元SpaceXエンジニアたちのFirst Resonanceは製造OSをハードウェアメーカーに提供

First Resonance(ファースト・レゾナンス)は、ハードウェア製造のためのソフトウェアを作っている企業だ。同社のIon(イオン)プラットフォームは、製造ライン、サプライチェーン、エンジニアリング、デザインなどを管理しなければならない人々に、オールインワンの選択手段を提供する。今回、新たに1400万ドル(約15億9000万円)の資金を調達したことで、同社はその営業力を拡大し、世界のハードウェアメーカーに全面攻勢を仕かけることを目指している。

First Resonanceは、元SpaceX(スペースX)のエンジニアたちによって設立された。彼らは、SpaceXで開発に携わったプロセスが、ドローンや玩具、そして……他のロケットを作っている人々の役に立つと感じたからだ。

2020年夏に我々が初めて取材したとき、同社はまだ始まったばかりだった。今では勢いのある会社となり、より多くの大規模な顧客をターゲットとしながら、その勢いを維持したいと考えている。

「2020年、First Resonanceは最初の顧客を獲得したばかりでした。その年は、メーカーやハードウェアを製造している人たちが、自宅で仕事をしている人たちと工場をつなぐ手段や、複数の種類の工場をつなぐ手段を必要としていた時期でした。ちょうど私たちがこの会社で作っている製品が、それにぴったりはまったのです」と、共同創業者兼CEOのKaran Talati(カラン・タラティ)氏は語る。

2020年末には15社の顧客を獲得し、現在はその2倍の顧客に利用されているIonプラットフォームは、本格的にハードウェアを製造している人々にとって、価値があることを示している。その顧客には、電動垂直離着陸機をてがけるJoby Aviation(ジョビー・アビエーション)、自動操縦貨物飛行機運行を目指すReliable Robotics(リライアブル・ロボティクス)、小型静止通信衛星企業のAstranis(アストラニス)などがいる。

「このような洗練された製品の製造方法を管理するだけでなく、部分組み立ての複雑さやそれにともなう高度な複数段階におよぶBOM(部品構成表)を管理することの複雑さ。【略】Ionが行っているのは、これらの企業がその複雑さを定義し、理解して、設計や製造プロセスを迅速かつ反復的に調整できるような粒度で支援することです」と、タラティ氏は述べている。

画像クレジット:First Resonance

その鍵となるのが、部品やプロセスの自動化された強力なトラッキングだ。同社のチームは、かつてSpaceXでロケットの再利用可能性に取り組んでいた際に、これを得意とした。

「SpaceXが他の企業と比べて決定的に違う点は、所定のロケットにどのシリアルナンバー、どのロットナンバーが付いているかを徹底的に把握していることです。どの部品が特定の条件にあてはまるか、あるいはエラーが出る可能性が高いかということが、わかっているのです」と、タラティ氏は説明する。「これこそが、私たちの顧客が直面している課題なのです。自動車メーカーは、すべての車両をリコールする必要があるため、何十億ドル(数千億円)もの費用がかかります。しかし、Tesla(テスラ)は最近、わずか3000台のModel Y(モデルY)をリコールしました。それはテスラが、そのレベルの粒度を持っているからです」。

初期の顧客は、この機能が非常に価値のあるものであることを理解し、より多くの要望を寄せている。部品の購入から納品、取り付け、サービスまでをトラッキングすることで、テスラのようなコスト削減の機会が生まれるだけでなく、洞察を掘り出すことができるデータベースも構築できる。

企業はずっと以前からこのような管理を行ってきたが、一般的には、レガシーなものから最先端のものまで、互いに連携していない5〜6種類のシステムを使用している。例えば、デザイン作業はライブのARコラボレーションセッションで行われ、クラウドに保存されて、最新の生産性スイートを介して配信されるが、それが工場や部品のワークフローに行くと、90年代から進化しておらず、そこですべてが滞ってしまう。それは決して優れた仕組みとは言えず、新型コロナウイルスが流行した2020年と2021年のプレッシャーによって、限界を超えてしまった企業もあるだろう。

「一般的なトラッキングツール、電子メールのテンプレート、スプレッドシート、断絶されたプロセスなどで乱雑な状態です。このような長く使っていた古いシステムから離れ、デジタルトランスフォーメーションを検討している顧客がますます増えています」と、タラティ氏は語る。

共同設立者でCOOのNeal Sarraf(ニール・サラフ)氏(左)とCEOのKaran Talati(カラン・タラティ)氏(右)(画像クレジット:First Resonance)

自社で新しいスタックを構築できるような大規模で資金力のある企業でさえ、Ionを利用することを選択していると、タラティ氏はいう。これは、1年と数千万ドル(数十億円)をかけて独自のスタックを設計するのではなく、市場で通用するプロセスの追加を選択して成功した他の企業を見習うためだという。

今回の1400万ドルを調達したシリーズAラウンドは、Craft Ventures(クラフト・ベンチャーズ)が主導し、Blue Bear Capital(ブルー・ベア・キャピタル)、Fika Ventures(フィカ・ベンチャーズ)、Stage VP(ステージVP)、Wavemaker(ウェーブ・メーカー)が参加した。この資金は、会社の規模拡大と改善、特に「市場参入チーム」の強化に充てられる予定だ。しかし、その製品も進化している。開発チームは、変化があったときに数秒で実行可能な洞察が得られるようにするため、より多くのデータソースをインテリジェンスストリームに統合することに取り組んでいる。また、SDKを拡張して、より多くの工場やハードウェアの種類に対応することも視野に入れている。

「当社の顧客は、柔軟でデータ駆動型のアプローチを非常に重視しており、Ionはまさにその要求に適っているのです」と、タラティ氏は述べている。

画像クレジット:Teera Konakan / Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)