが、どうにもしっくりくるものが見つけられなかったそうだ。そのような中、共同ファウンダー兼CTOであるJulien Chaumondと共に、複数の人で同じ本を読みながら意見をやりとりするようなプラットフォームを作ろうと考えたのだそうだ。

もちろん、全く新しいサービスであるというわけでもない。たとえば本を読む人に向けたソーシャルサービスとしてはGoodreadsが有名だ。しかし、たとえばこのGoodreadはモバイルでは使いにくいし、またインタラクティブなサービスとは言えない。言うならばIMDbの書籍版といった感じで、本を読む前ないし読んだ後に参考にするようなページだと言えよう。本を読みながら利用するといったサービスではないわけだ。

現在のところ、電子書籍の楽しみ方は、従来の印刷された本を読むのとさほど変わらない状況にある。インタラクティブなコンテンツやサウンドトラックなどを求めているわけではないので、従来と変わらないというのが悪いわけでもないだろう。しかしGloseはそこに「違い」をもたらすサービスであると言えるかもしれない。紙の本を読むのと同じようなスタイルで読書しつつ、同時に他の読者からの情報などを同時に咀嚼していくことができるわけだ。

アプリケーションは現在iOS用がリリースされていて、Android版も間もなく登場予定なのだそうだ。アプリケーションを起動するとプロフィールページが開かれ、そこには最近ハイライトした部分や、メモなどが表示される。また、他の人がコメントしていたり、お気に入り登録していれば、やはりこのページに表示されるようになっている。画面下にタブが用意されていて、タブを切り替えることで本棚を確認したり、電子書籍ストアを見て回ったり、さらには友だちのハイライト内容などを見ることができる(訳注:ハイライトのフィードは友だちからのものと、全員からのものを見ることができ、同じアプリケーションを使う友だちが少ない状態でも十分楽しむことができそうです)。

本を読んでいくための機能は、とくに充実しているというわけでもないようだ。フォントの変更もできないし、フォントサイズも2種類しか選べない。他の機能といえば、背景を白くするか黒くするか程度のものだ。テキストの横に、ハイライト数やコメント数を示す数字が表示されるようになっている。

数字をつけているのは、大量のメモなどを電子書籍の中に表示して、本文を読みにくくすることを防ぐためだろう。それでも邪魔に感じるようであれば、表示される数字を友だちからだけのものに制限したり、あるいは自分自身のものだけにすることもできる。このようなフィルタリングができる点で、Kindleなどとは違っているわけだ。

「他の電子書籍リーダーでは、ハイライト動作が難しく感じることも気になりました」とPrincenは言っている。「私たちが最初に実現したのは、ワンタップでのハイライト機能です。テキストをセンテンスないし短いパラグラフ毎に区切って、ハイライトする範囲を確認しているのです」。

最初はあまり良い方式に思えないかもしれない。するつもりがないところをハイライトしてしまうことも多い。画面を触るたびにハイライトされてしまうのもうるさく感じてしまう。しかし、操作になれてくると、このワンタップ式のハイライトがとても便利に思えてくる。ハイライトするのが簡単なあまり、少しでも気になったところを簡単にハイライトしておくようにもなる。Instagramの写真をお気に入りに登録するのと同じくらいの意識でハイライトしておくようになるのだ。

「ワンタップでのハイライト機能を搭載してから、利用率が3倍ないし4倍となったのです」とChaumondは言っている。「よりインタラクティブに使ってもらえるようになったおかげで、アプリケーション内で過ごす時間が大いに伸びたのです」とのこと。

ハイライトした部分は、すべてプロフィールページに表示される。すなわち、自分のためのノートとしても活用できるわけだ。自分用とソーシャルでの活用という、双方のいいとこ取りを狙ったアプリケーションだと言えよう。

本文にメモをつけようと思った場合、メモはテキスト、写真、およびビデオでも付けることができる。投稿したメモについては、他の利用者がプラス評価したり、あるいはマイナス評価したりすることもできるようになっている。メモを閲覧する立場からすると、人気の高いメモを簡単に見つけることができるわけだ。

ちなみに、最近はOysterやScribdのように「読み放題」オプションを提供するところも多いが、Gloseはそうしたメニューを提供していない。書籍の販売に関してはトラディショナルなモデルを採用しているわけだ。すなわち、GloseはOysterやScribdとは違うところを目指しているということなのだろう。販売スタイルについてはAmazonと直接競合するようなところで勝負しようとしているとも言える。

Gloseの提供するコミュニティ機能のために、他の電子書籍リーダーの利用者が移ってくるような事態になるのかどうかは今後を見守りたい。とりあえず、大手出版社ときちんと繋がっているところが、新たな機能を試みていることを評価しておきたい。新たな読書体験を見出そうと努力しているアプリケーションが、新たなコミュニティを築くことを期待していたいと思う。

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(翻訳:Maeda, H


eブックの価格と販売量を分析する―英米で大きな傾向の相違があった

編集部:この記事は本の比較サイト、LuzmeのファウンダーRachel Willmerの寄稿

読者はeブックにいくらなら払ってよいと考えているだろうか? 9.99ドル? 0.99ドル? 逆に売る立場だったらどうだろう?

 昨年、Luzmeは大量のeブックの販売データを入手して分析を試みた。以下に私が興味を感じた結果を紹介したい。決して包括的な分析ではないが、議論を始める材料になるのではないかと期待している。

対象はAmazonで2013年にLuzmeを経由して販売されたAmazonのeブックの実際の価格である。

アメリカ市場

アメリカ市場のデータについては10ドルを基準としてグラフ化してみた。

グラフはそれぞれの価格帯で何冊売れたかを表している


価格の安いほうの端でいちばんたくさん売れており、価格が高くなるにつれて次第に減少している。しかし10ドルの部分に局所的な山がある。

10ドルの山を別にすればだいたい予期されたとおりの結果だ。ただし意外だったのは10ドル以上の高価格帯のeブックの売れ行きだった(この点については後で触れる)。

では価格帯別の売上高を見てみよう。

ここでは9-10ドルの価格帯の山がもっとはっきり見える。これはおそらく版元側が10ドルという価格を適正と考えて値付けしていることの表れだろう。.

イギリス市場

ところがイギリス市場の様子はアメリカとまったく異なる。こちらも6-7ポンド(おおよそ10ドルに相当)を中心に正規化してある。

イギリス市場では、1ポンド以下(主として0.99ポンド)の価格帯の販売量が断然多い。価格に反比例して販売量は減少していき、5ポンド(7.50ドル)以上では全くといっていいほど売れていない。


売上高についても同様で、5ポンド以下の価格帯が大部分を占める。

10ドル以下の価格帯で大部分の本が売れていることについて理解は難しくない。

Luzmeのユーザーにインタビューした結果では、大きく2つのカテゴリーが存在することがわかった。一つは毎週のように新しい本を買う熱心なユーザーで、どんな本であれその時点で安い本を好む。もう一つは層は特定のジャンルの本に関心を持つユーザーで、そう頻繁に本を買うわけではないが、値段はあまり気にせず欲しい本があれば買う。

しかしそれにしてもアメリカとイギリスではこれほど差があるのだろう?

イギリスではAmazonと新規参入したeブック・プロバイダとの間に激烈な価格競争がある。以前はソニーとNookだったが、現在はSainsburysが主要なライバルだ。以前はソニーが0.2ポンドの特別価格で攻勢をかけていた。現在では安売りは00.99ポンドが主流のようだ。

これに対してアメリカではNetflix、Spotifyなどeブック市場への新規参入組は定額(サブスクリプション)モデルで既存のライバルに挑戦している。

要約

Luzmeから見た2013年の意外なeブック事情

アメリカ

  1. アメリカではeブックは1ドルから10ドルまでのどの価格帯でもほぼ同じように売れている。
  2. 売上冊数がもっとも多いのは1-2ドル。
  3. 売上高がもっとも多いのは9-10ドル。
  4. 100ドル以上の高価な特別版も売れている

イギリス

  1. アメリカと様相が大きく異る
  2. 5ポンド(7.5ドル)以上のeブックはほとんど売れていない。
  3. 売上冊数がもっとも多いのは1ポンド以下。
  4. 売上高がもっとも多いのも1ポンド以下。
  5. 高価な特別版が売れている様子はほとんどない。

ちなみに、

  1. Digital Signal Processing in Power System Protection and Controlは134.84ドルもする!

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


フランスの‘反Amazon法’が成立すると送料無料がなくなる–それで個人書店は持ち直すのか?

Cultural exception文化例外)がまた襲ってきたようだ。フランス議会は数日後にほぼ確実に、いわゆる’反Amazon法’を成立させる。この法律が成立するとAmazonは、書店を保護するために、送料無料で本を売れなくなる。この法律は、本の値引き販売を禁じているLang Lawラング法)の建て増しみたいなものだ。

フランスの本の価格は、外国人にとって分かりにくい。1981年にフランスの文化相が、本の定価販売を義務付ける法律、ラング法を制定した。それ以降、出版社は定価制を採用し、本の裏表紙に価格を印刷することになった。

大手書店チェーンも個人書店も含め、すべての書店が、本を定価で売ることしかできなくなった。ただし例外があって、定価の5%までのディスカウントは認められている。多くの書店がこの例外規則を利用しているが、わずか5%をディスカウントと称するのは、地球広しといえどもフランスの本屋さんぐらいしかいないだろう。

1981年の制定当時は、個人書店を大型書店チェーンから守ることが目的とみなされていた。法律は功を奏し、今でもフランスでは個人書店が健在だ。それにその後、イタリア、ポルトガル、スペイン、ドイツなどでも本の定価制を法律で保護するようになった。

でも当時の書店は、Amazonという恐ろしい怪獣の来襲を予期していなかった。今ではAmazon以外にも、Fnacなどいくつかのフランス固有のネット書店が町の本屋さんの経営をおびやかしている。

ネット書店の二大大手AmazonとFnacは、法律で許されている5%の値下げとともに、一律の送料無料で町の本屋さんに対抗することを選んだ。本屋さんたちはそれを、不当競争とみなした。

文化相曰く送料無料の禁止はAmazon敵視策ではない

Amazonはタックスヘイブンとしてルクセンブルグを利用しているから、送料無料でも利益があり、マーケットシェアを拡大してきた。フランスでの同社のシェア拡大のやり方はほかの国と同じで、薄利多売*の徹底だ。もちろん理論的にはAmazonは、いつでもその逆を行って、値上げと利幅増大に転向できる。〔*: 在庫回転率が年30~40(一般書店の10~15倍)、毎日大量の日銭が入るが納入者には90日済度。〕

今日、フランスの文化相Aurélie Filippettiは、その法律が反Amazon法とあだ名されていても、実際にはAmazonという特定企業を対象とする法律ではない、と述べた。今後のオンライン書店はAmazonにかぎらず、5%値引きしてさらに送料無料にすることは許されない。

定価制が競争の活性化に導く理由

本の定価制といえば、もう一方に、合衆国におけるAppleのeブックの定価制がある。Appleのそれは、自由競走の妨害として有罪になった。

2010年にiBookstoreが発足したときには、いわゆる代理店タイプの価格モデルがeブックストアを席巻した。Appleは出版社に定価を維持させるが、それと同時にKindleなどほかのeブックストアでも定価販売を強制される。

そのことが司法省の逆鱗に触れ、省は反トラストの嫌疑で告訴状を書いた。しかし、小売レベルでの価格付けを自由にしたことによって、むしろ競合他社はつまづき、Nookのeブックの売上は落ち込んだ。ほかのストアでも、同様だっただろう。

今では、Amazonは押しも押されもしないマーケットリーダーだ。司法省は代理店型モデルを有罪化したことによって、独占に近い状態を招いた。出版社との利益分有交渉においては、Amazonが断然有利なのだ。

フランスの’反Amazon法’では、政府はその逆を行き、個人書店や小規模出版社を守ろうとしている。しかし、それは行き過ぎだろうか?

12月に、フランスの書店チェーンの二番目の大手Chapitreが倒産した。2014年には、オンライン書店に苦しめられている本の業界に、1230万ドルの救済資金が投じられる。

そこで問題は、送料無料をめぐるこの法律は、単なる行き過ぎか、それとも、これで十分にフランスの2500軒の個人書店が救われるのか、だ。

(画像クレジット: Casey Bisson)

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


Pixar出身のファウンダーがeブックの制作を容易にするMacアプリ、Vellumをローンチ―主要3プラットフォームに対応

VellumはPixar出身の2人がリーダーを務めるグループによって開発されたMacアプリだ。その目的はeブックの制作過程の困難を大幅に軽減することにある。

現在のeブック制作はフラストレーションの塊だ。特にKindleはひどい。フォーマットを変換する際、さまざまな部分が入り組んだ関係を作っており、あちらを直せばこちらに別の不具合が出るという具合だ。しかもKindleストアに公開して初めて発見される不具合も少なくない。AppleのiBookは多少増しだが、それでも満足なものではないという。紙版ではせっかく優れたデザイン、フォント、組版で優雅に仕上げられた本がeブックでは凡庸なものになってしまう。

Brad WestとBrad Andalmanの2人がVellumを開発しようとした目的は独立系出版社や個人の著作家でも大手版元の出版物に劣らぬ品質のeブックを制作できるようにすることだった。WestとAndalmanはともにPixarで10年以上の経験を積んだベテランだ。Westは1996年に入社し Brave、ミスター・インクレディブルやファインディング・ニモ、トイ・ストーリー2などの傑作で利用されたソフトウェアを開発した。

Vellumは無料のMacアプリで、Microsoft Wordのような執筆用プラットフォームからテキストをインポートし、さまざまなツールを利用して著者自身でeブックに仕上げることができる。eブック用のファイルが完成した時点で1冊につき49.99ドルでKindleその他のプラットフォームにエクスポートができる。同一の本であればエクスポートの回数は無制限だ。3冊99ドル、5冊149ドルのパッケージもある。

Vellumの最大のセールスポイントはライブ・プレビュー機能だ。著者は制作したeブックがさまざまなプラットフォームでどのように表示されるか正確にプレビューできる。

Kindleでは著者は一連のツールでWordファイルをKindleフォーマットに変換し、カスタムフォントを追加し、プレビューしてからKindleにエクスポートする。エクスポートされた後で何か問題が発見されるとこのプロセスを一からやり直さねばならない。Vellumでは現在標準的になっている電子組版機能を取り入れており、コンテンツトが変更された場合、それに応じてインデント、スペースなどの調整が自動的に行われる。

Vellumではeブック用の著作権表示、あとがきなどを素早く追加でき、プラットフォームにアップロードする前に本の全体を読者が読むのとまったく同一のビューで即座にチェックすることができる。iBooks、Kindle、Nookの各プラットフォームへのアップロードはワンクリックですむ。また書評やプロモーションのためにEPubファイルの事前配布も可能だ。

eブックの市場が大きく拡大したにもかかわらず、クロスプラットフォームでのeブック制作はここ何年も驚くほど進歩がなかった。既存のツールは貧弱でひどいフラストレーションを引き起こすようなものばかりだ。Vellumのようなツールないしサービスには非常に大きな可能性があると思う。ダウンロードは制作会社のサイトから直接に行える。

〔日本版:詳しいスライドショーは原文参照〕

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


E Ink、四半期ベースの営業利益は昨年比46%の落ち込み。出荷台数も昨年並みとの予測

KindleやSony ReaderといったE-reader(電子書籍リーダー)は5年前に登場してきたものだ。しかし既にその存在を危うくしつつあるようだ。ディスプレイメーカーのE Ink Holdingsの発表によると、四半期毎の営業利益は昨年比で48%の落ち込みとなり純損失が3360万ドルになったとのことだ。純損失を計上するのは初めてではないが、この4年間で最大規模となっている。また、2013年におけるE-readerの売り上げは1000万台から1500万台になりそうだとのことで、これは昨年とほぼ同様で既に成長傾向にないということが注目に値する。

E Inkの売り上げのうち、70%が電子ペーパー型ディスプレイからのもの。そしてそのほとんどはe-reader用となっている。電子ペーパーは消費電力が少なく、目に優しいというメリットがある。リフレッシュ速度が遅く、また白黒表示しかできないが、それでもE-readerやスマートウォッチなどの特定用途に向いているものだとして市場に受け入れられてきた。

今季の売り上げが伸びていない理由のひとつとして、E-readerのアップグレード時期にあたっているからだとする考えもある。つまり、需要の低下は季節変動要因によるものだという考えだ。しかしシェアのかなりの部分を占めるAmazonのKindleのアップデートは9月のイベント時期に行われており、今期の需要低下を時期的に当然のことであると結論付けるのは難しそうだ。

E Inkはホリデーシーズンになれば売り上げも伸びるはずだと強気の姿勢もみせている。しかし同時にE-readerへの依存度合いを減じたいとも考えている様子だ。また売り上げが伸びるかどうかは、アジアおよびロシアにおけるディスプレイ需要が伸びるのかどうかに強く依存しているという状況だ。

地域的にみれば、電子ペーパーの需要が伸びるところもあるのだろう。しかし全体的に考えれば、将来はさほど明るいものでもないように思える。北米および欧州での売り上げもE Inkが期待するほどのものにはなっていないようだ。E-reader以外にも7インチの格安タブレットが登場してきており、E-readerを選択する理由はなくなりつつあるのかもしれない。たとえばKindle Fireは159ドルだし、Nexus 7も269ドルという低めの価格設定となっている。

確かにE-readerに比べれば、タブレットによる電子書籍読書は快適さの面で劣るものかもしれない。しかし複数のデバイスを持ち歩くというのは、非常に負担になることでもある。E-readerというのは確かに一部の利用者からは絶対的な支持を集めるデバイスではある。しかし、そうした層に行き渡ってしまったとき、さらなる発展というのが望みにくいデバイスでもあるのだ。

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(翻訳:Maeda, H)


アメリカ連邦地裁、反トラスト法裁判でAppleに有罪判決―「電子書籍価格操作の共謀と実行で中心的役割」

Appleとアメリカの有力出版社による電子書籍の価格操作の共謀容疑に関して すべての出版社はすでに司法省と和解し、Appleだけが法廷闘争の道を選んでいた。Reutersによれば、今日(米国時間7/10)、 ニューヨークのマンハッタン連邦地裁はiBookstoreの価格操作に関する反トラスト法違反の容疑に関して有罪の判決を下した。また判決で検察側は消費者に代わって損害額を査定し、Appleに賠償を求める裁判を起こすべきだと命じられた。

アップデート: われわれはAppleの広報担当者から以下の声明を受け取った。

Appleはeブックの価格を操作するために共謀したことはなく、この事実に反する訴追に対してあくまでも戦う。2010年にiBookstoreをオープンした際、われわれが目的としたのは、消費者により大きな選択の自由を提供し、当時市場で強く求められていたイノベーションと競争を実現し、 出版産業におけるAmazonの独占的地位を打破することだった。われわれは何ら不正な行為をしていないので、今回の判決に対しては控訴する。

2012年4月に司法省はAppleと出版業界の主要6社を反トラスト法違反としてを訴追した。これに対してAppleは「司法省の主張は根本的に誤りであり、馬鹿げている」と反論した。

出版社6社(ペンギンとランダムハウスの合併により現在は5社) はすべて和解に応じ、Appleだけが法廷闘争の場に残った。EUでのこれに類似したeブック関連の反トラスト法訴訟ではAppleは欧州委員会に対して「有罪を認めないまま和解」の道を選んでいる。

“Appleは価格操作の共謀と実行において中心的な役割を果たしたと認められる

2010年にiBookstoreが発表された際、Appleはストア側ではなく出版社側が価格を設定する、いわゆるエージェンシー・モデルを導入した。Amazonが巨人であり、Appleは新参で、出版社はAmazonによる市場支配を恐れていた。紙の本でもeブックでもAmazonは自ら価格を設定していた。そこで出版社側はAppleに市場シェアを奪い返させ、利益率の向上を図ろうとした。出版社は新刊書についてAmazonの9.99ドルではなく、12.99ドルあるいは14.99ドルに設定した。この値上げに伴ってAppleはiBookstoreだけでなくKindleStoreその他あらゆるeブックストアで同一の価格とするよう出版社に要求した。

Denise Cote判事は「Appleはこの共謀とその実施において中心的役割を果たした。Appleは好機を捉えてきわめて巧妙に動き、エージェンシー・モデルの採用によって誕生したばかりのeブック市場における価格を上昇させた。一部の例では上昇は50%以上にも及んだ」と判示した。PaidContent判決の全文がある。.

Wall Street Journalによればペンギン・グループとハーパー・コリンズは当初Appleの価格設定に反対したが、結局同意した。 出版社はAmazonの価格決定権を奪うためにAppleのiBookstoreを利用し、これに成功した。AppleのKindleコンテンツ担当副社長、Russell Grandinettiはこの訴訟で「出版社はKindleストアからコンテンツを引き上げると脅した。AmazonはやむなくAppleと同様のエージェンシー・モデルに切り替えざるを得なかった」と証言した。

この判決で関連する出版社とeブックストアは向こう2年間、同様のエージェンシー・モデルの採用を禁じられた。

(写真:Casey Hussein Bisson

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+