パンデミック中の買収でフェイスブックが再び独禁法調査の標的に

多くの業界が身動きをとれず損失に動揺するなか、テック業界のビッグプレイヤーたちは、ここでもルールの外にいることを証明しつつある。米国時間5月15日、Facebook(フェイスブック)はGIPHY(ジフィー)を買収する計画を発表した。人気GIF検索エンジンの価値は4億ドル(約430億円)といわれている。

フェイスブックは、GIPHYとは新たな開発およびコンテンツで関係を結びたいといっているが、世界最大のソーシャルネットワークが人気のGIFプラットフォームを欲しがる本当の理由は別にあるかもしれない。Bloomberg(ブルームバーグ)などの報道によると、フェイスブックの真の狙いはGIPHYを競合プラットフォームのユーザー動向を見るメガネとして使うことだという。GIPHYのGIF検索ツールは現在いくつかのメッセージングプラットフォームに組み込まれていて、その中にはTikTok、Twitter、Apple(アップル)のiMessageもある。

2018年にフェイスブックが、Onavoというモバイルアプリの使用を巡って窮地に立たされたことはよく知られている。このアプリはフェイスブック以外のアプリの利用状況を覗き見するもので、アップルのデータ収集に関するポリシーに違反した。その問題が修正された後も、フェイスブックはライバルの動向を見ることに執着するあまり、未成年を含むユーザーに報酬を渡し、ユーザーのモバイル行動をすべて見ることのできるアプリをインストールさせたことをTechCrunchは2019年に暴露した。

議員や規制当局にとって、GIPHYの買収は2種類の警鐘を鳴らす案件だ。1つはテック業界における反トラストに関わるの不正行為の新たな証拠として、もう1つはこの買収が消費者のプライバシー侵害となる可能性だ。

「司法省や連邦取引委員会はこの買収提案を精査すべきだ」とミネソタ州のAmy Kobuchar(エイミー・クロブシャー)上院議員がTechCrunch宛の声明で語った。「フェイスブックのライバルも含め多くの企業がGIPHYの共有コンテンツライブラリーなどのサービスに依存している。そのためこの買収提案に関して私は大変懸念している」。

2020年4月に提案された法案でElizapeth Warren(エリザベス・ウォーレン)上院議員(民主党・マサチューセッツ州)とAlexandria Ocasio-Cortez(アレクサンドリア・オカシオ・コルテス)下院議員は、 大型買収の凍結を求め、巨大企業はパンデミックに乗じて中小会社を買い叩くことで権力基盤を固めようとしているのではないか、と警告した。

ウォーレン上院議員の広報担当者は声明で、フェイスブックのニュースを「巨大企業がパンデミックを利用して権力基盤をさらに広げようとしている」と指摘し、同社の「プライバシー違反の歴史」に言及した。

「ウォーレン上院議員によるパンデミック期間中の大型買収の一時休止計画は必要であり、巨大テック企業を分割する執行者が必要だ」と広報担当者は語っている。

関連記事:AOC and Elizabeth Warren call for a freeze on big mergers as the coronavirus crisis unfolds

フェイスブックのこの最新の動きは、UberがGrubhubの買収を計画していることをWall Street Journalが暴露した数日後だった。GrubhubはフードデリバリーでUber Eatsと直接競合する会社だ。

そのニュースは、巨大テック企業の分解を目論んでいた規制賛成派議員たちも驚かせた。下院の反トラスト小委員会委員長を務めるDavid Cicilline(デビッド・シシリーニ)下院議員(民主党・ロードアイランド州)は、この買収を「パンデミック不当利益の最悪事例」と評した。

「本件は買収停止令の緊急度を改めて強調するものである。これは私が同僚議員とともに党によるサポートを強く要請してきたことだ」とシシリーニ氏がGrubhubに関する声明で語った。

パンデミック初期の日々には、テック大企業の反トラスト対する注目はやや薄らいでいたかもしれないが、政府も国民も新型コロナウイルス危機の中でリズムを取り戻すと、それも長くは続かなかった。5月15日のWall Street Journalは、司法省と何人かの州検事がGoogle(グーグル)に対する反トラスト訴訟を準備中で、夏頃には実行する予定だと報じた。

関連記事:A Grubhub-Uber tie-up would remake the food delivery landscape

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ウォーレン氏やサンダース氏を含む9人の上院議員が労働者の解雇でAmazonに公開書簡

マサチューセッツ州選出の民主党員Elizabeth Warren(エリザベス・ウォーレン)氏をリーダーとする9人の上院議員グループが今週、Amazon(アマゾン)のCEO Jeff Bezos氏宛に公開書簡を送り、最近の社員解雇に関する詳しい情報を求めている。その声明は、COVID-19と気候変動に関する同社のポリシーを強硬に批判した4名の従業員の解雇に言及している。

Bernie Sanders(バーニー・サンダース)氏とCory Booker氏、Kamala Harris氏、Sherrod Brown氏、Kirsten Gillibrand氏、Ed Markey氏、Richard Blumenthal氏、およびTammy Baldwin氏らが署名しているその書簡は、次のように述べている:

これら4名のワーカーが、彼らの解雇に先駆けて、Amazonの倉庫における労働者の健康と安全を護るために活動してきたことは、公開されている彼らの履歴において明らかであり、しかし他方には、「内規」への違反に関するAmazonの曖昧な公開声明があるのみである。これらの状況に鑑みわれわれは、その内規なるものが何であるかを正しく知るための、さらなる情報を求めるものである。

書簡は9つの質問を呈示し、BezosとAmazonに5月20日までの回答を求めている。上院議員たちが具体的に指摘しているのは、Christian SmallsとBashir Mohamed、Maren Costa、およびEmily Cunninghamの解雇であり、全員が同社のCOVID-19対応を公然と批判していた、としている。4名の内何名かは、彼らの解雇が内部告発と直接に結びついていると信ずる、と公けに声明しているが、Amazonはそれを断固否定している。

関連記事: アマゾンが従業員2人を追加解雇、パンデミック発生時の労働条件を批判

当時TechCrunch宛ての声明で同社は、「社員の労働条件を批判する権利を、弊社はすべての社員に認めている。しかしそれは、いかなる内規に違反してもよいとする無条件の免罪性を意味するものではない。これらの社員は、内規への違反を繰り返したために解雇した」、と言っている。

5月1日には副社長のTim Bray氏が公然と同社を去り、Amazonはまた一人社員を失うことになった。そしてその日には、国中のワーカーが労働条件をめぐってメーデーのストに参加した。

関連記事: AWSの上級役員で技術者のティム・ブレイ氏が従業員解雇に抗議してAmazonを辞職

Bray氏はこう書いている: 「Amazonの副社長として残ることは、自分が忌み嫌う行為を黙認することになる。だから辞めた。被害者は抽象的な実体ではなく本物の人間だ。名前もある。Courtney Bowden(コートニー・ボーデン)、Gerald Bryson(ジェラルド・ブライソン)、Maren Costa(マレン・コスタ)、Emily Cunningham(エミリー・カニンガム)、Bashir Mohammed(バシル・モハメッド)、Chris Smalls(クリス・スモールズ)だ。全員が非白人または女性またはその両方なのは、確実に偶然だ。そう思いたいね」。

上院議員たちの書簡は、同社における不平等に関するBray氏の懸念を反映するかのように、次のように問うている: 「Amazonでは、技術系労働者と倉庫労働者と役員が規律と解雇に関する同一のポリシーを有しているか?」。

上院議員たちがAmazonに圧力をかけようとしたのは、これが初めてではない。Sanders氏は同社の最低賃金(時給)を15ドルに上げる要求と活動のリーダー格になり、Warren氏は2020年の大統領選出馬にあたって、同社を(GoogleやFacebookなどと共に)分割すべきと主張した。

関連記事: Workers prepare to strike May 1, amid strained pandemic working conditions…パンデミックの労働条件悪化の中で労働者はメーデー参加を準備(未訳)

一方Amazonはこのところ、同社のコロナウイルスへの対応をめぐる論調にとても敏感になっている。Bezos氏の例年の株主宛書簡と同社の決算報告の両方で、それは大きく扱われている。今週初めには、倉庫労働者がまた一人、ウイルス検査で陽性になったあとで死亡した。また4月半ばには、Amazonの少なくとも74の倉庫で一部の労働者が陽性だった。

本誌は、書簡に関するコメントをAmazonに求めている。

画像クレジット: Erin Clark for The Boston Globe/Getty Images

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

消費者/労働者保護のオピニオンリーダーElizabeth Warrenが“いわゆるギグ・エコノミー”について語る

Cropped Approved CFF

Elizabeth Warren上院議員が、New America Foundationの今年の年次大会の木曜日(米国時間5/19)のスピーチで、Uber, TaskRabbit, Alfredなどの“いわゆるギグ・エコノミー(gig economy)”を構成している企業に関して、言葉を選びながら述べた。彼女は決してそれらの企業を否定する者ではないが、しかし企業と政治家の両方に対して、労働者指向の変化を促した: “いかなる労働者も、クラック*に落ちて這い上がれない状態になるべきではない”。〔*: クラック, cracks, 登山用語で深い岩の割れ目(救助が難しい)。〕

スピーチの中で上院議員は、産業を進歩させ新しい課題に挑戦していくテクノロジーの役割を称賛したが、まさにその直後に、彼女の本当に言いたかった言葉が続いた:

[真の問題はこうだ: イノベーションは生活の質を高め、新たな富を作り出す。しかし労働者がその富に与れるのは、そのための政策や方針〔政治と企業の〕があるときのみだ。]

“LyftやUberのような企業は、日々彼らの業績に貢献している労働者と同じ労働者たちが、その労働によって稼ぎだした富の、より大きな配分にアクセスしようとする努力に、しばしば抵抗してきた”、とスピーチの書き起こしにある。“彼らのビジネスモデルには、運転者の極端な低賃金に依存している側面がある”。

彼女の言う“低賃金”は、もちろん、他と比較した場合のことだ。Uberのドライバーは平均して1時間に15ドルから20ドルぐらい稼ぐが、ガソリン代や車の修理費などは自分持ちだ。良い商売、である場合もあるが、売上増など業績アップの余地はほとんどない。この問題がほかの方法で解決されるまで、客は彼らにチップを払わざるをえない

さらに彼らには、福利厚生も失業保険もない。だからその“雇用”は、真の雇用からほど遠いものに見えてくる。でもそれは、決して新しい問題ではない。Warrenはこう指摘する:

これらの問題のどれも、ギグ・エコノミーが発明したものではない。むしろ、ギグ・エコノミーは、弱い労働市場において生活を支えることのできない一部の労働者のための、一時しのぎになっている。ギグ労働の柔軟性や独立性、クリエティビティなどの美徳が派手に賞賛され、それは一定の条件下における一部の労働者には真実かもしれないが、しかし多くの労働者にとってギグ・エコノミーは、福利厚生が上位10%の労働者にしか提供されていない世界で何らかの経済的安定を得ようとする、徒労な努力の連鎖の、一歩であるにすぎない。

上院議員はこれに続けて、非正規雇用の仕事を二つとか三つ抱えて生きている大量の労働者を救うための、提案を述べている。いずれも、ギグ・エコノミーがもたらすとされるポジティブな効果やイノベーションを、大きく失うことはない、とされる施策だ。以下は、それらの提案の、ぼく自身(の無償労働!)による要約だ:

まず、正社員に提供されている“安全ネット”を、非正規〜臨時雇用者にも部分的に提供すること。

  • 臨時雇用、時給制労働者、パートタイマーなどすべての労働者が社会保障費を支払うこと。給与天引きをルールとし、雇用者がその事務を行う。
  • すべての労働者が自己を名義人とする高額医療費保険に加入すること。“すべての、とは、文字通りすべての労働者であり、障害者認定に至らない実質的障害者も含む。また、従来的な労働者災害補償の対象外の労働者も含む”。
  • すべての労働者に有給休暇があること。その具体的な条件等は今後の検討課題だが、全員に完全自由休日が与えられ、また家族の問題や医療にあてる休日も、リーズナブルな量、与えられること。
  • 医療や退職等に関わる福利厚生が、できるかぎり、複数の雇用者にまたがってポータブルであること。それに関し、被雇用者自身の事務負担等が極力少ないこと。

次は、労働法の改善と強化だ:

  • 労働の分類に錯誤や抜け穴があって、雇用者の無責任が許される状態がないこと。
  • 労働者の定義が単純明快であること。安全ネットの普遍化は、(区別が不要になるので)単純化を助ける。保険や福利厚生の要素で違いがあるのではなく、労働そのものの違いに焦点が当てられるべきである。
  • “すべての労働者に組織化の権利があること(例外なく)。正社員、パートタイム、一時雇用、ギグ労働者、契約社員、などなど、労働を提供する者全員が集団交渉の権利を持つべきであり、そのことは、労働条件をコントロールする者が誰であっても変わらない。またそれによる報復や差別から、労働者は保護されなければならない”。

スピーチの初めの方で彼女は、産業革命の初期にも、工場に対する規制がなく、労働者は死と隣り合わせの劣悪な条件と環境で働かされた、と述べた。そして、ちょっと気を利かせて、TaskRabbitのワーカーはこれまで、それほど苛酷な条件で働かされたことはないだろう、とも述べた。Warrenは、機は熟している、今こそ規制は、これらの新しい業態に適合するとともに、そこで働く労働者を保護するためにも、大幅に変わらなければならない、と語った。

“この国が100年前に行ったこととまさに同じように、今は労働者と企業との基本的な契約関係を再考すべきときである”、と彼女は語る。“新しい技術によってより大きな富が生まれているとき、その経済を支える労働者がその富を確実に共有できるために、私たちは何を為すべきか?”。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))