米宇宙軍がベンチャーキャピタル「Embedded Ventures」と提携し新たな研究開発プロジェクトを設立

かつて宇宙産業を支配していたのは、米国政府だった。米国政府で、いくつもの事業を限られた数の巨大航空宇宙企業に外注し、その技術を長期にわたる中央集権プログラムで利用してきた。爆発的な技術革新と一部にはベンチャーキャピタルと未公開株式のおかげで、米国政府は数ある顧客の1つとなった。しかし、そのままでいるつもりはない。

そのために、米国宇宙軍(USSF)のSpaceWERXオフィスは、設立11カ月のベンチャーキャピタル、Embedded Ventures(エンベデッド・ベンチャーズ)と提携し、国内の宇宙経済を発展させるとともに、国の利益を守るために利用できる研究開発機会の創出を目指す。

これはUSSFが共同研究開発契約(CRADA)と呼ばれるこの種の研究開発契約を、ベンチャーキャピタルと結んだ初めてのケースだ。また、米国政府がベンチャーキャピタルの慣行と資金調達モデルの利点を活かそうとする兆候の1つでもある。

元々CRADAは米国防総省(DOD)と、政府との協業を望むスタートアップとの間で利用されていた。このファンドに事業パートナーとして最近参加したMandy Vaughn(マンディー・ヴォーン)氏が、CRADAを推進するためのアイデアを提案した、とEmbeddedの共同ファウンダー、Jenna Bryant(ジェナ・ブライアント)氏は言った。Embedded VenturesとWalter McMillan(ウォルター・マクミラン)中佐ら政府関係者との間で数回電話が交わされ「その後はご存知のとおりです」とブライアント氏は言った。

ベンチャーキャピタルにもDODにとってもこれまでに逃したチャンスはたくさんあったので、この5年契約の提携は少しでもその痛みを和らげるものになるだろう、とEmbeddedの共同ファウンダー、Jordan Noone(ジョーダン・ヌーン)氏がTechCrunchに語った。例えばベンチャーキャピタルは公共機関よりもずっとすばやく動くことができる。さらにVCは、防衛に利益をもたらす新たな新興技術の動向を察知する能力をもっている。

スタートアップもこの提携の恩恵を受けることができる。多くの若い企業にとって、米国政府と仕事をするためには、長い契約期間や厳しき規制されたプロセスなど複雑で威嚇的なプロセスがともなう。その多くは教育に行き着く。スタートアップは戦略的決断を下し、政府との契約に適合するように準備を進める。VCの支援が生かされるのはそこだ。

「このように軍民双方にとっての好機を支援することに対して、ベンチャーキャピタルコミュニティ反応は決して良いものではありません」とヌーン氏はいう。しかしそうした機会は、契約申請の障壁を越える意志を持つ会社にとって利益が大きい。

Embeddedにとって、一企業に賭ける可能性は、向こう側に米国政府という巨大な顧客がいる可能性がある場合の方がずっと高い。加えて、今後20年間主役を演じられる宇宙テクノロジーには、官民連携が必要になる可能性が高い、とヌーン氏はいう。SpaceXが、部分的に、NASAの投資によって種をまかれたのと似ている。

「ベンチャーキャピタル・コミュニティにエコシステムが出来上がり、そこで冷戦のさなかにシリコンバレーが誕生してテクノロジーを生み出してきました。それが今は誰もが消費者向けアプリばかり作っています」とヌーン氏はいう。「その間何が起きたのか、どうすればシリコンバレーが国家安全保障に関われるように舵を取り直せるのでしょう」。

EmbeddedとUSSFは定期的に顔を合わせて進捗について話し合い、その中で基準を設定する。これはCRADAプログラム下の新しいタイプの提携で、両者間に金銭の授受がないため、目標の一部は成功する提携はどのようなものかを定義して、将来再現できるようにすることにある。両社が共同投資する必要はないものの、協業の結果の1つがそうなる可能性はある、とEmbeddedの広報担当者は語る。

「業界の人たちはいつも、『みんなが一緒に働き、ベンチャーのペースで動くにはどうすればいいか』と話していますが、実際にやっている人はいません」とブライアント氏は付け加えた。「今すぐ何か行動することが私にとって重要なのです」

画像クレジット:NASA

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook