機械と人力の”いいとこ取り”でサイトを外国語翻訳、「ワールドジャンパー」一般公開

機械翻訳は誤訳があるし、かといってプロの翻訳家に頼むとコストがかさむ――。外国語サイトを作ろうとする企業や店舗の多くは、こんな悩みに直面しているかもしれない。八楽(やらく)が運営するウェブサイト翻訳ツール「ワールドジャンパー」は、機械翻訳と人力翻訳の“いいとこ取り”をして、こうした課題を解決しようとしている。

ワールドジャンパー

対応言語は英語、韓国語、中国語(簡体字・繁体字)。仕組みを簡単に説明すると、まず管理画面で翻訳したいサイトのURLを入力すると、機械翻訳ベースで外国語ページのHTMLが生成される。翻訳精度をさらに高めたい場合は、日本語1文字につき6円の「スタンダード翻訳」、1文字10円〜の「プロ翻訳」に申し込めば気になる箇所を修正できる。

スタンダート翻訳はクラウドソーシングを活用した人力翻訳サービスの「Conyac(コニャック)」や「Gengo(ゲンゴ)」などを利用する。プロ翻訳はこれらのサービスで翻訳した内容を、同社が抱えるプロの翻訳家がチェックしてから納品する。納期はスタンダード翻訳が1日程度、プロ翻訳が1〜2週間程度だという。

特筆すべき点は、翻訳者が修正したテキストを蓄積するデータベース「翻訳メモリ」の存在だ。ワールドジャンパーでは翻訳するサイトを読み込む際、自然言語処理技術を用いてすべてのテキストを解析し、翻訳メモリに収録されている「約300万文」(八楽)のテキストと照合。データベースと一致した場合、過去に翻訳者が修正したテキストを再利用し、機械翻訳によるテキストを差し替えている。会社特有の製品やサービス名を登録し、機械翻訳結果に反映する辞書機能も搭載する。

これらの仕組みにより、「単なる機械翻訳よりも翻訳精度が高くなり、翻訳コストがかかる人力翻訳の語数も減らせる」と、八楽代表取締役の坂西優氏は説明する。翻訳メモリは利用者が増えるほど充実するため、「翻訳コストはどんどん安くなる」。坂西氏によれば、新規でサイトを翻訳する場合、1〜2割程度のテキストが翻訳メモリに含まれているそうだ。

翻訳管理画面

ワールドジャンパーは2012年6月、法人向けの有償サービス(初期費用8万円、月額料金8800円)としてスタート。これまでにメーカーやIT、観光業など約100社の大企業に導入された実績がある。2013年5月には、ニッセイ・キャピタルや日本ベンチャーキャピタルなどから1億800万円の資金調達を実施している。

そして本日11月6日には、法人向けサービスを簡略化し、一般向けに初期費用と月額料金を基本無料とするサービスを開始。一般向けサービスで翻訳した外国語サイトは、八楽によってホスティングされる。外国語サイトは広告を掲載すれば無料だが、広告を非表示にして独自ドメインを利用する場合は月額880円に加えて、1ページビューあたり0.1円が発生する。

八楽は観光客を取り込みたい旅館や飲食店、商店であったり、在日外国人に情報発信したい自治体や病院、海外企業との取り引きを狙う中小企業を対象に、2014年4月までに1万サイトの導入を見込んでいる。

国際色豊かな八楽のメンバー


翻訳クラウドソーシングConyacのエニドアが6,000万円の資金を調達 – 8カ月で法人登録1,000社を突破

低価格で翻訳をクラウドソースできるConyacを運営するエニドアが8月30日付けで総額6,000万円の第三者割当増資を実施した。引受先はユナイテッド、三菱UFJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタルの3社だ。

2009年にローンチしたConyacはオンライン上で簡単に翻訳を依頼でき、発注確定後たいてい1時間以内に納品されるというスピードと安さが売りのサービスだ。現在の登録者数は2万人で、これまでにConyacが翻訳してきた文字数は1億文字を越えているという。

ローンチ当初は個人向けのサービスとして運営されていたが、今年2月にはビジネス向けのサービスも提供を開始した。法人向けにはテキストファイルだけでなく、プレゼンテーションファイルの翻訳も提供している。

法人向けサービスは順調に成長しているようで、約8カ月の間に1,000社が登録しているという。エニドアは今回調達した資金を基に営業力を強化し、2014年の3月までに国内利用企業数を3,000社まで成長させたいそうだ。

オンライン上の翻訳サービスといえば、Conyacの他にGengoがある。Gengoも順調に成長しており、今年に入ってからはさらに成長が加速しているようだ。2月にはYouTubeのビデオ字幕の有料翻訳依頼先として提携を開始しているし、4月にはIntel CapitalやAtomicoなどから1,200万ドルを調達している。


翻訳プラットフォームのGengoがIntel Capital等から1200万ドルを調達

Gengoは人気上昇中のオンライン翻訳サービスで、7500名以上の事前審査、評価済みの翻訳者のネットワークを利用して33の言語で質の高い翻訳を提供している。このほど1200万ドルの資金調達ラウンドを完了した。リードしたのはIntel Capitalで、他にIris CapitalInfocommNTT-IP、およびSaudi Telecom Venturesが参加した他Atomicoも再出資した。

本ラウンドに通信会社が複数含まれていることは、「通信会社がGengoの国際的可能性を『理解』していることを示している」とGengoのCEO・ファウンダー、Robert Laingがメールで私に伝えた。

「Gengoチームは、Intel Capitalのリードによってアジア、米国、ヨーロッパ、中東の投資家と仕事ができることを喜んでいる。各社の国際経験や起業家を支援してきた実績に期待している」とLaingが今日の発表資料に書いている。

GengoのCTO・共同ファウンダー、Matthew Romaineもこう付け加えた。「大規模な翻訳における技術的要素は大きいため、歴史あるIntel Capitalと仕事ができることは光栄だ」。

現在Gengoの売上は、日本と米国が約40%ずつを占めている。現在同社は東京に30名、カリフォルニア州サンマテオに9名の従業員がいる。

Laingは同社が急成長を続けていると言う。Gengoでは2013年に入ってこれまでに、2012年全体よりも多くのテキストを翻訳している。成長の理由の一部はもちろん、GoogleのYouTubeとの提携によるものであり、最近の3Play Mediaとの提携と合わせて、YouTubeの2大統合有料翻訳サービスとなっている。

Laingによると、Gengoではビデオの他に、旅行やEコマースサイトからも大量の翻訳依絡があり、多くの「大手Eコマース、オンライントラベル、コミュニティー・ポータル」が現在Gengoを利用しているという。

Gengoでは今回の新ラウンドの資金を、海外展開の加速と、翻訳プラットフォームおよび翻訳プロセス速度の改善に利用する計画だ。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi)


YouTube、GengoおよびTranslated.netと提携して、ビデオ字幕の有料翻訳依頼を便利に

先ほどYouTubeは、プロが翻訳した字幕を効率よくユーザーに提供するために、人気翻訳サービスのGengoおよびTranslated.netと提携したことを発表した。パブリッシャーはYouTubeのインターフェースを通じて、翻訳に必要な時間と料金の見積りを得られる。ただし発注、支払い手続きは翻訳サービスのウェブサイトで行う必要がある。Googleは今後提携サービスを追加していく予定だ。

caption_translations

昨年9月、YouTubeはいくつかの機能を追加し、パブリッシャーがGoogle Translator Toolkitを使ってビデオを300種類以上の言語に翻訳できる一連のツールを提供した。今日(米国時間2/20)のニュースは、パブリッシャーが以前より多少有料翻訳を使いやすくなった、という意味にすぎない。今後も自分の翻訳をアップロードする(あるいはクラウドソースする)ことは可能だ。

もちろんGoogleは、自動的にいくつかの言語でビデオに字幕を付けており、今後も他の言語への翻訳に自社の機械翻訳アルゴリズムを積極的に使っていくだろう。しかし同社は、現時点では最高の翻訳ツールでも完璧にはほど遠いため、専門家による翻訳へのニーズがあることをはっきり認識している。

Googleは、GengoおよびTranslated.netに作業を依頼するパブリッシャーは、自分のビデオに標準キャプショントラックを用意しておく必要があると注意している。

ScreenshotBlogPost2.fw

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi)