Amazonのタブレットはエンタプライズ(中~大企業)の大量導入をねらう…最新のKindle HDとHDXにその兆候を見る

AmazonのAndroidタブレットKindleのOSは、Amazon自身がちょっといじったバージョンのAndroid(通称Fire OS)を使用しているが、そのせいで最近はますます、消費者という名の大きな木馬の中にエンタプライズの恰好をしたギリシア人の大軍がいる、という風情になってきた。Fire HDとHDXには”Mojito”が載っている、それはFire OSのいわばv.3.0で、いくつかの重要なエンタプライズ向け機能が予定されている。

いくつか挙げてみると、エンタプライズ用メール、VPNクライアントを内蔵、ワイヤレス印刷、Office互換のOAツールセットをプレインストール、ハードウェアレベルでのデータ暗号化、認証の改良、SilkによるセキュアなWeb閲覧、そしてきわめつけは、各種の広く使われているモバイルデバイス管理サービスをネイティブAPIからサポート。

エンタプライズ(中~大企業)にとってKindleの魅力は、まず、コストだ。Amazonの元々安いタブレットを全社員向けに導入するとなると、一人当たりの費用はiPadを大幅に下回る。しかも単に安いだけでなくAmazonは、Whispercastのようなサービスを提供してユーザの下支えをする。このサービスは、自社独自でMDMを導入していない企業向けの無料のネイティブのMDMソリューションだ。Fire OSの今回のアップデート(そして上述の機能が実装されるv.3.1)は、Goodのようなプロバイダによりエンタプライズモバイルデバイスプロビジョニングネットワーク(enterprise mobile device provisioning network)をすでに構築している企業に、新たなITインフラのための大きな支出を必要とせずに、容易に入り込んでいける。

さらにこれらのタブレットには、新たにMayday Button(メイデイボタン、お助けボタン)というものがある。HDXのオーナーは、このボタンでAmazonのテクニカルアドバイザーをリモートで直ちに呼び出せる。しかもサポート担当者はライブのビデオ画面に現れるから、まさに一対一でお世話していただけるのだ。

Maydayは、一見、消費者向けだが、エンタプライズユーザにとってもありがたい機能だ。企業としては、社員にHDXを持たせておけば、社内的なITサポートや教育訓練は不要になり、Amazonにおまかせ、となる。社員個人々々のタブレットの使い方を、社内ITで面倒見るなんて、あまりにもたいへんである。

Amazonはまず、タブレットが安いということでBYODの成功に近い位置につけている。背後には消費者向けコンテンツの強力なエコシステムがあり、また、新たにエンタプライズオンリーの付加価値(上述)も構築している。Amazonはタブレットで、企業と教育分野をねらっていることが、今回ますます明らかになってきた。買い手であるエンタプライズは、そのようなAmazonの売り込みに対して、どんな態度に出るだろうか。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))