耳の聞こえない人でも電話できるようになる「RogerVoice」

RogerVoiceを紹介したい。まさに「技術」のもつ可能性を示してくれる例だと思う。何かを便利にするのではなく、不可能だったことを可能にしてくれるのだ。このRogerVoiceは、世界中いるたくさんの聴覚障害の人たちが電話を利用できるようにするプロダクトだ。このプロダクトなしでは電話を使うことなど思いもよらない人にも手段を提供するのだ。会話の音声をリアルタイムで文字化することで、聴覚に問題のある人でも相手の言ったことを「読める」ようにする。

このプロダクトを産んだフランスのスタートアップは、RogerVoiceに用いた技術につき、1年間ほどの開発を行なってきた。そしていよいよAndroidアプリケーション(そしてiOSアプリケーション)を世に出すためにKickstarterキャンペーンを開始した。簡単に説明すると、このRogerVoiceはある種のVoIPアプリケーションで、流れる音声を文字化するためにインターセプトする。そしてサードパーティーのリアルタイムサービスを通じて文字化処理を行なっているのだ。既に十数カ国語に対応しているようだ。

ちなみに会話のもう一方の方には音声が伝わるので、普通の電話と同様に使うことができる。こうしたサービスの場合、特別なサービスが必要ない側は従来と同様の使い方ができるというのはとても大事なところだろう。もちろんアプリケーションのインストールも必要なく、会話が外部に漏れる心配もない。ただ、必要な人に必要なサービスを提供する存在なのだ。

実のところ今年の4月に、CEOのOlivier JeannelがRogerVoiceのプロトタイプを見せてくれた。彼自身も耳が不自由で、普段の会話の大部分を読唇に頼っているそうだ。しかしそんな彼が騒音に満ちた部屋で電話による会話をしてみせてくれた。その時点ではアプリケーションの完成度はとても低いものであるように見えたが、しかしともかく、相手の会話が聞こえなくても電話をすることができるという事実には大いに驚いた。

たとえば、テキストメッセージやメールなどを使いこなせないのおじいさんやおばあさんと話がしたくなることがあるだろう。あるいは、耳が不自由な中、銀行や医者とコンタクトをとる必要が出るということもあるかもしれない。聴覚異常のない人でも、いろいろと適用事例を考えることができるに違いない。

ちなみに、今のところは文字を音声化する備わっていない。すなわち、発話障害がある人に電話利用の機会を提供するものとはなっていない。また、電話をかけるときにこのRogerVoiceを利用することができるが、今のところは受話側では対応できない。

閑話休題。テクノロジーは空を飛ぶ車などの夢を人類に提供してきた。しかし実際のところは、テクノロジーははるかに実現容易なことばかりをターゲットとしているように見える。現代社会に生きていれば、決して不可能ではないことを、ちょっと便利にするためにばかり、テクノロジーが用いられているようにも思えるのだ。

スタートアップのファウンダーたちは、しばしば「世界を変える」ということを口にする。確かに、本気でそう考えているスタートアップもあるのだろう。数多くの人の生活をちょっと便利にするというのも、確かに素晴らしいことであるとは思う。私もそれは認めたいと思う。ただ、テックには、もっと大きな可能性があるのだ。

技術的に見れば、RogerVoiceに特別なところはない。VoIPの仕組みを活用したプロダクトであるに過ぎない。しかし、技術的に優れていることがすなわち革新的であるということにもならないのだ。現実に存在する問題に如何に対処するのかというのがプロダクトの真価であると言えるだろう。

テクノロジーは、これまでにもコミュニケーションの在り方、情報共有の仕方、あるいは学習スタイルといった面で変革をもたらしてきた。人、モノ、サービスの新たな関係を世の中に実現してきた。写真についてみても、以前は誰もが同じアプリケーションを通じて、写真をシェアして楽しむなどというやり方は存在しなかった。そうした「革新」のメリットは認めるものの、ただし、「便利さ」ということばかりに注目してしまい、見逃してきたものもあるのではないかと振り返ってみたい。

そうした観点から、このRogerVoiceのことを見つめてみたいのだ。数億を稼ぎだす技術が用いられているというわけでもない。世界中の誰もが使い始めるというわけでもない。しかし、多くの人の生活スタイルを変える可能性をもつものだ。世界をまきこむ大流行を巻き起こすわけでもない。しかし、こんなテックが数多く生まれてくればと願う人も多いように思うのだ。

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(翻訳:Maeda, H


オープンソース、多言語対応のカタログ管理ソフト、AkeneoがExcel地獄の解消を目指す

ラグジュアリーなブランド製品で有名なパリの某社の場合、新作コレクションのウェブ・カタログを完全にアップデートするのに4ヶ月かかるという。大勢の人間がいろいろな場所で大量の複雑なデータをExcelに出し入れするのは悪夢のような作業だ。そうこうするうちにもう次の新作コレクションが登場する季節になってしまう。こういう状態を改革しようというのがAkeneoの狙いだ。

Akeneoは製品情報のCRMというべきソフトウェアで、単一のデータベースに製品情報を追加していくだけで、ウェブ版、、モバイル版、印刷版のカタログが簡単に制作できる。またサードパーティーのソフトウェアとの連携も可能だ。このフランスのスタートアップは最近、Alven Capital.から230万ドル(180万ユーロ)の調達に成功した。

共同ファウンダーでCEOのFrédéric de Gombertは電話インタビューに答えて、「製品情報をカタログ化するにはたいへんな手間がかかる。現在、ほとんどの会社では手作業でExcelファイルをアップデートしているというのが実情だ。そこでこの作業には多額の人件費がかかっている。われわれのシステムはこれを画期的に効率化できる」と説明した。

基本的にAkeneoはExcelや各種のERP(企業資源計画)ソフトと連動するオープンソースの情報管理ソフトだ。オープンソースなのでユーザー・コミュニティーは互いに独自のカスタム化を公開、共有してさらに価値を高めていくことができる。

ただし、高度な機能や製品サポート、教育研修などが必要であれば、Akeneoから有料のサービスが受けられる。このエンタープライズ・プランは年額$3万2000ドル(2万5000ユーロ)から用意されている。この料金はIBMやOracleが提供する同種のサービスに比べれば非常に安い。

「私は以前eコマース・システムを開発していた。しかしわれわれが新しいプロジェクトを提供しても、クライアントは必要なデータをどうやって集めたらいいかわからないことが普通だった。それがAkeneoを始めたきっかけだ」とGombertは言う。

AkeneoはフランスですでにAuchan、Cora、Feu Vert、Lagardère Activeなど有名企業を多数クライアントにしている。Akeneoがターゲットにしているのは完全にカスタマイズされた独自システムを構築できるほどの大企業ではないが、Excelと人手だけでは製品情報管理が限界に達しているような中規模のビジネスだ。

Akeneoのもっとも重要な機能は製品情報管理の大幅な効率化だ。ユーザーは製品情報を単一データベースに保存し、簡単な操作で異なるチャンネルに送り出すことができる。サイクル時間は平均して60%から80%短縮されるという。

Akeneoの社員は現在15人だが、国際的な拡大を計画中だ。オープンソースで世界どこでも自由にダウンロードできるという特性を生かし、すでにドイツやアメリカへの展開の糸口をつかんでいる。もちろんその他の国も視野に入っている。

Akeneoを利用する効果は時とともに拡大する。特に新しいチャンネルにカタログ情報を流す必要が生じたときの効果が大きい。

Akeneoはフランスを代表するテクノロジー・スタートアップだ。一見すると地味だが、現実のビジネスで切実に必要とする課題に着実に応えている。今後の課題はよりいかにしてより広い市場にアピールし、ユーザーを獲得してていくかだろう。

Photo credit: Foad Hersi under the CC BY-ND 2.0 license

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


レシピのSoundcloudを目指すYoumiam、41万ドルを調達してフランスから世界へ

フランスののYoumiamというスタートアップが、レシピ共有のためのウェブサイトを新しくし、そして41万ドル(30万ユーロの資金を調達した旨をアナウンスした。出資したのはエンジェル投資家のPatrick Robin(24h00)、Thierry Petit (Showroomprivé)、およびDenis Chavanis(Nestlé Watersの前Managing Director)だ。Youmiamは、レシピのブラウズ、作成、共有を簡単に行うためのサービスだ。

扱うのはレシピに限定しているが、YouTubeやSoundcloud風の「ソーシャル」機能も充実している。レシピというのはシェアするのに適したコンテンツでもあり、そこに着目してブログやウェブなどで簡単に共有することができるようにしているのだ。また、サービスサイトでは自分の投稿したレシピやシェアしたレシピなどをまとめたプロフィールページも作成される。もちろん他の人をフォローして、レシピを軸としたいろいろな人との繋がりを構築することもできるようになっている。

サービスに登録してサイトを訪問すると、画面いっぱいにアペタイザー、アントレ、あるいはデザートなどが多数表示される。これは食事関連専門のPinterestといった趣きだ。気になる写真をクリックすると、材料と調理時間が表示されるようになっている。そこからレシピを見ることもできる。レシピはたいていの場合スライドショー形式で提供されている。各スライド毎にステップバイステップで説明してくれるものとなっているわけだ。

自分でレシピを作ろうとする場合、用意されているフォームを埋めるていけば完成するようになっている。長い文章は登録することができなようになっている。短い文に限定することで、レシピを見やすくしようと心がけているのだろう。

検索機能も充実していて、これがサービスの人気の元なのかもしれない。作りたいものはあるものの、作り方がわからない場合など、もちろん検索すれば作り方がわかる。また、調理時間や材料、料理のタイプ、あるいはキーワード(#easy、#summer、#chocolate等)で検索することもできる。

Youmiamはレシピを再利用可能なコンテンツとして扱い、またSEO対策も施すことにより、他のレシピサイトと一線を画すものとなっている。また、人気レシピをたくさん公開している人が目立つような仕組みも取り入れていて、他のレシピサイトを見るよりもおいしい料理を作れる可能性が高くなってもいる。

2013年に、5人による開発チームは、パリで開催された3ヵ月におよぶMicrosoft Ventures Programに参加した(以前はMicrosoft Sparkと呼ばれていた)。同時期に参加グループの中で。最初に多額の投資を受けるサービスとして成長した。今回の41万ドルの他にも、Xavier Niel(フリー)、Jacques-Antoine Granjon(Vente-privee.com)、Marc Simoncini(Meetic)が、若いアントレプレナーを支援するために立ち上げた101projetsより3万4000ドル(2万5000ユーロ)の資金を調達している。

今回調達した資金は、サービスの英語版の立ち上げ(2月を予定している)、モバイルアプリケーションのリリース、レコメンド機能の充実などをはかる予定にしている。英語版の運用を始めて、世界を相手にしていくにあたり、これまで以上にコミュニティを盛り上げていく必要が出てくるだろう。サービスの動向を見守っていきたい。

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(翻訳:Maeda, H


フランスの‘反Amazon法’が成立すると送料無料がなくなる–それで個人書店は持ち直すのか?

Cultural exception文化例外)がまた襲ってきたようだ。フランス議会は数日後にほぼ確実に、いわゆる’反Amazon法’を成立させる。この法律が成立するとAmazonは、書店を保護するために、送料無料で本を売れなくなる。この法律は、本の値引き販売を禁じているLang Lawラング法)の建て増しみたいなものだ。

フランスの本の価格は、外国人にとって分かりにくい。1981年にフランスの文化相が、本の定価販売を義務付ける法律、ラング法を制定した。それ以降、出版社は定価制を採用し、本の裏表紙に価格を印刷することになった。

大手書店チェーンも個人書店も含め、すべての書店が、本を定価で売ることしかできなくなった。ただし例外があって、定価の5%までのディスカウントは認められている。多くの書店がこの例外規則を利用しているが、わずか5%をディスカウントと称するのは、地球広しといえどもフランスの本屋さんぐらいしかいないだろう。

1981年の制定当時は、個人書店を大型書店チェーンから守ることが目的とみなされていた。法律は功を奏し、今でもフランスでは個人書店が健在だ。それにその後、イタリア、ポルトガル、スペイン、ドイツなどでも本の定価制を法律で保護するようになった。

でも当時の書店は、Amazonという恐ろしい怪獣の来襲を予期していなかった。今ではAmazon以外にも、Fnacなどいくつかのフランス固有のネット書店が町の本屋さんの経営をおびやかしている。

ネット書店の二大大手AmazonとFnacは、法律で許されている5%の値下げとともに、一律の送料無料で町の本屋さんに対抗することを選んだ。本屋さんたちはそれを、不当競争とみなした。

文化相曰く送料無料の禁止はAmazon敵視策ではない

Amazonはタックスヘイブンとしてルクセンブルグを利用しているから、送料無料でも利益があり、マーケットシェアを拡大してきた。フランスでの同社のシェア拡大のやり方はほかの国と同じで、薄利多売*の徹底だ。もちろん理論的にはAmazonは、いつでもその逆を行って、値上げと利幅増大に転向できる。〔*: 在庫回転率が年30~40(一般書店の10~15倍)、毎日大量の日銭が入るが納入者には90日済度。〕

今日、フランスの文化相Aurélie Filippettiは、その法律が反Amazon法とあだ名されていても、実際にはAmazonという特定企業を対象とする法律ではない、と述べた。今後のオンライン書店はAmazonにかぎらず、5%値引きしてさらに送料無料にすることは許されない。

定価制が競争の活性化に導く理由

本の定価制といえば、もう一方に、合衆国におけるAppleのeブックの定価制がある。Appleのそれは、自由競走の妨害として有罪になった。

2010年にiBookstoreが発足したときには、いわゆる代理店タイプの価格モデルがeブックストアを席巻した。Appleは出版社に定価を維持させるが、それと同時にKindleなどほかのeブックストアでも定価販売を強制される。

そのことが司法省の逆鱗に触れ、省は反トラストの嫌疑で告訴状を書いた。しかし、小売レベルでの価格付けを自由にしたことによって、むしろ競合他社はつまづき、Nookのeブックの売上は落ち込んだ。ほかのストアでも、同様だっただろう。

今では、Amazonは押しも押されもしないマーケットリーダーだ。司法省は代理店型モデルを有罪化したことによって、独占に近い状態を招いた。出版社との利益分有交渉においては、Amazonが断然有利なのだ。

フランスの’反Amazon法’では、政府はその逆を行き、個人書店や小規模出版社を守ろうとしている。しかし、それは行き過ぎだろうか?

12月に、フランスの書店チェーンの二番目の大手Chapitreが倒産した。2014年には、オンライン書店に苦しめられている本の業界に、1230万ドルの救済資金が投じられる。

そこで問題は、送料無料をめぐるこの法律は、単なる行き過ぎか、それとも、これで十分にフランスの2500軒の個人書店が救われるのか、だ。

(画像クレジット: Casey Bisson)

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


プレゼン用ウェブアプリ、Bunkrは優れもの―HTML5出力でどんなデバイスでもブラウザだけでスライドが再生可能

フランスのスタートアップ、BunkrはPowerPointキラーになろうという野望を抱いている。

このウェブ・アプリを使うユーザーはビジュアルなコンテンツをさまざまな場所から収集、編集してスライドに仕上げることができる。UIはよく考えられており、デザインも美しい。スライドショーはHTML5ファイルで出力されるので、パソコンでもタブレットでもスマートフォンでも自由に再生できる。またPDF、PPT形式でも出力できる。

共同ファウンダーで最高マーケティング責任者のÉdouard Petitは私の取材に対して「われわれは役立つ情報を収集、分析してクライアントのために戦略を立案するのに使う以上の労力を美しいPowerPointプレゼンを準備するために費やすという本末転倒に陥っている。そこでBunkrではどうやったら最小限の時間でわかりやすいスライドが制作でくるかを追求した」と語った。

その回答はこのプロダクトの2つの側面、情報の収集とプレゼンの制作に現れている。PowerPointでは役に立つ画像や動画をウェブで検索し、ダウンロードして、スライドに体裁よく配置することに非常に長い時間がかかる。また情報の収集と保存にはEvernoteのような別のアプリを使わねばならない。

これに対してBunkrはこのプロセスをすべて引き受ける。 単なるスライド制作ツールではなく、Evernote的なクリッピングと整理のツールでもある。ウェブで役に立ちそうな情報を発見したらブックマークレットでチェックするだけで、Bunkrのアカウントに保存される。ユーザーは画像、ビデオ、ウェブページ、ノート、引用などをこうして処理できる。

Bunkrは伝統的スライドショーを枠組みを守りながらあらゆるデバイスのあらゆるブラウザで自由に再生できる能力を加えた

その結果はテーマごとにPinterest風のグラフィカルなデータベースに保存される。毎日なんらかのプレゼンをしなければならないようなエグゼクティブ―つまりPowerPointのパワー・ユーザーにとっては非常に魅力的な機能yだ。

Petitは「“共同ファウンダーと私は以前、広告代理店に勤務しており、毎日の大半の時間をプレゼンの準備に使っていた。それがBunkrの開発を思い立った理由だ」と語った。

ただしプレゼンの構造に関してはBunkrはたとえば、Preziのように過激に新しくはない。これはPowerPointユーザーには安心できる要素だ。しかしPreziなどのライバルとの最大の違いはBunkrがフルHTML5出力をサポートしている点だ。Flashプログインを必要とせずにブラウザなどのデバイスで再生できるl.スマートフォンで再生するにも専用アプリをインストールする必要がない。ユーザーはプレゼンへのリンクを送るだけで、相手はどんなデバイスのどんなブラウザでも再生できる。またYouTubeのエンベッドも簡単だ。

Google Driveのプレゼンテーション・ウェブアプリと同様、複数のユーザーが同時にスライドを同時に編集できる。サービスを使い始めるのは無料だが、HTML5ファイルやPPTフォーマットでダウンロードせずにオンラインで同時に3つ以上のプレゼンを保存しようとすると、月額2.50ユーロ(日本からは3ドル/月)の利用料金がかかる。現在、7000ユーザーのうち200人が有料契約をしているという。

Bunkrはフランスのルーアンに本拠を置くTheFamilyアクセラレータ参加のスタートアップで、年内にもシード資金調達のラウンドを行う予定だ。しかしプロダクトはすでに完成しており、出来は非常に良い。これだけのデザイン力と技術力があればBunkerが有力なPowerPointのライバルに成長できる可能性は十分ある。まずは試してみることをお勧めする。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+