感情知性を持つコンピューターは、ひょっとすると既にあなたよりも高いEQを持っているかもしれない

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【編集部注】著者のAndrew Thomsonはロンドンを拠点とする技術スカウティングスタートアップVentureRadarの、創業者兼最高経営責任者(CEO)である。同社はビッグデータを利用し企業と顧客を結びつけている。

映画 I, Robotから、 Ex Machina、そしてMorganに至るまで、人間の感情を理解し、計算し、反応できるロボットを生み出すというアイデアは、何十年にも渡って映画の中で検討されてきた。しかし、感情的に知的なコンピューティングシステムを作成するという課題は、すぐには解決されないだろうというのが、よくある誤解である。現実には、コンピュータはすでに、人間の感情知性(EQ)を拡張する、あるいはそれを置き換えることができることを実証している。

おそらく驚くべきことに、他者を読み取る力にいつでも優れているわけではなく、感情的なサインを見落としがちで、嘘によって騙されてしまう人間とは違い、コンピューティングシステムは感情が欠けているからこそ、それらは感情知性という面で優れた立場に立つことができるのだ。

Tomas Chamorro-Premuzicによれば 、「ロボットが感情的にインテリジェントな方法で行動するためには、感じることができるようにする必要はありません。実際には、人びとの想像とはうらはらに、たとえ人間の場合でも高いEQは、高度ではない、より低いレベルの情動と結びついているのです。(高いEQは)自分の衝動を制御したり、合理的に行動し感情的な干渉を最小限にするために、強い感情を抑制する程度なのです」ということになる。

感情コンピューティング(affective computing)の分野では 、感情知性の中のもう一つの重要な要素である、顔の特徴、身体の姿勢、身振り、言葉や身体の状態を観察し解釈する、センサーや他の装置も非常によくなってきている。さまざまな業界の革新的な企業は、現在、人間の感情知性を強化し、さらに改善することができるコンピューティングシステムを使用している。

マネジメント

ウォール街の高プレッシャの環境下で、株式トレーダーは彼らの雇用者の数百万ドルを超える資金を扱い、一瞬の判断が、彼らのキャリアを作るか、あるいは破壊してしまう。

従業員の感情的な状態を使って、費用のかかる間違いをする危険性が高まっていたのか、あるいは単に1度きりの間違いを犯しただけなのかを判断することができる。歴史的に、いくつかの産業における経営文化は、従業員の感情的な健康を考慮するようには必ずしも最適化されていない。
しかし、JP モルガン・チェースやバンク・オブ・アメリカのような大手銀行は、技術企業と協力して、労働者の感情をモニタし、パフォーマンスとコンプライアンスを向上させるためのシステムを設置している。

ブルームバーグによれば、多くの銀行がHumanyzeと提携している、これはMITの卒業生によって設立されたスタートアップで、会話や、活動、そしてストレスパターンなどを送信するセンサーを組み込んだバッジを製造している。まるでオーウェルの1984のシーンのように聞こえるかもしれないが、バッジには、雇用側が行動データを分析して、チームの生産性を向上させるのに役立つマイクと近接センサーも含まれている。これらのデバイスを使用することで、マネージャは「深みにハマった」従業員を支援して、適切な行動をとることができ、そして、チームのトレーニングで使用できるポジティブな行動を取り上げることもできる。

おもてなし運転

もしこれまでに、タクシーの後部客席に座って、ドライバーのきわどい運転に手に汗握った経験があるならば、ルールに従って安全に運転するようにプログラムされた「自動運転」車の可能性については、とても期待していることだろう。自動運転車は有人運転を置き換え始めようとしているが、私たちのロボットドライバーはあなたが彼らの運転に関して感じることについて、より反応的である。

BRAIQは、乗客の快適レベルをどのように読み取り、乗客が好む運転方法をどのように学ぶかを、自動運転車に対して教えるスタートアップだ。このパーソナライゼーションは、乗客の快適さを向上させるとともに、自己運転技術に対する信頼を育むことを目的としている。

既成の車内センサーが、乗客がアクセル、ブレーキ、ステアリングなどの車の動作をどのように感じているかに関するデータを提供する。収集されたバイオメトリックデータは、集約され、分析され、その結果、運転スタイルが乗客の快適さに適合したAIが得られる。BRAIQのソフトウェアは、人工知能の上に感情知性の層を効果的に追加している。

コンピュータはすでに、人間の感情知性(EQ)を拡張する、あるいはそれを置き換えることができることを実証している。

自動運転車にこちらの意思を相手に伝えるように教える新技術も開発されている。あなたの前の車や、後ろにいる車に先に行けと手を振ったり、ハイウェイで他の車に追い越しの意思を伝えるためにライトを点滅したりする代わりに、Drive.aiは、自動運転車が他の車輌に対して、ライト、音、そして動きを使って意図を伝えることのできるディープラーニングAIを作成した。

新しいテクノロジーは、ディープラーニングプログラミングを使用して、センサを介し車の周りで何が起こっているのかを評価し、状況に適切に対応する。歩行者や他の運転手と効果的に対話するために、車は動きや音を使って次の行動を示すことを学ぶことができる。たとえば、誰かを先に通すようにライトを点滅させたり、これから前に動き始めることを知らせるために、前後に軽く動いたりする。

顧客サービス

Cogitoはコールセンターの担当者と顧客との間の会話のパターンとダイナミクスを分析し、対応のプロたちに顧客に対するよりよい対応と会話を行わせるためのリアルタイムガイダンスを提供する。

担当者は、顧客の話し方によって検出された感情に応じて、より多くの共感、信頼、プロフェッショナリズムおよび効率性で話すようにガイドされ、一方顧客の不満や購入意向の初期の兆候の検出はサービスの改善や取引の成功を助ける。リアルタイムのダッシュボードを使用すれば、上司はライブコールをモニタし、積極的に介入することができる。上司は顧客が良くない会話経験を受けている際には、自動的に警告を受け取る。

Cogitoの分析機能は、会話毎に、担当者の会話行動や顧客の経験を客観的に把握し、顧客体験のスコアを、実践的なベストプラクティスや将来の訓練の傾向を特定することに活かすのに役立つ。

法執行機関

世界中の法執行機関や政府機関がいまだにポリグラフ「嘘発見器」を使っている。 しかし、多くの専門家は、このテクノロジーの継続的な使用を疑問視していて、ポリグラフマシンは不正確で、だますことができると主張している。

Nuralogixは、人間の目では認知できない感情的な反応を読み取る技術を開発した。経皮光イメージングと高度な機械学習アルゴリズムを組み合わせて、顔の血流情報を評価し、隠れた人間の感情を明らかにする。法執行機関において職員が直接質問をし、物理的に制御できない要素、すなわち顔の血流に基づいて回答者の真の感情を評価することができる。

MITの研究者は同じように血管を使うEQ-Radioを発表した。開発者によれば、EQ-Radioは、その瞬間のユーザーの気持ちを87%の精度で評価できるデバイスである。レポートによれば、そのデバイスは、人の身体に無線信号を反射させ、アルゴリズムを用いて個々の心拍や呼吸パターン、そして脳の覚醒のレベルを文書化する。現時点ではこの技術は、被験者が嬉しいのか、悲しいのか、あるいは怒っているのかを評価するためにのみ使用されているが、技術が発展するにつれて、ポリグラフテストと同様に使用するように訓練することができるだろう。

将来的に感情を検出できるマシンによってモニタされると考えるのは気味が悪いかも知れないが、感情知性を備えたコンピューティングシステムはすでに人間の能力を上回っている。サイエンスフィクションの世界でうろうろしているのかと思っていたのに、それらはすぐに私たちの家庭、自動車、そしてオフィスで実現化される可能性があるのだ。

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(翻訳:Sako)