甲虫の幼虫を高濃度タンパク源として収穫する体験で科学を学習するHive Explorer

Livin Farmsのオフィスの中は、体の向きを変えるのも難しい。でも香港の都心ではこれが普通で、スペースは常日変らず貴重だ。そこは、深圳のハードウェアアクセラレーターHAXが支えるこのスタートアップの、ささやかな拠点だ。デスクをいくつか置くと、もう残りのスペースはない。このスタートアップの最新のプロダクトHiveがドアの横にある。それは一見何の特徴もないトレイが、いくつか重なっているだけのものだ。

でも、ぼくがここに来たのはHive Explorerを見るためだ。その小さなトレイは、部屋の中央に置かれている。上部は開(あ)いている。ドアを開けて入ったときから、その小さな明るい色のプラスチック製品が目を引く。その中身が、奇妙なランダムなリズムでぴくぴく動いている。近づいてよく見ると、茶色く見えたのは実は白で、黒いのは生きている。ミールワームたちが小さなベッドの中で互いに上になったり下になったりしながらうごめいている。チームが置いたカラスムギの残りを、がつがつ食べている。

それらの上には、ネオンイエローのトレイの中に完全に成長した甲虫たちと、2ダースほどの蛹(さなぎ)がいる。成虫はたえず動きまわり、互いにぶつかり合い、ときにはライフサイクルの継続のためにそれ以上のこともする。蛹は横たわり、生きていないように見えるが、ときどきピクッと動いて、中に生命があることを思い出させる。

ExplorerでLivin Farmsはその地平を、STEM教育の世界へ広げようとしている。前のプロダクトはスケーラブルな持続可能性にフォーカスしていたが、この新しいKickstarterプロジェクトは若者や子どもに狙いを定めている。そしてバケツ一杯の甲虫には、学ぶことが山ほどある。たとえば、死だ。ファウンダーのKatharina Ungerは近くの瓶をつかみ、蓋をねじった。

瓶には、乾燥したミルワームがいっぱい詰まっている。彼女はその一つをつまみ、自分の口に放り込んだ。期待を込めて、ぼくの手にも渡した。ぼくも彼女の真似をした。カリッとしている。味がないことはないが、はっきりしない。たぶん、ちょっと塩気がある。でも最大の感触は、気味の悪さだ。下を見ると、今ぼくが食べているものの兄弟である小さな幼虫が、数インチ先で餌を食べ続けている。

The Mountain Goatsの歌詞を引用するなら、それは今や未来のタンパク源だ。Livin Farmsは、幼虫の無味無臭の粉末も作っている。そしてその、持続可能な高濃度タンパク質食品の、ある種の概念実証として、意外にもおいしいグラノーラを作っている。この、世界でもっとも人口密度の高い場所で、同社のミッションは家庭にも浸透している。


[彼女は少しおみやげにくれた。おなかをすかせている誰かのために。]

Explorerには、若者たちに未来の持続可能な農業を見せる意味もある。ただし食品メーカーは、昆虫を食べることに伴う消費者の嫌悪感を打破しなければならない。Explorerのユーザーである子どもたちは、過密を防ぐために幼虫の収穫を奨励される。幼虫は、唐揚げではなく乾煎り(からいり)して食べる。ボックスは、比較的臭気の少ない堆肥作り容器になる。虫たちへの給餌は、人間の食べ残しを投げ込むだけだ。小さな虫たちは、それを噛み砕いていく。下のトレイに、彼らの粉状の廃棄物がたまる。

虫たちの暖房のためのヒーターや、湿度を調節するためのファンもある。それらにより、虫たちが仕事をするための最適の環境が作られる。Livin FarmsはシステムのコントロールをSwiftのコードで公開して、プログラミングという要素も加えようとしている。

ExplorerがKickstarterに出たのは今週だ。初期の出資者はそのボックスを、113ドルで入手できる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

企業集団Farm2050は農業スタートアップを資金と技術面で援助していく…Google会長Eric Schmidtも発起人

2050年には世界の人口が100億になり、その命を支えるためには食糧を今より70%増産する必要がある。しかし食糧増産技術に取り組んでいるスタートアップたちは、生産や試験のための十分な資金を欠き、苦労しているところが多い。そこでGoogleの会長Eric SchmidtのInnovation EndeavorsFlextronicsのLab IXは今日(米国時間11/20)、AgTech(農業技術)スタートアップを資金や技術面で支援する集団Farm2050を立ち上げた。

Farm2050のそのほかの構成員は、GoogleとDuPont、Agco、UTCのSensitech、そして3D Roboticsだ。FlextronicsのLab IXを率いるLior Susanによると、“農業をやることは今でもかっこ良くないと思われている。VCたちが色めき立つようなIPOもなければ買収もない”。そんな状況の中でFarm2050は、AgTechのエコシステムを育てていきたいのだ。

Farm2050は今、グローバルな食糧危機を解決するアイデアを抱えたスタートアップたちを、支援対象企業として募集している。

Innovation Endeavorsの専務取締役Dror Bermanによると、“起業家が挑戦すべき問題はたくさんあるが、その中の10%ぐらいに90%の起業家の関心が集中している”。農業は、その10%に入っていない。本当に重要な課題に起業家たちの関心が分散すれば、テクノロジ企業の数は今の100倍〜1000倍ぐらいにはなるはずなのだ。

農業には今すでに大きな市場があり、その規模は全世界で1200億ドルと言われる。しかしほかの産業に比べると農業は、その技術的進歩を加速するための支援構造を欠いている。でも、ここに突破口が開かれれば、本当に人間を救うことができる。

Bermanは語る: “100年前にはHaber-Bosch processが化学肥料の生産を可能にした。50年前にはコールドチェーン技術(長距離冷蔵輸送・貯蔵技術)により新鮮な農産物の長距離輸送が可能になった。そして今日では、ロボット工学と機械学習が農業を変えつつある”。

Farm2050は、食糧増産技術のアイデアなら何でも歓迎する。具体的には、中心となるのはロボット工学とデータサイエンスの、農業技術全般もしくは特定農産物への応用だ。

この集団が投資家の集団ではなく企業集団なのは、単にアイデアに金を出す、というのではなくて、AgTechのイノベーションに対する技術的支援がすぐさま可能になるからだ。Bermanによると、企業は自分たちの技術が役に立つと思ったら、即席でインキュベータを立ち上げたりスタートアップに投資することがよくある。Farm2050はそのようなリソースを育成して、新進企業を支援していく。この集団にはたとえば、サプライチェーンのエキスパートやセンサ技術の経験豊富な専門家がいる。

今では、個々の企業に直接投資するのではなく、社会的な課題への投資を介してスタートアップを育てるという、ソーシャルなベンチャー資本、Social Venture Capital(SVC)が萌芽している。Farm2050もその投資的な側面は、まさにSVCだ。Susanはこう言う: “われわれの子どもも孫も、この地球で生きていく。スタートアップに投資している連中が、そのことに貢献できないのなら、それは大醜態だ”。

最新のSF映画Interstellarには、地球規模での食糧不足の惨状がリアルに描かれている。読者の中に、AgTechをやろうかなぁと迷っている起業家がいたら、決心を固めるためにその映画と、今日のFarm2050の発表がきっとお役に立つだろう。確かに今の世界には、ソーシャルゲームや写真アプリ作ることよりもずっと重要な課題があるのだ。〔余計な訳注: SF映画なんか見るより、世界の最貧飢餓地帯を旅した方がよいね。〕

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


「牛」のためのウェアラブルを提供するSilent Herdsman、300万ポンドを追加調達

「ウェアラブル」が人間だけを対象にしていると思ったら大間違いだ。すべての個体に強制的に着用させることのできる家畜マーケットにおいてこそ、「ウェアラブル」が一層有効に機能するという面もある。

そんなところに着目したのがイギリスのスタートアップであるSilent Herdsmanだ。首輪型のウェアラブルデバイスにて、牛の特徴的な行動を通じて発情期などを感知し、酪農家や畜産農家での管理をより効率的に行えるようにするものだ。

このSilent Herdsmanが、より多くの顧客獲得ならびに成長速度のアップを目指して300万ポンドの資金を調達した。現在はイギリスおよびヨーロッパにて「数百戸」の農場で利用されていて、稼働中の首輪型デバイスの数は「数万台」であるとのこと。

Silent Herdsmanは、2010年にこのデバイスを開発したストラック大学研究室からのスピンアウトで設立されたスタートアップだ。(当時はEmbedded Technology Solutionsという直接的な名前だった)。研究室では2006年から2009年にかけて、Scottish Enterpriseが資金を拠出するファンドからの475万ポンドの資金を得て研究を行ってきていた。

今回の300万ポンドはScottish Equity Partners(SEP)が主導する投資シンジケートおよびAlbion Ventures、Scottish Investment Bank、そしてScottish Enterpriseの投資部門などが出資したものだ。

Silent Herdsmanによると、調達資金は海外での市場拡大および、デバイスの機能向上のために活用していくとのこと。

動作の仕組みは、行動をモニタリングする首輪型デバイスと、特許技術を盛り込んだ分析ソフトウェアを組み合わせて、発情状態などの確認を行うというものだ。首輪型デバイスにて特定の状況が検知されれば、その情報がワイヤレスで基地局デバイスに送られ、そこから農場の担当者(スマートフォンやデスクトップ機)に情報がリレーされる。

飼っている牛全体の管理を容易にし、さらに個々の牛の行動に基づいた適切な行動をより迅速に行えるようにしようとして開発された技術だ。Silent Herdsmanによると健康管理がより効率的に行えるようになり、ミルクの生産量なども増加し、すぐに技術投資分を上回る利益をあげられるようになるとのこと。

SEPのパートナーであるStuart Patersonは、今回の投資にあたり次のように述べている。「現在、世界中には10億頭の家畜牛がいます。そのうち3400万頭がEUおよびアメリカで飼育されています。世界が豊かになり、そして畜産製品への需要は高まる傾向があり、飼育される牛の頭数も拡大傾向にあるのです。こうした傾向の中、Silent Herdsmanにとってのビジネスチャンスは年間で10億ドル以上となっているのです」。

「さらに、Silent Herdsmanの技術を活用すれば、世界的な問題のひとつである食料生産の効率性を向上させることにも繋がります。Silent Herdsmanはイギリス国内のみならず、国際的にもマーケットを広げつつあり、SEPとしてはその流れをお手伝いしたいと考えたのです」。

Albion VenturesのパートナーであるRobert Whitby-Smithも次のように述べている。「Silent Herdsmanの今後の成長プランをサポートする機会を得ることができて大変嬉しく思っています。動物の健康管理関連市場はさらなる成長が見込める分野で、Silent Herdsmanは、独自の特許技術を活用して市場を大きく広げていくことでしょう」。

Silent Herdsmanは現在、イギリス、中国、ニュージーランド、メキシコ、およびヨーロッパなどで特許を取得している。

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(翻訳:Maeda, H


都市部に野菜水耕栽培ハウスのネットワークを広げるBrightFarmsがシリーズBで$4.9Mを調達

都市部に温室(野菜栽培用ハウス)を作っているBrightFarmsが、シリーズBで490万ドルを調達した。投資家はNGEN Partners、Emil Capital Partners、BrightFarmsのファウンダTed Caplow、そのほかだ。

これでBrightFarmsが調達した資金総額は920万ドルになる。同社が興味深いのは、クリーンテクと最近需要が伸びている地産地消型産品の両方の性格を帯びていることだ。

従来の健康食品ではなくて、新鮮で健康的な食品を追求するスタートアップたちは、資金状況も好調だ。Good EggsSequoia CapitalからシリーズAで850万ドルを獲得し、NatureBoxGeneral Catalystから200万ドルを調達して“健康的な食品のBirchboxを目指している。そしてFarmigoは最近、800万ドルの投資を得て地産産品のボックスを消費者に届けている。

ニューヨークのBrightFarmsが作っているのは水耕栽培用の温室(ハウス)で、しかも新たに土地を占拠せず、グロサリストアやスーパーマーケットの屋上に建築するのが原則だ。土地の有効利用だけでなく、水資源の有効利用、温室ガス排出量の削減、年間を通じての産品の質の安定、などにも配慮した設計を貫いている。

店側は新鮮な農産物が得られるだけでなく、遠くの産地の作柄や値動きをいちいち心配せずにすむ。また、遠距離輸送に伴う荷傷みの心配もない。

スーパーマーケットのオーナーをその気にならせるためにBrightFarmsは、建設費を負担し、産品の価格を向こう10年間変えない、という契約を結ぶ。同社は、こんな言い方をしている: “地産地消のためのハウス農場の分散ネットワークを構築することによって財務的にも環境的にもリスク分散を図っている”。

NGENのマネージングディレクターPeter Grubsteinはこう言う: “BrightFarmsを支援することは特別にエキサイティングである。同社は地産地消型食品に対する需要の最先端に陣取っており、持続可能な実践とディスラプティブな流通モデルを併用している。BrightFarmsはそのモデルを迅速にスケールする能力を持っており、顧客の支持とチームの能力も強く大きい”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))