フリマアプリのメルカリ、今度は84億円の大型資金調達——評価額10億ドル超の日本発ユニコーンに

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2月29日にLINEがフリマアプリ「LINE MALL」のサービス終了(5月末)を発表したのは驚きだったが、フリマアプリで先行するメルカリがさらに驚くような大型の資金調達を発表した。メルカリは3月2日、三井物産、日本政策投資銀行、ジャパン・コインベスト投資事業有限責任組合および既存株主のグロービス・キャピタル・パートナーズ、World Innovation Lab(WiL)、グローバル・ブレイン、経営陣を引受先とした第三者割当増資による総額約84億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

メルカリが外部から調達した資金は合計126億円に上る。もちろん金額だけでその是非を比較する話ではないが、資金調達ラウンド単位の調達額としてはgumiの50億円(2014年7月)という数字を超えており、僕が知る限り、ITスタートアップとしてはここ数年でもっとも大きい額だ。バリュエーション(評価額)は公開していないが「ビリオン(10億ドル=約1130億円)を超える」(メルカリ取締役小泉文明氏)という。つまり、日本発のユニコーン企業(評価額10億ドル以上の未上場IT企業)が誕生したわけだ。

同社が提供するフリマアプリ「メルカリ」のダウンロード数は日米合計で3200万件(日本:2500万件、米国:700万件)、米国でも現在コマースカテゴリで10位以内をキープしているという。月間の流通額は国内で100億円超、2015年末には、黒字化についても明らかにしている

メルカリでは調達した資金をもとに、国内外の事業拡大を進める。まずは海外を優先するとのことで、米国でのマーケティング活動なども積極化。また、イギリスでも現地オフィスを立ち上げており、ヨーロッパ参入の準備を進めるという。「海外でのマーケティングは『飛び道具』的なものは存在しないので、きちんとやっていく」(同社)。また国内でも採用に向けた施策を強化するほか、BASE同様の資金投資、M&Aも積極的に行うとしている。さらに子会社のソウゾウでは、先日紹介した「メルカリ アッテ」をまもなく正式ローンチする予定だ。

実はこの数カ月、メルカリが上場準備を進めているのではないかという噂も業界内では流れていた。これについて改めて聞いてみたが、「上場するという選択肢よりはフレキシビリティを持って動いている」(メルカリ執行役員CFOの長澤啓氏)とのことで、今回VCや事業会社からの資金調達を進めたという。

オウンドメディア支援のサムライトがグリーベンチャーズなどから1.2億円調達、ネイティブ広告ネットワークを展開

企業が消費者に向けて情報を発信するオウンドメディア。その記事作成や編集といった制作支援事業を手がけてきたサムライトが、これまでの実績を生かしてネイティブ広告ネットワークの展開を本格化する。同社は10月10日、グリーベンチャーズなどを引受先とした1億2000万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

サムライトは2013年9月の設立。代表取締役の柴田泰成氏は、楽天でアドネットワークなど事業を手がけた後、リクルートで家具を取り扱うメディア「TABROOM」を立ち上げた人物。インキュベイトファンドが開催するインキュベーションプログラム「Incubate Camp 5th」(2013年開催)の優勝者でもある。

同社では現在、編集者10人、外部ライター100人超をネットワーク化してオウンドメディアのコンテンツ制作から運営までを手がけている。現在20媒体以上のオウンドメディアを手がけている。また、オウンドメディアのキュレーションメディアである「somewrite.jp」も展開している。somewrite.jpでは80社のオウンドメディアと連携している。これらの事業と並行する形でネイティブ広告ネットワーク「somewrite ad」を開発してきた。サムライトでは、ライターのネットワーク、オウンドメディアのネットワーク、ネイティブ広告のネットワークを合わせて「サムライト ネットワークス」と呼んでいる。

somewrite adは、形態素解析によってページの文章を解析し、同時にユーザーの求めるコンテンツをリアルタイムに学習していくことで、コンテンツの内容やユーザーの好みに合わせて関連記事やネイティブ広告を表示するというもの。ネイティブ広告だけでなく、関連記事なども表示されるため、サイト回遊率の向上も見込めるという。サムライトでは10月より試験的な運用を開始している。「リターゲティング広告でユーザーを追いかけ回したり、ミスタップを誘うスマートフォン広告はひどいと思うが、これまでビジネスとしては自分もそこに荷担していたので気持ち悪かった。今の事業では、『自分の見たいと思った記事がたまたま広告だった』という状況に変えていくことができると思っている」(柴田氏)

米Outbrainや東大発スタートアップのpopInなど先行する競合がいるが、オウンドメディアのネットワークやコンテンツ制作までを手がけられるのが同社の強みだと柴田氏は語る。「オウンドメディアの運営代行も、ネイティブ広告が広がることを見越して始めた。これからは広告が記事そのものになる時代だ。だが一方で海外の事業者などは(広告配信の)システムは持っていても、コンテンツを取っていけない。我々はsomewrite.jpを運営することでコンテンツ持っている人たちとの接点作りから始めて、その次にオウンドメディアを運営を手がけてきた。その状態で満を持してsomewrite adを開始した」(柴田氏)。

オウンドメディアの運営代行の金額を聞いたところ、月額15万円程度から展開しているとのことだったで正直利益が出ているのか?とも思ったのだけれど、そもそもそこはメディアのネットワーク作りと割り切っているところがあり、マネタイズの中心となるのはsomewrite adなのだそうだ。オウンドメディア運営代行としてはセールスフォースやDraper Nexusなどから資金を調達しているイノーバなどもあるが、事業の方向性が異なるようだ。

サムライトでは今後、ポータルサイト、ニュースサイトを中心にネイティブ広告ネットワークの拡大を目指す。「ページビュー(PV)は重要視していないが、月間20〜30億PVを1年以内に目指す。ただしネイティブ広告はサイトの一番下に張っておけばいいというわけではない。コンテンツとして広告を表示できるようにしていく必要がある」(柴田氏)


Vicariousに注目―人工知能のスタートアップにジェフ・ベゾス、マーク・ベニオフ、ジェリー・ヤンがそろって投資

まさにテクノロジー系ビリオネアのオールスター・キャストだ。

マーク・ザッカーバーグ、ピーター・ティール他のシリコンバレーの大物がVicariousというサンフランシスコのスタートアップの成長を加速するために4000万ドルを投じたことが話題になったが、驚いたことに、大物投資家がさらに4人も現れた。

Amazonのファウンダー、CEOのジェフ・ベゾス、Yahooの共同ファウンダー、ジェリー・ヤン、Skypeの共同ファウンダー、ヤーヌス・フリース、SalesforceのCEO、マーク・ベニオフが揃ってVicariousのシリーズBラウンドに参加した。

Vicariousは今回のラウンドでの調達金額を明らかにしていないが、少額ではなかっだだろう。私の取材に対してVicariousの共同ファウンダー、D.Scott Phoenixは「エンジェル投資という規模は確実に超えている」と語った。それにしてもこの4人のスーパースターがそろって一つのスタートアップに投資するとは想像もできなかった。

Vicariousは次世代の人工知能プラットフォームを開発中だ。Phoenixによれば、 現在のAI研究は依然として1980年代に開発された畳み込みニューラルネットワーク(convolutionalneural network)をベースにしているという。

しかしPhoenixと神経生理学者の共同ファウンダー、Dileep Georgeは脳の実際の活動をもっと精密に模倣することによって精度とパフォーマンスを画期的に改善できると主張する。Vicariousは昨年の秋、Captchaの読み取りに成功してこれを実証することに成功した。

Vicariousのテクノロジーから本当の意味での最初yの知能マシンが生まれることが期待されている。

同社はまだたった30人の会社なのに5600万ドル以上の資金を集めている。Phoenixは「劇的な人員増を図る計画だ」と述べた。

Vicariousへの投資にはさらにVinod Khosla、Ashton Kutcher、Aydin SenkutのFelicis Ventures、Garry TanとAlexis OhanianのInitialized Capital、BraintreeのBryan Johnston、Box.comのCEO、Aaron Levie、Y CombinatorのSam Altman、Open Field Capital、Zarco Investment Group、Metaplanet Holdingsといったスター投資家が加わっている。

〔日本版:Vicariousとは「代理の、代償性の」といった意味〕

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


GoogleのNest買収で儲かったのは誰だ?―クライナー・パーキンスの投資は20倍に、シャスタには過去最高のヒット

ご承知のようにGoogleはNest32億ドルのキャッシュで買収した。そこで初期の投資家であるKleiner Perkins Caufield ByersとShasta Venturesは大儲けをした。複数の情報源から聞いたところでは、Kleinerは2000万ドルを投資し、買収で4億ドルを得たという。20倍になったわけだ。

NestはシリーズA、シリーズBのラウンドでの投資家も投資金額も明らかにしていない。そのため今回スマート・サーモスタットとスマート煙探知機の買収で誰がどれだけの利益を得たかを正確に判断するのは難しい。

とりあえず分かっていることを確認すると、ShastaとKPCBでNestの2010年9月のシリーズAを全額引き受けている。これはNestが創立されてわずか数カ月後のことだった。次に2011年8月のシリーズBにも両社は参加しているが、このときはGoogleVentures、Lightspeed Venture Partners、Intertrust、Generation Investment Managementも加わっていた。

複数の情報源によると、Kleiner PerkinsはシリーズAとBを合計して2000万ドルを投資しており、Nestの最大の投資家だという。 Googleが払った32億ドルはKPCBの投資を20倍にしたとFortuneのDan Primack記者は聞いたそうだ。この資金は2010年に組成された6億50 00万ドルのKPCB XIVファンドから支出されたものだ。つまりKleinerはNestへの投資だけでこのファンドの60%の利益を出した計算になる。これでNestへの投資を主導し、取締役にもなっているKPCBのパートナー、Randy Komisarの地位も一段とアップすることだろう。

Kleiner Perkins Caufield Byersは1990年代末のインターネット時代の初期にGoogle、 Amazon、AOL、Intuitなどに投資するというホームランを連続して放った。最近ではFacebookとTwitterの株式上場で成功を収めている。またSquareやSpotifyにも投資している。しかしこれらはかなり後になってからの投資で、そう高い倍率は望めない案件だった。しかしNestの場合、KPCBは最初期から関与していたため、久々に非常に高い利益率を得ることができた。

左はShasta VenturesのマネージングディレクターでNest投資への投資を主導したRob Coneybeerだ。

[アップデート: 事情に詳しい情報源によると、今回のGoogleのNest買収で、Shastaは2億5000万ドルのShasta IIファンドの「大半を取り戻した」という。つまりShastaは2億ドル以上を得たもよう。]

CitrixのZenprise買収、IntuitのMint 買収などでShastaはこれまでも成功を納めているが、今回のNest買収は桁違いの利益を生んだもようだ。これで今後投資パートナーからベンチャー資金を募るのが楽になるだろう。

シリーズBとCをリードしたGoogle Venturesがおおきな利益を計上したことも間違いない。Tony FadellMatt Rogersの二人の共同ファウンダーも同様だ。

ベンチャーキャピタル全体として考えると、Nest買収はハードウェア起業家への強い追い風となる。Googleのような巨大企業が何十億ドルもの金をソフト企業ではなく家庭ハードウェアを製造する誕生したばかりのスタートアップに投じたことは、ハード起業家が資金を集めることを大いに助けるだろう。

[本記事の調査にはKim-Mai Cutlerが加わった]

Googleのネスト買収の詳細については下の画像をクリック:

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+