日本で流行の兆し? 数分で本の要約が読める3サービスを使ってみた

本を買っても読まずに積んだままにしてしまう「積ん読」なんていう言葉があるけれど、海外にもそうした人々はいるようで、ビジネス書を要約するサービス「getAbstract」が人気だ。1999年に米国でサービスを開始し、今ではドイツ語やフランス語、スペイン語、ロシア語、ポルトガル語、中国語に対応。ユーザー数は1000万人を突破した。日本でも和製getAbstractとも言われる「flier」をはじめ、いくつかのサービスが出てきている。そこで、忙しい方向けに「本の要約を読めるサービス」を3つほど紹介したい。商談などで本の要約を押さえておきたい、とか、世の中のトレンドを掴んでおきたいという人はぜひチェックしておきたいところだ。

数分で1冊分の要約が読める「Quickreads」

「Quickreads」は、1冊の本を1200文字程度にまとめた要約を閲覧できるアプリ。1200字程度なので、数分で1冊を読み終えることが可能だ。これなら通勤時間内でも本の要約を掴むことができそう。お気に入りに入れておけば、オフライン状態で読むこともできる。気に入った本があれば、そのままオンライン書店のページに遷移できる。本の種類は毎週5冊ずつ追加され、毎月特集として10冊が掲示される。

試しに私が実際に読んだ本とこのアプリの要約文を読み比べてみた。例えば長谷部誠氏の「心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣」だが、本書で挙げられている56の習慣を大幅に端折ってしまっており、要約の内容に物足りなさを感じた。例えば心を鎮めるための習慣として、要約文では「1日30分間ベッドに横になる」というエピソードのみが語られているが、実際の本には「寝る前のマネジメント術」や「音楽の効用」といったエピソードが多数収録されている。箇条書き程度でも良いので、長谷部が心がけているリラックス習慣をまとめて欲しいところだ。

要約文を読んだ後は、「理解度クイズ」というものがあり、本の内容についての問題が3問出される。これに答えることで、要約の理解度を把握できる。例えば「伝え方が9割」では、「『ノー』を『イエス』に変えるための『伝え方』の3つのステップのうちの2番目にあたるものは次のうちどれでしょう」という問いが出され、3つの選択肢から答えを選ぶ具合だ。

iOS版Android版のアプリのダウンロードは無料で、6冊までは無料で閲覧できる。それ以上の本を読む場合は月額300円(税込)を支払う必要がある。

ボリュームはあるが抑えるべきところがまとまっている「flier」

「flier(フライヤー)」も、1冊の本を1分程度に要約してくれる。こちらは経営コンサルタントや各分野の専門家が一冊一冊を精読し、要約文を作るという点でほかのサービスと差別化されている。スマホやタブレットに対応しているので、通勤時間でも難なく読める。AmazonなどのECサイトへのリンクもあり、そのままオンラインで購入できる。要約コンテンツは無料公開と有料公開があり、無料公開は20冊まで閲覧可能(毎月1~2冊程度の入れ替えがある。有料プランは、月5冊まで有料コンテンツが読める「シルバープラン」(月額540円)と、無制限の「ゴールドプラン」(月額2160円)の2つがある。

このサービスでも、実際に私が読んだ本を読み比べてみる。堀江貴文氏の「ゼロ―――なにもない自分に小さなイチを足していく」の要約を読んでみたが、さすが10分程度の要約文というだけあって、内容が充実している印象。要約者レビューにはじまり、本書の要点、評点、著者情報、本文要約(章ごとにまとまっている)、と、要約という名称ながらボリュームのあるコンテンツになっている。しかも本の核となる部分(ゼロ~であれば「働くこととは何か?」)が「必読ポイント」という見出しとともに強調されているので、書籍で本当に伝えたいことを掴みやすい。文の構成まで考えられているという点で、さすがコンサル出身者による要約だと感じた。

アプリはiOS版のみのリリース。ウェブサイトからも要約を閲覧できる。

ビジネス書から漫画まで、要約コンテンツが豊富な「ブクペ」

「ブクペ」は、誰でも本の要約を書いて公開できるサービス。要約文も1000~2000字程度なので、空いた時間にサクッと読める。ポイントは要約されている本の多さ。ビジネス書から漫画まで幅広く公開されている。加えて複数のユーザーが1冊の本を要約しているので、何人かの要約を読み比べることもできる。

このサービスでも実際に読んだ本、石井てる美氏の「私がマッキンゼーを辞めた理由 ―自分の人生を切り拓く決断力」と比べてみたが、ブクペの要約はややお粗末に感じた。この本自体はQuickreadsにもflierにも掲載されていない本なので、ブクペが網羅している冊数は申し分ないと言える。ただ、肝心の要約では「本文中の引用」と「感想」だけに留まっており、Amazonのカスタマーレビューのほうが役に立つのではないかと感じてしまった。もちろんほかの本の要約には書評ブロガーによる読み応えのあるレビューもあるので、ブクペには役立つ要約もあるのは間違いない。要約のクオリティのばらつきが、ブクペのデメリットといえる。

以上、3つのサービスを見てきた。Quickreadsとflierは要約文の質がある程度保証されているが扱っている冊数が少なく、ブクペは扱っている冊数は多いものの要約のクオリティにばらつきがある。このようにそれぞれ長所短所があるが、Quickreadsとflierは話題の本の要約を掴むため、ブクペはちょっと気になっている本の内容を調べるためという風に用途別に使い分けるのが良いのではないだろうか。


【書籍】通貨の未来が変わる?『ビットコインのからくり』

編集部:この記事は、本の要約サイト「flier(フライヤー)」と共同で選書したIT・テクノロジー関連書籍の要約を紹介するものだ。コンテンツは後日、フライヤーで公開される内容の一部である。

タイトル 暗号が通貨になる「ビットコイン」のからくり
著者 吉本 佳生、西田 宗千佳
ページ数 272
出版社 講談社(ブルーバックス)
価格 972円(税込)
要約者の評点 総合:4.0(5点満点、下記3点の平均値)
革新性:4.5、明瞭性:4.0、応用性:3.0

要約者によるレビュー

ビットコイン(Bitcoin)と聞くとどのような印象をお持ちだろうか。マウントゴックス(Mt.Gox)という当時最大規模の取引所の破綻や、投機対象として不安定なもの、将来有望な暗号通貨というような、さまざまな印象があるだろう。本書はその名の通り、ビットコインを客観的に評価しようという野心的な書籍であると言える。

マウントゴックスの破綻のニュースは多くの方に影響を及ぼしたため、それ自体はネガティブなインパクトを持つだろう。しかし、だからといってビットコインそのものの信頼性が揺らいだ訳ではない点に注意が必要だ。

今回の騒動はあくまでもビットコインの取引所側の瑕疵が起因となり発生した問題であって、ビットコインの暗号が破られて多大な損失を出したものではない。一般的に通貨を取り巻くシステムは、国家の軍事力、法的拘束力、中央銀行、金融機関、決済システムなど、多くの要素から成り立っており、日本国通貨である「円」に関しても盤石なものではないのである。

本書はビットコインを中心に展開されるが、その内容は通貨制度、暗号の仕組み、中央銀行の歴史、ウェブ上およびリアルでの決済手段など、多様な要素で構成されている。本書を読めば複数の視点から客観的にビットコインを評価できるとともに、ビットコインなどの暗号通貨に今後の可能性を見出すことができることだろう。金融機関に関わる方やウェブサービスの運営者はもちろん、ニュースに惑わされずその本質を理解しようという一流のビジネスパーソンこそ、本書を読む価値が十分にある。

 

本書の要点

・ビットコインは中本哲史と名乗る人物が提唱した論文を元に世界の技術者が構築した、画期的な暗号通貨である。

・マウントゴックスの破綻によりビットコインが持つ暗号の強固さが損なわれた訳ではない。資産を預かる取引所としてのマウントゴックスの情報システムに問題があったのである。

・ビットコインにはそれを支える中央銀行もなく、武力もない。暗号が破られないという「知力」が基礎になっている通貨だと言える。

 

【必読ポイント】ビットコインは通貨の未来をどう変えるか?

「知力のビットコイン」VS.「武力の国家通貨」

国家通貨を支える中央銀行は、通貨の信用の糧になるのだろうか。現在の中央銀行は、国内でもっとも安全なはずの金融資産である国債を大量に購入することで、その対価である現金を発行する。しかしその信頼は、将来の税収で財政を黒字化し、それまでの借金を返済するというストーリーがあってこそだ。

つまり中央銀行が現金を発行しているからといって、価値の裏づけがある訳でもないから、ビットコインにも中央銀行が必要だ、という議論も不毛なものだ。

中央銀行には「発券銀行」「銀行の銀行」「政府の銀行」という3つの役割が存在している。歴史的にはイングランド銀行にせよフランスの王立銀行にせよ、役割の3番目の「政府の銀行」としての役割として、発足しているものである。当初の中央銀行の目的は戦争継続のための資金を国家に提供することだった。中央銀行はその後、「発券銀行」、「銀行の銀行」という順番で役割を拡大していくことになる。

国家通貨の信用は「法的強制力」と「中央銀行の信用」によって支えられる。特に「危機時」および「国際決済」での信用が不可欠となる。国が滅んでしまえば紙幣の価値がなくなるので、究極的には外国からの侵略を防ぐ「武力」が必要になるのである。

一方で、ビットコインには中央銀行もなく、武力もないので、暗号が破られないという「知力」が基礎になっていると言える。「ビットコインVS.国家通貨」という構図は「ペンVS.剣」に近いのだ。

通貨制度の未来

「ある程度以上の人たちに通貨として信用されていれば、通貨」となるので、すでにビットコインは通貨として機能していると解釈できる。ビットコインも含めて通貨制度の未来を予想すると次の4つのシナリオが考えられる。

① 様々な国家通貨が使われている中で、並行して暗号通貨も用いられる。
② 円の国際化によって国際決済はほとんど円によってなされる。(日本が過去に目指した姿だが、今では夢物語にも見える)
③ 世界全体での通貨統合を米ドル、金、その他通貨のいずれかで実現する。
④ 暗号通貨は生き残らず、様々な国家通貨が用いられる。

これ以外にも様々なシナリオが予想されるだろう。現実的には暗号通貨が市民権を得て①のシナリオになるか、暗号通貨が消滅し④のシナリオになるのかのどちらかかもしれない。

これからの通貨に関しては、可能性を示すことはできるが確実な予想は難しい。今後どうなっていくか、本書を題材に読者自身でも予想していただければと思う。


本の要約サイト「flier」がサイエンス領域を強化、理系集団「リバネス」と提携で

話題の書籍の全体像を10分程度でわかる内容に要約して配信するサービス「flier(フライヤー)」は1月28日、サイエンス領域のコンテンツ配信を開始した。すべての社員が理系修士号・博士号取得者であるリバネスと提携して要約をアウトソーシングする。今後は理工書の要約コンテンツを毎月5冊ペースで配信していく。リバネスはサイエンスに特化した教育事業や研究開発などを手がけている。

同様のサービスは欧米を中心に展開し、1000万超のユーザーを獲得するgetAbstractが有名。flierはコンサルティング会社で執筆経験がある創業者らが2013年10月にローンチし、毎月20冊ペースで要約コンテンツを配信している。20冊のサンプルを閲覧できる無料プランのほか、有料コンテンツは月額525円で5冊、月額2100円で読み放題。要約する書籍はすべて出版者から許諾を得ていて、その内容は出版者の担当編集者がチェックしている。

運営元のフライヤーによれば、これまでに要約したコンテンツは約100冊。会員数は昨年11月に開催したTechCrunch Tokyoのスタートアップバトルに登壇して以降、順調に伸びているといい、現在は7000人に上るのだとか。今回のリバネスとの提携は、難解でとっつきにくいと思われがちな理工書を、文系出身者にもわかりやすく要約できるのがメリットだとしている。