世界を手中に収めたオープンソースソフトウェア

わずか5年前には、ビジネスモデルとしてのオープンソースの実現可能性について、投資家たちには懐疑的な考えが少なくなかった。よく言われていたのは、Red Hatは奇跡的な例外であり、他にはソフトウェア業界で重要な存在となるオープンソース企業は存在しないということだった。

話を現在にまで早送りしてみると、私たちはこの分野で高まり続ける興奮を目の当たりにしてきた。Red HatはIBMに320億ドルで買収された。これは同社の2014年の時価総額の3倍に相当する。 MuleSoftは株式公開した後に65億ドルで買収された。 MongoDBの価値は、現在40億ドルを上回っている。 ElasticはIPOによって、現在60億ドルの価値を持つとされている。そして、ClouderaとHortonworksの合併によって、時価総額が40億ドルを超える新しい会社が出現することになる。そして、進化の過程の成長段階を経て、さらに成長を続けるOSS企業の一団もある。たとえば、ConfluenceHashiCorpDataBricksKongCockroach Labsなどだ。ウォールストリートや個人投資家が、これらのオープンソース企業について見積もっている相対的な株の価値を考えると、何か特別なことが起こっていることはかなり明らかのように思える。

この、かつてソフトウェアの最先端の動きとされていたものが、なぜビジネスとしても注目を集めるようになったのか? それには、オープンソースのビジネスを推し進め、市場での展望を増大させる、いくつかの根本的な変化があったのだ。

M写真はDavid Paul Morris/Getty ImagesのBloombergから

オープンソースからオープンコアへ、さらにSaaSへ

当初のオープンソースプロジェクトは、実際にはビジネスというわけではなく、クローズドソースのソフトウェア会社が享受していた不当な利益に対する革命だった。Microsoft、Oracle、SAPといった企業は、ソフトウェアに対して「モノポリーのレンタル料」のようなものを徴収していた。当時のトップクラスのデベロッパーは、これを普遍的なものとは考えていなかった。そこで、進歩的なデベロッパーが集り、通常は非同期的に協力して、最も広く利用されているソフトウェアのコンポーネントであるOSとデータベースを皮切りに、素晴らしいソフトウェアの一群を作成した。そうしたソフトウェアは、単にオープンというだけではなく、彼らが付け加えたゆるい管理モデルによって改善され、強化されたことは誰の目にも明らかだ。

そうしたソフトウェアは、もともとデベロッパーによって、デベロッパーのために作成されたものだったので、最初はあまりユーザーフレンドリーとは言えないものだった。しかし、それらは高性能かつ堅牢で、柔軟性も兼ね備えていた。こうしたメリットは、ソフトウェアの世界にだんだん浸透し、10年ほどの間に、Linuxはサーバー用として、Windowsに次いで2番目にポピュラーなOSとなった。 MySQLも、Oracleの支配を切り崩すことで、同様の成功を収めた。

初期のベンチャー企業は、これらのソフトウェアのディストリビューションに「エンタープライズ」グレードのサポート契約を提供することによって、こうした流れをフルに活用しようとした。その結果、Red HatはLinuxの競争で、MySQLは、会社としてデータベースでの勝者となった。ただし、そうしたビジネスには明らかな制約もある。サポートサービスだけでソフトウェアを収益化することが難しいのだ。しかし、OSとデータベースの市場規模が非常に大きかったため、少なからぬ困難を背負ったビジネスモデルにもかかわらず、かなり大きな会社を築き上げることができた。

LinuxとMySQLの手法が成功したことによって、第2世代のオープンソース企業のための基盤が整備された。その世代のシンボルが、ClouderaとHortonworksだ。これらのオープンソースプロジェクト、そして同時にビジネスは、2つの観点で第1世代とは根本的に異なっている。まず最初に、これらのソフトウェアは主に既存の企業の中で内で開発されたもので、広い、関連の薄いコミュニティによって開発されたものではない。現にHadoopは、Yahoo!の中で生まれたソフトウェアだ。2番めに、これらのビシネスは、プロジェクト内の一部のソフトウェアのみが無料でライセンスされるというモデルに基づいたもので、別の部分のソフトウェアについては、商用ライセンスとして、顧客に使用料を請求することができる。そしてこの商業利用は、エンタープライズの製品レベルを意識したものなので、収益化が容易なのだ。したがって、これらの企業は、彼らの製品がOSやデータベースほど訴求力がないものであっても、多くの収益を上げる力量を備えていたことになる。

しかしながら、こうしたオープンソースビジネスの第2世代のモデルには欠点もあった。1つには、こうしたソフトウェアに対する「道徳的権威」を単独で保持する企業が存在しないため、競合する各社がソフトウェアのより多くの部分を無料で提供することで、利益を求めて競い合うことになった。もう1つは、これらの企業は、ソフトウェアのバージョンの進化を細分化することによって、自らを差別化しようとするのが常態化したこと。さらに悪いことに、これらのビジネスはクラウドサービスを念頭に置いて構築されていなかった。そのために、クラウドプロバイダーは、オープンソースソフトウェアを利用して、同じソフトウェアベースのSaaSビジネスを展開することができた。AmazonのEMRがその典型だ。

起業家のデベロッパーが、オープンソース企業の最初の2世代、つまり第1世代と第2世代に横たわるビジネスモデルの課題を把握し、2つの重要な要素を取り入れてプロジェクトを展開したとき、新しい進化が始まった。まず第1に、オープンソースソフトウェアの多くの部分を企業の内部で開発するようにしたこと。現在では、多くの場合、そうしたプロジェクトに属するコードの90%以上が、そのソフトウェアを商品化した会社の従業員によって書かれている。第2に、それらの企業は、ごく初期の段階から彼ら独自のソフトウェアをクラウドサービスとして提供するようにしたこと。ある意味では、これらはオープンコアとクラウドサービスのハイブリッドビジネスであり、自社製品を収益化するための複数の道筋を備えている。製品をSaaSとして提供することによって、これらの企業はオープンソースソフトウェアと商用ソフトウェアを織り交ぜることができるので、顧客はもはやどちらのライセンスに従っているのか心配する必要がない。Elastic、Mongo、およびConfluentなどの企業は、それぞれElastic Cloud、MongoDB Atlas、Confluent Cloudといったサービスを提供しているが、それらが第3世代の代表だ。この進化の意味するところは、オープンソースソフトウェア企業が、今やソフトウェアインフラストラクチャの支配的なビジネスモデルとなる機会を持っているということなのだ。

コミュニティの役割

それらの第3世代の企業の製品は、確かにホスト企業によってしっかりと管理されてはいるものの、オープンソースコミュニティは、オープンソースプロジェクトの作成と開発において、いまだ中心的な役割を果たしている。1つには、コミュニティはもっとも革新的で有用なプロジェクトを発見し続けている。彼らはGitHub上のプロジェクトにスターを付け、そのソフトウェアをダウンロードして実際に試してみる。そして優れたプロジェクトだと感じたものは拡散して、他の人もその素晴らしいソフトウェアの利益を享受できるようにする。ちょうど、優れたブログ記事やツイートが感染のように広まるのと同じで、素晴らしいオープンソースソフトウェアもネットワークの効果を最大限に活用している。その感染を発生させる原動力となっているのがコミュニティというわけだ。

さらにコミュニティは、事実上それらのプロジェクトの「プロダクトマネージャ」として機能しているようなものだ。コミュニティは、ソフトウェアに対して機能強化と改良を求め、欠点も指摘する。製品に付随するドキュメントには、要求仕様書こそ含まれていないが、GitHubにはコメントスレッドがあり、Hacker Newsというものもある。そうしたオープンソースプロジェクトがコミュニティに誠実に対応すれば、やがてそれはデベロッパーが必要とする機能と性能を備えたものに、自然となっていくのだ。

またコミュニティは、オープンソースソフトウェアの品質保証部門としても機能している。ソフトウェアに含まれているバグや欠陥を指摘し、0.xバージョンを熱心にテストし、何が動いて何が動かないかをフィードバックする。そしてコミュニティは、すばらしいソフトウェアに対しては肯定的なコメントによって報いる。それによって、利用者数の拡大を促すことになる、

しかし、以前と比べて変わったことは、ソフトウェアプロジェクトの実際のコーディングについては、コミュニティはそれほど関与しなくなったこと。こうした傾向は、第1世代と第2世代の企業にとっては障害となるとしても、進化し続けるビジネスモデルの不可避な現実の1つなのだ。

Linus Torvaldsは、オープンソースのオペレーティングシステム、Linuxの設計者だ

デベロッパーの台頭

こうしたオープンソースプロジェクトにとって、デベロッパーの重要性が高まっていることを認識することも大切だ。伝統的なクローズドソースソフトウェアの市場開拓モデルは、ソフトウェアの購買センターとしてのITをターゲットにしていた。ITは、いまでもそのような役割を果たしているものの、オープンソースの本当の顧客はデベロッパーなのだ。彼らは、ソフトウェアを発見し、ダウンロードして開発中のプロジェクトのプロトタイプバージョンに組み込む、ということを普段からやっている。いったんオープンソースソフトウェアに「感染」すると、そのプロジェクトは、設計からプロトタイプ作成、開発、統合とテスト、発表、そして最終的に製品化まで、組織的な開発サイクルに沿って進行し始める。オープンソースソフトウェアが、製品に組み込まれるまでに、置き換えられるということはめったにない。基本的に、そのソフトウェア自体が「販売」されるということは決してない。それは、そのソフトウェアを高く評価しているデベロッパーによって選定されるのだ。それは彼ら自身の目で確かめ、実際に使ってみての判断であり、経営者の決定に基づいて決められたものではない。

言い換えれば、オープンソースソフトウェアは真のエキスパートを介して普及し、選択のプロセスを、これまでの歴史には見られなかったような民主的なものにした。デベロッパーは、自分の意志に従って行動する。これは、ソフトウェアが伝統的に販売されてきた方法と好対照を成している。

オープンソースビジネスモデルの美点

その結果、オープンソース企業のビジネスモデルは、従来のソフトウェアビジネスとはまったく異なって見えるものになった。まず最初に、収益ラインが違う。比べてみるなら、クローズドソースのソフトウェア会社は、オープンソース企業と比較して単価を高く設定できる。しかし今日でも、顧客は理論的には「無料」のはずのソフトウェアに対して、高額の対価を支払うことに、ある程度の抵抗を感じている。オープンソースソフトウェアは、単価は安くても、市場の弾力性を利用して全体としての市場規模を確保しているのだ。ものが安ければ、より多くの人が買う。それこそが、オープンソース企業が大きな規模で、かつ急激に製品市場に適合できた理由だ。

オープンソース企業のもう1つの大きな強みは、はるかに効率的かつ感染性の高い市場開拓の動きにある。中でも第1の、そしてもっとも明白な利点は、ユーザーはお金を払う前から、すでに「顧客」になっているということ。オープンソースソフトウェアの初期導入の大部分は、デベロッパーがソフトウェアを組織的にダウンロードして使用することによるものであるため、販売サイクルにおいて、市場への売り込みと概念実証の両方の段階を、企業自体が迂回できるのが普通だからだ。セールトークは、「あなたは、すでに私たちのソフトウェアの500のインスタンスを、あなたの環境で使用しています。エンタープライズ版にアップグレードして、これらの付加機能を入手されてはいかがでしょうか?」といったものになるだろう。これにより、販売サイクルが大幅に短縮され、顧客担当者1人あたりに必要なセールスエンジニアの数を大幅に減少させることができる。そして、販売費用の回収期間も大幅に短縮できるわけだ。実際、理想的な状況では、オープンソース企業は顧客担当者に対するシステムエンジニア数の比率を好ましいものに保って業務を遂行でき、四半期以内にセールスクオリファイドリード(SQL)から商談成立まで持ち込むことができる。

このようなオープンソースソフトウェアビジネスの感染性は、キャッシュフローの面でも、従来のソフトウェアビジネスよりはるかに効率的でいられるようになる。最高のオープンソース企業の中には、中程度の現金バーンレートを維持しつつ、3桁の成長率でビジネスを伸ばすことができたところもある。そんなことは、伝統的なソフトウェア会社では想像するのも難しい。言うまでもなく、現金の消費が少なければ、創業者にとっては希薄化も少ないことになる。

写真はGetty Imagesのご好意による

オープンソースからフリーミアムへ

変化し続けるオープンソースビジネスにおいて、詳しく説明する価値のある最後の様相は、真のオープンソースからコミュニティに支援されたフリーミアムへの緩やかな移行だ。すでに述べたように、初期のオープンソースプロジェクトは、コミュニティをソフトウェアベースへの重要な貢献者として活用していた。その際には、商業的にライセンスされたソフトウェアの要素がわずかでも混入すると、コミュニティから大きな反発を受けた。最近では、コミュニティも顧客も、オープンソースビジネスモデルについてより多くの知識を持つようになった。そしてオープンソース企業は「有料コンテンツの壁」を持つことで、開発と革新を続けていけるのだ、という認識も広まった。

実際、顧客の観点からすれば、オープンソースソフトウェアの価値を決める2つの要素は、1)コードが読めること、2)それをフリーミアムとして扱えることだ。フリーミアムの考え方は、それを製品として出荷しなければ、あるいはある一定数までは、基本的に無料で使用できるということ。ElasticやCockroach Labsのような企業は、実際にすべてのソフトウェアをオープンソース化するところまで踏み込みつつ、ソフトウェアベースの一部に商用ライセンスを適用している。その論拠は、実際のエンタープライズ契約の顧客は、ソフトウェアがオープンかクローズドかにかかわらず料金を支払うが、実際にコードを読むことができるのであれば、商用ソフトウェアを利用する意欲も高まる、というものだ。もちろん、誰かがそのコードを読んで、わずかな修正を加え、亜流を配布するという危険性もある。しかし、先進国では、すでにさまざまな分裂が生じているが、エンタープライズクラスの企業が模倣者をサプライヤーとして選ぶことなどありそうもない。

このような動きを可能にした重要な要因は、より現代的なソフトウェアライセンスにある。そのようなライセンスを最初から採用してた企業もあれば、時間をかけて移行してきた会社もある。Mongoの新しいライセンス、そしてElasticやCockroachのライセンスは、その良い例だ。10年ほど前に、オープンソースプロジェクトの原点となったApacheのインキュベートライセンスとは異なり、これらのライセンスははるかにビジネス向きで、モデルとなるようなオープンソースビジネスのほとんどが採用している。

(関連記事:MongoDBがそのコードのオープンソースライセンスを改定、オープンソースの“食い逃げ”に むかつく

将来は

4年前に、このオープンソースに関する記事を最初に書いたとき、私たちは象徴的なオープンソース企業が誕生することを熱望していた。Red Hatという1つのモデルしかなかった頃には、もっと多くのモデルが登場すると信じていた。今日、オープンソースビジネスの健全な一団を見ることができるようになったのは、非常にエキサイティングなことだ。これらは、オープンソースの遺伝子プールから登場してくるのを目にすることになる象徴的な企業のほんの始まりに過ぎないと、私は信じている。ある観点から見ると、何十億ドルもの価値があるこれらの企業は、このモデルの力を立証するものだ。明らかなのは、オープンソースはもはやソフトウェアに対する非主流のアプローチではないということ。世界中のトップクラスの企業がアンケート調査を受けたとき、その中核となるソフトウェアシステムを、オープンソース以外のものにしようとするような企業はほとんどないだろう。そして、もしFortune 5000の企業がクローズドソースソフトウェアへの投資をオープンソースに切り替えれば、まったく新しいソフトウェア企業の景観を目の当たりにすることになる。そしてその新しい一団のリーダーたちは、数百億ドルもの価値を持つことになるのだ。

もちろん、それは明日にも実現するようなことではない。これらのオープンソース企業は、今後10年間で、成長、成熟し、自社の製品と組織の開発を進める必要がある。それでも、この傾向は否定できない。そして、ここIndex Venturesでは、この旅の初期に、私たちがここにいたことを光栄に感じている。

画像クレジット:aurielaki

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

総合的なデータプロビジョニングサービスElasticがSwiftypeを買収してサイト検索を強化

Swiftypeは、本誌がそれについて書いているだけでなく、そのサイト内検索技術を実際に使っている。今度同社は、オープンソースのElasticsearchを作っているElasticに買収されることになった。

それで分かったきたのは、両社がすでに良い仲だったことだ。Swiftypeは、検索するコンテンツのインデクシングと保存にElasticsearchを使っている。実はSwiftypeのCTO Quin HoxieがElasticのCEO Shay Banon(上図)のことを初めて聞いたときには、“あのすごい量のソフトウェアを書いたという伝説のデベロッパーが実在する一人の人間だったのか”、と思ったそうだ。

HoxieとBanon両人によると、買収によってSwiftypeの方向性が大きく変わることはない。Hoxieによると今回の決定は、これまでの路線の延長にすぎず、組織を大きくすることによって技術力だけでなく、経営にも好影響がある、という。

実際には、Swiftypeがやや変わる。まず、導入期のユーザーは料金が月額79ドルになる。また合同チームにより、ElasticのElastic StackとX-PackがSwiftypeのEnterprise Searchに統合される。それにより企業ユーザーは、DropboxやG Suiteなどの全サービスに対する検索ができるようになる。

一方Banonによると、Elasticは以前Opbeatを買収したが、そのときと同じように、買収したチームの自立性を尊重する。“余計な介入をしたくない。コラボレーションでも何でも、自然発生的なのが良い”。

今回の買収に関しては、Banonによれば、エンドユーザーのユーザー体験の部分をこれまでよりも良くしたかった。とくにサイト内検索に関しては、Swiftypeが作ったものが、この界隈で最良のユーザー体験だ、とBanonは言う。

振り出しに戻って円が完成するのは良いことだ、と彼は言う。Elasticという円のスタート地点はサイトとアプリケーションの検索だったが、その後ロギングやアナリティクスなどにも手を伸ばしていった。そして今回の買収で、初心の検索に回帰したのだ。

買収の金額等は、公表されていない。Swiftypeは前に、2200万ドルあまりをY Combinator, New Enterprise Associatesなどから調達している。顧客には、AT&T, Dr. Pepper, Hubspotなどがいる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

アプリケーション用検索エンジンのElasticがOpbeatを買収してアプリケーションパフォーマンス管理に進出

今日(米国時間6/22)、ロンドンで行われたElasticのカスタマーイベントで同社が、アプリケーションのパフォーマンス管理(application performance management, APM)をSaaSで提供しているOpbeatを買収したことを発表した。買収の額等は公表されていない。Opbeatの15名の社員は全員すでに、Elasticのチームに合流している。

OpbeatはJavascriptで書かれているアプリケーションをモニタするが、それだけでなく本番アプリケーションの問題点を直接、その原因であるソースコードに対応付ける。そのためコードの森をハントして問題領域を見つける努力をしなくても、容易に問題をフィックスできる。

Elasticがいちばんよく知られているのは、同社の検索プロダクトElasticsearchだろう。このオープンソースの検索ツールは、Wikipedia, Yelp, eBayといった大物サイトが利用している。最近同社は単なる検索から一歩進んで、アナリティクスにも手を染めた。主にログデータが対象だから、Splunkなどの既存サービスともろに競合する。昨年Elasticは、同社のすべてのプロダクトを揃えたプラットホーム、Elastic Stackを立ち上げた

ElasticのCEO Shay Banonは今日の買収を戦略的な視点で見ている。すなわちそれは同社に、単なるログデータのサーチを超えて、データを生成しているアプリケーションの内部へのインサイトを与え、パフォーマンスの劣化の原因を示唆する。それによりElasticの競争力が強化される、とBanonは述べる。

OpbeatのCEOだったRasmus Makwurthによると、Elasticに加わったことによってプロダクトのロードマップを加速でき、Elasticプラットホームの幅広いリソースを利用できる。“うちはかなり前からSaaSのプラットホームとして、アプリケーションのインサイトをデベロッパーに提供してきたが、顧客にアプリケーション全体のインサイトを与えることができなかった”、と彼は説明する。Elasticへの参加で彼の企業は、検索ツールや、アナリティクス、ログデータの視覚化などをElasticのプラットホームで利用でき、同社のビジョンを大きく拡大できる、という。

Opbeatの社員はすでにElasticに加わり、Elasticのチームと共に、既存のSaaSアプリケーションのオンプレミス化に取り組んでいる。Banonによると、Opbeatのクラウド体験がElasticのクラウド提供物の拡大に寄与するだろう、という。

クラウドネイティブなアプリケーションとその技術をオンプレミス化する仕事は簡単ではないが、両社の展望では数か月後のリリースを目指している。なお、Opbeatのプロダクトも前からElasticsearchを使っているが、Banonによると、これまでのようにプロダクトを使っていることと、それがスタックの一部になることは、全然別の話だ。そしてクラウドとオンプレミスの両方で新しい会社を仲間に加えていくためには、相当な技術的努力を要する、と。

今年初めにCiscoが、IPO直前のAPMベンダーAppDynamicsを37億ドルで買収した。Banonは今日の買収価額を公表しないが、あれよりずっと少ないね、とジョークを言った。

Opbeatは2013年にデンマークのコペンハーゲンで創業され、これまで約280万ドルを調達している。良い買い物と言えるだろう。同社はデンマークで仕事を続ける。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))