50社以上の投資家へ自社の情報配信、「FUNDBOARD」がスタートアップの資金調達を支援する新サービス

ベンチャーキャピタルや事業会社など投資家向けの未上場株管理ツール「FUNDBOARD」を運営するケップルは4月16日、スタートアップの資金調達を支援するオンラインIRサービスをローンチした。

新サービスではFUNDBOARDを利用する50社以上の投資家に向けてスタートアップが自社の紹介資料を配信できる機能のほか、オンライン上での投資家との意見交換会や個別で投資家を紹介するオプションなどを提供する計画。新型コロナウイルスの影響で国内の資金調達環境もシビアな状況になる中、スタートアップをサポートするのが狙いだ。

ケップルが開発する「FUNDBOARD for Startups」はスタートアップのIR業務を効率化することを目的としたサービス。株主名簿の作成・管理機能や新株予約権原簿の管理機能、株主総会の招集機能など、従来は煩雑で非効率な要素の多かったIR関連の作業をオンライン上で簡単にできる仕組みを目指している。

本日公開されたベータ版ではそれらの機能に先行して、スタートアップの資金調達を支援する機能のみが搭載されている形だ。メインとなるのは、FUNDBOARDを活用している投資家に対して自社の紹介資料(事業概要や既存株主、目標の資金調達額など)を配信できる機能。自社に興味を示す投資家が現れた場合には、FUNDBOARD事務局が投資担当者を紹介するところまでをサポートする。

ケップル代表取締役社長の神先孝裕氏の話では「マッチングしたとしても、その後実際に担当者とのアポイントを設定するまでに意外と時間がかかる」ので、マッチング後のやりとりをユーザーにまるっと任せるのではなく、あえて運営メンバーが仲介する設計にしたそうだ。

投資家への情報配信イメージ

「FUNDBOARDは著名VCを始め50社以上の投資家ユーザーに管理ツールとして活用してもらえている。投資家とスタートアップを繋ぐサービスは複数存在するが、1つのネックとなるのがスタートアップ側からメッセージを送っても投資家に気づかれない場合があること。FUNDBOARDはサービスの特性上、投資家が日常的に使っているので双方をマッチングする場所としては効果的だと考えている。なかなか話を持っていくルートがない投資家に自分たちを知ってもらえるチャンスもある」(神先氏)

FUNDBOARD for StartupsではIR情報配信機能に加えて、特定の投資家とスタートアップがオンライン上でカジュアルに情報交換できる相談会(すでに3月からZoomなどを活用して複数回実施済みで評判が良いそう)の開催や、スタートアップ側の要望に応じた投資家の個別紹介なども行なっていく。

情報配信と相談会についてはコロナウイルスの影響も踏まえ、まずは5月6日まで無料で提供する方針だ。

「これまでは投資家向け管理ツールという謳い文句で展開してきたが、元々はスタートアップと投資家のコミュニケーションを支援することを目指して立ち上げたサービス。スタートアップ向けの機能も以前から予定していたもので、今回ようやくその一歩目を踏み出せた」

「本来はもう少し投資家ユーザーの数が増えた上で提供することを考えていたが、コロナウイルスの影響で(神先氏が代表を務めるケップル会計事務所の)支援先でも売り上げが大きく減少してしまったり、事業会社からの調達が決まりかけていたタイミングで話がなくなってしまったりする事態が起きている。スタートアップの資金調達を少しでもサポートするべく、前倒しでリリースすることを決めた」(神先氏)

現時点ではかなりシンプルなプロダクトになっているが、今後は特定の投資家のみにコンタクトが取れる機能のほか、上述した株主名簿の作成・管理機能など既存投資家とのコミュニケーションを円滑に進めるための仕組みなども追加していく計画だという。

ケップルは2015年2月の設立で、これまで複数の個人投資家や日本経済新聞社、野村総合研究所などから累計で3億円以上の資金を調達済み。現在はFUNDBOARDのほか、スタートアップや投資家向けの学習プラットフォーム「KEPPLE ACADEMY」も運営している。

VCや事業会社の投資先管理を楽にする「FUNDBOARD」が野村総研と資本業務提携

投資家向けの未上場株式管理ツール「FUNDBOARD(ファンドボード)」を展開するケップルは3月15日、野村総合研究所と資本業務提携を締結したことを明らかにした。

提携を通じて野村総研の技術力や情報セキュリティ関連の知見を得ながら、同サービスの開発体制やセキュリティ強化を進めていく計画だ。ケップルでは2019年2月に野村総研から8000万円を調達。昨年12月に日本経済新聞社などから調達した2.7億円を合わせると、今回のラウンドの調達額は3.5億円となる。

ポートフォリオ機能が進化、新株予約権などにも対応

ケップルが運営するFUNDBOARDはVCや事業会社、個人投資家が投資先の情報を効率よく管理できるサービスだ。

これまでも紹介してきたように、従来であればエクセルやドロップボックスなど複数の場所に散らばっていた投資先に関する情報を、一箇所に集約できることが特徴。投資先の情報に紐づいて関連するメモやファイルが整理されるため、FUNDBOARDを見ればその会社に関する様々な情報へとすぐたどり着ける。

投資先に対して投資検討や決算作業に必要な資料の共有を依頼したり、提出状況を一覧で確認できる仕組みも搭載。情報管理やコミュニケーションの手間を減らすことに加え、投資情報の自動集計・グラフ化機能やポートフォリオ分析機能を通じて、投資パフォーマンスの可視化までサポートする。

ケップル代表取締役社長の神先孝裕氏によると、現在は特に担当者の多いVCや複数の部署が関わるような大企業・CVCからの引き合いが多いそう。直近では普通株式や優先株式に加え、以前から要望の多かったコンバーティブルノート(新株予約権付社債)やコンバーティブルエクイティ(新株予約権)、みなし優先株式の管理もできるようになった。

「これまで投資スキームごとに、投資管理一覧を作成しながら個別に管理をしていた。実際に話を聞いても複数のシートを使い分けているため手間がかかっていたり、そもそもきちんと管理できていなかったりするのが現状。ここに課題を感じている担当者も多い」(神先氏)

以前のFUNDBOARDでは「いつ、いくらの株価で、どのような条件で出資した」といったようにスポットの情報だけを残せる仕組みだったが、今回のアップデートで投資先ごとに創業からExitまで全ラウンドの資本政策を登録できる仕様に変わった。

「新株予約権や新株予約権社債も一つのラウンドとして登録でき、バリュエーションキャップや適格資金調達額などの情報も入力できる。新株予約権を株式に転換する際も、全ての投資情報に紐づけて管理することが可能だ。また調達額や時価総額の推移や現状を見ながら、パフォーマンスの高い企業をソートして分析する、といった使い方もできる」(神先氏)

たとえばファンドの決算業務時に投資先の資金調達の推移を記載する場合、FUNDBOARDを使えば投毎回エクセルで一覧表を作って整理する負担もなくなるという。

また同サービスに蓄積したデータはいつでもCSV形式で出力できるので、レポートの元データとしても使えるとのことだ。

野村総研と協業でセキュリティ面を強化

冒頭でも触れた通り、今回ケップルでは野村総研と協業して開発体制やセキュリティ面の強化を進める。

特にCVCも含めて大企業への導入を促進していく上では、セキュリティ対策は不可欠だ。これまでもケップルではSaaSモデルの共有クラウドプランに加えて、自社専用のクラウドサーバーに構築する専用クラウドプランを準備。セキュリティチェックシートへの対応なども行ってきてはいたが、ここに一層力を入れていくという。

日経との協業はイベントの開催やFUNDBOARDの機能拡充、コンテンツの制作や配信面など表側の連携が中心だったが、野村総研の場合はシステム周りなどプロダクトを支える裏側での連携がメインになるそう。ナレッジに加えて人的リソースの提供なども見据えているという。

「(野村総研は)大企業のシステム開発の実績が豊富で、そこに対する知見や技術力を持っている。今回同社と連携することで、情報システム周りを中心にFUNDBOARDの基盤をより強固なのにするべく、開発・運営体制の強化に取り組む。今まで以上に安心して使ってもらえるサービスを目指したい」(神先氏)

この領域ではFUNDBOARDに加えて先日紹介した「smartround」のようなサービスも出てきている。これらが広がることでスタートアップと投資家間の情報管理やコミュニケーションの手間が減り、両者がプロダクト作りや投資先の発掘・サポートなどにより多くの時間を使えるようになることを期待したい。

VCの投資先管理を簡単にする「FUNDBOARD」が事業会社や個人投資家向けにもサービス開始

投資家向けの未上場株の管理ツール「FUNDBOARD」を開発するケップル。同社は10月25日より、これまでベンチャーキャピタル(VC)に特化して提供していたFUNDBOARDの対象を拡大し、事業会社および個人投資家も利用できるようにする。

FUNDBOARDはスタートアップと投資家のコミュニケーションを効率化することを目的として始まったサービスだ。2017年7月にベータ版をリリース後、ユーザーからのフィードバックも踏まえてデザイン面などのアップデートを実施。まずは投資家用の正式版を2018年8月よりVCに対して提供してきた。

特徴はこれまでエクセルやドロップボックスなど複数のツールやファイルに散らばっていた投資先に関する情報を、一元的に管理できること。

各投資先に「投資済」「投資検討中」などステータスを設定したり、事業ドメインや紹介ルートなどタグをつけて整理することが可能だ。面談の内容、投資委員会議事録、日報といったレポートや多数の投資先から受け取ったファイルも全て投資先ごとに紐づいて格納されていくので、複数の場所に散らばって「重要なファイルがすぐに見つからない」といったこともない。

サービス上から投資先に対してファイルの提出や受け取り依頼をする機能(投資先の担当者に一時URL付きのメールが送信され、FUNDBOARDのユーザーじゃなくても閲覧できる仕様)や、投資実績として株価、保有株数、発行済株数などを登録することでポートフォリオをグラフ化する機能も備える。

VCや事業会社など属性によって若干プランの違いはあれど、これらの機能を現在は1ユーザー約1万円ほどのユーザー課金モデルで提供している。

ケップル代表取締役の神先孝裕氏によると、ローンチから約2ヶ月半でだいたい15ファンドほどに導入されているとのこと。エクセルなどでは大変だった投資先の情報管理を、タグなども使いながら柔軟に整理できる点に1番価値を感じてもらえているという。

「(各VCが)登録する投資先件数が想定していた以上に多かった。たとえば投資済みの案件は十数社でも、実際に繋がりのある起業家のリスト自体は何百件とかそれ以上になることもある。そのリストや関連するファイルを管理するのはかなり大変なこと。それがシンプルに整理でき、かつ各投資先に紐づけてメモやレポートも残せる点が好評だ」(神先氏)

本日より事業会社向けにも正式に提供を始めるにあたって、関連会社や子会社の管理を行える機能を追加。また組織全体およびメンバー単位で投資検討の進捗管理を行える「投資検討管理機能(パイプライン機能)」も導入した。

この機能では検討中の投資先ごとに投資予定日や予定額、投資ステップを管理することができ、集計された内容はグラフ化される。投資予定額を含めた投資総額が月単位で出力されるので、半年先までの投資予定額と投資余力を把握できるほか、各担当者ごとに抱えている案件の進捗を見える化することも可能だ。

「継続的に投資をしているVCや複数人の担当者がいるVCでは、直近で誰が何件の案件を抱えていて、それぞれがどんなステータスなのかを見える化することが重要。たとえば3ヶ月後に全体でどのくらいの投資をする予定があるのか、どのくらいの投資余力があるのか目処をつけたいというニーズは多い」(神先氏)

このパイプライン機能はVCなどと話をしていても、よく聞かれることの多かった機能なのだそう。FUNDBOARDの導入を進める際にも、この機能がひとつのポイントとなってセールスフォースと比較されることも何度かあったのだという(セールスフォースではパイプラインの管理ができるため)。

FUNDBOARDでは今後も投資家向けの新機能を追加していく予定。加えて2019年の上旬を目処にスタートアップ向けのサービスも提供していく計画だ。そのタイミングで現在は投資家ユーザーが手入力しているような情報が自動でアップデートされるような仕組みを取り入れ、両者間の情報管理やコミュニケーションの負担を削減していきたいという。

「そういった世界観を実現するためにも、まずは投資家向けに手入力でも十分便利で価値のあるプロダクトをしっかりと作りこんでいきたい」(神先氏)