スタートアップと投資家のコミュニケーションを効率化する「FUND BOARD」のケップルが3000万円を調達

スタートアップと投資家のためのファイナンスプラットフォーム「FUND BOARD」を運営するケップルは4月25日、複数の個人投資家を引受先とした第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

同社に出資したのはベクトルやオークファンなどで社外取締役を務める西木隆氏、ベインキャピタルの日本オフィス立ち上げに携わった末包昌司氏、医療法人やPEファンドなどの役員や顧問を務める提橋由幾氏を含む4名。金額は約3000万円で、累計の調達額は5000万円ほどになるという。

ケップルでは2018年6月に投資家ユーザー向けのサービスを正式にリリースする予定。それに向けて本日より事前登録の受付を開始した。

FUND BOARDはスタートアップと投資家のコミュニケーションを効率化することを目的としたサービスだ。双方間での資料や情報共有、情報管理における負担削減を軸に複数の機能を開発。2017年7月にベータ版を公開した。

スタートアップ向けにはオンライン上での資本政策の作成、株主情報やストックプションの管理といった機能を提供。投資家向けには投資先情報の一元管理、ミーティングメモの作成、投資先への一括資料依頼や提出状況の確認機能を提供している。

ケップルの代表取締役を務める神先孝裕氏はあずさ監査法人の出身。2013年にKepple会計事務所を立ち上げ、主に税務やファイナンス業務の面でスタートアップの支援をしてきた。FUND BOARDも神崎氏自身がスタートアップと日々やりとりする中で感じた、コミュニケーション面の課題を解決するために生まれたものだ。

ベータ版はこれまでに約150社が導入。そのうち100社ほどがスタートアップ、残りの50社が投資家だという(50社中10〜20社がVC、その他が事業会社や個人投資家)。

「反響はあったものの、全体的にはあまり継続されなかったというのが正直なところだ。これは主にUI/UXの点で使い勝手に課題があったためだと考えている。一方で複数拠点を持つVCが投資先の情報管理やレポート共有の目的で頻繁に使ってくれているケースもあった。ニーズのある機能をベースにしつつ、デザインなどをアップデートしたうえで正式にリリースする」(神先氏)

まずは6月を目処に投資家向けのサービスを公開する予定。コンセプト自体はベータ版から大きく変わらず、投資家のポートフォリオ管理を楽にすることだ。

特にVCでは数名で数十社の投資先とやりとりをするケースが多い。通常はスプレッドシートやエクセル、ファイルストレージ、メールやチャットといった複数のツールを使い分けながらコミュニケーションや情報管理を行っていくことになる。

「目指しているのは投資家が複数のツールをまたぐ必要がなく、FUND BOARDにアクセスすれば欲しい情報が全てまとまっているという状態。バーティカルなEightのような形で起業家の名刺を読み込めばシステム上に情報が登録され、「投資済み」「投資検討中」といったステータスごとに管理できるデータベースを作れるようにする。そこに各企業に紐付く形でファイルやメモがアップロードされていく仕組みを考えている」(神先氏)

決算書類を作る際など、投資先へ一括で資料提供依頼ができる機能もアップデート。投資先のスタートアップがFUND BOARDを使っていなくても一時的なユーザーとして扱い、送られてきたメールにあるリンクから1クリックで資料の提供ができるようになる。

「チャットやメールでやりとりをしていると、様々な場所にファイルが分散して確認漏れが生じる原因になる上に、ダウンロードしたファイルを再度ストレージにアップロードする手間も生じる。この負担を極力なくしていきたい」(神先氏)

正式リリース後はVCについては人数ベース、個人投資家については投資先の社数ベースで課金をする方針。夏頃を目処にスタートアップ向けのサービスもリリースする予定のほか、チャット機能や条件合意をスムーズにする機能の提供も検討していくという。

「海外ではスタートアップがオンライン上で資本政策を作れるサービスをいくつかあるが、スタートアップと投資家間のコミュニケーションにフォーカスしたものはない。FUND BOARDでも資本政策はサポートするが、まずは日々の情報共有を効率化することで、双方がより本質的な仕事に時間を使えるようにしたい」(神先氏)

投資家を含むケップルのメンバー。後列の右から3人目が代表取締役を務める神先孝裕氏

スタートアップと投資家の情報共有のムダをなくす「FUND BOARD」、ベータ版が公開

スタートアップと投資家は、チャットでのやりとりから日々のミーティング、週次や月次のレポート、株主総会と、さまざまなかたちで情報を共有している。もちろんすべてのタイミングというわけではないが、スタートアップはその時々で投資家向けに資料を作り、共有する必要がある。しかもそれぞれ求められるフォーマットが異なることもあるし、そもそもメールで都度送るなんてこと自体が手間だ。一方の投資家にしても、投資先スタートアップ各社の資料を集め、管理するだけでもそれなりの時間がかかってしまう。ケップルが7月24日にベータ版を公開した「FUND BOARD」は、そんなスタートアップと投資家のコミュニケーションの「ムダ」をなくすためのサービスだ。

FUND BOARDはスタートアップと投資家とのコミュニケーションの効率化を進めるサービス。両者にはまずダッシュボード上での資料の共有機能が提供されるほか、スタートアップ向けには資本政策の作成や株主名簿やストックオプションの管理といった機能などを提供。投資家向けには投資先の一覧管理やミーティングメモ作成、資料提出状況の管理といった機能を提供する。また、エンジェル税制の判定機能なども盛り込んでいくという。

ベータ版のサービスは全機能無料。将来的には投資家側に月額課金の機能を盛り込むことを検討する。似た領域のサービスとしては、freeeが4月にスタートアップと投資家の間でリアルタイムに財務データを共有する機能「freee VCアドバイザーアカウント」を提供している。

サービスを提供するケップルは2015年2月の設立。代表を務める神先孝裕氏はあずさ監査法人の出身で、2013年にはKepple会計事務所を設立。スタートアップの経理業務やバックオフィスの支援、資本政策や事業計画などの策定などを手がけてきた。

その業務の中で課題となったのが、冒頭にもあるスタートアップと投資家のコミュニケーションだ。神先氏は創業時より独立系ベンチャーキャピタルのSkyland Venturesの投資先のほとんどを支援しているが、同社の投資先だけでも約40社。各社にメールで資料を請求し、受け取り、整理するというコミュニケーションに限界を感じていたという。この経験をもとにケップルを設立。FUND BOARDを開発するに至った。ケップルでは今後FUND BOARDの機能拡充を進めるほか、人材や不動産など、スタートアップの業務を支援するサービスを提供することを検討している。