YouTubeネットワークは明日の大型メディア企業だ

ここ数年で、YouTube上にはマルチチャネルネットワーク(MCN)がものすごく増えた。彼らは、チャネルを多くし、オーディエンスを増やすことによって、ビデオ作品からの収益を上げようとしている。これら、YouTubeをベースとする収益目的のビデオネットワーキングのことを、通常は“YouTubeネットワーク”と呼んでいる。しかし目標は同じでも、その達成方法は各ネットワークによりまちまちだ。

ぼくは先週いっぱい何をやっていたかというと、ロサンゼルスにオフィスのあるこれらYouTubeネットワーク各社を訪ね回っていたのだ。Big Frame、Fullscreen、Machinima、Maker Studios、Tastemade、ZEFRなどなどは、それぞれ、どこがどう違っているのか。ビデオの作者たちへの待遇は、どうなっているのか。

コラボレーションとコーディネーション

YouTuberでビジネスをしようとする者たちはまず、コラボレーションによってオーディエンスを増やそうとする。つまりAさんとBさんがコラボレーションして、それぞれ相手のオーディエンスを自分のオーディエンスにもする。彼らのチャネルにサブスクライブしているオーディエンスの多くが、とくに嫌いでもないかぎり、新たに増えたBさんAさんのビデオも視聴するだろう。

Big FrameとMaker Studiosは、この方法で人気クリエイターたちの作品をたくさん集めて成績を上げている。視聴者が増え、会員も増え、そして結果的に広告収入の源泉である視聴数(ビュー数)も増える。

コラボレーションを広めようとしているのは、MCNだけではない。YouTube自身が、多くのクリエイターを傘下に集めるために、本格的で大規模なプロダクション施設YouTube Space LAを開設した。スタジオがあり、撮影機材があり、ビデオのクォリティを上げるためのポストプロダクションの施設や機材もある。またこの施設はコミュニティセンターとしても利用され、いろんなソーシャルなイベントや教育訓練のためのワークショップに、年間を通じ多くのクリエイターを集めている。

古き良き日のハリウッド的プロダクション

ハリウッドをハリウッドたらしめているものは、大作の商業コンテンツを作る意志だ。そしてYouTube上のMCNたちも、単純にクリエイターを集めてコラボレーションさせ、彼らにベストプラクティスのリストを与えるだけでなく、視聴者を満足させる、価値の高いオリジナルコンテンツを作らなければだめだ、と気づきつつある。

これまでYouTubeでは、視聴者がカジュアルな見方しかしないので、ビデオはなるべく短くすべし、とされていた。でも最近では、時間をかけて複数のビデオをじっくり見るタイプのオーディエンスが増えつつある。そのため、長時間ビデオが徐々に増え、またそのためのプロダクション投資も増えている。

その方面でいちばん意欲的なのが、たぶんMachinimaだ。同社はMortal Kombat: Legacy(今では第二シーズン)やBattlestar Galactica: Blood & Chromeなどに投資して、YouTube上の長時間ビデオの限界を模索している。そして今のところ同社は、視聴者の熱心な視聴態度から、“これで行ける!”という前向きの感触をつかみつつある。

またMakerやTastemadeなどは、Machinimaのようにシリーズもののコンテンツを作るのではなく、作品の質の向上に力を入れている。両社とも、クリエイターたちに使わせる専用のスタジオがあり、そこで彼らのコンテンツを作らせる。Makerでは、クリエイターたちはスタジオのセットを再利用できる。一方Tastemadeは、キッチンのセットを何種類も作ってクリエイターたちに使わせている。

特定ニッチや業種に焦点

最近では、オーディエンスを特定のニッチや消費者特性、あるいは特定の業種業態に絞ったビデオ制作が増えている。この路線を最初にやり始めたのMachinimaだが、同社は最初、ビデオゲームのファンの男の子、という層に着目した。しかし最近では、そういうニッチ路線を行くYouTubeネットワークが増えている。

たとえばTastemadeの場合は、最初から“グルメ指向”でスタートした。食べ物に関心のある人たちは、相当な視聴数、ひいては広告収入を、期待できる層なのだ。またDanceOnは、その名のとおりダンスファンを対象としている。

オーディエンスの層を特定しないネットワークも、個々の企画では層化のきざしがある。たとえばBig Frameは、都市住民のためのForefront、ファッションと美容に絞ったPolished、女性クリエイターのためのWonderly、性的少数者層のためのOutlandish、などを作っている。

技術の向上

商用プロダクションとなると、ビデオの高品質化が重要だ。しかし視聴者増に欠かせないのは、チャネルそのものの技術的管理だ。そのために、FullscreenやZEFRはYouTubeネットワークが自分のチャネルの視聴率や広告収入の動向などをチェックするためのダッシュボードを提供している。

Fullscreenが最近作ったCreator Platformは、ビデオチャネルを管理するためのツールだ。最初はアクセス分析と広告収入を見るためのダッシュボードだったが、今ではクリエイターたちが自分のチャネルを良くしていくためのいろんな情報を提供している。

一方ZEFRは、YouTubeにアップロードされた、大手メディア企業に著作権のあるコンテンツを見つける。昔は、ファンが勝手にアップロードしたそんなコンテンツは無条件で取り下げられたが、今では著作権保有者にとってお金を稼ぐ手段だ。今やZEFRは、このサービスの対象をメディア企業だけでなく一般企業にも拡大し、悪質ビデオの発見などに役立てている。

FullscreenとZEFRはどちらも、自社でコンテンツを制作しているわけではないけれども、YouTubeネットワークとそのコンテンツをビジネスとする企業であることには変わりない。

次にやってくるメディア企業とは

今私たちは、ビデオの未来へ向かう曲がり角にいる。次世代の大型メディア企業はYouTube(など)の上に生まれる。テクノロジと伝統的なプロダクション技術の両方を身につけた彼らが、今の大手メディア企業の敵にもなりパートナーにもなる。しかしそこまで昇りつめるYouTubeネットワーク企業は、アートにおいても、サイエンスにおいても、プロダクションにおいても、コンテンツにおいても、そして運においても、大きく恵まれた企業でなければならない。

写真クレジット: chelsea(:, Compfight ccより。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


YouTubeネットワークFullscreenがオーディエンスの調査と成長を助けるプラットホームをローンチ

YouTubeネットワークと呼ばれるサービスは、クリエイターたちに制作支援を提供したり、ビデオに関してコラボレーションできる人たちを結びつけたりする。しかしここでご紹介するFullscreenは、クリエイターたちにいくつかの技術的なツールを提供する点で独特な存在だ。

それらのツールを組み合わせた同社のCreator Platformは、自分のネットワークからビデオを配布するクリエイターたちに、視聴者数を調べたりビデオを管理するためのより良い方法を提供する。ユーザにはダッシュボードが提供され、そこからチャネルのアクセス分析や収益報告を見ることができる。つまりクリエイターは、一つ一つの自分のビデオについて、そのYouTube上の‘成績’を知ることができる。また、視聴のパターンや、トラフィックのソース(起源)、FacebookやTwitterなどソーシャルネットワーク上の共有の広がり、なども分かる。

さらに、ビデオの発表時期のスケジューリングなど、ビデオライブラリの管理方法も提供される。クリエイターが自分のビデオ用に音楽のライセンスを取得するためのツールもある。それに、ビデオクリエイターの多くがミュージシャンでもあるので、このプラットホームから自分の音楽のライセンスを提供することもできる。

そしてFullscreen Gorillaと呼ばれるツールを使うと、企業や製品の広告キャンペーンに自分のビデオを参加させられる(下図)。つまりFullscreenは、クリエイターたちの収益化(monetize, マネタイズ)も助けるのだ。

FullscreenのCEO George Strompolosの説では、“今日のクリエイターは、自分自身のためのメディア企業でもある”。つまり、ビデオを撮影し編集しアップロードするだけでなく、広告主たちとの交渉や、自分とコラボレーションできるほかのクリエイターの発見など、経営管理的な仕事も多い。Creator Platformは、そういう方面の仕事を手伝ってくれる。

しかしFullscreenのネットワークを利用するのは、クリエイターだけではない。たとえば、企業のビデオのマーケティング効果の測定を代行するスタートアップもある。彼らは、視聴者とコンテンツとの対話の様相を調べて、消費者の好感度などを判定するのだ。また企業自身もこのプラットホームを利用して、自分のビデオチャネルのパフォーマンスを競合他社のそれと比較できるし、YouTube上の影響力の大きいカリスマ的人物を見つけて自社のメッセージを広めてもらう、といったこともできる。

そのため、NBCUniversalやRyan Seacrest Productionsなどもビデオの管理と視聴分析のためにFullscreenを利用している。2011年にローンチした同社はその後急速に成長し、今では同社のプラットホーム上に15000あまりのチャネルがある。視聴数や会員数でも同社は最大のネットワークで、月間のビデオ視聴数が25億あまり、クリエイターたち全員が抱える会員総数は2億を超えている。

Fullscreenは最近、The Chernin Groupが仕切りComcast VenturesとWPPの投資部門WPP Digitalが参加した投資ラウンドにより、約3000万ドルを調達した、と推測されている。社員数は150名あまりで、主にロサンゼルスのオフィスに勤務する。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))