ゲーム開発会社のオリフラム、コロプラから資金調達–スクエニ・カプコン出身クリエーターが起業

スマートフォン向けゲームを開発するオリフラムは2月17日、コロプラからの資金調達を実施したことを明らかにした。

調達額は非公開だが、オリフラム代表取締役の池田隆児氏は、「ゲーム開発は価格が高騰している。ネイティブアプリでは大手開発会社の場合1.5億〜3億円程度になる。我々は3つの開発ラインを持つ予定で、その程度の資金は調達している」と語っており、少なくとも数億円の資金を調達していると見られる。またコロプラでは、今回の資金調達にあわせて同社に社外役員1人を派遣する。

コンシューマーゲームのクリエーターらが起業

オリフラムは2014年2月の設立。池田氏をはじめとした主要メンバーは、ディー・エヌ・エー(DeNA)が海外向けに提供している人気ソーシャルゲーム「Blood Brothers」シリーズを手がけてきたが、それぞれルーツをたどるとコンシューマゲームを開発してきた人物ばかりだそうだ。池田氏はスクウェア・エニックスで「キングダムハーツ」「ディシディア ファイナルファンタジー」の両シリーズに、取締役の岩尾賢一氏はカプコンで「バイオハザード」、スクウェア・エニックスで「ファイナルファンタジーXI」にそれぞれ携わってきた。両氏のほか、百度やDeNAでエンジニアを務めた水野貴明氏、ゲームやアニメのイラストなどを手がける吉川達哉氏の4人が主要メンバーで、現在合計8人で開発を進めている。同社は2014年2月末にサイバーエージェント・ベンチャーズから5000万円の資金を調達した。

オリフラムは現在、iOS向けのシミュレーションゲーム「カオスセンチュリオン」を開発中だ。エンジンから自社開発したという同ゲームのデモ動画は以下のとおり。短いがその迫力が伝わると思う。

当初は2014年末にもリリースする予定だったが、2015年春から夏にずれ込むという。池田氏は「これまでのゲームを開発していたときは、『クオリティアップのため発売を延期する』といった言葉が常套句だった」と振り返るが、いざ自ら起業し、資金を調達してと動いたところ、「ゲーム開発、バックオフィス、資金調達、チームビルディングの4つをほぼ25%ずつ行っており、想像以上に開発の時間を取れなかった」(池田氏)のだそう。今回の調達をもとに、開発スピードを加速する。

カオスセンチュリオンがターゲットとするのは英語圏の市場だ。「Blood Brothersシリーズをはじめ、メンバーも海外で成功を収めた経験が多いため、カルチャライズ、ローカライズには慣れていると思っている。マーケティングの観点から行くと『なぜ日本に出さないのか』とも言われるが、まずはどの市場でやりたいかを考えている。投資先にもそれを尊重してもらっている」(池田氏)。


宅配クリーニングのホワイトプラス、YJキャピタルから4億円の資金調達

宅配ネットクリーニング「リネット」を運営するホワイトプラスは2 月10 日、ヤフーグループのコーポレートベンチャーキャピタルであるYJ キャピタルのファンド「YJ2 号投資事業組合」を引受先とする4億800万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

ホワイトプラスは2009年の創業。これまでリネットのほか、宅配トランクルームサービスの「HIROIE」などを展開してきた。2013年8月にはジャフコから3億円を調達し、同年10月にサービスをリニューアル。さらに2014年4月からはタレントの坂上忍さんを起用したCMやテレビ番組のスポンサーをするなどのプロモーションも実施してきた。

リネットは、ネットで商品の引き取り日やお届け日を指定すれば、自宅までクリーニングに出したい衣服を家まで引き取りに来てくれる宅配クリーニングサービス。2013年12月末に4万6548人だった会員数は、2014年12月末には10万5466人と2倍超に増加。サービスを急拡大している。ユーザーは都市部の既婚者が中心だという。またユーザーの増加に合わせて、提携する工場も拡大。リネットのユーザーのクリーニングを専業で行う専用工場が3つ、リネットのクリーニングと自社など他のクリーニングを行う加盟工場が7つあるそうだ。

ホワイトプラス代表取締役の井下孝之氏

「言葉は悪いが、クリーニング事業は自社が成長する手段の1つでしかない。我々はイノベーションが起こっていない領域の事業をネットとリアルで変えていく企業になりたい。その橋頭堡としてのクリーニングサービスでありトランクルームサービスだ」—ホワイトプラス代表取締役の井下孝之氏はこう語る。

今回の調達で同社が進めるのはサービス品質の向上。「2014年までは『営業の会社』にするべきか迷ってもいたが、今は原価率を上げてでもプロダクトをよくすることに注力している。NPS(ネットプロモータースコア:顧客のロイヤルティを測る指標。0から10で評価される)で10をつけるユーザーがいる一方で、1や0というユーザーもいる。イノベーションが起こっていない領域を変えていくと語っている中で、一部の人だけが満足するサービスにしたくない」(井下氏)。例えば今では、梱包時の緩衝用紙の色をどうするか、安全ピンをつけるかつけないかといった細かな点まで話し合っているという。

ところで、4億円を超える調達によってクリーニング工場の買収や自社工場の立ち上げなどはしないのだろうか? 井下氏はこれを否定し「我々はいわばファブレスのプラットフォームになりたい」と語る。さらにこれまでのクリーニング業界について、「努力しないでも(クリーニング店を選ぶ基準が「近くにあること」という明確なニーズがあって)売れる商材だから、品質のいい会社も悪い会社も生き残っていた業界。だから悪い会社があぐらをかいているとことがある。それをディスラプトしたい」とした。同社は2020年までに会員数300万人を目指す。


動画学習サービスのスクー、既存株主とDDHなどから3.4億円の資金調達

動画学習サービス「schoo」を運営するスクーは2月10日、既存株主である伊藤忠テノクノジーベンチャーズ、ANRI、インキュベイトファンドに加えて、電通デジタルホールディングス(DDH)、リンクアンドモチベーションなどを割当先とした総額3億4000万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。今回の増資により経営体制および開発体制を強化するとしている。

先日、本格的にマネタイズを進めると語ったスクーだが、今回の資金調達ではそれに向けて、事業シナジーの強い新規の株主を組み入れているようだ。スクー代表取締役社長の森健志郎氏は「動画(の授業)だけでは最終的にすべての課題解決はできないと考えている」と語り、スクーの受講後により高度な講義を受けたり、リアルでのサポートが求められていると説明する。今回資金を調達したDDHやリンクアンドモチベーションと組むことで、そういった側面も解決したいという。

具体的な話は聞けなかったが、例えばリンクアンドモチベーションは傘下にパソコン教室を展開するアビバを持っているので、今後は両者が連携することで前述の課題を解決することが可能になる。また電通グループであればマーケティング面での協力を仰ぐことができるだろう。教育機関との接点も多いので、ここでサービスやビジネスの連携があるかも知れない。

森氏いわく、動画学習サービスの競争は激化しているという。これはスタートアップに限った話ではない。NTTドコモは2014年から日本版MOOCsの「gacco」を展開しているほか、年商100億円とも言われる米国の動画学習サービス「Lynda.com」が2015年に入って日本版をスタートしている。


LINEが50億円規模の投資ファンド設立–O2O、EC、決済、メディア、エンタメを対象に

LINEは2月9日、投資ファンド「LINE Life Global Gateway」の設立を決定したと発表した。同ファンドではO2O、EC、決済、メディア、エンターテイメント領域のサービスを展開する事業者を対象に投資する予定。これによってLINE プラットフォーム事業のさらなる拡大を目指すとしている。

ファンドの運用期間は2015年2月4日から10年間。約50億円の規模で投資を実行する予定。ファンドに出資するのは LINEおよびLINE Ventures。ファンドはLINE Venturesが運用する。同社の代表取締役には舛田淳氏が就任している。

2014年10月に開催した「LINE CONFERENCE TOKYO 2014」では、「LIFE」をテーマに、より生活に密接したプラットフォームを目指すという内容を発表していたLINE。すでに決済サービスの「LINE PAY」やタクシー配車サービスの「LINE TAXI」、飲食デリバリーの「LINE WOW」といったサービスを展開している。LINE Life Global Gatewayの設立は、こういった取り組みを加速・強化するものだという。

冒頭で触れたとおり対象とするのはO2O、EC、決済、メディア、エンターテイメント領域のサービスを展開する事業者。コミュニケーションサービス「LINE」との連携、LINEを核した周辺サービスの拡充を図っていくという。


200億円規模のYJキャピタル2号ファンド始動–起業経験アリの役員らがパートナーに

ヤフーグループのコーポレートベンチャーキャピタルであるYJキャピタルは1月27日、ベンチャー投資ファンド「YJ2号投資事業組合」設立と、YJキャピタルの組織強化を実施したことをあきらかにした。

新ファンドの組成自体はすでに2014年11月27日に発表されているし、2014年12月に開催されたInfinity Ventures Summit 2014 fall Kyotoの記事内でも組織強化に関する内容を紹介しているがここであらためて整理すると、新ファンド「YJ2号投資事業組合」の規模は200億円。出資の内訳はヤフーが199億円、YJキャピタルが1億円となっている。

また、組織体制としては、これまで代表取締役を務めてきた小澤隆生氏が取締役となり、ヤフーのCFO室長、企業戦略本部長などを務めてきた平山竜氏が新たに代表取締役に就任する。さらに、ヤフー執行役員 パーソナルサービスカンパニー・カンパニー長の田中祐介氏、執行役員 CMOでワイモバイル取締役の村上臣氏、執行役員 検索サービスカンパニー長の宮澤弦氏、アプリ開発室本部長兼イノベーションサービスユニットユニットマネージャー、TRILL代表取締役社長の松本龍祐氏が新たにパートナーとなる。名前を見て気付いた読者もいるかも知れないが、実は新たにパートナーとなるのは、起業経験のある人物ばかり。

ファンドの設立自体は2015年の1月1日。すでにインドネシアで会員制ファッションサイト「vip plaza.com」を展開する VIP PLAZA INTERNATIONALへの出資が決定している。出資額は非公開だが、数億円程度と見られる。

R&Dを外部のスタートアップに出す

10億円からスタートし、30億円まで規模を拡大して投資を行った1号ファンド。投資先としては、フリークアウトやみんなのウェディング、レアジョブが上場。またAmingなども直近の上場を噂されていると好調な状況だ。小澤氏も「手応えはすごくある」と語る。だが一方で投資の規模については「R&Dを外部(スタートアップ)に出すという意味、そしてネット業界へ貢献するという意味でいうと、200億円でもまだまだ少ないくらい」なのだそうだ。

小澤隆生氏

小澤氏の言う「R&Dを外部に出す」というのが気になってさらに聞いてみたのだけれども、YJキャピタルの役割として、技術を持つスタートアップに投資をすることでヤフーグループだけではできないR&Dを外部で行う、という意味もあるそうだ。

「インターネットの世界は、社内だけですべてを作れないというのは明白。それは外に出すべき。外に出すとは『外注する』という選択肢もあるが『資本を出す』という選択肢もある」(小澤氏)

そして機が熟せばそのスタートアップを買収することも視野に入れるとのことだ。新代表の平山氏も「ヤフーなんて、いろいろやっているようでやりきれていないところがある。イノベーションは外で起こる印象があるので、そういったところにはタッチしていたい」と語る。

2号ファンドで注力する分野は創業期、もしくはレイターステージにあるモバイル、IoT、インターネット領域全般のスタートアップ。すでにインドネシアで投資実績があるように、東南アジアでも積極的に投資を行うという。東南アジアでは、コマースや金融といった分野がターゲットとなる。投資額のレンジについては「かっちり決まったものは無いが、ファンドの規模が200億円あるので、当然大きくなると思う」(平山氏)とのこと。またYJキャピタルはキャピタルゲイン目的の投資がメインになる。事業シナジーなどがある案件については、ヤフー本体が投資を検討する。

また小澤氏、平山氏からはコメントを得られなかったが、別の場所では、ヤフー取締役会長である孫正義氏も1号ファンドのパフォーマンスを非常に評価しており、グループ全体として投資に積極的なムードがあるなんて話も聞いている。

元起業家がパートナーになる意味

冒頭でお伝えしたとおりだが、今回新たにパートナーとなる4人は、いずれも起業経験があり、ヤフーへのバイアウトなどを経てグループに参画した人物。彼らを選んだ理由について小澤氏に聞くと「やるからにはとにかく自由で面白いことをやりたかった」ということだが、意識したのはGoogleのCVCであるGoogle Venturesなのだそうだ。

平山竜氏

Google Venturesでは、Googleが買収した企業の代表などが投資を手がけている。Diggなどを立ち上げたKevin Roseなどもそうだ。元起業家が投資担当になることで、実務面でも、精神面でも投資先にとっての大きい価値になっているという。小澤氏は新たな組織体制について、「YJキャピタルは日本で最も起業家がいるVC。ある意味反則ですよ。でも、どうせやるならこういうVCをやってみたかった」と語る。たしかに起業経験のあるベンチャーキャピタリストは日本にもいないわけではないが、僕も1、2人しか思い浮かばない。

新任パートナーは個人でもエンジェル投資を行っているが、それについての制限はしない。また小澤氏もヤフー参画前に行っていた個人投資を再開するという。パートナーらの個人で投資先をYJキャピタルの投資案件として検討する可能性もあるが、新任パートナーは投資委員会に参加させないことで公平性を保つとしている。小澤氏は「今のVC投資はクラブディール。人脈が極めて重要で、どこの会社でなくあなたとやりたいというところに投資する」と新パートナーによるエンジェル投資について語る一方で、「YJキャピタルとしてパートナーの投資先をどう見るかは別だ」とした。

なお小澤氏、平山氏のほか、新パートナーは、YJキャピタルのサイト刷新にあわせて鎌倉武士をテーマにした写真を撮影したとのこと。コーポレートサイトでも見ることができるが、以下にその他の写真(と歴史上のどんな人物に扮しているのか)を掲載する。

YJキャピタル代表取締役の平山竜氏:藤原秀衡

 

取締役の小澤隆生氏:太田道灌

 

新パートナーの村上臣氏:一般的な鎌倉武士

新パートナーの宮澤弦氏:源義経

新パートナーの田中祐介氏:北条時宗

新パートナーの松本龍祐氏:公暁


ViRATES運営のまさか、ANRIから3500万円を調達して動画制作に注力

左からANRIの佐俣アンリ氏、まさかのイセオサム氏、孫良氏、大野和彦氏、須田仁之氏

2014年良くも悪くもネット界隈を騒がせたバイラルメディア。その運営を行う1社が資金調達し、新事業に注力するという。バイラルメディア「ViRATES」を運営するまさかは1月26日、独立系ベンチャーキャピタルファンドのANRIから3500万円の資金調達を実施したことを明らかにした。また金額は非公開だが、元アエリアCFOでスタートアップの支援や投資を手がける須田仁之氏も同社に出資している。同社はこの調達に先駆け、親会社だったブレイブソフトからMBO(経営陣による株式買収)を実施している。

調達した資金はViRATESの運営ではなく、新たに取り組んでいる動画事業にあてる。ちなみにViRATESは現在約月間2000万ページビュー、アプリ版のページビューは全体の半分程度、1日3回訪問するようなヘビーユーザーも多いという。2014年秋からはネイティブ広告を手がけ、ナショナルクライアントを中心に案件も増えてきているとのこと。

新事業で手がける動画は、「YouTuberとテレビ局の中間に位置する」というものなのだそうだ。まさかではすでにテレビ番組の構成作家やフリーのディレクター、編集、出演者など十数人をネットワーク化しているそうで、彼らの制作能力が何よりの強みになるという。同社にジョインしたイセオサム氏も日本テレビの出身で、その後にハロやオモロキの役員を務めている人物だ。

今後は1日1本、おおよそ3〜4分のコンテンツを定期的に配信していき、5月には1日10本配信の体制を目指す。試験的に作成した動画はViRATESのYouTubeチャネルにアップしているが、今後は各種動画プラットフォームにアップロードしていく予定。新サイトも立ち上げるほか、ViRATES事業と分けるため、名称変更も検討中だという。

コンテンツの内容についてはまさか代表取締役の孫良氏は、「テレビ局にはさまざまな規制があって、テレビではできないような面白い企画はいくらでもある」と語る。もちろん法に触れないように配慮するということだったが、90年代に「アポなし取材」で世間を沸かせた日本テレビの「進め!電波少年」や、世界展開する動画メディア「VICE」などをコンテンツの例に挙げているので、それなりに過激なエンタメだったり、オピニオンがあるものだったりを考えているようだ(今は巨大プリンを作ったり、アイドルがミル貝を調理したりというバラエティ的なコンテンツが並んでいるが)。

ただし、最近増えているマルチチャネルネットワーク(MCN)やUUUMをはじめとするYouTuberプロダクションのような動きは考えていないそう。「個人のYouTuberを支援するような動きは出てきているが、我々はそこはやらない。テレビ番組のプログラムを作るのに近い動きになると思う」(孫氏)。将来的には動画広告での収益化を図る。


インキュベイトファンドから若きキャピタリスト――新ファンド「プライマルキャピタル2号」始動

年始にお伝えしたとおり、インキュベイトファンドのFoF(ファンドオブファンズ)として新たなベンチャーキャピタルが生まれている。サムライト代表取締役の柴田泰成氏によるソラシード・スタートアップスもそうだし、1月20日に2号ファンドの組成を発表したプライマルキャピタルもそうだ。

プライマルキャピタルの代表パートナーである佐々木浩史氏は、2012年7月からインキュベイトファンドに参画。アソシエイトとして投資先企業を支援するのと並行して、インキュベーションプログラムの「Incubate Camp」の企画・運営を担当してきた。佐々木氏は1984年生まれの30歳。日本では若手のキャピタリストだ。

そんな佐々木氏だが、実は2014年2月にプライマルキャピタル1号投資事業有限責任組合を組成(インキュベイトファンドが出資)していたという。ファンドは4600万円の小規模ながら、Incubate Campに参加したスタートアップを中心に、エモーシブ、おでん、byus&co.、PurpleCow、ライフスタイルデザインの5社にシード期の投資を実行している。金額は非公開だが、1社数百万円から1000万円程度といったところのようだ。

すでにインキュベイトファンドの記事でも紹介しているが、今回、プライマルキャピタルは新ファンドの「プライマルキャピタル2号投資事業有限責任組合」の組成を発表した。ファンド規模は3億1000万円で、インキュベイトファンドが出資している。2号ファンドではすでに4社への投資を実行している。

2号ファンドの投資対象となるのは「その事業の存在がユーザーの生活(toC)や商習慣(toB)に劇的な変化を生み出す、社会的意義ある事業」とのことだが、Incubate Camp参加者へのシード出資が中心になりそうだ。またインキュベイトファンドではIoT領域の投資を強化するとしているが、プライマルキャピタルでもIoT領域の投資も行うとしている。

佐々木氏はY Combinatorを例に、インキュベーションプログラム参加時にシード出資を行い、プログラム終了時にはインキュベイトファンドを含めた複数のベンチャーキャピタルでの資金調達を行えるようなスキームを作りたいと語る。なお今後は投資に注力するため、Incubate Campの企画・運営担当を探しているところだそうだ。


インキュベイトファンドが110億円の新ファンド――IoTに注力、FoFも

2014年にも様々なスタートアップと出会うことができたが、その中で2015年により注目が集まることが確信できたテーマの1つが「IoT」だ。そういえば11月に開催したイベント「TechCrunch Tokyo 2014」のスタートアップバトルで優勝したのもインクジェットプリンターや専用のペンで回路製作を実現するAgICだった。そして今回インキュベイトファンドが組成した新ファンドでも、IoT関連の投資積極的に進めていくという。

新ファンドは総額110億円、IoTに特化

インキュベイトファンドが1月5日に組成完了を発表した「インキュベイトファンド3号投資事業有限責任組合」は、総額110億円のベンチャーキャピタルファンドとなる。出資するのは産業革新機構、ヤフー、三井住友銀行、Tencent Holdings、セガサミーホールディングス、Mistletoe、東京放送ホールディングス、ミクシィ、日本政策
投資銀行のほか、個人投資家など。聞いたところによると、ヤフーや三井住友銀行が独立系VCに出資するのは今回が初になるそうだ。

インキュベイトファンドのゼネラルパートナーである村田祐介氏に聞いたところ、今回のファンドでは「Global Scale」「Legacy Market」「Enabling」をキーワードに、IoTを軸としたイノベーションを創出するスタートアップへの投資を進めるという。具体的には、次世代メディア、エンターテイメント、ゲーム、コマース、物流、 医療、金融、不動産、自動車、住宅などの領域に注力していくとのことだ。すでに米国で車載用アプリの開発を進めるDrivemodeに出資をしている。

1社あたりの投資金額は、3億〜5億円を想定しているという。ただ村田氏は「大きな金額をコミットするが、この金額でシード投資をやっていく」と強調する。これまでインキュベイトファンドは、起業家育成プログラムの「Incubate Camp」を開催するなどしてシード期の投資に注力してきたところがある。同プログラムの参加者はもともと3000万円のバリュエーションで300万円を出資というスキームだったし、プログラム以外の出資では数千万円前半の出資というケースが多かったが、同じステージに対して桁1つ大きな金額を出資する計画だという。

村田氏は2012年以降に新設されたファンドを取りまとめた金額が約2700億円と説明する(中でも金融系VCなどに比較すると、独立系VCがファンドの担い手として活躍しているそうだ)。しかし、増えたファンドはシリーズAを対象としたものばかりで、シリーズAの手前のシードファイナンスを手掛けるファンドは増えていないと語る。もちろん山田進太郎氏率いるメルカリのように、シリアルアントレプレナーがシードで大型調達をして勝負をするというケースはあるが、「結局大きな勝負をできるスタートアップはほとんどいなかった」(村田氏)と語る。

ではそんな大型調達した資金を使ってきっちり成長できる起業家をどうやって見つけるのか? 村田氏はその1つの取組みとして、インキュベイトファンドが手掛ける「Fellow Program」について教えてくれた。このプログラムはインキュベイトキャンプ ゼネラルパートナーの和田圭佑氏が中心となって立ち上げたもので、大企業の成績優秀者や外資系金融マン、何かしらのプロフェッショナルなど、本業を持ちつつスタートアップについて調査・研究し、毎月1回発表を行うというもの。これによって商社やメーカーから士業、官公庁まで、広く優秀な人材を集めているのだそうだ。「特にこの半年はIT・ネット業界以外でも人と会うようにしてきた。プログラムでも他業界の中堅、エースと出会えたと思っている。IoTはインターネットの人たちだけでは作れない。既存産業側のプレーヤーと一緒になって立ち上げていきたい」(村田氏)。

ファンドオブファンズでシード投資を更に活性化

村田氏は「シードファイナンスを増やす」という観点からインキュベイトファンドが取り組んでいる活動についてさらに教えてくれた。インキュベイトファンドでは、若手キャピタリストのファンドに対して出資(ファンドオブファンズ:FoF)も行っているという。

実はサムライインキュベートについては1号ファンドから出資をしているし、前述のIncubate Campで優勝したサムライト代表取締役の柴田泰成氏の「ソラシード・スタートアップス」、インキュベイトファンドのアソシエイトでもある佐々木浩史氏の「Primal Capital」のほか、スタートアップ支援を行うインクルージョンジャパンが立ち上げるファンドにも出資している。さらに海外でもFoFでファンドの立ち上げを準備中だそうだ。

「赤浦(インキュベイトファンドのゼネラルパートナーである赤浦徹氏)がいつも言っているが、日本でスタートアップが増えない理由の1つはキャピタリストが増えないことにある。そしてそれはサラリーマンVCではなく、腹をくくっているキャピタリストでないといけないと思っている」(村田氏)


サイバーエージェント・ベンチャーズが50億円規模の新ファンド–藤田ファンドとの違いは?

直近では企業向けの総菜販売サービス「オフィスおかん」を提供するおかんや、モノづくりプラットフォーム「rinkak」を提供するカブクなどに出資しているサイバーエージェント・ベンチャーズ(CAV)。同社が新しいファンドを組成した。

新ファンドの名称は「CA Startups Internet Fund 2号」。これまで運用してきたファンドは総額24億円だったが、新ファンドは総額50億円のものとなる。CAVではこれまで、IT分野のシード、アーリーステージ向けに数千万円出資するということが多かったが、新ファンドでは、同様の分野、ステージにおいて追加投資も含めて最大1億円程度の出資を予定するという。ただし、同社はこれまでも「株式の20%以上を持たないようにする」というスタンスだったそうで、今後もそれは続けたいそうだ。

またCAVではこれまで、クラウドワークス(の吉田浩一郎氏)やKAIZEN Platform(の須藤憲司氏)といった、比較的事業経験の豊富な起業家に対しての出資を重視してきたが、今後はより広い人材に投資をしていくという。

新ファンドの立ち上げにともなって、CAVでは今後、起業家や起業準備中の人物を対象にしたオフラインイベント「Startup Workout」を定期的に開催する。第1回は7月2日の予定で、15人程度の参加を募集中だ。このようなイベントをする背景には、CAVがどうしてもCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)に見られがちだということがあるようだ。CAVは事業会社の子会社だし、当然「CVCか?」と言えばCVCなのだが、「事業会社とのシナジーがあるかどうか」という点にこだわって投資をするわけではなく、キャピタルゲインを求める純投資をしている。そこを改めて伝えていきたいのだという。

CAVと藤田ファンドの立ち位置の違い

ところで以前から、CAVのファンドと“藤田ファンド”ことサイバーエージェント投資事業本部の関係性がいまいちはっきりしないところがあったので、改めてその点について聞いてみた。やはり基本的にはCAVはシード、アーリーステージが対象、そこから先のステージが藤田ファンドの投資領域となるそうだ。シード期にCAVから資金調達し、その後のラウンドで藤田ファンドから資金調達しているクラウドワークスなどはその例とも言える。

ただ一方で、藤田ファンドでは非公開の投資先も含めて比較的若いステージに出資しているケースもあったため、CAVのファンド出資者周辺からは、「(CAVと藤田ファンドは)競合になっており、利益が相反するのではないか」という不満の声が挙がっていた。

このあたりについて、僕は以前サイバーエージェント代表取締役社長 CEOの藤田晋氏から「藤田ファンドでは起業家、創業者を見て出資をする」という話を聞いているし(もちろん市場も事業も見ている上での話だ)、先日新日本有限監査法人が開催したイベントに登壇したCAV代表取締役社長の田島聡一氏が「サイバーエージェントはグループ会社にも独自の文化を認めている。藤田が『ノー』と言っても、CAVで投資できるといったいい文化がある」とグループの多様性に触れている。2人の話は、グループ内で競い合って成長してきたサイバーエージェントの風土そのものが表れているようにも見える。

ただしそんな風土もファンド出資者からすれば不安になりかねない話だ。複数関係者から聞いたところでは——もちろんそういった問題を防ぐためだけでもないようだが——新ファンドは事業会社1社から大半の資金を集めているそうだ。


金融庁「ファンド販売規制」の衝撃、独立系VCが連名で反発の声

金融庁が5月14日に公表した「プロ向けファンド」の販売制限案が、一部のスタートアップ業界関係者に衝撃を与えている。改正案の骨子は、ファンドの個人への販売を1億円以上の金融資産を持つ人に限るというもの。政府は金融商品取引法の政令などを改正し、8月1日から施行する。

こうした動きに対しては6月9日、磯崎哲也氏ほか独立系ベンチャーキャピタリストらが販売制限に反対するパブリックコメントを政府に提出。「日本の成長戦略の成功に大きく関わる独立系ベンチャーキャピタルファンドの新たな組成・発展を著しく阻害しかねない」と懸念を表明している。

プロ向けファンドとは

いわゆるファンド業務(ファンドの運用や販売勧誘)を行う場合は本来、「金融商品取引業」を行う者として金融商品取引法上の「登録」が必要。これに対して、ベンチャーキャピタル(VC)ファンドを含むプロ向けファンドは、「登録」でなく「届出」でよいこととされ、販売勧誘規制が緩和されている。

届出をした業者は、証券会社や銀行などの「プロ投資家」(お役所用語で「適格機関投資家」と言う)が1人でもファンドに出資していれば、49人までは一般投資家もファンドに勧誘できるようになっている。国民生活センターが公開しているグラフによれば、次のようなイメージだ。

規制の背景は消費者トラブル

改正案が公表された背景には、「誰でも勧誘できる」制度を悪用する一部のプロ向けファンド届出業者の存在がある。

国民生活センターによれば、いくつかの業者が不特定多数の一般投資家への勧誘を前提としたプロ向けファンドを組成し、投資経験の乏しい高齢者に「必ず儲かる」と勧誘したり、リスクを十分に説明せずに出資契約を結ぶケースが続出。2012年度に同センターに寄せられたプロ向けファンド業者に関する相談件数は1518件に上り、3年前に比べて約10倍に増えている。

また、プロ向けファンド届出業者の一覧を掲載している金融庁のサイトによれば、4月30日現在で業者の届出件数は3546件。このうち、連絡が取れなかったり、営業所が確認できない「問題届出業者」は614件と、全体の約17%を占めている。

消費者トラブルが相次いだことを受けて金融庁は5月14日、プロ向けファンドの販売先を「適格機関投資家と一定の投資判断能力を有すると見込まれる者」に限定する改正案を公表。ここで言う「一定の投資判断能力を有すると見込まれる者」とは以下を指している。

1)金融商品取引業者等(法人のみ)
2)プロ向けファンドの運用者
3)プロ向けファンドの運用者の役員、使用人及び親会社
4)上場会社
5)資本金が5000万円を超える株式会社
6)外国法人
7)投資性金融資産を1億円以上保有かつ証券口座開設後1年経過した個人

個人投資家からの出資のハードルが高くなる

独立系のベンチャーキャピタリストらが改正案で問題視しているのは、ベンチャー企業の創業や経営、新規上場に精通した「エンジェル」をはじめとする個人投資家からの出資のハードルが高くなることだ。

磯崎氏らが提出したパブリックコメントでは、小規模独立系のVCはエンジェルからの出資に一定割合を依存しているが、今回の改正案はエンジェルの出資が要件を満たさないことになるおそれがあると指摘。その結果、独立系VCの投資活動が阻害される可能性があるとして、次のようにエンジェルの重要性を訴えている。

機関決定を要する会社やファンドからの出資と異なり、エンジェルは意思決定が迅速で、かつ多様な領域のベンチャーに対して関心がありますので、新しい可能性へのチャレンジには不可欠なものであります。このただでさえ少ない日本のエンジェルの活動が、形式的な要件でさらに制約されてしまうことは、日本の今後の成長戦略にも大きな足かせとなってしまいかねません。

端的に言えば「個人はVCに出資するべからず」ということ

パブリックコメントに磯崎氏とともに名を連ねる、East Venturesの松山太河氏はFacebookで、「端的にいえば『個人(エンジェルなど)はベンチャーキャピタルに出資するべからず』『大企業だけはベンチャーキャピタルファンドに出資してよし』という内容」と、改正案に危機感を示している。

ベンチャーユナイテッドの丸山聡氏は自らのブログで、独立系VCへの影響を危惧している。「若手にとっては最初のファンド組成をするということはとっても大変です。出資をする適格機関投資家を見つけられたとしても、金融機関などは出資することはまずないですし、上場企業からの出資というのもハードルが高い」。仮に、金融庁が「投資判断能力を有する者」と定義する「投資性金融資産を1億円以上保有し、かつ証券口座開設後1年経過した個人」が見つかったとしても、その資格を満たしていることを届出事業者が確認しなければならない点が最大のハードルだと指摘する。

「そもそもファンドに出資してくださいってお願いにいって、資格を満たしているかどうか確認のための書類を出してくださいって言われたら、なんか面倒だから出資はやっぱり難しいなっていうことになるのが世の常な気がするんですよね。。。」

個人投資家からの投資のハードルが高くなるという点については、金融庁も「投資判断能力を有する者以外の者が、プロ向けファンドを購入できなくなるという社会的費用が発生するおそれがある」と認識。しかし、現状では「適切な勧誘によりプロ向けファンドを購入している投資家の大部分は投資判断能力を有する者であると考えられることから、その影響は限定的」として、規制強化によって不適切な勧誘による投資家被害が減少するメリットのほうが大きいとの見解を示している。

パブリックコメントでは、ベンチャーキャピタルに投資をする場合について、リスクや資産の状況、判断能力などを考慮し、問題が発生する可能性が低いと考えられる投資家については、規制の対象外とするよう求めている。具体的には、過去にファンド運営の経験を持つ個人、上場企業の役員と大株主、公認会計士や弁護士などの士業資格者らを、販売規制適用から除外すべきだと訴えている。

「独立系ベンチャーキャピタリスト等有志」名義で提出されたパブリックコメントには磯崎氏と松山氏のほか、赤浦徹氏、加登住眞氏、木下慶彦氏、郷治友孝氏、榊原健太郎氏、佐俣アンリ氏、孫泰蔵氏、中垣徹二郎氏、村口和孝氏といった独立系ベンチャーキャピタリストや個人投資家が名を連ねている。このほかの賛同者に対しては、パブリックコメント窓口から提出期限である6月12日17時までに、意見を提出してほしいと呼びかけている。

アメリカほどではないとはいえ、広くは伝わらないが日本でも新規株式公開(IPO)や合併・吸収(M&A)を果たすなどして成功した個人が、エンジェルとなって次世代のスタートアップに投資するケースが増えつつある。今回の規制強化は、消費者トラブルが増えていることを受けての対策ということは承知のうえだが、ベンチャーを取り巻くエコシステムに悪影響を与えない落とし所を見つけてほしいものだ。

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「人」と「住」をつなぐSUVACO、フジ・スタートアップ・ベンチャーズなどから1億2000万円を調達

SUVACOは3月14日、フジ・メディア・ホールディングス(FMH)⼦会社でスタートアップ投資を手がけるフジ・スタートアップ・ベンチャーズ(FSV)、およびモバイル・インターネットキャピタル(MIC)より、総額1億2000万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

SUVACOは、2013年7⽉24⽇にオープンした「住」に特化したマッチングプラットフォーム「SUVACO」を運営する。SUVACOは新築⼾建、リフォーム・リノベーション、インテリアなどに興味を持つユーザーが、約8000の施⼯事例の写真から理想のデザインとそれを提供する専⾨家を探し、コンタクトを取ることができる。

今回の増資にあわせてSUVACOは、FMHの子会社である扶桑社とリノベーション情報サイト「リノベりす」  の提供も開始した。リノベりすでは、扶桑社の住宅リノベーション専門誌「リライフプラス」と連携。雑誌掲載のリノベーション物件や同誌編集部が取材したリノベーション物件を掲載している。掲載されている物件を気に入れば、リノベりすからSUVACO経由で資料請求し、施工する専門家とコンタクトを取ることができる。

今回FSVから増資した理由について、SUVACO共同創業者の中田寿氏は、「リノベーションという事業において、FSVよりシナジーが生まれるベンチャーキャピタルがなかった」と語る。今後はフジテレビグループのほかの子会社とも連携する予定があるという。