米国土安全保障省、四足方向のロボット犬が南部国境をパトロール

米国土安全保障省が今週、同省科学技術局が進めていた米国南部の国境で、犬の形をした四足歩行ロボットを使用する研究の詳細を明らかにした。Boston DynamicsのSpotのようなロボットに、人間の政府職員に対して友好的でない地域をパトロールさせるつもりだ。

このニュースに付随する声明で、国土安全保障省のBrenda Long(ブレンダ・ロング)氏は「南部国境は人間や動物にとって敵対的な場所である可能性もあるため、マシンの方が有効だと考えられる。科学技術局による研究開発事業は、地上監視用自動走行車両(Automated Ground Surveillance Vehicles、AGSV)と呼ばれ、基本的にはロボット犬だ」と述べている。

この事業はフィラデルフィアのロボット企業Ghost Robotsと協同で行われる。同社は過去に、Verizonなどの大企業の仕事も経験している。最近、同社が新聞の見出しを飾ったのは、ある見本市に登場した、SWORD Defense Systemsの特殊用途無人ライフル(Special Purpose Unmanned Rifle、SPUR)というリモコン狙撃手のロボットだ。それは四足歩行ロボットで最も有名なBoston Dynamicsが、DARPAの話を一応聞いたが、結局越えなかった一線(ロボットの軍事利用)だ。

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公式にアナウンスされているこのロボットの用途は、国境のパトロールだ。そのシステムは自律的に歩き回ったり、リモートでコントロールされてリアルタイムのビデオフィードをオペレーターに送る。武装については触れられていないが、それがあるとより多くの人やメディアの関心を集めただろう。

Ghost自身は、米政府との提携は名誉なことであり、ペイロードなどについてはあらゆる可能性に対応したいと述べている。

CEOのJiren Parikh(ジレン・パリク)氏は、2021年のインタビューで次のように述べている。「私たちはペイロードを作りません。武装について宣伝や広告も、おそらく行いません。武装は答えにくい問題でもあります。しかし軍に渡すため、軍が何をするのかわかりません。政府に、ロボットの使い方を指示することはできません。売る・売らないを決める線引きはない。私たちとしては単純に、米国とその同盟国の政府に販売するだけです。敵対的な国の市場の企業に私たちのロボットを販売する気はありません。弊社ロボットへの、ロシアや中国からの引き合いはたくさんあります。しかし、それが弊社のエンタープライズ顧客のためでもそちらには販売しません」。

国土安全保障省は、危険な国境地域の問題に限らず、テクノロジーに関心を持つ理由をたくさん挙げている。

米国税関国境警備局のBrett Becker(ブレット・ベッカー)捜査官は「他の国と同じように通常の犯罪行為もありますが、国境沿いでは、人間の密輸、麻薬の密輸、銃器や大量破壊兵器を含むその他の禁制品の密輸もあります。これらの活動は、個人のものから国際犯罪組織、テロリスト、敵対する政府まで、あらゆる人によって行われる可能性があります」と投稿している

国境ロボットの開発や配備に関するスケジュールへの言及はないが、すでにチームは、暗視装置を装備したロボットの現場テストを行い、屋外や居住用建物内などを想定したテストも行っている。

「空中や地上、水中などで使用する半自律ドローンは、すでに至るところで効果的に利用されており、ロボット犬もそれらと同様です」とロング氏はいう。しかし、米国政府のドローン利用のこれまでの流れを見るかぎり、国土安全保障省がロボットに現場仕事をさせることを賞賛するのは、無理がありそうだ。

画像クレジット:Ghost Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ロボットにスナイパーライフルを装着させるという一連問題

ロボットに銃を装備させるというのは、実用的な四足歩行ロボットが登場して以来、我々が追い続けてきたトピックだ。先の展示会で、SWORD(スワード)と呼ばれる企業が設計した遠隔操作可能な狙撃銃がGhost Robotics(ゴースト・ロボティクス)のシステムに装着されているものがお披露目されたため、この問題がさらに重要性を増してしまった。

これはBoston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)がどうにかして自らを遠ざけようとしていた問題である。当然のことながら戦争マシンを作っているという事実は、一般的に見て企業イメージにもよろしくない。しかし、多くのロボット産業がそうであるように、DARPA(国防高等研究計画局)の資金援助を受けたBoston Dynamicsが恐ろしいSF映画のようなロボットを生み出しているという事実は事態を複雑にしている。

先のコラムでは、威嚇や暴力を目的としたSpotの使用に対するBoston Dynamicsのアプローチについて話をした。また、ロボットの背中に銃を取り付けることについての筆者自身の考えも少し述べたつもりだ(繰り返しいうが、私は銃やデスマシン全般に反対である)。記事を書く前にGhost Roboticsに連絡を取ったものの、返事をもらったのは記事が公開された後だった。

筆者はその後、同社のCEOであるJiren Parikh(ジレン・パリク)氏に、同氏が「歩く三脚」と呼ぶこのシステムについて話を聞くことができた。Ghostはペイロード、この場合はすなわちSWORD Defense Systemsの特殊用途無人ライフル(SPUR)を設計していないため、こういった呼び方をするのだろう。しかしここには重要な倫理的疑問が詰まっている。歩く三脚と同社は呼ぶが、実際の責任はどこに置かれているのだろうか。ロボット開発会社なのか、ペイロードを製造する会社なのか。またはエンドユーザー(例えば軍隊)なのか、はたまたこれらすべてなのか。

銃を装備したロボット犬の軍隊が誕生し得るという可能性があるのだから、これは非常に重要な問題である。

自律性の観点からお話を伺いたいと思います。

ロボット自体には、武器のターゲティングシステムのための自律性やAIを一切使っていません。システムを作っているSWORDについては、私からはお話しできませんが、私の知っている限りでは、武器は手動で発射されるトリガー式であり、ターゲティングも裏で人間が行っています。トリガーの発射は完全に人間がコントロールしているのです。

完全な自律性というのは、越えるべきでない一線だとお考えですか。

我々はペイロードを開発していません。兵器システムを宣伝したり広告したりするつもりがあるかと聞かれれば、おそらくないでしょう。これは難しい質問ですね。私たちは軍に販売しているので、軍がこれらの兵器をどのように使用しているのかはわかりません。政府のお客様にロボットの使い方を指図するつもりはありません。

ただし販売先に関しては境界線を設けています。米国および同盟国政府にのみに販売しています。敵対関係にある市場には、企業顧客にさえロボットを販売しません。ロシアや中国のロボットについての問い合わせは多いですね。企業向けであっても、こういった国には出荷しません。

貴社が望まない方法でロボットが使われないようにするための権利を留保していますか?

ある意味ではそうですね。弊社にはコントロール権があります。全員がライセンス契約にサインしなければなりませんし、我々が望まない企業にはロボットを売りません。弊社が納得できる米国および同盟国の政府にのみロボットを販売しています。ただし軍の顧客は、彼らが行っていることすべてを開示しないということを認識しなければなりません。国家安全保障のため、あるいは兵士を危険から守るために、特定の目的でロボットを使用する必要があるのであれば、私たちはそれに賛成します。

画像クレジット:SWORD

ロボットを使って何をするかではなく、誰がロボットを購入するかというのが審査対象という事ですか。

その通りです。このロボットを使って格闘技のビデオを作ったり、ロボットがとんでもないことをするリアリティ番組を作ったりしたいという声が寄せられています。しかし誰が使うかわからなければお断りしています。ロボットはあくまでも道具です。検査やセキュリティ、そしてあらゆる軍事的用途のためのツールなのです。

先に見た写真に関してですが、タイムラインはあるのでしょうか。

2022年の第1四半期後半には、スナイパーキットのフィールドテストを行う予定だそうです。

このケースにおける契約内容は何ですか?国防総省は御社やSWORDと個別に契約をしているのでしょうか。

契約はありません。彼らは市場機会があると信じているただのロングガン企業で、彼らは自分たちのお金で開発し、我々はそれが魅力的なペイロードだと思った。顧客がいるわけではありません。

画像クレジット:Reliable Robotics

さて、(少なくとも今回)軍用犬ロボットの話はここまでにしよう。陸上での案件から、海や空へと話を移したい。まずはベイエリアに拠点を置く自律型貨物機企業、Reliable Robotics(リライアブル・ロボティクス)が1億ドル(約114億円)を調達した。設立4年目の同社の総資金額は、今回のシリーズCラウンドにより1億3000万ドル(約148億円)となり、自律型トラック輸送モデルを空へと移行させるべく計画を進めている。

無人航空機といえば、Alphabet(アルファベット)の子会社であるWing(ウイング)が米国でのドローン配送を本格的に開始することを発表した。オーストラリアとバージニア州の小さな町でパイロット版に成功した同社。その後ダラス・フォートワース都市圏で自律走行による配達を開始するべく、Walgreens(ウォルグリーンズ)とのパートナーシップを発表したのである。

画像クレジット:Alphabet

Wingは規制面での取り組みについて次のように話してくれた。

2019年4月、Wingはドローン事業者として初めて米連邦航空局から航空事業者としての認定を受け、数マイル先にいる受取人に商材を届けることができるようになりました。この認定の拡大版として、2019年10月にバージニア州でローンチすることができました。現在この拡大版の許可に向けて作業を進めており、その一環として、今後数週間のうちにテストフライトを行い、この地域で新しい機能を実証する予定です。ダラス・フォートワース都市圏でのサービス開始に先立ち、私たちは地元、州、連邦レベルの当局と協力して、すべての適切な許可を確保してまいります。

画像クレジット:Saildrone

水上はというと、こちらでも1億ドル規模のシリーズCが行われている。科学的なデータ収集を目的とした自律航行船を開発するSaildrone(セイルドローン)は、すでにかなりの数の無人水上飛行機(USV)を配備しており、その総走行距離は約50万マイル(約80万Km)に達しているという。

最後に、パンデミックによる人手不足の中、ロボットウェイターを採用するというThe New York Times(ニューヨーク・タイムズ)の興味深い記事を紹介したい。ロボットウェイターというのは大して興味深いわけでもないのだが、おもしろいことに、この結果人間のウェイターが受け取るチップが増えたと報告されたのである。

Serviによってウェイターがキッチンを往復する手間が省かれ、常に忙しいウェイターは客と会話する時間を増やし、より多くのテーブルにサービスを提供することができたため、ウェイターはより高いチップを得ることができたのである。

自律型システムは既存の仕事を置き換えるのではなく、企業が現在の人員では補えない部分を補うものであるという、ロボット関連企業が以前から主張してきたことが、このニュースで裏付けられた形になった。自律型システムが既存の仕事を完全に取って代わる事はなく、現在の人員では補えない部分を補完するのだということがよく分かる。これが完全な自動化への一歩となるかどうかは疑問だが、人間がより人間的な仕事に専念できるようになることに、大きな意味があるのではないだろうか。

画像クレジット:SWORD

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(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)