Facebookが脱Googleへ、ハードウェアのソーシャル化に向けて新OSを開発中

Facebookのハードウェア製品は、現在のところAndroid OSで作動している。しかしFacebookはOculusやARヘッドセットなどをGoogleの支配下から脱出させようと決心している。

FacebookはMicrosoft(マイクロソフト)のWindows NTの共同開発者として著名なMark Lucovsky(マーク・ルコフスキー)氏をオペレーティングシステム担当ジェネラル・マネージャーに任命した。Informationによれば、Facebookはまったく新しいソーシャル・オペレーティング・システムをゼロから開発しているという。もちろんFacebookのスマートフォンアプリは将来もAndroidデバイス向けに提供される。

Facebookのハードウェア担当バイスプレジデントのボズことAndrew Bosworth(アンドリュー・ボスワース)氏 は「次世代のコンピューティング環境に我々の場所を確保したい。市場やライバルに100%任せておくわけにはいかない。Facebook自身でそれをやる必要がある」と述べている。

Eye OS

独自OSを持てばFacebookはハードウェアにソーシャルな対話やプライバシーをさらに深く焼き込むことができるだろう。GoogleとFacebookが衝突した場合でも独自ガジェットの開発が挫折する危険を避けられる。FacebookはTechCrunchに対し「現在の目的はARヘッドセットを駆動(するOSの開発)だ」と述べた。ARデバイスの作動させるためにFacebookは独自開発だけでなく、他社との提携を含めてあらゆる選択肢を検討している。

Facebookが独自OSを持つこのメリットはほかにもある。Facebookへの囲い込みだ。FacebookはInstagramブランドのARヘッドセットを開発しているが、これが独自OSで作動するようになれば、買収した企業のエンジニアがスピンアウトすることを防ぐにも効果的だ。

Facebook Portal Lineup

FacebookはこれまでもVR/AR分野で独自のOSを所有していないことで痛い目にあってきた。 最大のライバルであるApple(アップル)やGoogleの好意に頼るしかないのはFacebookにとって極めて不利だ。プライバシーやデータ収集に関してアップルのCEOであるTim Cook(ティム・クック)氏は繰り返しFacebookとマーク・ザッカーバーグ氏を批判してきた。 Voxの記事によれば、Facebookは2013年ごろモバイルOSの研究を進めていたという。これはOxygenと呼ばれる極秘プロジェクトで、Google Playストアを経由せずにFacebookアプリをAndroidデバイスに配布する方法を探るものだった。

しかしこうした試みは失敗に終わった。中でも目立ったのはFacebookがHTCと共同で開発したAndroidをフォークさせたOSの場合で、スマートフォンのHTC Firstもスマートホームを目指したFacebook Homeもきわめて評判が悪く、すぐに棚上げとなった。

テクノロジーの未来、AR/VRへの投資

こうした失敗からAR/VR開発の困難さを学んだFacebookは、独自デバイスの開発に本腰を入れることになった。本社の北24kmのバーリンゲームに、巨大なハードウェア開発キャンパスを建設したのだ。3500平方mにもおよぶこの施設は4000人の社員を収容できる。

TechCrunchの取材に対してFacebookは「ハードウェア開発チームは2020年下半期にこちらに移転する」と確認した。バーリンゲームにはラボ、プロタイプ製作施設、テストエリアなどが用意されている。現在FacebookのAR/VRチームはカリフォルニア州、ワシントン州、ニューヨーク州など全米各地に散在している。

PortalとOculusデバイスのセールスもさして爆発的でないこともあり、これまでFacebookのハードウェアに対する取り組みがどの程度真剣なものか疑問視する声もあった。Facebookはこの点についてコメントを避けている。

しかし来年は状況が大きく変わりそうだ。AR/VRデバイスのフラグシップがいよいよマーケットに登場する。私は一人称シューティングゲームの「Medal of Honor」(メダル オブ オナー) のOculus Quest版(2020年リリース予定)のプレビューを体験した。プレイしたのは1時間ほどだったが、第二次大戦の欧州戦線を舞台にしたこのゲームは私が体験した中で、単なるテクノロジーのデモに終わらず、何週間も楽しめそうな最初のVRゲームとなっていた。Medal of Honorは多くのゲーマーをOculus Questの購入に踏み切らせるのキラーアプリとなるかもしれない。

ソーシャルハードウェア

Facebookはエンタープライズ向けハードウェア体験の向上にも力を入れてきた。ビジネス向けFacebookのWorkplaceは今年始めに200万人のユーザーが登録しており、10月にはビデオコールをPortalに対応させた。発言者に自動的にズームするスマートカメラを利用すればとビジネスミーティングをリモートで開催するのも簡単になる。Informationの記事によれば、FacebookはVRを利用したビデオカンファレンスのプロトタイプを開発中で、ボスワース氏が自らテストしているという。

私の取材に対してFacebookはボスワース氏は、部内のイベントに2回VRで登場したことを認めた。またボスワース氏のチームのリーダー100人ほどがFacebookが開発したVRのQ&Aソフトを利用している。FacebookではVRを誰もが簡単に使えて信頼できるビジネスツールに仕上げ、VRでミーティングが可能になるよう努力している。

またハードウェア開発はFacebookのコアである広告事業にもフィードバックされている。OculusPortalのユーザー行動のデータを広告ターゲティングに利用する試みも始まっている。VRゲームでどんなアイテムを好んだか、バーチャル観光アプリでお気に入りのバケーションスポットはどこだったかなど、収益に結びつく広告の可能性は多数考えられる。

Facebookに取材したところでは、Portalディスプレイもログインしたユーザーの行動データを収集しており、通話回数や時刻、利用した機能などが広告ターゲティングに活用されている。例えば、ユーザーがビデオ通話をたびたび利用しているならそれに関連した広告が表示されることになるかもしれない。Oculusについても同様だ。

Facebookはユーザーが行動に移す前に頭の中で考えていることも知ろうとしている。脳とコンピュータを直結するインターフェイスサもかなり小型化してきた。これはセンサーで微弱な脳波を検知し、解析して言葉として認識できるようにしようというもので、当初冷蔵庫くらいのサイズがあったのが現在はノートパソコン程度になっている。もっともスマートフォンに導入できるのはまだだいぶ先だろう。

【略】

Facebookでは1分間100語程度のペースで「頭脳入力」ができるようにすることを目指しているという。

Oculusヘッドセット、スマートスクリーンのPortal脳直結入力システムなどの販売はFacebookが毎年広告から上げていている何十億ドルもの収入をもたらさないかもしれない。しかしこうしたハードウェアは明日のコンピューティング環境からFacebookが締め出されるリスクを大きく減らすものだ。VRのように完全に没入的であろうと、チャットに特化した便利なディスプレイであろうと、あらゆる場所に入り込める超小型センサーだろうと、Facebookはあらゆるデバイスをソーシャル化しようと考えている。どんなガジェットであれ、友達と一緒ならもっと楽しめるというのがFacebookの信念だ。 Facebookはテクノロジーデバイスが人間を孤立させるのを防ぎながら、当面少しずつでも利益を上げていく方針のようだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ハッキングコンテストにてFacebook Portalがストレステストの対象に

昨年Facebook(フェイスブック)はスマートディスプレイを発表したが、ハッカーたちは毎年恒例のPwn2Ownハッキングコンテストにて、そのFacebook Portalをストレステストできる。

Pwn2Ownは世界最大級のハッキングコンテストで、セキュリティ研究者が家電製品や自動車を含むさまざまな製品の脆弱性を発見し、実証するために集まる。

企業が自社製品をハッカーにテストさせるのは珍しいことではない。Tesla(テスラ)は今年、新型セダン 「Model 3」 をコンテストに出展した。その後、2人の研究者が、車のインフォテインメントシステムのウェブブラウザーに深刻なメモリのランダムバグがあることを発見し、37万5000ドル(約4000万円)を獲得した。

Facebook Portalに、リモートでコードを送信して実行できたハッカーは最大6万ドル(約640万円)を、非侵襲的な物理的攻撃や権限変更に関するバグの場合は4万ドル(約420万円)をそれぞれ得ることができる。

このコンテストを主催しているTrend Micro(トレンドマイクロ)のZero Day Initiativeは、参加する研究者が利用できるホームオートメーション機器の範囲を拡大する取り組みの一環として、Facebook Portalを出展した。Pwn2Ownによると、研究者はAmazon(アマゾン)のEcho Show 5、Google(グーグル)のNest Hub Max、Amazon Cloud Cam、Nest Cam IQ Indoorをハックする機会も得られるという。

Facebookはまた、ハッカーがVRヘッドセットのOculus Questの脆弱性も発見できるようにすると伝えている。Pwn2Own Tokyoは11月6〜7日に開催される予定で、75万ドル以上(約8000万円)の現金と賞品が提供されると予測されている。

[原文へ]

(翻訳:塚本直樹 Twitter

2018年最高・最悪ガジェット記事が1位(2018年12月ランキング)

2018年にアクセス数の多かった記事を月別に紹介していく年末企画。12月30日までのアクセスは「2018年の最高&最悪のガジェットまとめ」が1位だった。

この記事で最高のガジェットとして登場したのは、スマートスクリーンの「Google Home Hub」、スクリーンがビルトインされた349ドルのジンバル「DJI Osmo Pocket」、そしてスタンドアロンのVRヘッドセット「Oculus Go」など。一方、最悪として紹介したのは、スマートフォンとして復活した「Palm」、1293ドルのスマートフォン「Red Hydrogen One」、スマートスクリーンの「Facebook Portal」など。最悪ガジェットに選ばれた製品は、発展途上で今後進化する可能性があるものの、現時点では期待値を大幅に下回ったことで評価が低くなってしまった。

12月20日公開ながら、ホンダジェットエリート(HondaJet Elite)の記事が3位にランクイン。実はTechCrunchは、同機の国内初の個人オーナーとなった千葉功太郎氏がジェネラルパートナーを務めるDrone Fundに招待されるかたちで発表会に参加した。「千葉さん、どこにいるのかな?」と会場を探していたのだが、まさかファーストデリバリーの相手が千葉氏だったとは。

4位にランクインした記事にも注目だ。「タクベル」からサービス名称を変えた「MOV」はタクシー配車アプリとしては後発だが、企業とタイアップして地域限定ながら高速料金や迎車料金を含むタクシー代を無料にするというゼロ円タクシーを開発。話題性は抜群だった。このタクシーが走行するだけで商品の宣伝となり、実際に乗車した人は車内でその商品を激推しされる。ゼロ円タクシーのファーストスポンサーとなった日清食品にとっても費用対効果の高い施策になったはずだ。

1位 2018年の最高&最悪のガジェットまとめ
2位 Google Pixel SlateがOSの課題を浮き彫りにする
3位 ホンダジェットの国内第一顧客は、千葉功太郎氏、堀江貴文氏、山岸広太郎氏と発表
4位 ゼロ円タクシーも登場!DeNAのタクシー配車サービス「MOV」始動
5位 NORADのサンタクロース追跡サービスは政府が閉鎖しても継続する