Rocket LabがElectronロケットの推力を300kgに増強

米国時間8月4日、Rocket Lab(ロケット・ラボ)は既存のElectronロケットのペイロード重量を大幅に向上させることに成功したと発表した(Rocket Labリリース)。同社によると、現在Electronは低軌道に300kg(太陽同期軌道なら約200kg)を輸送でき、その主な原因はバッテリー技術の進歩にあるという。

エレクトロンはもちろんバッテリー駆動ではないが、Rutherfordエンジンへと燃料を供給するための電動ポンプがある。そこでRocket Labは他のいくつかの最適化とともに、総ペイロード重量を3分の1増加させている。小型衛星の打ち上げ市場では、CubeSatの重量が3ポンド(約1.4kg)以下になることもあり、今回は大きな重量増加となる。

Rocket Labによると、これはPhotonプラットフォームを衛星バス(企業からの特定のニーズを満たすための基本的な衛星プラットフォーム)として使用している顧客が、約400ポンド(約180kg)の機器を搭載できるようになったことを意味しており、これは広い範囲で潜在的な新しい需要を喚起できる可能がある。

エレクトロンは7月上旬のミッションの早期終了と打ち上げ失敗が発生した後、早ければ2020年8月中にも定期的な打ち上げに戻ることを目指していると発表した。同社はすでに問題を特定し、修正を実施しているという。

関連記事:Rocket Labの打ち上げは第2段ロケットの燃焼中に失敗、キヤノン電子開発の地球観測衛星などが消失

カテゴリー:宇宙

タグ:Rocket Lab

画像クレジット:Rocket Lab

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

ロケットラボが12回目のElectron打ち上げに成功、NASAとNROのペイロードを投入

世界的な新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックが一時停滞した後、Rocket Lab(ロケットラボ)はニュージーランドでの最初の打ち上げミッションを再開した。米国時間6月13日の早朝、ニュージーランドのマヒア半島にある発射場から12機目のElectronロケットを発射し、米国家偵察局(NRO)、NASA、ニューサウスウェールズ大学キャンベラ校から委託されたペイロードを投入した。

打ち上げは米国東部夏時間午前1時13分(現地時間で午後5時13分)に行われ、ミッションは滞りなく遂行された。ロケットラボはその後、Electronが目標軌道に到達し、ペイロードの投入も計画どおりに行われたことを確認した。

ロケットラボは打ち上げ能力の大幅な拡大に向けて準備を進めており、米国バージニア州ワロップス島に新たな発射場を開設した。射場はすでに完成しており、最初のミッションは2020年初めに予定されていたが、施設を閉鎖して重要なミッションに焦点を当てることで新型コロナウイルスの拡散を食い止めようとするNASAの方針により計画が遅れ、初の打ち上げミッションも延期された。

ニュージーランドは現在、ロックダウンを完全に終えている。同国の迅速な対策と比較的小規模かつ分散した人口のおかげで、新型コロナウイルスの感染は迅速に封じ込められ、感染率をゼロにすることができた。これは、ロケットラボの既存の事業にとっても、またマヒアの施設に第2発射場を設置しようとしている同社にとっても良いニュースだ。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

Rocket Labが使い捨てElectronロケットのヘリでの空中キャッチに成功

Rocket Labは使い捨て用に設計されたたロケットを降下中に回収する方法を開発している。米国時間4月7日、同社は空中捕捉プロセスのカギとなる部分を実証するためのテストに成功したと発表した。予告なしに公開された動画にはヘリコプターがElectronロケットを空中でキャッチするところが撮影されている。

ロケットは打ち上げ後、大気圏外で衛星を搭載したキックステージ段を切り離し、大気圏に再突入する。回収プロセスのカギはElectronの1段目に誘導システムを搭載して操縦する点にある。これによって再突入角を調整し、1段目が大気との摩擦で損傷することを防ぐ。その後、1段目はパラシュートを展開して降下する。ヘリコプターが降下するロケットを空中でキャッチし、機体から吊り下げてRocket Labの発射基地に戻る。

今回公開されたRocket Lab空中キャッチのテストは、新型コロナウイルス(COVID-19)の流行にともなう社会的隔離の実行が要請される前の3月に実施されたものだ。同社はElectronの1段目と形状、重量が同等のダミーを使い、ニュージーランド沖の洋上でヘリコプターから落下させた。1段目がパラシュートを展開すると2機目のヘリコプターが落下地点に急行し、高度約1500メートルでダミーをキャッチした。

Rocket Labは再突入部分の回収システムのテスト2019年12月に開始していた。打ち上げテストを2019年12月と2020年1月に行っている。どちらの打ち上げでもロケットには誘導とナビゲーションのシステムが搭載され、データが収集された。2度目の打ち上げではロケットには、大気圏への再突入角度を調整して降下速度を遅くするシステムも搭載されていた。

重要なプロセスが意図した通りに機能することが証明されたため、実際に第1段を回収するという次のステップに進むことになったわけだ。Rocket Labではさらに次のステップとして第1段を実際に操縦し、パラシュートを展開させるテストを2020年後半に予定している。ただしこのテストでは空中キャッチは行われない。Rocket Labでは1段目を着水させた後、洋上で回収する計画だ。ロケットは地上施設に戻され、再利用可能な状態に整備される。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Rocket LabのElectronロケットはヘリで空中回収して再利用

プライベートなロケット打ち上げのスタートアップでSpaceXのライバルのRocket Labは、米国時間8月6日に大きな計画を発表した。同社のElectronロケットの第1段を再利用するというもの。積荷を運んで周回軌道に入ったあと、管制着陸によって地球に戻すのだ。ただし、着陸のシーケンスはSpaceXのものとは異なっている。戻ってきた第1段ロケットを、ヘリコプターを使って空中でキャッチしようというのだ。

Rocket Labの創立者兼CEOであるPeter Beck(ピーター・ベック)氏が今回の発表で聴衆に語ったところによると、そうする理由は「推進力を使った再突入はしない」し、「着陸の際にも推進力を使うつもりはない」からだという。その代わり、地球への帰還にあたって、まず宇宙空間で転回してエンジンを燃焼させることで速度を落とし、その後パラシュートを開いてヘリコプターで捕獲できるほどまで、十分に減速する。

それを実現するには多くの手順が必要となるが、Rocket Labはすでにこれまでの数回の打ち上げの際に、そのために必要なすべてのデータを計測できるよう目指してきた。8回目の打ち上げにあたっては、計測装備をアップグレードしてさらに多くのデータを収集した。今後、10回目の打ち上げの際にはロケットを海に着水させてから回収し、そこからより多くのことを学べるようにする予定だ。そして、まだ何回目の打ち上げになるかは未定だが(ベック氏は、現時点では具体的な回数を明らかにしていない)、いずれは十分に再利用できる状態でロケットを回収できるようにするつもりでいる。

同じロケットを再び打ち上げられるようにすることには、明らかな利点がある。商用の打ち上げに対する非常に大きな需要を考えれば、それも自明のことだろう。

「このようなことを実現しようとする根本的な理由は、頻繁に打ち上げるためです」とベック氏は言う。「このロケットを1回完成させるだけで、実質的に稼働率を2倍にすることができます」。

またベック氏によれば、地球への帰還にあたって、ロケットを減速させるのが最も難しいのだという。その後に、ヘリコプターによってElectronロケットを回収する部分は、実は易しいそうだ。ベック氏自身、アマチュアのヘリ操縦士として訓練中だがその目で見ても難しくないという。

Rocket Labは、2006年にベック氏によって設立された。本社は、カリフォルニア州ハンティントンビーチにある。また、独自の打ち上げ基地をニュージーランドに持っている。地球の軌道を周回するElectronロケットの試験的な打ち上げは、2017年に始めた。2018年からは、顧客に対して商業的な打ち上げを提供している。また、2019年中には、米国のバージニア州でも打ち上げを実施する予定だ。

また同社は、今年初めに、Photon人工衛星プラットフォームを発表した。小規模な衛星事業者は、これを利用することで、自らの特徴的なサービスに専念できるようになる。既製品としてのPhotonを採用すれば、実際に人工衛星自体を設計、製造するステップを除外することができるからだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Slackが高速化されたウェブとデスクトップクライアントを公開

米国時間7月22日、Slackはウェブとデスクトップクライアントのメジャーアップデートの公開を開始した。新機能はなくユーザーインターフェイスも変わらないが、内部は完全に作り直されている。2012年にSlackが登場したときにはウェブとデスクトップクライアント(この両者は基本的に同じコードベースだ)はjQueryなどのテクノロジーを使用していたが、ここ1年ほどかけてモダンなスタックに移行してきた。

Slackのプロダクトマネジメントのディレクター、Jaime DeLanghe(ジェイミー・デラング)氏は筆者に対し次のように語った。「Slackは仕事に必要なツールと一緒に、簡単にシンプルに、できれば楽しく使ってもらいたいと思っている。そのために我々はSlackがどんな環境で使われるかを考えた。また、クライアントサイドの開発のエコシステムは、ここ5年で大きく変化している。JavaScriptがアップデートされたし、ReactやReduxといった新しいテクノロジーでダイナミックなウェブアプリを以前よりも簡単に作れるようになった。モダンなパラダイムに合うようにスタックをアップデートしたいと考えていた」。

ここ数カ月、実はSlackは今回のアップデートの前段階の多くをサイレントに展開してきた。ただし全容は、クライアントを最新版にアップデートしたときに明らかになる。新しいElectronアプリですべてが統合されるからだ。

Slackは、新バージョンではメモリ使用量が最大で50%減り、起動は33%速くなるとしている。着信通話に参加するまでの時間も10分の1になるという。

こうした変化の多くは、複数のワークスペースに参加しているユーザーに特に顕著に現れる。デラング氏が強調するように、多くのユーザーが複数のワークスペースに参加しているという想定のもとに新しいアーキテクチャを設計したからだ。これまでのアプリでは各ワークスペースがそれぞれのElectronプロセスを使っていたため、ワークスペースを切り替えるときにメモリやCPUを多く必要としていた。

Slackは、Reactを使って新しいアプリのすべてのUIコンポーネントを作った。新しいアプリでは、すべてのデータがロードされてからUIに表示されるのではなく、利用できるデータを適宜ロードする。

この結果、オフラインのときに、前に開いていたチャンネルや会話を読むこともできるようになった。

さらに重要なポイントは、基盤としてのSlackがモダンなクライアントとなり、機能開発が今後高速化されると考えられることだろう。デラング氏は「無理な約束をするつもりはない。スケーリングと構築を同時に進める企業にとって、検討しなくてはならない障壁のひとつが今回のアップデートによって取り除かれる。トレードオフがこれまでよりもいくらか容易になる」と語った。

今回のアップデートは今後数週間で全ユーザーに展開される。アップデートを利用するには、デスクトップクライアントを新しくすることと、新しいバージョンを使える対象となることの、2つが必要だ。Slack側の状況だけでなく、例えば自社のIT部門がアップデートをどのように導入するかといった要因もある。

画像:Drew Angerer / Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)

開発フレームワークElectronのエクスプロイトでWebとモバイルの人気アプリが危険

広く使われているクロスプラットホームな開発フレームワークElectronのセキュリティチェックをバイパスするエクスプロイトが登場した。Trustwaveがポストしたそのエクスプロイトはすでにパッチされたので、デベロッパーは自分のアプリケーションを早急にアップデートすべきである。

そのエクスプロイトは一部のアプリケーションでnodeIntegrationの設定によりクロスサイトスクリプティングを可能にする。このメソッドでアプリケーションは自分のモジュールに接続できるだけでなく、Node.jsのモジュールにも接続できるようになる。

発表から引用しよう:

Electronのアプリケーションは基本的にWebアプリケーションであり、したがってユーザーの入力を正しく無害化できなかった場合にはクロスサイトスクリプティング(XSS)攻撃に対し無防備になる。Electronのデフォルトのアプリケーションは自分のAPIだけでなくNode.jsのすべての内蔵モジュールへのアクセスを含んでいる。そのためXSSの危険性は大きく、犯人のペイロードはchild_processモジュールにおけるrequireなどの悪質なことができるようになり、クライアントサイドでシステムコマンドを実行する。Atomには少し前からまさにそれをするXSS脆弱性があった。アプリケーションのwebPreferencesにnodeIntegration: falseを渡すことにより、Node.jsへのアクセスを削除できる。

Discord, Signal, Visual Studio Code, それにGithubなど、多くの人気アプリケーションがElectronを使っている。Slackも、そのアプリケーションにElectronを使っている。

そのエクスプロイトはnodeIntegrationの設定と新しいウィンドウを開くプロセスに依存している。多くの場合nodeIntegrationはfalseに設定されているが、たまたまnodeIntegrationをtrueに設定すれば、child_processモジュールを呼び出すなどの悪質なスクリプトを通してしまい、そいつはspawnのようなシステムコールにより、オペレーティングシステムのコマンドを実行できるようになる。

ElectronのWebサイトがここにあり、アップデートに関するブログ記事はここだ。このプラットホームを最近の数週間以内にアップグレードしていれば、多くのアプリケーションが無事だろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Google Assistantでコントロールする電動アシスト自転車10日間のクロスカントリーでCESに来場

CESに行くための悪い方法がある。たとえばこれ…自転車で10日かけてクロスカントリーをやりながら行くこと。それは、中西部の氷点下の気温の中を1週間あまり、毎日17時間、ペダルを漕ぎ続ける行程だ。しかもCESは1月初旬。会場のラスベガスですら、氷点下になる時期だ。

でもこの新しい電動自転車にローンチ前に試乗するシナリオとしては、ふさわしいのではないか。それだけでなく、Googleが資金を出すパブリシティのためのスタントとしても有効だろう。派手な発売イベントが好きな企業だね。Google Assistantという、これまでギークっぽかったシステムを、年頭のでっかい消費者電子製品ショウで披露する段取りとしても、演出効果満点だろう。

ElectronのGen 2 Wheelが実際に発表されたのは数か月前だ。そして今では、799ドルの予約購入を同社のサイトで受け付けている(Best Buyでも近く売り出すらしい)。話題はGoogle Assistantに集中するが、ただしそれは、消費者製品のイベントCESでは新顔だ。そして自転車本体が2月に発売されても、そのとき、実装されているGoogle Assistantのシステムはまだベータなのだ。

Googleは、Assistantをスマートフォンとスマートスピーカーで終わらせたくない。だからElectronを(つまり自転車を)パートナーにしたかったのだ。スマートアシスタントを実装するデバイスとして、自転車は相当おもしろいだろう。最初に提案されていた、いろんなスマートホーム製品なんかよりも、ずっと似合っている。

ElectronのVP James Parkerはこう言う: “Googleと協働してAssistantを統合したときは、ユーザー体験をできるかぎり単純にすることと、音声技術を自転車に乗ることにどうやって統合すべきか、という点がとくに難しくておもしろかった。自動車にはすでに、優れたコマンドの技術がある。それを自転車に応用できる機会が十分にある、と考えている”。

Electron Wheelは、すでにいろいろある、前輪に取り付ける自転車用アドオンとほぼ同じ機構だ。同社によると、インストールは1分で終わり、あとはWheelを前輪のスポークに取り付けるだけだ。そしてセンサーをマジックテープでペダルにつける。たったのこれだけだ。

デフォルトのモードでは、システムは傾斜センサーを使って上(のぼ)り坂あることを検出し、電動アシストをonにする。Electronのアプリでアシストのレベルをカスタマイズできるが、スマートフォンをハンドルバーに取り付けて使うのは、ちょっと厳しい。そこで、Google Assistantの出番となる。

Wheel自身にマイクロフォンはない(いずれ付くと思うが)から、マイクロフォンを自分の近くに置く必要がある。そして“OK Google, start bike ride”と命令すれば、Wheelがonになり、Electronのアプリが計測を始める。それ以降は、Assistantに命じてアシストのレベルを調節したり、バッテリーの残量を知ったり、計測したデータを報告させたりできる。

この記事の冒頭で述べた、Wheelのクロスカントリーの旅は12月31日の朝に始まり、ライダーのMax Lippeがニューヨークマンハッタンのユニオンスクエアからスタートする。彼は1日に17時間自転車に乗り、うまくいけば10日後にCESに到着する。Wheelは一回の充電で最大50マイルの電動アシストができる。しかしじっと充電を待つわけではないので、チームのサポートにより、頻繁な電池交換が必要だろう。

チームのスタッフは1台のバンに乗り、6台のWheelを用意して、それらを次々と充電していく。すべてが計画どおりいけば、彼はラスベガスに1月10日、CESの二日目に着く。



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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa