Snapchatからほかのアプリにストーリーや広告を展開できるようになる

Snapchatは成長がみられなくなっていたことから生じていた収益の問題を解決する答えを見つけた。

Snapchat Ad KitとSnapchat Audience Networkを導入して、ほかのアプリに広告を表示できるようにする。Snapchatの写真やストーリーをコピーしてほかのアプリに表示するのではなく、共有マッチングサービスのTinderやグループビデオチャットのHousepartyなどのアプリの中でユーザーがStories Kitを使ってSnapchatのカメラで作ったストーリーを共有しホストできるようになる。

Snapchat Ad KitとSnapchat Audience Networkはともに今年の後半に導入される予定で、マネタイズとエンゲージメントを検討したい開発者は利用を申請することができる。

Snapchatはロサンゼルスで開催した初のプレスイベント、Snap Partner Summitで、このSnap Kitの強化を発表した。このイベントでは同時に新しいARユーティリティプラットフォームのScanと、マルチプレイヤーゲームのプラットフォームも発表された。200以上のアプリがすでにプライバシーに配慮したSnap Kitを統合して、ほかのアプリにSnapchatでログインしたり、Bitmojiを利用したり、ストーリーのコンテンツを見たり、ステッカーをSnapchatに共有したりすることができるようになっている。

今年の後半からは、開発者はAd Kitを使うことでSnap Kitで稼ぐことができるようになる。開発者がSnapchatのSDKを統合すると、Snapの広告主はSnapchatのユーザーと、Snapchatを使っていないほかのアプリのユーザーの両方にリーチする広告を出すことができる。

Snapchatは広告収入を開発者と分配することになるが、開発者の関心をうかがっている段階であるという理由でどのように分配するかについてはコメントを避けた。この動きはFacebookのPlaybookに通じるもので、基本的にはFacebookのAudience Networkの機能と名前を模倣している。

Snapchatが非ユーザーにどうリーチし、広告のビューを追跡するのか、またユーザーのプライバシーを保護しつつ必要な分析を他社にどう提供するかについては、まだ疑問が多い。しかしSnapchat独自の縦型ビデオの広告ユニットをほかのところで再利用できるようにすれば、広告主にとってはスケールの価値があるということになるかもしれない。

スケールできないことが、少なからず広告主がSnapchatを敬遠する理由になっていた。SnapのCEO、Evan Spiegel氏は「米国では、Snapchatは13〜34歳の75%、13〜24歳では90%にリーチしている。米国、英国、フランス、カナダ、オーストラリアの13〜24歳では、FacebookやインスタグラムよりSnapchatのほうが多くリーチしている」と語っている。

こうしたユーザーにSnapchatの外でもエンゲージするために、Story KitでApp Storiesの機能を追加する。Snapchatのユーザーは、写真やビデオを作成した後で、統合されたアプリに共有するかどうかを選べるようになる。こうして作られたストーリーは、ほかのアプリで設定された場所に表示される。

Tinderでマッチする可能性のある人を探しているときに、人々の写真とともにSnapが挿入されることになるだろう。友だちがグループチャットのソーシャルネットワークのHousepartyにいないときに、その友だちが何をしているかを見られるかもしれない。AdventureAideで探検家のおすすめビデオを見ることもできる。

現時点でSnapchatはほかのアプリでストーリーとストーリーの間に広告を入れることは検討していないが、常にその可能性はある。インスタグラムとFacebookがStories Kitを真似て、同じようなものをほかのアプリにいつ展開するのを注視していく必要があるだろう。

Snapは、ほかにも新しい統合やビッグネームとのパートナーシップを発表している。Bitmoji Kitでパーソナライズしたアバターを携帯電話やFitbitのスマートウォッチ、個人間送金サービスのVenmoの取引で使えるようになる。Netflixのコンテンツのプレビュー画像(予告編ではなく)をSnapchat Storyに共有して表示できるようになる。Webに新たに登場する共有ボタンで、ワシントンポストなどの記事を自分のストーリーに共有することもできる。

Snapchatのエクスペリエンスをほかのアプリに広げていくことで、ほかのアプリはSnapchatをコピーする必要がなくなる。ほかのアプリはオリジナルを取り入れ、開発の手間も大幅に削減できる。

そしてSnapchatのアカウントがWebでさらに価値を持つプラットフォームとなる。こうした統合によってSnapchatが大きく成長するわけではないかもしれないが、既存のユーザーの満足度を維持しマネタイズすることにはつながるだろう。

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(翻訳:Kaori Koyama)

Snapchat復活策をしたためたCEOのリークメモからハイライト9点をピックアップ

ティーンエイジャーではなく大人。Storiesではなくメッセージ。米国ではなく発展途上国。SnapchatのCEO、Evan Spiegelによると、これがSnapchatがカムバックするためのキーポイントとなる。9月にCheddarのAlex Heath記者が入手した6000字に及ぶ内部向けメモで、Spiegelは哲学、戦略、悔恨でもって社員のモラルを復活させようとしている。というのも、Snapの株価がこれまでにない8ドル前後に下がっているーこれはIPO時の半分、ピーク時の3分の1だ。

「再設計での我々の最大の過ちは、コミュニケーションをとるのに最も早い手段であるという、我々のコアプロダクト価値を傷つけたことだ」と、Spiegelは“Project Cheetah”に関するメモで終始強調している。それはSnapchatをスペシャルなものにしたチャットのことで、フィードとStoriesを組み合わせたことでそれを葬ってしまい、素早くロードできるAndroidアプリをつくるのに失敗したことで惨憺たる結果となってしまった。

Spiegelは、せっかちな戦略をとってしまったことを認め、前進するために力を結集する道を示すなど、ここでは大人な態度をとっている。ソーシャルアプリの業界を支配するSnapchatの話は一切ない。彼はどうやらInstagramによる競争を意識した猛攻撃で水をあけられていることを理解しているようだ。そのかわりSnapchatは、収益性が乏しくてもユーザーの自己表現を手伝うことができれば満足なのだ。

Snapchatは大人をひきつけるにはおもちゃのように認識されすぎているのかもしれない。そしてFacebookの帝国からグローバルマーケットを取り戻すには手遅れかもしれない。また、本当に大きく成長するには、そこそこの出来である他の手段にあまりにもコピーされやすいものなのかもしれない。しかしもしSnapがSpiegelのゲームプランを実践できたら、画像を使ってコミュニケーションをとりたいという、規模は小さくても誠実なユーザーを通じて持続可能なマーケットを切り開くことができるかもしれない。

下記に、Spiegelのメモから最も興味深い部分の抜粋と、なぜそれらが重要なのかを挙げる。

1. 再設計を急ぎすぎたことへの謝罪

「当然、チーターのように再設計を急いだことにはマイナスの点もあった。1つの問題を解決することが他の問題を生む…。残念ながら我々は、我々のコミュニティーのごく一部で再設計を繰り返しテストするということに十分な時間を割かなかった。結果として、コミュニティーの不満を招き、ローンチ後も反復を続けなければならなかった」。

Spiegelは、Facebookがしているようにユーザーデータに頼るというより、いつも自分の本能で突き進む。コアなユーザーから遠く離れ、彼はティーンエイジャーが何が好きなのかを読み間違えてしまった。アピール性たっぷりの“メディアとソーシャルを分ける”という流行語は、メッセージとStoriesを合併させて使いづらいものにしてしまったカオスをも意味する。SpiegelはA/Bテストの重要性についての貴重なレッスンを積んだようだ。

2. チャットが王様

「再設計したアルゴリズム的なフレンドフィードは、話すのに最適な人を探すのを難しくしてしまった。そしてあまりにも急いで導入したことでフレンドフィードが素早く作動するよう最適化するための時間がなかった。我々はプロダクトをスローダウンさせ、プロダクトのコアな価値を損ねた…遺憾なことだが、当時我々は再設計に伴う最大の問題はインフルエンサーの不満ではなく、コミュニケーションをとるのが難しくなったと感じていたコミュニティーのメンバーの不満だということを理解していなかった。何かを発明し、新たなプロダクトを世に送り出すのに興奮していたが、素早くコミュニケーションがはかれるというSnapchatをSnapchatたらしめているコアなものをなくしてしまった」

Snapが初めて変更を明らかにしたとき、我々は“Snapにハマっているティーンエイジャーが、“再設計はわかりにくく、友達からの全てのコンテンツをごちゃまぜにする”と苦情を言うかもしれない、と予想した。その変更では、友達にメッセージを送るのに友達を探し出さなければならないというかなり面倒なものになり、前四半期でユーザーを300万人失ってSnapの成長率は落ち込んだ。Snapはメッセージを早く送受信できるようエンジニアリングを最適化するだろうし、開発途上のマーケットにおいてはチャットを早くできるようにするために付属品を犠牲にさえするかもしれない。

3. SnapchatはBest FriendでFacebookに勝たなければならない

「特定の週であなたのトップフレンドが、Snap送信ボリュームへ25%貢献する。フレンド18人を確保するまでには、フレンドが増すごとにトータルのSnap送信ボリュームに1%未満貢献する。ゆえに、人々が最も気になるフレンドを探すのを手伝う新たな手法を考える必要がある」。

Facebookの最大の構造的な弱点は、家族、同僚、上司、そして遠い知り合いまで含むという、かなり幅広いフレンドグラフだ。フィードアプリではそれは構わないのかもしれないが、親しい友達だけを気にかけるStoriesやメッセージではそうはいかない。Facebookはこの10年ほど、フレンドリストなどでユーザーが親友とコミュニケーションをとるのにベストな方策を探そうとしてきたが、失敗に終わっている。もしアプリ上で親友を引っ張ってきたり、“流行り”をスナップし続けるよりもっといい理由で友達と連絡をとり続ける特別な機能を開発していたら、Facebookに打撃を与えていたかもしれない。

4. DiscoverはFacebook WatchやIGTVに匹敵する

「我々のショーはより多くの視聴者をひきつけている。18以上のショーで月間視聴者は1000万ユニーク視聴者に達している。ショーの12作品はオリジナルの制作だ。プラットフォーム全体としては、ショーの閲覧時間はかなりの成長を見せていて、年初から3倍になっている。Storiesの視聴者は前年度比で20%増えた。そして、Discoverコンテンツに関わる人の数を引き続き成長させる絶好の機会があると確信している…我々はまたSnapchat外で人気のあるコンテンツをDiscoverに持ってこれるよう、それが何なのかを特定しようと取り組んでいる」。

意図してモバイルのためにつくられたプレミアムなビデオコンテンツで人気を集めるDiscoverにより、Snapchatは他社と最大の差別化を図っている。しかしながら、本当に必要なのは、デジタルマガジンの体験を新たに認識させるような、多くの視聴者を呼び込む必見のショーだ。

5. しかしDiscoverはメチャクチャになっている

「我々のコンテンツチームは、新たなレイアウトやコンテンツタイプを一生懸命実験している」。

SnapchatのDiscoverはクリックを呼び込むたくさんの餌であふれている。ニュース局、ソーシャルメディアインフルエンサー、オリジナルのビデオショー、ユーザーコンテンツが集められたコレクションなど、疲労に近い圧倒を感じるようなデザインで注意をひこうとバトルが繰り広げられている。ありがたいことにSnapchatは、より少ないイメージとヘッドラインでDiscoverをより快適に、そしてくつろぎながらコンテンツを消費できる場所でにできるかもしれない、ということを認識しているようだ。

6. 収入を得られようユーザー年齢層を上げる

「米国や英国、フランスなどコアマーケットで増す成長のほとんどは、より高い平均レベニューを生み出す年配のユーザーからくるものでなければならない…年配世代の増加には我々のアプリの成熟を必要とするだろう。今日の多くの年配ユーザーはSnapchatをつまらないもの、時間の無駄ととらえている。というのも、そうした人々はSnapchatは早くコミュニケーションをとるためのものというより、ソーシャルメディアと考えているからだ。我々のプロダクトのデザインランゲージを変え、Snapchatのマーケティングやコミュニケーションを改良することは、ユーザーが我々の価値を理解するのに役立つ…コアマーケットにおける我々のコミュニティの年齢層を上げるということはまた、メディアや広告主、ウォール・ストリートにSnapchatを理解してもらうことにもつながる」。

Snapchatはもはやこれ以上、クールな子どもではいられない。購買力とライフステージの低下は、ブランドには魅力的に映らない。問題は、Snapchatが若いユーザーの年長の兄姉や大人を呼び込むことで若いユーザーを切るリスクを負うことだ。Facebookのように、もしユーザーがSnapchatは両親のための場所だ、と感じるようになったら、若いユーザーはクールでいるために大人を困惑させる次なるものを探そうとSnapchatを離れるだろう。

7. マーケット開拓を優先

「我々は、新たなマーケットでコアプロダクトの価値を広めるためにすでに多くのプロジェクトを進めている。Mushroomにより、より安価なデバイスでもSnapchatを使えるようになる。我々の新たなゲートウェイアーキテクチャArroyoは、メッセージやその他のサービスもスピードアップするだろう…我々の価値ある追加の機能がプロダクトのコア価値からさっ引かれるような異なるマーケットのために、プロダクトの変更を余儀なくされるかもしれない」。

情報筋によると、Snapchatの将来は‘Mushroom’と命名されたプロジェクト、Androidアプリのエンジニアリング面での見直しにかかっている。ビデオのロードに時間がかかることやバグで、Snapchatは特に通信状況がよくなかったり古いAndroid携帯が使われていたりしている発展途上国では使い物にならない。Snapchatは米国とその他の先進国に集中し、この間、Instagram(毎日のユーザー数4億人)とWahtsApp(毎日のユーザー数4億5000万人)にStoriesのコピーを許し、これにより発展途上国での浸潤とSnapのデーリーユーザー1億8800万人の縮小につながっている。スムーズな展開を願って、SnapchatはすでにMushroomをテストしている。しかし、Snapchatを見捨て他のアプリに走るほどに不満を抱えたユーザーにもう一度試してみてと言うにはかなりのマーケティングをしなければならない。

8. 新鮮なアイデア、別個のアプリ

「我々はこのところ、何百万ものスナップのOur Storyへの移管と3D世界の一部の改造を伴うソフトウェアを構築中だ。そうして我々はそのモデルにAR体験を構築し、レンズを通して届けられる…もし我々のイノベーションが最も早いコミュニケーションであるコアプロダクトを傷つけるのであれば、我々は別のアプリや、我々のイノベーションを届ける他の手段を考えるべきだろう」。

SnapchatはARで大きな計画を温めている。それは、あらゆるところにアニメーションをくっつけたり、いくつかの大都市でARアートインストレーションを創造したりするだけではない。世界中でサイト固有のAR体験を構築したいのだ。この会社がこれまで構築した全てのものがSnapchat内のものだった一方で、このAR体験はメッセージサービスを泥沼にはまらせないよう、必要に応じて独立したアプリをという形態をとる。これはSnapchatにとって横道にそれる実験になるかもしれない。

9. 利益の自由

「我々のストレッチをかけた2019年の目標は、収入増、そして年間を通してのフリーキャッシュフローと利益を加速させるものとなる。利益があがれば、追加の資金調達のプレッシャーにさらされることなく、我々のビジネスを長期に運営できる自治性と自由度を高める」。

Snapchatはまだ赤字が続いていて、前四半期では3億5300万ドルの損失だった。Snapchatは延命のために株式の2.3%をサウジアラビアの王子に2億5000万ドルで売却することになった。そして昨年は、中国のゲーム大手Tencentから20億ドルを調達した。そうしたディールは、Snapchatのモラルや、支援者に恩恵をもたらしたりするデバロッパープラットフォームではなく、ゴールだけを優先する能力を脅かすことになる。ひとたび収益をあげるようになれば、Snapchatは目先のユーザー数の成長にどう対処するか悩まなくてもよくなり、その代わり力の保持や社会的インパクト、本来の目的であるクリエイティビティに集中することができる。

イメージクレジット: Steve Jennings / Stringer / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

Googleは昨年300億ドルでSnapchat買収を試みた――報道を受けてSnapの株価アップ

Googleがソーシャルメディアで失敗を繰り返してきたことはよく知られている。今回は同社がSnapchatの買収を試みていたことが報じられた。2016年にGoogleはSnapが最後の最後のベンチャー資金を調達する前(もちろん今年の株式上場以前だ)に同社と話し合いを行い、300億ドルという買収金額が示唆されたという。Business Insiderの Alex Heathのスクープによれば、この買収申し出はSnap社内では「公然の秘密」だったという。

しかし独立心が強いことで悪名高いSnapのCEO、Evan SpiegelはGoogleであろうと誰であろうと売却にまったく興味を示さなかったようだ。Snapは上場当初の5月に時価総額300億ドルとなったものの、その後株価は下落を続けて、現在は150億ドル程度に下がっている。

しかしGoogleがSnapに興味を抱いていたというニュースはSnapの株価を2.3%アップさせた。SnapchatクローンのInstagram Storiesの成功に加え、Snap関係者の株売却を禁じたロックアップ期間が 7月で満了し大口の売りが出る可能性が警戒されたことなどからSnapの株価はこのところ下落を続けていた。

Business Insiderの記事に対してGoogleはコメントを避けた。SnapはTechCrunchの取材に対して「噂は真実ではない」と答えた。GoogleのSnap買収の試みがごく予備的な段階であり、Snapのトップにまで達していなかったという可能性はある。

写真はSnapのCEO、Evan Spiegel(左)、Googleの会長、Eric Schmidt(右)

2016年の買収交渉が実を結ばなかった後でGoogleはグロース・ステージ投資組織、CapitalGから200億ドルの会社評価額でSnapに投資を行った。GoogleのEric SchmidtはSnapのSpiegelと以前から親しく、Snapのアドバイサーを務めていた。一方SnapはGoogleのクラウドツールを利用する他、Snapchatが向こう5年間に20億ドルをGoogle Cloudの使用料金として支払う契約を結んでいる。

2016年5月の段階ではSnapにはInstagram Storiesという強敵は現れていなかった。しかし昨年8月2日にStoriesがリリースされ、あっという間に普及し始め、これ以後Snapに対する市場の見方は完全に変化した。

GoogleがSnapを買収できれば、Google+、Buzz、Waveの失敗の後できわめて大きなメリットを得ただろう。Snapの膨大なユーザーの行動データを得て有効なソーシャルグラフを構築する役に立ったはずだ。またSnapも資金力豊富な親会社の下にあれば世界のソーシャルメディアの買収や巨額の投資を必要するARテクノロジーの開発にも有利だったはずだ。人工知能視覚やGoogle検索はSnapのビジネスを改善するために重要な役割を果たしただろう。

両者が力を合わせれば、ハードウェアではGoogle GlassとSnap Spectaclesを統合し、強力かつ魅力的なARデバイスを普及させることができたかもしれない。またGoogleの広告システムはSnapの収益化にとって有益だったはずだ。しかし逆に両者の全く異なる企業文化が破壊的な衝突を起こした可能性もある。

いずれにせよ買収が現実となることはなかった。結局Spiegelがつまづきの石だった。Spiegelと共同ファウンダーのBobby MurphyはSnapの議決権を完全にコントロールできるように会社を組織しており、他の株主の発言権は一切認めていない。つまり当時他の大株主がこぞって300億ドルを受け取ってGoogleグループに加わるべきだと望んでいたとしてもそれをSpiegelたちに強いる方法はなかった。Spiegelはそもそもマーク・ザッカーバーグの買収提案を蹴ったことで有名だ。

われわれがSnapの上場前に書いた記事のとおり、Snapに賭けることは良かれ悪しかれSpiegelに賭けることを意味する。Spiegelは外部の意見を聞かず、自らの第六感に従って行動することで知られている。この第六感は「消えるチャット」という驚くべきプロダクトを生み出した。また買収にも冴えをみせ、Snap BitmojiやAR顔フィルターを実現させている。しかしFacebookという巨人の攻勢にあってSnapが溺れそうな現在でもSpiegelは浮輪につかまることを拒んでいるようだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

SnapのIPO、評価額は約240億ドルに設定

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SnapはIPOの最終価格を決定し、1株当たり17ドル、時価総額約240億ドルに設定したとThe Wall Street Journalが報じた。

これを見ると、Snapのビジネスがいくつもの大きな問題を抱えているにも関わらず、ウォール街は大きな興味を抱いているようだ。ユーザー成長の鈍化や出費の増加、Google、Amazonへの依存度の高さなどは、今年初めて - かつ最近の記憶の中では最大 ― のテク系IPOへの需要を抑制するほどではなかったらしい。SnapはこのIPOで34億ドル近くを調達する目論見だ。

Snapは2月始めに上場を申請し、広告ビジネスが2015年の売上5900万ドルから2016年の4億ドルへと急成長したことを示した。しかし一方で同社は、1日当り1.5億人のアクティブユーザーがいるものの成長速度は鈍っており、経費は4.5億ドル近くに膨れ上がっていることを明かした。この数週間Snapの幹部とCEOのEvan Spiegelは、各地の投資家を訪れて同社の株を売り込み、懸念を払拭しようとしている。

いずれにせよSnapのIPOは少し変わっている。Snapが売り出すのは議決権のない株式であり、それはこの会社に賭けようという投資家が会社の方針に一切口を出せないことを意味している。基本的にこれは、会社がこのまま成長を続け、Spiegelらが立てた戦略によって経費問題は収束して会社の方針に影響を与えないことに賭けることになる。もちろん株価を高く維持することは社員の引き止めや採用のためにも重要だが、Snapの運命はいまもSpiegelがすべて握っている。

Snapは株価をこれまでに設定した範囲よりも高く設定しようとしてる。以前は1株当たり14~16ドル、オプションや株式転換を含め評価額195~225億ドルの範囲だった。もっともこれは十分予測されたことだ。この手の株価は投資家の関心を判断するために往々にして低めに設定されるからだ。ウォール街とSnapがこの間のどこかに落ち着けば、誰もが利益を得て取引き初日に値が下がるようなことにならないだろう。

Snapの正式なIPO株価は今日の取引き時間終了後に提出される申請書類でわかるが、最終的には上場手続きを始めた当初に公表した評価額に近い価格に落ち着くものと思われる。同社の株式は明日(米国時間3/2)の午前から取引きが開始されるので、そこでようやく今年のIT株に対する投資家の欲求が見えてくる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

SnapchatのカメラグラスSpectaclesはビデオを10秒撮影録画できるカメラ付きメガネ

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かなり前から噂されていたSnapchatのカメラグラス(camera glasses, カメラ付きメガネ)は、本当だった。その“Spectacles”と呼ばれるメガネは、同社の初めてのハードウェア製品で、価格は129ドル99セントだ、とWSJが報じている

サイズは一種類のみだが、色は黒、緑青色、珊瑚色の三色ある。

メガネのつるにあるボタンを押すと、撮影と録画を開始する。Snapchat的に、撮影録画時間は10秒だ。スマートフォンと同期するので、Snapchat上で共有できる。

おもしろいのは、カメラの視野角が115度であることだ。これはスマートフォンやふつうのカメラより広い。ビデオの撮影は循環状だ〔メモリが10秒ぶんしかない〕。ビデオをアプリに表示する方法は、まだよくわからないが、たぶん広い視野角のぶんをトリミングするのだろう。あるいは循環状に次々と表示されるのかもしれない。

発売は今秋だが、SnapchatのCEO Evan Siegalによると、最初は少量を発売、すぐに大きな売上になることは期待していない、ということだ。もしかして、Google Glass的な希少品になるのだろうか。

おっと、それから、Appleが社名から”computer”を消してから早くも10年になるが、今回Snapchatは社名から“chat”を消して、Snap Inc.という社名になる。このことも、前から言われていた。今や、アプリのSnapchatが同社の唯一の製品ではないからね。

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〔上の写真はこの記事より。カメラグラスの由来が書かれている。〕

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

SnapchatのEvan Spiegelはやはり本物のバカだった

【抄訳】

SnapchatのCEOで協同ファウンダのEvan Spiegelを知ってからしばらくになる。会って会話をしたことは6〜7回あるし、電話はもっと多い。Disrupt SFでは20分間、ステージで一緒だった。そして、どんだけ努力をしても、彼を好きになることは困難だった。今回、彼がスタンフォードの学生時代に送ったメールを読む機会があり、自分の本能的直感が正しかったことを知った。

彼は、おバカである。

リークされたメールはValleyWagにそのすべてがあるが、それらの要約としては、上のたった一行のパラグラフで十分だ。以下は、その典型的な例だ:


[ゆうべは6人以上の女の子がきみたちの***をしゃぶったんだろうな。ぼくのところには、誰も来なかったから。]〔訳注: 伏せ字にした部分は、原文では’dicks’。〕

Zuckerbergにも悪名高いIMのリークがあったが、Spiegelのも学生時代のメールで、女性虐待、高純度麻薬の吸引、未成年飲酒、酔っ払った女子会のメンバーたちに友だちを強*させる、デブの女の子をレーザー銃でからかう、などなどが書かれている。これらのメールは、内容だけでなくスペルや文法もひどくて、良い意味での若者らしさはカケラもない。

Spiegelは本誌に、リークに関する公式の声明文を寄越した:

大学の男子会時代の愚かなメールが公開されたことを、当然ながら恥ずかしく思い、困惑しています。言い訳はしません。当時あれを書いたことと、あれを書くほど自分が愚劣だったことを、お詫びします。今のぼく、そして今のぼくの女性観は、そのころとはまったく違います。

彼には、せいぜい困惑していただきたい。これらのメールにはいわゆる“男子会気質”の最悪の部分が表れており、それは今でも、シリコンバレーにおける女性疎外に貢献し続けている。

メールには、Speigelの父である高名な弁護士が、未成年飲酒に対して寛容であったらしいことも、書かれている。

全体的にこれらのメールはSnapchatとSpiegelの両方にとって悪いニュースだが、そんなことは当たり前だ。個人的会話の内容を明かさないことは、彼と前に約束した。でも、人間としてのEvanを協同ファウンダとしてのEvanから分離してみれば、そこにいるのは、霊感を得てアプリを作った愛すべき少年ではない。そこにいるのは、自己の不安を恥知らずなうぬぼれで覆い隠そうとしている、自分に対する自信と確信を完全に欠いた、ひょろ長の青年だ。

私は一応プレスだから、彼も面と向かって差別的なことは言わない。でも彼の話のトーンは終始、Snapchatのようなクールなものを作った自分は優秀である、という自慢と自負に満ち満ちている。ほかの物や人に対しては、否定の言葉しかない。これらのメールは、この少年王がまだ未熟だったころの発言だが、それらと同じトーンに、もっとむかつくような人物像を組み合わせると、今のSpiegelができあがる。

しかし、考えてみれば、これらのメールがSnapchatのメッセージだったら、とっくに消えているのだ。Snapchatの理想のユーザ、それはEvan自身だろう。

【後略】
〔以下えんえんと、筆者のSpiegelに対するネガティブな感想が続く。〕

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


Snapchat、追放されたファウンダーが秘密の訴訟情報を漏洩していると差止め申し立て

「すぐに消えるメッセージ」のアイディアを最初に考えついたと主張する男、Reggie Brownに対してSnapchatは情報漏洩を差し止める仮処分を申し立てた。

今日Snapchatが裁判所に提出した申立書によると、「共同ファウンダーだったが追放された」とされるBrownは秘密の裁判文書を不法にマスコミに漏洩しているとされる。

この申立でSnapchatの訴訟代理人、Quinn Emanuel法律事務所は「Brownは本件訴訟に関連するほとんどすべての文書の公開を禁じる裁判所の保全命令に従おうとしない」と書いている。

Brownは訴訟関連情報を公開したことを認めている(Business Insiderこの宣誓供述ビデオを渡すなど)。「自分には訴訟関連文書を公開する権利があり、今後も公開していくつつもりだ」とBrownが語ったと申立書は主張している。

裁判所が仮処分の申立を認めることになれば、 Brownと弁護人は罰金、法廷侮辱罪その他の罰を受ける可能性がある。また本訴全体を失う危険性さえある。

申立書には「秘密情報が公開されればSnapchatは回復不能の損害を受ける」とある。訴訟文書には将来のビジネスプランや個人情報、数千ページに及ぶ財務情報が含まれているらしい。また申立書にはReggie BrownがGQ誌の独占インタビューを受けることを予定しているとも記載されている。

ちなみにSnapchatの代理人は当初Cooley LLP法律事務所だったが、4月にQuinn Emanuel法律事務所に変えられた。 BrownはQuinn Emanuelはごく短い期間だが、自分の代理をしたことがあるとして忌避を申立てた。数カ月後、裁判所は申立を退けた

ところが最近になって、SnapchatとともにBrownに訴えられている投資家は法律事務所をQuinn EmanuelからDurie Tangri, LLPに変更した。われわれはQuinn EmanuelとDurie Tangriの双方にこの変更の理由を質問中だ。

〔日本版:仮処分の申立書の全文は原文参照〕

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


Snapchatでの写真共有件数はFacebookを上回っている(Facebook+Instagramと同程度)

Snapchatは、今や日々4億もの「snap」をシェアするサービスとなっている。CEOのEvan SpiegelがTechCrunchからの取材に対して明かしたものだ。

9月には、やはりEvan SpiegelがDisruptの壇上で、自動消滅写真共有サービスにおける写真共有件数が1日あたり3億5000万となり、6月の2億から成長を続けているとアナウンスしていた。サービスの成長ぶりには驚くばかりだ。

ちなみに、1日あたり4億枚という数字は、Instagramでの共有件数とFacebookでの写真共有件数をあわせたものに匹敵しているのだ。

Facebookには、10億人の利用者から、1日あたり3億5000万枚の写真がアップロードされるのだそうだ。そして1億5000万の利用者を抱えるInstagramでは、日々5000万枚の写真が共有されている。

但し、Snapchatの数字では「ブロードキャスト」分を複数カウントしているようである点には注意が必要だ。「ブロードキャスト」とは、1枚の写真を複数の受信者に対して送る機能だ。1枚の写真が複数回共有されているということで、複数分にカウントしているようだ。

プライベートに共有することができて、かつ時間がたてば消えてしまうというのは、確かに魅力的な機能であるようだ。FacebookやInstagramでは、基本的に投稿は公のものであり、いつまでもデータが残ることが基本的前提となっている。両者の特徴を見比べたとき、Snapchat方式を好む人が大勢いるのは、確かに考えられることではある。

それでもSnapchatの利用頻度拡大の速度はなかなかのものであることは間違いなかろう。Facebookから30億ドル程度の買収提案があったとか、あるいはかなり大規模な資金調達を近々行うらしいというにも確からしさを感じる。

原文へ

(翻訳:Maeda, H