Beyond Next Venturesがピッチイベント「BRAVE2021 DEMO DAY」開催、最優秀賞はfcuro・優秀賞をTOWING獲得

Beyond Next Venturesがピッチイベント「BRAVE2021 DEMO DAY」開催、最優秀賞はfcuro・優秀賞をTOWING獲得

シード、アーリー期のディープテック・スタートアップへの出資や支援を行う独立系ベンチャーキャピタル(VC)「Beyond Next Venturesは12月24日、ピッチイベント「BRAVE2021 DEMO DAY」を12月22日に開催し、最優秀賞・優秀賞・準優秀賞を獲得したスタートアップ企業を発表した。

Beyond Next Venturesは、ディープテック特化型アクセラレーションプログラム「BRAVE」を2016年から運営しており、その集大成としてデモデイを実施している。2021年のBRAVEには130以上の応募があり、その中から選抜された医療・農業・材料領域など起業前後のディープテック・スタートアップ8チームが賞金・投資機会の獲得を目指しピッチを実施した。また今回のBRAVE2021 DEMO DAYは、初めて一般公開(リアル会場とライブ配信のハイブリッド)の形で開催しており、約300名が参加したという。過去最大規模となったそうだ。

登壇スタートアップ8チーム(ピッチ順)

BRAVE2021 DEMO DAYの最優秀賞に輝いたのは、救急全身CT診断AI技術により「見逃し」と「時間」の問題に挑む「fcuro」で、賞金200万円を獲得した。優秀賞(賞金100万円)は、人工土壌「高機能ソイル」を利用した持続可能かつ高効率な栽培システムで宇宙農業実現と地球農業発展を目指す「TOWING」(トーイング)が獲得。「せん妄」の発症予測・予防向けAI医療機器を開発する「DELISPECT」(創業前)が準優秀賞および賞金50万円を獲得した。

このほかパートナー賞では、不妊治療はじめ女性を医療面から支えるAIサービスの提供を目指す「vivola」、野菜・果物の不可触部分の残渣を由来とするオーガニックポリマー開発の「EF Polymer」も選ばれている。

またBRAVE2021 DEMO DAYでは、パネルディスカッション「VC パートナーに聞く、ディープテックスタートアップの最前線」も実施され、インキュベイトファンドの村田祐介氏(代表パートナー)、東京大学協創プラットフォーム(東大 IPC)の水本尚宏氏(パートナー)、ファストトラックイニシアティブ(FTI)の安西智宏氏(代表パートナー)がゲストとして登壇した。アカデミアと社会をつなぐ学生団体によるピッチコンテストも開催された。

最優秀賞:fcuro

Beyond Next Venturesがピッチイベント「BRAVE2021 DEMO DAY」開催、最優秀賞はfcuro・優秀賞をTOWING獲得fcuroは、救急現場における「見逃し」と「時間」の問題を解決するための救急全身CT診断AI技術を開発している。

医療現場には、生理データ・血液データ・CT画像データなど、数値化および可視化された情報が存在するものの、迅速性が求められる救命現場ではこれら情報を長時間かけて把握する余裕はないという。実際に膨大なデータに埋もれて重要所見にたどり着けず、救命できないことがあるという。

その解決を図るものとしてfcuroは、AIをはじめ技術の力で情報を適切に整理することで、診断の遅れや見落としが原因で起きる死をなくし、いつどこの病院に運ばれても命が助かる未来を作るとしている。その1歩目として、現場データの中で解釈に最も時間がかかり、見逃しが多いCT画像について、効率的な診断を実現するためのAIおよび表示技術の開発を進めている。Beyond Next Venturesがピッチイベント「BRAVE2021 DEMO DAY」開催、最優秀賞はfcuro・優秀賞をTOWING獲得

優秀賞:TOWING

Beyond Next Venturesがピッチイベント「BRAVE2021 DEMO DAY」開催、最優秀賞はfcuro・優秀賞をTOWING獲得TOWING(トーイング)は、人工土壌「高機能ソイル」を活用した次世代の作物栽培システム「宙農」(そらのう)を開発・販売する名古屋大学発スタートアップ。この人工土壌の技術をベースにし、地球上における循環型農業の発展と宇宙農業の実現を目指している。高機能ソイルとは、植物の炭等の多孔体に微生物を付加し、有機質肥料を混ぜ合わせて適切な状態で管理してつくられた人工土壌という。国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構が開発した技術に基づき、TOWINGが栽培システムとして実用化した。

準優秀賞:DELISPECT(創業前)

Beyond Next Venturesがピッチイベント「BRAVE2021 DEMO DAY」開催、最優秀賞はfcuro・優秀賞をTOWING獲得DELISPECTは、超高齢社会の医療課題の解決を目指し、「せん妄」の発症予測と予防のためのAI医療機器を開発する創業前チーム。

パートナー賞

今回複数のパートナー賞が用意されており、以下スタートアップが受賞した。

  • 大正製薬賞:vivola
  • アストラゼネカ賞:DELISPECT
  • JSR賞:fcuro
  • 帝人ファーマ賞:DELISPECT
  • カゴメ賞:EF Polymer
  • J-オイルミルズ賞:TOWING
  • LINK-J(ライフサイエンス賞):DELISPECT、fcuro、vivo

野菜・果物など生ゴミ活用のオーガニックポリマー開発で水問題解決を目指すOIST発EF Polymerが4000万円調達

ビル&ミリンダ・ゲイツ財団も支援、生ゴミ活用のポリマー開発で水問題解決を目指すEF Polymerが4000万円を調達

野菜・果物の不可食部分の残渣など有機性廃棄物から開発したオーガニックポリマーを手がける「EF Polymer」(EFポリマー)は4月14日、シードラウンドにおいて、総額4000万円の資金調達を発表した。引受先は、MTG Ventures、Yosemite、Beyond Next Ventures、エンジェル投資家の鈴木達哉氏(Giftee代表取締役)。2018年から始まった沖縄科学技術大学院大学(OIST)のスタートアップアクセラレータープログラムから生まれたスタートアップとしては、初めての大型資金調達事例となる。

EF Polymerは、OISTの2019年度スタートアップ・アクセラレーター・プログラムを通じ、当時22歳のインド人起業家兼CEOのNarayan Lal Gurjar(ナラヤン・ラル・グルジャール)氏らが設立。

生分解性廃棄物(生ゴミ)を新興国でも利用しやすい低コスト・持続可能な農業資材に変換することで、水不足など農業に関わるグローバルな環境問題を解決することをミッションとして掲示しており、野菜・果物の不可食部分の残渣をアップサイクルした環境に優しいオーガニックポリマーの開発を行っている。

EF Polymerが開発するオーガニックポリマーとは?

現在オムツなどに使われ一般的に流通しているポリマーは、アクリル系ポリマーなど化学合成されたものが大多数であり、生分解せず土壌を汚染することや、土壌成分と化学反応し吸水力を失うことから農業利用に適していないという。

これに対してEF Polymerのポリマーは、柑橘系の果物やバナナの皮、サトウキビのバガスなど有機性廃棄物を基に開発を行っているそうだ。このポリマーは、自重の80~100倍の水を保持でき、土壌投入すると保水力と肥料保持力が高まり、40%の節水と20%の肥料削減が期待できるという。また100%オーガニックのため6カ月で完全生分解される。

インドではすでに累計1700kgを販売しており、ビル&メリンダ・ゲイツ財団などの支援を受けながら、500人以上の農家の協力の下パイロットテストを実施しているそうだ。

農業用水不足などの「水問題」を、生ゴミを「資源」として活用し解決

今日の地球上に存在する水のうち人類が利用可能な淡水は約0.01%しかなく、そのうち約7割が農業セクターにおいて消費されているという。これに加え、気候変動や環境汚染などに起因する農業用水の不足など、農家が直面している「水問題」は乾燥地域では特に深刻な課題となっているそうだ。

また、膨大に生み出される生ゴミも社会問題化しており、世界では毎年約2~3億トンの生ゴミを排出しているという。この生ゴミは、全体の30~40%しか利活用が進んでおらず、焼却インフラの少ない新興国では土壌埋設処分による汚染問題を引き起こしている。

そこでEF Polymerは、世界が抱える「水」と「生ゴミ」における社会課題を同時に解決するべく、生ゴミを「資源」として活用することでオーガニックポリマーを開発した。

またナラヤン・ラル・グルジャールCEOは、現在日本の有機農園は0.5%ヘクタールの土地しかなく、農林水産省は今後30年間で25%にまで有機農園を増やそうとしている点を指摘。バイオ廃棄物をリサイクルし、有機農産物を変換する同社のアプローチは、これらオーガニック農業の促進に役立つという。同社のEF Polymerは、有機農園を増やすというプロジェクトに貢献し得る大きな可能性を秘めているとした。

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カテゴリー:バイオテック
タグ:農業 / アグリテック(用語)EF Polymer(企業)沖縄科学技術大学院大学 / OIST(組織)資金調達(用語)気候変動(用語)ビル&メリンダ・ゲイツ財団(企業)水(用語)日本(国・地域)