Express Logicを買収してAzureのIoT対応に本腰を入れるマイクロソフト

Microsoft(マイクロソフト)は決して買収を躊躇するような会社ではないが、米国時間の4月18日、サンディエゴのExpress Logicを買収することを発表した。Express Logicは、世界中で増殖を続けるIoTデバイスを制御するRTOS(リアルタイム・オペレーティングシステム)を開発した会社だ。

買収価格は明らかにされていない。

Express Logicは、絵に描いた餅のような大きな目標を掲げる会社ではない。23年ほど前からあり、(同社の言葉を借りれば)「組み込み用とIoT開発者向けの産業グレードのRTOSおよびミドルウェアのソフトウェアソリューション」を開発、提供している。同社のシステムによって稼働しているデバイスは約62億もあると豪語している。この数字はMicrosoftのAzure IoT担当取締役、Sam George氏の口から出たものではないが、彼も今回の買収を発表したブログ記事に書いているように、この人気には理由がある。

「このように広く普及しているのは、リソースに制約のある環境をサポートする技術に対する需要があるからです。安全性とセキュリティが要求される領域だからなおさらです」と、George氏は述べている。

Constellation Researchのアナリスト、Holger Mueller氏によれば、この大きな市場シェアは、Microsoftのプラットフォームの信頼性をただちに高めることになるという。「これはMicrosoftにとって非常に重要な買収です。まず戦略面では、MicrosoftがIoTへの大きな投資に真剣に取り組んでいることを示すことになります。また、製品の開発の面でも、広く使われているRTOSのシステムコードを手中に収めるという、重要なステップとなります」と、Mueller氏はTechCrunchに語った 。

Express Logicのアプローチの長所は、低電力および低リソース環境で動作し、その範囲の製品に対して折り紙付きのソリューションを提供できること。「かなり幅広いカテゴリの製品を開発しているメーカーが、Express Logicのソリューションによって得られるサイズ、安全性、セキュリティの利点を活用して、製品化までの時間を短縮しています。たとえば、電球や温度計などに使われる小型のセンサーから、エアコン、医療機器、ネットワーク機器などまでがカバーできるのです」と、George氏は続けた。

Express LogicのCEO、William E. Lamie氏は、今回の買収を発表した顧客向けのブログ記事で、Microsoftファミリーの一員となることで、同社はさらに成長できるという楽観的な見解を表明している。「即時有効で、我が社のThreadX RTOSと、それをサポートするソフトウェア技術、そして優秀なエンジニアがMicrosoftに加わりました。これによって、Microsoftがすでに持っている第1級のセキュリティ技術が、マイクロコントローラーの分野でも活かされるようになります」と、Lamie氏は書いている。

Microsoftは、十分な実績のある製品を持つ定評のある会社を手に入れたことで、AzureのIoTビジネスを拡大することができる。今回の買収は、昨年4月に発表したIoTへの50億ドル(約5600億円)の投資の一環であり、そこにはAzure Sphere、Azure Digital Twins、Azure IoT Edge、Azure Maps、そしてAzure IoT CentralといったAzureファミリーも含まれている。

「今回の買収により、何十億という新たなエンドポイントに対するアクセスの扉を開くことができます。それはAzureにシームレスに接続できるデバイスの数を増やし、新しいインテリジェントな能力を引き出すことができます。Express LogicのThreadX RTOSは、MicrosoftのIoTデバイスに対するサポートの拡大に貢献します。そして、われわれのマイクロコントローラー分野での第1級のセキュリティ技術、Azure Sphereを補完するものでもあるのです」と、George氏は締めくくった。

画像クレジット:metamorworks/Getty Images

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(翻訳:Fumihiko Shibata)