Dapper LabsのFlowブロックチェーン活用、ミクシィとDAZNがスポーツ特化型NFTマーケットプレイスを今春提供開始

Dapper LabsのFlowブロックチェーン活用、ミクシィとDAZNがスポーツ特化型NFTマーケットプレイスDAZN MOMENTS発表

ミクシィは2月4日、スポーツ・チャンネル「DAZN」(ダゾーン)を運営するDAZN Japan Investmentと共同で様々なスポーツのスーパープレイやメモリアルシーンをコレクションできるスポーツ特化型NFTマーケットプレイス「DAZN MOMENTS」を開始することを発表した。開始時期は今年春頃を予定。

また開発においては、「Cryptokitties」(クリプトキティ)や「NBA Top Shot」(NBAトップショット)を手がけるDapper Labsのブロックチェーン「Flow」(フロー)を基盤にサービス構築を行う。

DAZN MOMENTSは、日本国内で展開するスポーツ特化型NFTマーケットプレイスで、スポーツ選手のスーパープレイやメモリアルシーンといった貴重な動画映像をNFTコンテンツ(すべて動画)として提供する。コンテンツにはそれぞれシリアルナンバーが記されており、Flowブロックチェーン上にデータが記録される。

サービス開始時は、NFTコンテンツの収集をメインとして提供。その後、段階的にユーザー同士でコンテンツを売買できるマーケットプレイス機能や、コミュニティとして集まれる場を作るなど、同じ興味・関心を持つユーザー同士がコミュニケーションを取りながら楽しめるサービスにアップデートする予定。正式な提供開始日やDAZN MOMENTSで実際に展開するNFTコンテンツについては、公式サイトで随時発表する。

SNS「mixi」やスマートフォンゲーム「モンスターストライク」などを展開するミクシィは、「エンタメ×テクノロジーの力で、世界のコミュニケーションを豊かに」を中期経営方針として掲げている。その中で、Dapper Labsと業務提携に関する基本合意書を締結するなど、最新テクノロジーを駆使したエンターテインメントやスポーツ領域での事業創出に注力している。また2020年12月には、DAZNの「商業施設利用契約サービス」提供開始に合わせて、セールスエージェントパートナーとしてDAZNと協業を開始した。

今回の取り組みでは、ミクシィの最新テクノロジーを活用したサービス開発のノウハウと、DAZNが持つ豊富なスポーツコンテンツを掛け合わせた新規事業を創出することで、多くのスポーツファンが楽しめるサービスを提供できると考え、両社の強みを活かしたDAZN MOMENTSを開発・提供を開始するという。

DAZN MOMENTSでは、DAZNがコンテンツマネジメントやマーケティングを行い、ミクシィはサービス開発・運用を担う。

Twitchで活動するゲーム配信者の動画クリップをNFTで取引するマーケットプレイス「Eternal」

NFT(非代替性トークン)の世界では全体的に、インターネット上の記憶を1つの大きなゲームにしようとしているらしい。もちろん、参加するには多額の現金が必要だ。6月には柴犬「Doge(ドージ)」のオリジナル画像が400万ドル(約4億4500万円)で落札され、4月にはカエルの「Pepe(ぺぺ)」のオリジナルコミック画像が100万ドル(約1億1100万円)で落札されるなど、人々の中からミーム億万長者が誕生している。JPEG画像を数億円で売買するというのは奇妙な現象だが、平均的なインターネットユーザーに、NFTというものが気にかける価値があると思わせるには十分だった。

Eternal(エターナル)は、インターネット上の歴史をゲームにしたいと考えているが、中でも「ゲームストリーマーの人気クリップ」という、非常に特殊なウェブの断片に焦点を当てている。そのユーザーインターフェイスは、見た目も機能的にもデジタルトレーディングカード「NBA Top Shot(NBAトップ・ショット)」によく似ており、それを使ってユーザーは、Eternalと提携しているゲームストリーマーのネットワークから、連続したクリップのパックを購入することができる。このマーケットプレイスは、Jeffrey Tong(ジェフリー・トン)氏とDerek Chiang(デレク・チャン)氏が設立したスタートアップ企業のZelos Gaming(ゼロス・ゲーミング)によって構築されている。同社はクロスプラットフォームのバトルパス(2020年TechCrunchでも紹介した)の構築から、EternalでNFTのワイルドな世界に取り組むことに方向転換したというわけだ。

このスタートアップの支援者名簿には、多くの暗号投資会社や著名人が名を連ねている。最近の資金調達ラウンドでは、NFX、Mark Cuban(マーク・キューバン)氏、Coinbase Ventures(コインベース・ベンチャーズ)、Gary Vaynerchuk(ゲイリー・ヴェイナチャック)氏、Dapper Labs(ダッパー・ラボ)、Arrington Capital(アリントン・キャピタル)などが、450万ドル(約5億円)を出資している。同社のチームは以前、Y Combinatorの支援を受けていた。

サイトのデザインを見れば一目瞭然だが、現時点では「Top Shotゲームストリーマー版」のようなプラットフォームになっているものの、チームはこのプラットフォームを今後どのように進化させるかということについて、大きなアイデアを持っている。NBAや選手会との契約を実現したTop Shotとは異なり、esportやTwitchなどにはそれに相当する包括的な組織がないため、Eternalはストリーマーやストリーマーネットワークとのパートナーシップをかなり複雑に織り交ぜて、ビジネスを他に奪われないようにする必要がある。Eternalは、主にTwitchの上位0.05%で活動する人気ストリーマーに焦点を当てているという。

ストリーマーは、Twitchなどのプラットフォームですでに人気を集めているトップクリップや、自分のソーシャルメディアからの動画を販売し、ゲームプレイにおけるその瞬間を、ブロックチェーン上に「永遠のもの」にすることができる。同社では、新進気鋭のストリーマーと広く知られた著名人を組み合わせることで、より多くのクリエイターの認知度を高め、その「一片を所有」し、彼らの成功に利害関係を持つユーザーのネットワークを構築することができると期待している。

画像クレジット:Eternal

同社CEOのジェフリー・トン氏は「Top Shotはすばらしいモデルだと思いますが、Eternalはクリエイターにまったく新しいマネタイズの方法を提供することができるという点でも優れています」と、TechCrunchの取材に語った。

ファンとクリエイターの間に密接な関係を築くことは、NFTの世界にエキサイティングな意味合いをもたせるものとして早くから期待されていた。投資家が自分の投資を紹介し、その過程でクリエイターを後押しすることになるからだ。しかし、ユーザーのクリエイターへの投資額が数千円や数万円程度に留まる小規模な場合と、数百万円から数億円にもなる場合とでは、このような関係がどのように変化するかはわからない。

Eternalのプラットフォームにおける最大の長所は、Dapper LabsのFlow(フロー)に基づいて構築されていることだ。これは一般消費者向けアプリに適したブロックチェーンで、ユーザーが実際に通過する参入時のフローを構築する際に、複雑さ(および少しの分散化)を低減したものだ。

Ethereum(イーサリアム)のエコシステムの外に出て、米ドルで取引するということは、暗号化に恵まれたNFT信者の巨大なネットワークから離れることを意味するが、それは同時に、潜在的にはるかに多くの消費者にアプローチできることも意味する。同社は、最終的には来年までにEternalをより多くのブロックチェーンに組み込みたいと考えているが、クロスチェーンでの操作は、今すぐには難しいようだ。

Flowのチェーン上には、今のところ活発なマーケットプレイスは非常に少ないが、Eternalには初期の勢いがある。Cryptoslam(クリプトスラ)によると、このマーケットプレイスでは2021年の夏に約30万ドル(約3340万円)の取引が行われたという。

画像クレジット:gorodenkoff / Getty Images

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

NFTをもっと親しみやすいものに、販売・オークション可能なNFTマーケットプレイスRaribleが約15.8億円調達

NFT(非代替性トークン)の販売が、最近のピーク時に比べて大幅に減少しているというニュースを目にしたことがあるだろう。この数週間で90%も減少したという報告もあるほどだ。多くの暗号資産投機家がこの急激な落ち込みの犠牲になっている一方で、デジタル収集品やデジタル商品がインターネットを席巻する未来を見据えている人々もいる。

NFTのマーケットプレイスであるRarible(ラリブル)は、シリーズA投資ラウンドで、Venrock Capital(ヴェンロック・キャピタル)、CoinFund(コインファンド)、01 Advisors(ゼロワン・アドバイザーズ)から、1420万ドル(約15億8000万円)の資金を調達したことを、米国時間6月23日に発表した。このスタートアップ企業は、ユーザーの誰もがデジタルアートを購入したり、オークションにかけることができるマーケットプレイスを運営している。Raribleには独自のガバナンストークンがあり、これを保有するユーザーはプラットフォームの機能や手数料に関する提案を行ったり、それらの提案に投票することができる。

同社によると、18カ月前にサービスを開始して以来、その売り上げ総額は1億5000万ドル(約166億5000万円)に上るという。

デジタル収集品分野における初期のプレイヤーを支援しようと投資家が集まり、NFT関連のスタートアップ企業はこの数カ月の間に、多額の資金を調達している。最も人気のあるNFTハブの1つであるOpenSea(オープンシー)は、春先にAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)とNaval Ravikant(ナヴァル・ラヴィカント)氏から2300万ドル(約25億5000万円)の資金を調達した。3月には招待制のNFTマーケットプレイスを運営するSuperRare(スーパーレア)が900万ドル(約10億円)のシリーズA資金を調達し、2021年5月には「NFTのShopify(ショッピファイ)」を目指すBitski(ビツキ)が1900万ドル(約21億1000万円)を調達した。

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Raribleは資金調達の発表と同時に、デジタルトレードゲームのNBA Top Shot(NBAトップショット)を起ち上げたDapper Labs(ダッパー・ラボ)と正式に提携し、RaribleのNFTマーケットプレイスをDapper Labsのブロックチェーン「Flow(フロー)」上に導入することを発表した。Dapper Labsは、Ethereum(イーサリアム)ネットワーク上の取引よりも、エネルギー効率が高く、コストも低い独自のブロックチェーン上で、より幅広いNFTプラットフォームの連合を構築し始めているが、それによって中央集権化も進めている。Raribleによると、この移行は「今後数カ月」以内に行われる予定だという。

このスタートアップは、NFTの世界を一般のウェブユーザーにとってもっと親しみやすいものにするための幅広い目標を掲げており、今回の資金調達を利用して、クレジットカードでの支払いに対応するなど、よりユーザーフレンドリーな開発を探求したいと、ブログ記事の中で述べている。「私たちには、独立系クリエイターが簡単にNFTを作成して支援者のコミュニティに5ドル(約555円)で販売できたり、ポップアイコンがNFTを使って数百万人のオーディエンスと持続的に親密な関係を築けるような世界が必要なのです」と、その記事には書かれている。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:RaribleNFT資金調達Flow

画像クレジット:Rarible

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

double jump.tokyoが複数人による秘密鍵管理を含めNFTコンテンツ発行・管理を行えるエンタメ・ビジネス向けSaaS「N Suite」提供

ブロックチェーン技術を用いたアプリケーション開発を行うdouble jump.tokyoは6月7日、エンターテイメントDX向けのSaaS「N Suite」の提供を発表した。

N Suiteは、NFT発行やNFTコンテンツ管理など、NFTコンテンツ・ビジネスをスムーズかつ効果的に行うために必要な製品を揃えたビジネスツールだ。NFTコンテンツを軸にファンとのリレーションを醸成し、エンターテイメントDXを戦略的に行うためのツールセットとして、新たな製品や機能を順次追加する予定。

同社によると、2021年からブロックチェーン技術の一部であるNFTを活用したコンテンツがブームとなっているものの、企業がNFTコンテンツ・ビジネスへ参入する際に、ブロックチェーンの秘密鍵の管理方法が課題となっており、参入の障壁や足枷となっているという。

特に、日本企業には世界で勝負できるコンテンツを抱えている、または創造する力のある企業が多く存在するにもかかわらず、このような課題により、NFTコンテンツ・ビジネスの参入が遅れ、ビジネスチャンスを逃してしまう懸念もあるとしている。

そこで、秘密鍵管理の課題を解決するウォレットをはじめ、企業がNFTコンテンツ・ビジネスをスピーディーに、また効果的に行うために必要な仕組みをSaaSとして提供する。N Suiteのリリース時には、下記製品を公開予定としている。

「N Board」:マネジメント・ボード

N Boardは、NFTコントラクトのデプロイやNFT発行など、秘密鍵を使った各種操作の実行やNFTコンテンツの一元管理を行えるダッシュボードだ。将来的に、NFTコンテンツの販売や企画、活用をサポートする機能も拡充予定。

「N Wallet」:キーレス・ウォレット

N Walletは、秘密鍵を保管しないウォレットとなる。NFTコントラクトのデプロイやNFT発行の際に、ブロックチェーンのトランザクションに署名する際の認証で使用する。また、暗号資産(EthereumやERC-20トークンなど)の送付など、一般的なウォレットの機能にも対応予定だ。リリース時には、Chrome拡張機能(Chrome Extension)として提供予定。

「N Cloud Key」:クラウド・キー・システム

N Cloud Keyは、秘密鍵をクラウドでセキュアに保管するシステム。N Walletの認証機能とN Boardの管理機能を組み合わせることで、本来は個人で管理が必要な秘密鍵を複数人で共有管理可能となる。リリース時にはAWS Key Management Service(AWS KMS)に対応予定だ。

double jump.tokyoが複数人による秘密鍵管理を含めNFTコンテンツ発行・管理を行えるエンタメ・ビジネス向けSaaS「N Suite」提供

今後double jump.tokyoは、複数人ワークフロー、マルチチェーン対応(Flowブロックチェーンなどに順次対応予定)、N Cloud Keyの対応クラウドサービス追加(Microsoft Azureなど)、SDK提供、販売管理システム、版権管理システムとの連携機能、NFTコンテンツ分析機能(N Insight)といった機能を追加する予定だ。そしてNFTコンテンツを軸に、新しいエンターテイメント体験を醸成する強力な基盤となるよう、N Suiteを発展させるとしている。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:Ethereum / イーサリアム(製品・サービス)ERC-20(用語)ERC-721(用語)NFT / 非代替性トークン / クリプトアート(用語)AWS KMS(サービス)公開鍵暗号方式double jump.tokyo(企業)Flow(製品・サービス)ブロックチェーン(用語)Microsoft Azure(製品・サービス)日本(国・地域)

NFTアート:何が価値の源泉なのか? 新たな投資スタイルへの道を歩むNFT

NFTアート:何が価値の源泉なのか? 新たな投資スタイルへの道を歩むNFT

編集部注:この原稿は千野剛司氏による寄稿である。千野氏は、暗号資産交換業者(取引所)Kraken(クラーケン)の日本法人クラーケン・ジャパン(関東財務局長第00022号)の代表を務めている。Krakenは、米国において2011年に設立された老舗にあたり、ビットコインを対象とした信用取引(レバレッジ取引)を提供した最初の取引所のひとつとしても知られる。

現在、NFT(ノン・ファンジブル・トークン)がここまで注目される理由のひとつは、投資手段としてのアートの可能性を拡大させたことにあるでしょう。ネアンデルタール人によって6万5000年以上前に描かれた洞窟壁画が世界最古のアートといわれていますが、その後、歴史の中で様々な手法、技術そして媒体が生み出されてきました。アートをコンピューターファイルとして簡単にシェアできるデジタルアートは、最新の媒体のひとつです。

歴史的にアートは、鑑賞目的だけではなく投資家から代替的な価値保存手段として人気を集めてきました。インターネットが登場し、アートの形がデジタルに変わってもすぐにはフィジカルなアートと同様に投資対象とみなされませんでした。なぜならインターネットにはコピペ文化という問題が存在したからです。このデジタルアートの問題をデジタル領域における所有権の確立によって解消したのがNFTでした。

本稿では、NFTの意義をデジタル領域における所有権の確立という観点から解説し、投資対象としてのNFTを考察します。

クラーケンとNFTの関係は?

その前にまず、クラーケンとNFTの関係について少しお話をしたいと思います。NFTは2021年2月ころから一大ブームを巻き起こしていますが、実はクラーケンはブームの前からNFT関連事業を拡大してきました。

例えば、2020年12月23日、Ethereum(イーサリアム)基盤の3D仮想空間プラットフォーム「Decentraland」(ディセントラランド)で著名DJの3LAU(ブラウ)を招いてクリスマスパーティーを開催。参加者に限定盤のNFTウェアラブル(アバターが着る服など)を配りました。また、2021年1月には、NFTブームの中でもNo.1ヒットといえる「NBA Top Shot」(NBAトップショット)が基盤にするブロックチェーン「Flow」(フロー)を世界の取引所に先駆けて上場させました。

また創業者のJesse Powell(ジェシー・パウエル)は、創業前の2008年にカリフォルニア州のサクラメントでVergeという美術館を設立し、新進気鋭のアーティストをサポートしていました。ブロックチェーン技術の結晶であるNFTとデジタルアートは相性抜群です。こうした事情もあり、クラーケンではNFTの未来について高い関心を持ち日夜研究を続けています。

デジタル領域における所有権

NFTとは、暗号資産と同じように仲介業者を使わずにインターネット上で売買・交換が可能な暗号技術を基盤にしたトークンを指します。他の暗号資産と同じように偽造不可能で取引履歴の追跡が容易であるなどブロックチェーンならではの特徴がある一方、固有の価値を持つ点が異なります。NFTの場合、世の中に同じ価値をもたらすものはふたつとありません。

インターネットが誕生してもデジタルアートが普及しなかった背景にあるのは、いわゆる「コピペ」文化の存在です。

30年前にインターネットが誕生して以来、アーティストやコンテンツ制作者は、画廊やレコード会社を経由することなく、作品を直接公共の場で共有できるようになりました。2009年の暗号資産誕生前から、SNSや動画投稿サイトなどを使って仲介業者なしでアートを共有することは可能だったのです。

しかし、インターネットは諸刃の剣でもありました。インターネットを使える人なら誰でも簡単にアート作品のファイルをダウンロードしてコピーし拡散することが可能だったからです。所有権の帰属先は曖昧になり、最も成功するアーティストでさえ収益化に苦戦するのが現状でした。解決策は、仲介業者を元に戻し、サブスクリプションなどの仕組みを導入することでしたが、結局、仲介業者に多くの手数料を取られる構造は変えられませんでした。

この状況を変えたのがNFTです。NFTの登場後も、インターネット時代と同じように、誰でもアートをオンラインで見ることができ、自分のスクリーンセイバーに使うこともできます。しかし、インターネット時代と異なり、NFTによって、アートが希少なものとしてブロックチェーン上に記録され、それを「所有」できる人は限られた人になりました。

例えばモナリザの絵のコピーを家の壁に掛けても、それはモナリザの絵を持っているということになりません。多くの人はモナリザの絵のコピーを家やネットで見るだけで満足するかもしれませんが、一部の人は数億円払ってでも保有することに価値を感じます。私たちはモナリザのような有名な絵はだいたい知っていますし、オンラインで画像をいくらでも見ることができます。しかし、「本物」は確かに存在し、所有者は公式の文書で公式のライセンスを持っている人だけになります。NFTは、ブロックチェーン技術を使って限られた所有権のライセンスをデジタル上で確立したものなのです。

そして、NFTがデジタル所有権を確立したからこそ、これまでフィジカルのアートだけが対象だった投資の世界にデジタルも加わることになりました。誰もが参加できるブロックチェーン技術によって、アート作品の所有権が証明可能なものになったからこそ、「本物」と偽る詐欺の可能性がなくなり、投資対象としてデジタルアートが価値を持つようになりました。

数字で振り返るNFTの熱狂

NFTの売り買いを行うマーケットプレースにおける取引高は、2月26日に過去最高の2600万ドル(約28億円)に到達した後も勢いを持続し、3月11日には3400万ドル(約37億円)と過去最高記録を塗り替えました。その後、熱狂度合いがやや落ち着き、2021年第1四半期は結局1300万ドル(約14億円)で終えました。

NFTマーケットプレイスの取引高

出典:Kraken Intelligence「NFTマーケットプレイスの取引高」

主なNFT作品の販売実績としては、デジタルアーティストBeepleの「The First 5000 Days」が米老舗オークションハウスのクリスティーズで6900万ドル(約76億円)で落札された他、米国出身バンドのKings of Leon(キングス・オブ・レオン)が初めてNFTとしてアルバムをリリース、ツイッター創業者Jack Dorsey(ジャック・ドーシー)の最初のツイートが50万ドル(約5500万円)で落札、NFTスターRob Gronkowski(ロブ・グロンコウスキー)が自身のプレイシーンをNFTで販売するなど、音楽界とスポーツ界を中心に複数あります。

これらNFT作品の購入者は、初期投資以上に作品の価値が上昇すると見込んでいるから投資をしたわけです。NBAトップショットでは、LeBron James(レブロン・ジェームズ)のハイライトシーンを20万8000ドル(約2300万円)で購入したバスケットボールファンもいました。このファンは、将来的にさらに値上がりすると見込んでいるから投資をしたのかもしれません。

NFTアート:何が価値の源泉になるのか?

前述のように、NFTによってアートへの新たな投資手法が生み出されたということは確かでしょう。所有権の売買だけではなく、例えばblueboxのように、NFT投資家が音楽のストリーミングストアから印税を毎月得られる仕組みも構築されています。

ただ、NFTは誰にでも作りやすく、投機の対象になる可能性があることにも注意が必要です。

重要なのは「何が価値の源泉なのか?」という点です。例えば作品を作るのに費やした労働コストなど普遍の物差しがあるわけではなく、「投資家が価値があると思うから価値がある」というのがNFT作品の価値を決める軸になっています。「個人的にアーティストが好きだから」という一点でアートの購入を決める富裕層もいます。NFTのアート作品に「本源的な価値」(Intrinsic Value)があるのか、疑問視されています。

実はBitcoin(ビットコイン)も「本源的な価値がない」と批判されます。Bitcoinは一時6万ドル(約653万円)まで上昇しましたが、「その根拠は何か」「適正価格はどうやって出すのか」という視点です。

ただ「自分が価値があると思うから価値がある」という主観価値説が間違っていないという立場を取ることもできます。そうなると、物事の価値というのはマーケットにおいて需給の結果決まるという立場につながります。

フィジカル版アートへの投資が歴史的に成立してきたように、NFTによって可能となったデジタル版のアートへの投資も存続し続けるでしょう。ただ、「現在のNFTがバブルなのか?」という問いに関しては慎重に答える必要がありそうです。自分が価値があると思うものに価値が生まれるといっても、先述のBeepleが指摘するように「とんでもない価格をガラクタに付けてしまうこと」もあり得るかもしれません。

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ブロックチェーン技術を用いたアプリ開発を行うdouble jump.tokyoは4月22日、「Cryptokitties」(クリプトキティ)や「NBA Top Shot」(NBAトップショット)を手がけるDapperLabs(ダッパーラボ)と提携したと発表した。DapperLabsが開発するブロックチェーン「Flow」(フロー)に関するNFTおよびブロックチェーンゲームなどの対応、トランザクションが正しいかどうかを検証・合意形成を行うValidatorNode(バリデーターノード)の運用を開始する。

Flowは、NFTを世に広めた初のコンテンツ「Cryptokitties」などのDapperLabsが手がけている、新たなブロックチェーン。現在は、Flow上で動作する同社開発・運営のNFTトレーディングカードゲーム「NBA Top Shot」が人気で、サービス開始後の流通取引総額が約400億円となったことから第2のNFTブームを生み出すきっかけのひとつとなっている。

double jump.tokyoは今回のパートナー提携により、Flowを通じたNFT・ブロックチェーンゲームの海外展開の推進、またFlowの日本進出を支援する。同時に、ValidatorNodeの運用を開始することで、Flowチェーンの地理的な分散性に貢献する。

またdouble jump.tokyoが開発してきた、AWS Key Management Service(AWS KMS)を使ったビジネス向け「Flow Wallet SDK」をオープンソース(MITライセンス)として提供開始。すでに「AWS KMS authorizer (signer) for Flow blockchain」としてGitHub上で公開している。Flowでサービス展開を行う企業に広く使用してもらうことでFlowエコシステムに貢献するとしている。

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Flowは、Cryptokittiesと、Ethereum上のNFT標準規格ERC-721を生み出したDapperLabsが、新たなブロックチェーンとして開発した。

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現在のEthereumは、ガス代の高騰をはじめとするスケーリング問題に直面していること、コンシューマー向けのレイヤー1ブロックチェーンが存在しないことなどの課題が広く知られており、これに対してFlowは、DapperLabsがゲームやアプリ、またNFTなどのためにゼロから開発したブロックチェーン基盤と位置付けている。

Flowのユースケースとしては、先のNBA Top Shotが挙げられる。NBA Top Shotでは、ローンチしてから2021年2月末までの5カ月間で2億3000万ドルの取引が行われており、世界中から話題を集めている。

double jump.tokyo

2018年4月設立のdouble jump.tokyoは、ブロックチェーン技術を用いたゲームおよびアセットの開発・運営・販売を手がけるブロックチェーンゲーム専業開発会社。

数多くのゲーム(モバイルソーシャルゲーム、PCオンラインゲーム、家庭用ゲームなど)およびプラットフォームの開発・運営、ブロックチェーン技術および暗号資産を含むファイナンスにおけるノウハウを有するメンバーが参画している。

同社のブロックチェーンゲーム「My Crypto Heroes」(マイクリプトヒーローズ)は2019年8月、DappRadarにおいて、ブロックチェーンゲームとして世界No.1のユーザー数、トランザクション数を記録した。

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