MovesはギグワーカーにUber、Lyft、DoorDash、Grubhubの株式を提供しようと取り組む

トロントを拠点とするギグエコノミーフィンテックのスタートアップMovesは、ギグワーカーらが所属する企業の株式を、ギグワーカーへの報酬として提供できるようにしたいと考えている。Moves Collectiveと名付けられた同サービス。第一弾として木曜日にはUberの株式を提供し、その後すぐにLyft、DoorDash、Grubhubの株式を提供する予定だとMovesのCEOであるMatt Spoke(マット・スポーク)氏は話している。

ギグワーカーたちが株主になれば、彼らが働くプラットフォームと彼ら自身の経済的なつながりをより強く感じてもらうことができるかもしれない、というのがMovesの考えである。さらにMoves Collectiveを通じて十分な数の労働者がこれら企業の株式を保有すれば、将来的には議決権を持つ集団を形成して企業の意思決定に実際に影響を与えることができるかもしれないと考えているのである。Movesによると、Moves Collectiveはすでにこれらの企業の「かなりの株式」を保有しており、そのすべてが議決権付きの普通株式だという。

この1年間、ギグエコノミーワーカーの劣悪な労働条件が労働者の抗議行動を引き起こし、カリフォルニア州、イリノイ州、マサチューセッツ州、ニュージャージー州、ニューヨーク州ではギグワーカーを従業員として見直し、ヘルスケアや休暇手当、有給病気休暇などの基本的な権利を与えようとする試みが行われてきた。Uber、Lyft、DoorDash、Instacartなどの企業は、カリフォルニア州で進行中の「Proposition(プロポジション) 22」をめぐる騒動に反撃し、マサチューセッツ州ではギグワーカーを独立した契約者として分類する提案を2022年11月の投票にかけるための連合体を結成している。

「ギグワーカーはギグエコノミーに膨大な価値をもたらしていますが、貢献した結果としての経済的リターンはまったく得られていません。私たちが解決しようとしているのは、ギグワーカーのみなさんが働いている企業の成功には、彼らが経済的に関与しているのだと感じられるようにすることです」とスポーク氏はTechCrunchに話している。

すでに同社のプラットフォームを利用しているギグワーカーは、Collectiveに登録して株式という形で報酬を受け取ることが可能だ(ギグワーカーはさまざまな企業からの金を追跡および管理し、毎月の支出口座や最大1000ドル(約11万4000円)までの即時ビジネスキャッシングを利用できる)。「3人の友人を紹介する」や「ユーザーアンケートに参加する」など一連のタスクをこなすことで、ギグワーカーは無料の株式や株式の一部を受け取ることができ、その株式はMovesが開設したユーザー自身の証券口座に入るという仕組みになっている。

「Moves Collective」という名の通り、長期的には莫大な数のギグワーカーを結集させて企業のガバナンス決定に反映させられるだけの声を生み出すことを目的としている同社。ギグワーカーの利益を確実に反映させるために、これら大手プラットフォームの年次株主総会で委任状資料の提出を提案する予定だとスポーク氏は話している。

ギグワーカーがMovesカードを使って買い物をするたびに蓄積されるインターチェンジレートがMovesの主な収益源となっており、またその収益がMovesからワーカーに還元される株式の原資となっている。

「新規顧客を獲得し、その顧客を維持するために、収益を効率的にトレードしていると言えるでしょう。ギグワーカーの当座預金の利用で我々が得た収益を商品に還元し、株式建ての報酬の資金を調達しているのです」とスポーク氏は説明する。

現時点では同プログラムは招待制になっており、株式報酬プログラムであるBumped Financialとの提携により株が蓄積されている。スポーク氏によるとMovesはInstacartの株購入を見据えて同社のIPOにも注目しているという。またFlexの配達員にはAmazonの株を、Shiptの作業員にはTargetの株をサポートすることも検討しているという。

アプリを使ったギグエコノミー企業はどこも「同じ問題」を抱えているとスポーク氏はいう。「ドライバーや作業員の離職率が非常に高く、作業をしてくれる人が定着しないのです。彼らは他のギグアプリに移るか、ギグエコノミーから完全に離れてしまうため、これらの企業は何千万ドル、何億ドルもの費用をかけて常に労働者を入れ替えているのです」。

参考:Uberがドライバーを取り戻すためにインセンティブとして2億5千万ドル(約285億円)を費やした結果、第2四半期に大規模な損失が発生

UberとLyftは株式公開前、ドライバーの定着率を高めて、労働者のロイヤルティを生み出す仕組みとしてドライバーに株式を発行することを検討したものの、規制上の問題が両社の真摯な取り組みを阻んだ。最終的に両社は一部のより活動的なドライバーに対して一度限りの現金を支給し、株式を購入するオプションを与えることにした。Uberはドライバーに向けて全体の3%にあたる普通株540万株を用意したが、ドライバーによって買い占められなかった場合は一般に提供すると伝えている。

参考までに書くが、株式公開時に8.6%の株式を保有していたUberの創業者兼CEOのTravis Kalanick(トラビス・カラニック)氏は、その持ち株で約50億ドル(約5691億円)を得ている。また5.2%の株式を保有していたAlphabetは約32億ドル(約3643億円)を獲得。当時、米国を拠点とするドライバーは、最大1万ドル(約114万円)相当の自社株を購入できる現金ボーナスを利用することができたのである。

ギグエコノミーに依存している企業が労働者にストックオプションを提供する際の規制は、非常に厳しいものとなっている。SEC Rule 701は、企業が従業員、コンサルタント、アドバイザーに報酬としての株式を発行する際に、詳細な財務記録を提出する必要がないことを認めているが、ギグカンパニーにはこの適用除外がうまく当てはまらない。2018年、SECは働き方の変化に適応するためにルールを拡張するとした場合の、可能な方法についてコメントを要求した。Uberは締め切り日を過ぎたものの回答を提出し「パートナーに会社の成長を共有することで、パートナーとその先の世代の収入と貯蓄の機会を強化」できようにするためにSECがルールを改定するよう要求している。

現在の法律では、UberやLyftがドライバーに株式でインセンティブを与えようとすれば、雇用者のテリトリーを侵害することになりかねない。しかし、UberやLyftのこれまでの姿勢を見ると、このようなサービスは将来的に外部に委託することになるのではないだろうか。

「Uber、Lyft、DoorDash、Instacartの4社がProp 22のような課題で一致団結し、新たな規制に反対するロビー活動を行っていることもあり、彼らはこれが業界にとって全般的にプラスになるとは考えていないでしょう」とスポーク氏。「最終的に我々は彼らと経済効果を共有する方法を模索することになると思います。1年後、2年後には、弊社が提供できる具体的な利益についてUberと話し合い、『Uber株を発行されたドライバーは、より長く働く可能性がX%高いためこの資金調達に一部参加すべきだ』などと提案することになるでしょう」。

Movesによると、現在全米50州で約1万人のユーザーが同社のプラットフォームを利用しているという。ライドヘイリング業界がパンデミックで大打撃を受ける直前の2020年2月に設立され、2021年4月から市場に進出した同社。来年前半には再び資金調達を開始する予定だが、スポーク氏によるとMovesは事業のシナリオにおけるユニットエコノミクスを洗練させ、Moves Collectiveのユースケースが出来上がるまでは、資金調達を行いたくないと考えている。

「Uberがドライバーを大切にしていないわけではないのですが、ドライバーは彼らの主要なステークホルダーではありません」とスポーク氏。「Uberの主なステークホルダーは消費者です。彼らは消費者側の市場価値を革新するために全力を尽くしており、労働者は後回しにされていることが多いのです」。

画像クレジット:Moves

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

グーグルがケニアでクラウドソーシングアプリ「TaskMate」を展開、グローバル展開も検討

米国時間10月18日、Googleは、ケニアにTaskMateを立ち上げた。これはスマートフォンを利用して仕事を見つけ賃金をもらうというクラウドソーシングなアプリで、同社は成長途上のギグ経済を活用する。Googleはケニアで1年間の実験を経てこれからベータテストを行い、この大陸の他の国にも導入するための準備をする。このアプリはインドでもパイロットとして利用できる。

アプリTaskMateのユーザーは、企業が求める翻訳や写真撮影など、スキルを要する、あるいは要しないタスクを充足するが、求人が載るためにはGoogleの承認を必要とする。

TaskMateのような、人びとがサービスを実行して代金をもらうというタイプのGoogleのアプリは、他にもある。たとえば有料でアンケートの回答者になるというアプリや、またLocal Services Adsというアプリは企業に、その会社のサービスを必要としている知人等を見込み客として結びつけて謝礼を得る。

TaskMateのプロダクトマネージャーであるMike Knapp(マイク・ナップ)氏は「TaskMateをローンチしましたが、アフリカだけでなく、も世界でオープンするのもこれが初めてです」と挨拶している。

パイロット事業は2020年後半に始まり、ユーザーはペンシルベニア州立大学の研究プロジェクトのために植物の写真を撮ったり、その他いろいろな仕事をした。このアプリのギグワークには、在宅と現場仕事の両方がある。

ナップ氏は、パイロット事業について「パイロットでは1000名の人たちがアプリを使用し、とてもポジティブなフィードバックが得られました。そこで、今日からはベータ段階に移行します。より大規模な実験になるでしょう」と述べている。

「今は、実験に協力してくれる企業やスタートアップを探しています。彼らの難しい問題の解決にどれぐらい役に立つか、それを検証したい」。

このプラットフォームに求人をポストする企業は、求職者のグループを指定できるし、また特定のスキルを持つ人を招待できる。ケニアのTaskMateのユーザーは、稼いだお金をモバイル決済サービスM-Pesaから引き出せる。M-Pesaを運用しているSafaricomは、東アフリカで最大の通信企業だ。

「クラウドソーシング方式なので、求人を広めるのも、仕事を達成するのもシンプルです。このアプリはケニアの人たちに仕事と収入を得るチャンスを提供し、コミュニティの創成と副収入の獲得の両方の役に立ちます。これはGoogleのアフリカに対するコミットメントであり、DX(デジタルトランスフォーメーション)の旅路でもある」とナップ氏はいう。

TaskMateの立ち上げと同時期にGoogleは、ガーナとケニアとナイジェリアと南アフリカの小規模企業を助けるための、1000万ドル(約11億4000万円)のローンを発表した。パンデミックによって停滞した経済の回復を助ける意図もある。ローンの提供は、サンフランシスコの非営利貸付組織Kivaを通じて行われる。この融資は、先々週に発表されたアフリカへの10億ドル(約1143億円)の投資の一部だ。

Googleの投資に含まれる海底ケーブルは、南アフリカとナミビアとナイジェリアとセントヘレナを貫き、アフリカとヨーロッパを結ぶ。それは高速インターネットを提供し、2025年までにナイジェリアと南アフリカに、デジタル経済の成長により170万の雇用を作り出す、と言われている。

アフリカのデジタル経済はこのような統合化の継続とともに一層の成長が期待され、接続人口の増加によっても成長の新たな機会が生まれる。アフリカのサハラ南部地域では、人口の28%、約3億300万人が現在、モバイルインターネットに接続している、と2021年のGSMAモバイル経済報告書はいう。そしてこの数字は2025年には40%にもなり、TaskMateのようなインターネット接続を利用するサービスや、アフリカの若い人口により、インターネットをベースとする企業やサービスにさらに大きな機会を提供する。

画像クレジット:SpVVK/Getty Images

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(文:Annie Njanja、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ライドシェアサービスは運転手や地域社会にコストを負担させていることが調査結果から明らかに

Uber(ウーバー)やLyft(リフト)をはじめとする「ライドシェア」サービスの平均乗車料金は年々上昇しているが、これらの企業のビジネスモデルは、完全に明らかになっているわけではないことがわかった。今回発表された2つの調査結果は、投資家の出資額だけがすべてを物語っているわけではなく、ドライバーや地域社会もコストを負担させられていることを示している。

1つはカーネギーメロン大学の研究で、交通ネットワーク企業(TNC、公的・学術的文書で使われる用語)のあまり目立たないコストと利益を分析したものだ。

例えば、TNCの車両と利用者の活動に関するさまざまなデータを収集した結果、ライドシェア車両は1回の乗車で大気汚染に与える影響が少ない傾向にあることがわかった。これは、筆頭著者のJeremy Michalek(ジェレミー・ミシャレック)氏が大学のニュースリリースで説明しているように「自動車は最初にエンジンを始動させた時、排出ガス浄化システムが効果を発揮する温度に十分温まるまで、高レベルの有害な大気汚染を発生させる」からだ。

ライドシェア車両は通常、1回の乗車ごとにコールドスタートを行う必要がない。また、もともと排出ガス量の少ない新型車が使われていることが多いため、TNCによる移動で発生する汚染物質は、平均すると、自家用車で同じ移動をする場合の約半分と推定される。研究者の試算によれば、それによって地域社会が削減できる大気汚染関連の健康コストは、移動1回につき平均約11セント(約12.3円)の価値があるという。

これは確かに良いニュースだろう。しかし問題は、ライドシェア車両には「デッドヒーディング」(仕事の合間に無目的に運転したり、アイドリングしたりすること)の習慣や、乗客をヒックアップする場所まで移動する必要があるために、せっかくの利益が帳消しになってしまうことだ。さらに、厳密に言えば「使われていない」車が道路を走っていることによる交通量の増加や、それに伴い発生する事故の確率、騒音などを考慮すると、1回の移動につき45セント(約50.5円)のコストが地域社会全体にかかることになる。つまり、1回の乗車につき約34セント(約38.2円)のコスト増となり、そのコストは税金や福祉の低下によって賄われることになるのだ。

画像クレジット:カーネギーメロン大学

研究者たちが提案しているのは、可能な限り乗り合いタクシーや公共交通機関を利用することだが、新型コロナウイルス感染流行時には、それはそれで短所がある。ライドシェア車両の電動化は有効だが、それには多大な費用と時間がかかる。

ライドシェアの運転手たち自身も、この「分散型」業界の重みを背負っている。ワシントン大学のMarissa Baker(マリッサ・ベーカー)氏が、シアトルで組合に加入している運転手を対象に行った調査では、多くの人が勤務先の会社からほとんど何のサポートも受けていないと感じていることが明らかになった。

調査に応じた運転手は、ほぼ全員が新型コロナウイルスの感染を心配しており、約30%が自分はすでに感染していると思っていた。予想通り、ほとんどの運転手が収入は減っているのに、自費でPPE(個人防護具)を購入していた。会社からマスクや除菌剤が支給されたと答えた人は3分の1以下だった。また、ウイルス感染流行中の時期に運転手を辞めた人は、失業手当の受給に苦労したと報告している。特にシアトルでは、運転手は圧倒的に黒人男性が多く、また移民も少なくないため、それぞれが複合的な問題を抱えている。

「ウイルス感染流行時にこのような仕事をしている労働者は、運転手として所属している会社からほとんどサポートを受けられず、自分たちが直面しうる潜在的な危険性について多くのことを認識していました」と、ベーカー氏はこの調査報告に付随したリリースで述べている。シアトルの運転手は、他の多くの都市にはない追加的な保護対策に恵まれているが、他の地域の人々はもっとひどい状況に置かれているかもしれない(2020年、宅配便のドライバーも同じような問題に直面していることが判明した)。

これらの調査は「ギグエコノミー」の隠されたコストやソフトエコノミクスの一端を表すものにすぎない。消費者が企業から耳にする言葉は、このような仕事をバラ色の眼鏡で見たバージョンであることがほとんどなので、独立機関による調査は、たとえそれが単なる聞き取り調査や、立証されていないコストや行動の概算であっても、非常に価値があると言えるだろう。

画像クレジット:Al Seib / Los Angeles Times / Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ニューヨーク市でデリバリーアプリワーカーの待遇改善法案が可決、トイレに行ってもいいよ!

ニューヨーク市議会で米国時間9月23日成立した条例により、GrubhubやDoorDash、Uber Eatsなどのアプリで配達をしているギグワーカーの最低賃金が決まり、労働条件が改善される。具体的には、デリバリーワーカーはレストランのトイレを使用でき、配達の最長距離を指定でき、1回の配達における最低賃金を設定でき、チップは確実にワーカーが入手できるようになる。米国の大都市がこのような法制を敷くのはこれが初めてであり、フードデリバリー企業とその何千名にものぼる契約労働者との関係に対する、行政の介入の前例となる。

一連の条例は、ニューヨーク市のNPO法人Workers Justice Projectから生まれた、主に移民のデリバリーワーカー団体であるLos Deliveristas Unidos(LDU)からの要望や陳情に基づいて起草された。同団体はパンデミックの間に労働条件の改善を求めて抗議活動を行い、4月にはニューヨーク市の最大のサービス労働者の組合であるSEIU Local 32BJに正式に加入している

Workers Justice ProjectのLigia Guallpaが、デリバリーワーカーを支援する市議会の票決に先駆けてスピーチしている。

LDUのウェブサイトには「実際にはフードデリバリーワーカーの多くが、複数のフードサービスアプリのために、1日に12時間以上、寒さと雨の中でも働き、それでも家族を養える収入を得ていない」とある。

LDUの幹部の1人は、VICEで次のように語っている。「ギグワーカーを金で釣って雨や雪でも仕事をさせているため、危険な天候が高収入を得る機会になる。今月、ニューヨーク市で13名が死んだハリケーンIDAのときも、デリバリーワーカーは食べ物を運び、洪水の最中でも注文に応えていた。DoorDashはマンハッタンでサービスを中止し、Grubhubもニューヨーク市内の一部でサービスを中断したが、それでも多くのギグワーカーがボーナスやインセンティブを求めて、身を危険にさらしながら仕事を続けました」。

こんな天候の中で、Grubhubのデリバリーはまだあなたのディナーの配達をしている。

ハリケーンIDAのこのような状況は、何年間も自明だった真実を照らし出している。デリバリーアプリの契約労働者は生活費を得るために苦労しているため、高額な賃金に釣られて自らを危険にさらす。それと同時にDoorDashやUber EatsやGrubhubのような企業は、パンデミックの間でありながら仕事が増えても、お金は儲からない

LDUはニューヨーク市の500名あまりの、アプリを利用する配達人を調査し、12.21ドル(約1349円)という時給をはじき出した。それは、市が定めている15ドル(約1657円)の最低賃金より少ない。それだけでなく、デリバリーワーカーは、交通費を自分で負担しなければならない。ニューヨーク市の場合その交通手段は主に電動自転車だ。また、デリバリーワーカーは窃盗に遭いやすい。さらに、今回の調査の回答者の49%が配達時に事件や事故に遭い、75%が医療費を自前で払ったと回答している。しかしDoorDashはTechCrunchに対して、マンハッタンでは1時間に33ドル(約3645円)稼いでいると述べている。

DoorDashはTechCrunch宛の声明で次のように述べている。「ニューヨーク市のデリバリーワーカーが特殊であることは私たちも十分理解しており、彼らのためになるポリシーの発見に労使協調して努めています。そのため2020年は、ワーカーの安全を守り収入を上げ、トイレへのアクセスを広げる業界初の取り組みを発表した。市議会も含め、すべてのステークホルダーとの協調は今後も継続すべきであり、予期せざる結果にならないよう十分注意しながら、ニューヨーク市のすべてのデリバリーワーカーを支援する方法を見つけなければなりません」。

DoorDashは今回の条例への懸念として、トイレの利用に際していちいちレストランの許可を必要なのはおかしい、と述べている。DoorDashでは最初の契約時に、デリバリーワーカーによるトイレの利用を契約条項に含めている。

画期的だ!おめでとう。LDUの@workersjusticepは歴史的な市条例を勝ち取り、デリバリーワーカーにトイレの利用と賃上げとチップの透明性と、さらにそれ以上のものを与えた。エッセンシャルワーカーのための闘争を、ともに続けよう!

Grubhubも条例の支持を表明している。同社はTechCrunch宛の声明で「これらの条例は、ニューヨークのレストランと住民のために毎日厳しい労働をしているデリバリーワーカーを支援する常識的なステップである。彼らが確実に生活給を付与されトイレにアクセスできることは、単なる名案ではなく、当然やるべきことだ」。

その他のアプリのギグワーカーもデリバリーと同様の問題を抱えている。今週初めにInstacartの契約労働者1万3000名を擁する団体Gig Workers Collectiveは、賃上げや労働条件の改善など5つの要求にInstacartが応じるまではアプリを削除するよう顧客に求めた。これらのアプリのワーカーは従業員(正社員)ではなく契約労働者となっているため、最低時給をはじめ保護が少ない。Instacartは過去に、ワーカーのチップを賞与額に含めていた。

ニューヨーク市の約8万名のデリバリーワーカーにとっては、今日の条例が前向きな変化となる。しかしテクノロジー企業が実際にその最低賃金を支払い、労働者のニーズの充足を保証するかは、まだわからない。

画像クレジット:撮影Tomohiro Ohsumi/Getty Images/Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Mintの元社長がギグワーカーに金融商品を提供するLeanに約5億円を出資

ギグワーカーや個人事業主は、金融商品に対するニーズがサラリーマンの人たちとは異なる。

Lean(リーン)」の創業者であるTilak Joshi(ティラック・ジョシ)氏は、Mint(ミント)の代表を務めた後、American Express(アメリカン・エクスプレス)やPayPal(ペイパル)でプロダクトの責任者を務めた経験から、この課題を痛感していた。

近年、米国では個人の労働者が増えてきているが、従来の金融機関はそれに「対応できていない」とジョシ氏はいう。

「個人労働者の70%はその日暮らしのような生活をしており、30%は十分な保険に加入していません。個人労働者は、まもなく米国の労働力の大半を占めるようになり、既存のやりとり、プラットフォーム、機関は、彼らをサポートするために急速に進化する必要があります」と彼はいう。

2020年にMintを退社したジョシ氏は、Eden Kfir(エデン・クフィール)氏、Ramki Venkatachalam(ラムキ・ヴェンカタチャラム)氏と共同でLeanを立ち上げ、ギグワーカーのニーズに合わせて「カスタムビルド」された金融商品へのアクセスを提供するプラットフォームで彼らをサポートしようとしている。そして米国時間9月8日、Inspired Capital(インスパイアード・キャピタル)が主導し、Atelier Ventures(アトリエ・ベンチャーズ)、Oceans Ventures(オーシャンズ・ベンチャーズ)、Acequia Capital(アセキア・キャピタル)が参加したシードラウンドで450万ドル(約4億9400万円)を調達したことを発表した。

このラウンドには、DoorDash(ドアダッシュ)の幹部であるGokul Rajaram(ゴクル・ラジャラム)氏、Instacart(インスタカート)の共同創業者であるMax Mullen(マックス・ミューレン)氏、Uber(ウーバー)の元CPOであるManik Gupta(マニック・グプタ)氏、Postmates(ポストメイツ)の元COOであるVivek Patel(ヴィヴェク・パテル)氏、Bird(バード)のCPOであるRyan Fujiu(ライアン・フジウ)氏など、マーケットプレイス業界の多くの企業が資金を提供している。今回の資金調達により、Leanのこれまでの調達額は約600万ドル(約6億5900万円)となった。他にも、Charlie Songhurst(チャーリー・ソンガースト)氏、Lightspeed Venture Partners(ライトスピード・ベンチャー・パートナーズ)(Stripeの元幹部)のパートナーであるJustin Overdorff(ジャスティン・オーバードルフ)氏、Coinbase(コインベース)のMarc Bhargava(マーク・バルガヴァ)氏、ANGI Homeservices(ANGIホームサービス)、Coinbase、Plaid(プレイド)の幹部など、注目を集めているエンジェル投資家が同社を支援している。

「個人労働者は、米国のどこよりも厳しい経済状況に置かれています。彼らが経済的な問題を解決するためにすることは、さまざまなギグマーケットプレイスで働くことです。そして、マーケットプレイスが労働者を引き留めてインセンティブを支払おうとすると、労働者はこれをうまく利用する方法を見つけ出します。すると、マーケットプレイスは頼りになる強力な労働力を持つという安定性がなくなり、労働者側も窮地に立たされるという、双方にとって非効率な結果となってしまいます」とジョシ氏はTechCrunchに語った。

画像クレジット:Lean

Leanは、マーケットプレイスと直接提携して金融商品や福利厚生を提供することで、個人労働者を支援することに狙いをつけている。その目的は、ギグワーカーに「コストのかからない資金」「即時支払い」、そして住宅ローンや「低コストから無コストの借り入れ」、HSA(米国の医療用貯蓄口座)や保険などの金融商品の選択肢を提供することで、各マーケットプレイスが労働者の獲得と維持ができるよう貢献することにある。

Leanは、ライドハイリング(ライドシェア)、宅配、医療、建設などの業界で働く1099(個人事業主)またはW2の労働者(会社で働く従業員)を雇用するあらゆる規模のマーケットプレイスと連携している。ジョシ氏は、Leanが労働者の獲得と定着を促進するだけでなく、マーケットプレイスが労働者の手数料からではなく、金融商品やインフラを通じて収益を得る扉を「開く」ポテンシャルをもっていると述べている。

Leanのプラットフォームは、どのマーケットプレイスにも2週間以内で統合できるように設計されているとジョシ氏はいう。同氏によると、Leanはマーケットプレイスとのパートナーシップを通じて、今後数カ月の間に国内の「数十万人」のギグ・ワーカーにサービスを提供する予定だそうだ。

マーケットプレイスにはコストはかからず、労働者側にもコストはかからない。Leanは、プラットフォームを介した金銭の移動にともなう手数料によって収益を得ることができると、ジョシ氏は述べている。現在、同社は6つのマーケットプレイスと取引をしており、さらにもう6つのマーケットプレイスとも取引の話が進行中だ。

同社は、今回の資金調達により、提供サービスを拡大し、マーケットプレイス間の取引拡大を進めていく予定だ。

Inspired CapitalのパートナーであるMark Batsiyan(マーク・バトシヤン)氏は、Leanに惹かれた理由として、Leanのチーム、市場のタイミング、アプローチを挙げている。

「ギグワーカーへのサービス向上には市場で大きな追い風が吹いており、マーケットプレイスは労働者を惹きつけ、維持するための方法を模索しています。また、ティラック(ジョシ)氏はもInspiredの私たちと同じような結論にいたりました。それは、マーケットプレイスがこれらのソリューションを自分たちで構築することはないだろうということです。利益をすぐに使えるソリューションにするためには、Leanのような仲介者が必要です」。と彼はメールで語っている。

バトシヤン氏は、LeanのB2B2Cアプローチがユニークであると考えている。

「プラットフォームとしてのLeanは、そのパートナーシップを活用して、末端労働者へのより効率的な流通を実現することができます」と述べている。

2021年初め、Mintの初代プロダクトマネージャーは、消費者の金融生活の「計画と管理」を支援することを目的としたサブスクリプション型プラットフォーム「Monarch(モナーク)」のために、480万ドル(約5億2700万円)のシード資金を調達した。

関連記事:消費者が家計の「管理と計画」を行うためのサブスク式の財務プラットフォーム「Monarch」が5.3億円調達

画像クレジット:Nattanitphoto / Shutterstock

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Akihito Mizukoshi)

【中国】政府はテック巨人にもっと社会的責任を負わせたい

TechCrunchチャイナ・ラウンドアップへようこそ&おかえりなさい。中国テック業界の近況と、それが世界の人々に与える影響ついてまとめてみた。

先週、中国ゲーム業界は再び政府の標的となり、未成年プレイヤーに対する世界で最も厳格と思われるルールが施行された。また、中国のテック巨人たちは、社会的責任を取り、束縛のない拡大にブレーキをかけるようにという政府の要請に急いで答えている。

ゲーム制限令

中国政府はこの国の若きゲーマーたちに爆弾を落とした。現地時間9月1日以降、18歳未満のユーザーはゲーム時間が1日当たりのわずか1時間、金曜、土曜、日曜日の午後8時~9時のみに制限される。

この厳格なルールは、未成年に対するすでに締め付けの強いゲームポリシーに輪をかけるもので、政府はビデオゲームが近視の原因であり、精神と肉体両方の健康を害していると信じている。中国が最近、一連の校外学習の制限を発表したことを思い出して欲しい。働く親たちは子どもたちを忙しくさせるのがますます難しくなるというジョークが出回っている。

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新たな規制のいくつかは分析する価値がある。まず、新しいルールを策定したのは国家新聞出版署(NPPA)。同署は中国国内のゲームを承認する規制機関であり、2019年には9カ月間認可を凍結してTencent(テンセント、騰訊)などでゲームの在庫が底をつくことにつながった。

プレイタイムの指針が、ゲームコンテンツの審査と出版ライセンスを発行しているNPPAから出てきたことは興味深い。中国の他の業界と同じく、ビデオゲームは複数の規制機関による承認の対象となっている。NPPAの他、国の最高のインターネット監視機関であるサイバースペース管理局(CAC)、業界標準と通信インフラを司る中華人民共和国工業情報化部がある。

アナリストらは、習近平主席が長を務める中央サイバースペース管理局配下で強大な力を持つCACが、権利を手放したくない他の省庁との官僚的闘争に直面しているところを長年見てきた。これは、裕福なゲーム業界の規制にも当てはまる可能性が高い。

Tencentをはじめとする主要ゲーム会社にとって、新ルールが会社のバランスシートに与える影響は取るに足らない。ニュースが報じられた直後、NetEase(ネットイース)や 37 Games(サーティーセブン・ゲームズ)をはじめとする中国上場ゲーム会社は、未成年プレイヤーは会社売上の1%以下しか寄与していないことをすかさず発表した。

Tencentはこの変更を見越して「中国におけるゲーム売上において16歳未満の占める割合はわずか2.6%、12歳未満はわずか0.3%」であると第2四半期決算で公表している。

こうした数字が現実を反映しているかどうかはわからない。なぜなら子どもたちは、ユーザー登録に大人のIDを使うなどしてゲーム制限を回避する方法を以前から知っているからだ(前の世代が成人の友人からIDを借りてインターネットカフェに潜り込んだのと同様だ)。Tencentや他のゲーム会社は、これらの回避方法を遮断することを約束して、子どもたちにVPNを使って海外版のゲームタイトルを利用するなど高度な技の追求を強いようとしている。いたちごっこは終わらない。

ともに繁栄を

中国はテック巨人の力を削ぎ落とすだけでなく、社会的責任を果たすよう圧力をかけている。ギグワーカーの権利尊重もその1つだ。

先週、中国最高人民法院は「996」と呼ばれる午前9時から午後9時まで週6日働く長時間労働を違法と判断した。この決定は、テック業界のバーンアウト・カルチャーに対する労働者の数年にわたる抗議活動を受けたもので、「996」を実行している企業を列挙するGitHub(ギットハブ)プロジェクトなどが行われてきた。

関連記事:中国の長時間労働にスタートアップが反撃

一方、勤勉で従順な従業員は、中国テック業界の競争優位性であると言われることも多い。それは、シリコンバレー企業、特に中国をよく知る人々が経営する企業が、この国に支社を設置してテック人材を活用している理由の一部だ。

残業が称賛、許容されていた日々は終わろうとしている。ByteDance(バイトダンス、字節跳動)と同社のショートビデオのライバルであるKuaishou(クアイショウ、快手)は、最近それぞれの週末残業ポリシーを廃止した

同様に、Meituan(メイトゥアン、美団)はフードデリバリー配達員のために強制休憩時間を導入することを発表した。オンデマンドサービスの巨人は、ライダーに過酷な労働時間や危険運転を強要する「非人間的」アルゴリズムで非難を浴びていた。

画期的な試みとして、ライドシェアリングの巨人、Didi(ディディ、滴滴出行)とAlibaba(阿里巴巴集団)のeコマースのライバル、JD.com(ジェイディードットコム、京東集団)は、社員のために労働組合を設置した。ただし、新たな組織が従業員の権利を守るために意味のある影響を持つかどうかは不明だ。

TencentとAlibabaも動いた。8月17日、習近平主席は「共同繁栄」を求める演説を行い、この国の大富豪たちから大きな注目を集めた。

「中国が2度目の100年目標に向かって進むにあたり、人民の幸福は、共同繁栄を促進して党の長期支配の基盤を強化することによって実現すべきです」。

今週TencentとAlibabaの両社は「共同繁栄」を支援するために1000億人民元(155億ドル)を拠出することを宣言した。資金の目的は、地方経済の成長から医療システムの改善まで、中国政府の国家開発目標とよく似ていてうまく連携している。

画像クレジット:Photo by Lintao Zhang/Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ギグワーカーを非従業員とするカリフォルニアの条例Prop 22を高裁が憲法違反と判決

UberやLyftなどギグワーカーを軸とする企業に米国時間8月20日の夜遅くショックが訪れた。高等裁判所の判事が、2020年に成立してギグワーカーの雇用ステータスに対する論争の多かったAB-5法を、否定する目的で成立させたカリフォルニア州第22条令(Prop 22)は州の憲法に違反していると裁定した。

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オークランドやバークリーなどイーストベイの多くをカバーするアラミダ郡の高裁判事Frank Roesch(フランク・ローシュ)氏は「その法(Prop 22)が、将来の議会がギグワーカーの雇用ステータスを定義する力を制限する」と裁定した。この訴訟は2021年1月にService Employees International Union(SEIU)(サービス業被雇用者国際組合)が起こし、同様の訴訟がフォルニア州最高裁で却下されてから下級審へ回されたものだ。

この法廷の決定はほぼ確実に控訴されるであろうし、今後の法的議論が当然あるだろう。

しかしSEIUのカリフォルニア州評議会の議長Bob Schoonover(ボブ・スクーノーバー)氏は、声明で次のように述べている。「ローシュ判事によるProp 22を無効とする本日の裁定は極めて明確である。ギグ業界が金で買った住民投票は憲法違反であり、したがって施行不可能である。2年にわたりドライバーたちは、民主主義は金で買えないと言い続けてきた。そして本日の判決は、彼らが正しかったことを示している」。

高裁の判決は、UberやDoorDashのようにギグワーカーに大きく依存している企業と、労働者を代表する組合や活動家との間の戦いの、勝ちと敗けの長い々々列の最新のひとコマにすぎない。その議論の中心にあるのは、フリーランサーと従業員との法的な区別であり、それぞれのワーカーに対して企業はどの程度の福利厚生の責任を負うか、という点だ。

その区別がビッグビジネスになっている。UberやLyftなどの企業は2020年Prop 22を勝ち取るために、総額で2億ドル(約220億円)あまりを費消した。カリフォルニアの有権者はその条例を、ほぼ59%対41%で通過させたが、それはギグワーカープラットフォームの大勝利と多くの人びとが受け止めている。

しかしこのような戦いはシリコンバレーの本拠地である州だけの現象ではない。2021年初めに英国では、Uberが従業員の位置づけをめぐる法廷闘争で負けて、その数万人のドライバーが労働者と見なされた。そしてその判決により彼らには、それまで保証されなかった多様な福利厚生が提供された。

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(文:Danny Crichton、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ギグカンパニーが労働者の身分をめぐりマサチューセッツ州でも住民投票を画策

LyftやUber、Doordash、Instacartなど、アプリによるライドシェアやデリバリーのサービスを提供している企業の連合が、住民投票でギグエコノミーの労働者を独立の契約業者と認めるよう、マサチューセッツ州に請願を提出した。これまで同業界は、カリフォルニア州で同様の住民投票を主導して、勝った経験がある。

その連合の正式名であるMassachusetts Coalition for Independent Work(マサチューセッツ州独立労働連合)が今回住民投票を提案したその約1年前には、労働者の権利を擁護する団体とギグエコノミーの企業が対立し、業界側が数百万ドル(数億円)を投じた高価な宣伝活動により、カリフォルニアの有権者は、Proposition 22と呼ばれる同様の住民投票により、業界の主張を認めた

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LyftやUberなどからなるこの連合のメンバーには、地元各地の商工会議所も含まれ、彼らは米国時間8月3日に、2022年11月に行われる州政府選挙に住民投票の可否が含まれることを要求した。投票にかけられる質問は司法の審査を要し、また住民投票が政府選挙に含めること自体も、有権者の十分な数の賛成票を要する。

8月3日に行われたLyftの決算報告で、共同創業者のJohn Zimmer(ジョン・ジマー)氏は次のように述べている。「私たちの第1目標は、マサチューセッツ州で合法的な解決を見出すことです。私たちが一貫して主張してきたことは、圧倒的多数のドライバーが求めていることでもあり、それは私たちのプラットフォームが提供してきた柔軟性のある所得機会、それ加えて福利厚生です。また私たちは住民投票という方法を求めるだけでなく、マサチューセッツ州議会と緊密に協力して、法律に基づく解決も求めていきたい」。

同連合によると、提案されている住民投票の質問は、アプリを用いるライドシェアやデリバリーのワーカーを独立の契約労働者としながらも、健康保険料の給付など、新たな福利厚生を提供するものになっている。

連合の提案の中には、ドライバーやデリバリー労働者の最低賃金をマサチューセッツ州の最低賃金(同種のアプリベースの労働に対し2023年に、チップを除き時給18ドル、約1960円)の120%であったり、週の労働時間が15時間以上のドライバーへの健康保険料給付などがある。これらの計算にチップは含まれず、チップは全額ドライバーのものになる。また車の維持費や燃料費として走行距離1マイルにつき0.26ドル(約28.35円)以上が保証される。

労働運動家たちは、早くも反発している。NAACPニューイングランド支部やマイノリティ近隣社会組合、マサチューセッツ州移民難民連合など、さまざまな団体からなるCoalition to Protect Workers’ Rights(労働者の権利保護連盟)は8月3日に、住民投票方式には労働者を傷つける問題の文言があると反論した。

同団体によると、それらの文言には抜け穴が多いため実質賃金が最低賃金を下回ることが可能であり、また健康保険の内容が極めて貧弱である。さらにまた、反差別主義者に対する保護が取り去られたり、労働者の補償規則が排除されたり、また企業が何億項にものぼる州の失業対策をごまかすこともありうるという。

UberやLyftを軸とするこの幅広い連合は、労働者の独立契約業者化に関して、住民投票や法制化をロビー活動しているが、同時にまた、2020年提出された訴訟にも直面している。その原告であるマサチューセッツ州司法長官Maura Healey(マウラ・ヒーリー)氏は、賃金と労働時間に関する複数の州法に基づき、UberとLyftのドライバーは会社の従業員(被雇用者)である、と主張した。

州の司法長官事務所によると、UberとLyftは、ドライバーを独立の契約業者と認めるために必要な、州法が定める3つの要件を満たしていない。1つは、独立の契約事業者であるためには労働者は会社の指示やコントロールから自由でなければならない。ビジネスの通常のコースから外れたサービスでも実行できる。そして、同様の仕事を自分自身でやっていてもよい。

Uberは2020年以来、カリフォルニア州のProposition 22に似た州法をマサチューセッツ州でも成立させたい、と匂わせていた。UberのCEO、Dara Khosrowshahi氏は2020年の11月の決算報告で、アナリストたちとともに、同社は「Prop22のような法律を強力に推していく」と言明した。その後彼は「米国と世界のすべての政府と協力してこれを実現したい」と付言した。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hiroshi Iwatani)

【コラム】21世紀型の搾取となっている「ギグエコノミー」

編集部注:本稿の著者Rebecca Dixon(レベッカ・ディクソン)氏はNational Employment Law Projectのエグゼクティブディレクター。

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昨今のアプリベースのギグエコノミー、すなわちインターネットやスマートフォンを通じて単発の仕事を受注する働き方や、それによって成り立つ経済形態は、しばしば「現代のイノベーション」や「21世紀型のワークスタイル」という美辞麗句で語られるが、これは羊の皮をかぶった狼のようなものだ。

低賃金で不安定な仕事は今に始まったものではない。安い賃金かつ危険で「スキルがない」として解雇される仕事は昔からあった。有色人種の労働者は常に(そしてこれからも)、組織的な人種差別と歴史的に搾取的な経済が故に、最もブラックな産業に集中している。

従来と異なるのは、現在ではUber(ウーバー)、DoorDash(ドアダッシュ)、Instacart(インスタカート)などの企業が、デジタルアプリを使って労働力を管理(アプリベース)しているので規制に従う必要がないと主張している点にある。

いわゆる「ギグエコノミー」における労働者の権利は、現代的課題として位置づけられることが多い。しかし、ギグエコノミーやアプリベースの労働者(主に有色人種)が直面している問題を考えると、私たちは過去から学んで公正な経済に向けて前進する必要がある。

連邦政府は長期にわたり、労働者の大規模な搾取への対処に失敗している。全国労働関係法(米国)が成立してからも、有色人種の労働者が従事していた農業や家事などの仕事は、労働権や保護の対象から除外されてきた。今日の「独立請負人」も、その多くが有色人種の労働者で、同じカテゴリー、すなわち労働法で保護されない労働者である。黒人とラテン系の労働者の合計は、全米の総労働力の29%以下だが、アプリベースの企業の労働者に絞れば約42%を占めている。

ギグカンパニーは、自分たちのビジネスを構成し、指示を受け、自分たちが設定する賃金を受け取るドライバーや配達員、独立請負人などの労働者は、極小ビジネスの何百万もの集合体であり、基本的な手当や保護は必要ないと主張する。これにより、これらの企業は現場の労働者に対する責任を負わず、最低賃金、医療保険、有給休暇、損害賠償保険など、従業員にとって必要不可欠な基本的コストの支払いから逃げている。このような状況は、全国的な不平等を助長し、最終的には労働者の搾取と犠牲の上に成り立つ大きな欠陥のある経済につながっている。

アプリベースの企業は、ますます不穏な傾向を示している。過去40年間、連邦政府の政策により、労働者の交渉力は大幅に低下し、企業やすでに大きな富と力を持つ者に権力が集中するようになった。これにより、人種間の賃金や貧富の格差は悪化の一途をたどり、あまりにも多くの人たちの労働条件が劣悪になっている。

すべての人にとって働きやすい経済を構築するためには、ギグカンパニーやアプリベースの企業が「イノベーション」を口実に労働者を搾取することが許容されないことは明らかだ。これらの企業は、労働者自身が独立した契約者であり続けることを望んでいると主張するが、労働者が望んでいるのは、適切な賃金、雇用の安定、柔軟性、そして連邦法に基づく完全な権利である。これは合理的で正当な要求であり、世代間のジェンダーや人種による貧富の差を解消するためにも必要なことだ。

アプリベースの企業は、労働者を搾取するモデルを後押しする政府の政策を続けさせるために、多大な資金を投入している。Uber、Lyft(リフト)、DoorDash、Instacartなどのアプリベースの企業は、州議会、市議会、連邦政府でロビー活動を行い、誤った情報を大々的に売り込んでいる。選挙で選ばれたリーダーたちはあらゆるレベルで、これらの政策が自分たちに有利なように法律を書き換えようとする企業の企みであることを認識し、労働者を普遍的な保護から切り離す政策の庇護にある企業の利益を拒否する必要がある。

議会も、有色人種を基本的な雇用保護から締め出す除外規定を拒否し、アプリベースの労働者を含むすべての労働者に保護を拡大する法案を通過させねばならない。PRO法(Protecting the Right to Organize Act:団結権保護法)は、雇用主によって悪意を持って「独立請負人」と分類された労働者に交渉権の保護を拡大する、すばらしい第一歩だ。

アプリベースの労働者は、全米で健康と安全を保護するための組織を立ち上げ、労働者としての権利が認められ、保護されることを要求している。選挙で選ばれたリーダーたちは「21世紀型」のモデルを主張する企業のプロパガンダに騙され続けてはいけない。21世紀であろうとなかろうと仕事は仕事であり、アプリベースであろうとなかろうと、仕事は仕事なのだ。

私たちは議会に対し、すべての労働者の労働権と保護を認め、アプリベースの企業が「柔軟性」や「イノベーション」の名のもとに労働者の平等な権利を阻むことがないよう、大胆に行動することを求める。

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新しいデジタル屋外広告「Stchar !」を手がける学生企業Wanna technologiesが1100万円のシード調達

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(文:Rebecca Dixon、翻訳:Dragonfly)

新しいデジタル屋外広告「Stchar !」を手がける学生企業Wanna technologiesが1100万円のシード調達

新しいデジタル屋外広告「Stchar !」を手がける学生企業Wanna technologiesが1100万円のシード調達デジタル屋外広告(DOOH。Digital Out Of Home)とギグワークを結び付けたサービス「Stchar !」(ストチャー!)を開発する企業Wanna technologies(ワナテクノロジーズ)は6月7日、シードラウンドにおいて、第三者割当増資による1100万円の資金調達実施を発表した。引受先はEastVentures。調達した資金は、Stchar !の開発とチーム体制の強化にあてる。

「Stchar !」は、遊んでいるうちにお金儲けができる新しい広告媒体のシステム。ユーザーは、広告を表示させたiPadを持ち歩くだけで広告収入が得られる。例としては、iPadを持って渋谷で8時間遊べば(歩くだけでよい)6000円が稼げるとしている。また、広告主が特に力を入れたい地域として設定した「ボーナスエリア」に入れば、報酬がアップするという仕組みだ。「依頼の争奪戦がない」のも特徴のひとつ。

Wanna technologiesは2020年、代表取締役兼CEOの小野塚悠氏、取締役兼COOの照井俊哉氏、取締役兼CTOの牧野賢士氏の高校生だった3名によって創設された。学生起業家のためのアクセラレータープログラム「GAKUcelerator」(ガクセラレーター)に第4期生として参加し、デモデイでは「Stchar !」の元となった「ad+」(アドプラス)が最優秀賞とMIT賞を受賞。それが起業のきっかけになった。

「Stchar !」は、「お金がないから遊べない」という彼らの経験から生まれたサービスだ。「私たちは現在学生で、安定した収入源を持っておらず、1カ月に使えるお金が非常に限られています。私たちのような学生が友達に誘われた際に、『今日お金がないから遊べない』という理由で断ることがなくなるように、遊びながらお金を稼ぐことができて、その場で即日報酬が手に入るプラットフォームとなることを目指しています」という。同社のモットーは「もっと遊ばなきゃ!」。

サービスは2021年中に開始される予定。現在は事前登録を受け付けている。今後は、iPadを持っていない人も参加できる仕組みを開発中とのことだ。

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バイデン政権の労働長官はギグワーカーを従業員待遇にすべきと考えている

米国時間4月29日、バイデン政権の労働長官Marty Walsh(マーティ・ウォルシュ)氏は、ギグエコノミーという白熱している問題に言及して、福利厚生を欠いて働く多くの人びとは企業の従業員扱いになるべきだ、と主張した。

ロイターのインタビューでウォルシュ氏は、労働省はギグエコノミーに注目しており、その労働者の位置づけを変えることがバイデン政権の優先課題になりうると暗示した。

「ギグワーカーを従業員として待遇すべきと思われるケースが多い。現状では、労働者の待遇は場所や項目などによってまちまちであり、一貫性がない。全面的に一貫性があるべきだと私は考える」とウォルシュ氏はいう。

ウォルシュ氏によると、労働省はギグワーカーから利益を得ている企業に対して、それらの企業の非従業員に米国の平均的従業員並の福利厚生を確保するよう促すかもしれない、という。

「企業が売上と利益を得ることは、米国では普通のことであり、何も問題ではない。従業員に平均的な福利厚生を与えてなおかつ利益を得ている企業なら、何もいう必要はない。しかし私たちが一般的に求めるのは、企業の成功が確実に労働者の待遇にも反映することだ」とウォルシュ氏はいう。

ウォルシュ氏のコメントは現在のところ、国の施策によって認められてはいない。しかしそれらは、非従業員の労力を利用しているテクノロジー企業で、今だに大きな波風を惹き起こしている。4月29日のこのニュースで、UberとLyftそれにDoordashの株価は下がった。

そのインタビューでウォルシュ氏は、雇用主からの失業保険や健康保険がないギグワーカーのパンデミック関連の心配についても触れた。連邦政府はパンデミックの間に、ギグワーカーに対する福利厚生を認める2つの大型法案を成立させて、施策の緩みを修復した。しかしそれ以外では、彼らにはほとんどセーフティーネットがない。

労働法の改正はバイデン氏の選挙公約でもあり、大統領になってからは労働者保護の強化と労働者の組織化の支援を強調してきた。バイデン氏の政権移転サイトには、労働者保護の拡張に捧げられた部分があり、従業員を契約労働者扱いする誤りを「伝染病」と呼んでいる。

バイデン氏は米国時間4月28日夜の下院との合同会議で、以前からの労働組合の支持を繰り返し、労働者の組合結成や組合への参加を保護する法律であり組織化する権利の保護法(Protecting the Right to Organize Act)を賞揚した。その法律も拡張され、国の悪政を暴露する者にも適用されるようになる。

「ミドルクラスがこの国を作った。そして、組合がミドルクラスを作った」とバイデン大統領は語っている。

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

小規模事業者がAmazonと競合できるようにする同日配達プラットフォーム「Tyltgo」

Tyltgo(ティルトゴ)は、レストランや小規模事業所がAmazonやHelloFreshなどが提供している同日配達サービスと簡単に競合できるようにしたいと考えている。このほどシードラウンドで230万カナダドル(約1億9800万円)調達したカナダ企業Tyltgoは、ホワイトラベルのUber Eatsのようなものだ。事業所をギグエコノミーの配達人と結びつけ、事業所のブランド下でのオンデマンド配達プラットフォームを提供している。

「自社のことを購入後体験の会社だと考えています」と共同創業者でCEOのJaden Pereira(ジェイデン・ペレイラ)氏はTechCrunchに語った。「消費者は直接事業者のプラットフォームにいき、そこで注文します。ですのでエクスペリエンス全体を通じて購入したブランドとやり取りしているような感じになります。当社のメッセージやノーティフィケーション、追跡ページ、配達はすべて業者のブランドにカスタマイズされますが、Tyltgoによって動いています」。

パンデミックによる外出禁止令が出ている間、Amazonのようなeコマース大手がかなりリーチを広げたのとあわせ、プロダクトを配達する必要性は同日配達を期待する社会を作り出した。Tyltgoはそうした現実の中に排他性があることに気づいた。小規模事業者は時間やリソースが限られているという事実だ。そして同社はイノベーティブなテックとギグエコノミー配達人でもって状況を改善することに乗り出した

2018年7月、ペレイラ氏はウォータールー大学で勉強しながら同級生でデベロッパーのAaron Paul(アーロン・ポール)氏と共同で会社を設立した。ペレイラ氏は自身、アルバイトで配達を行い、その一方でShopifyで消費者相手のサービスを構築した。ペレイラ氏とポール氏は真の問題は事業者が安価な価格で同日配達を提供するのに苦戦していることだと認識し、2019年10月にB2Bへとフォーカスをシフトした。

2019年12月から2020年12月にかけて、Tyltgoの売上高は2000%成長した、とペレイラ氏は話す。同社は2020年を2人で迎えたが、その年の終わりには9人に増えた。ここには、Uber Eats Canadaマーケットプレイスオペレーションの元責任者Joe Rhew(ジョー・ルー)氏、Goldman Sachsに買収されたフィンテック企業Financeitでエンジニアリングのディレクターを務めたAdnan Ali(アドナン・アリ)氏が含まれる。

VCファームTI Platform Management、Y Combinator、エンジェル投資家Charles Songhurst(チャールズ・ソングハースト)氏からの資金により、Tyltgoは2021年の売上高成長率1500%を予想する。同社の目標は、チームを拡大してAPIとアプリベースのプラットフォームを開発し、オンタリオ州で事業者を100社増やすことだ。

ペレイラ氏はTyltgoがもともと花屋、そして時々薬局にフォーカスしていたが、レストラン業界からの需要が新たなターゲットである食事キット配達につながった、と話した。

完全に計量された材料と調理法の案内で料理の難しい面をカバーしている食事キットのサービスは、その前から人気を獲得しつつあった。パンデミックに見舞われたとき、HelloFreshやBlue Apronのようなサービスはさらに成長した。レストランは店をオープンし続けるのに苦戦し、多くの店が温めるだけ、あるいはすぐに食べられるレストラン品質の食事を配達することになった。

グローバルの食事キット配達サービスマーケットは2027年までに約200億ドル(約2兆1616億円)に達すると予想されている。中でも、温めて食べるだけというオプションがかなりの割合を占める。Tyltgoは業界の成功を頼りにしている。すでにGeneral Assembly PizzaやCrafty Ramenといったレストラン、グローサリーストアやオーガニック農園の従来型の食事キットサービスとの提携を確保した。

ペレイラ氏は、花や食事キットという「準生鮮業界」での取り組みは同社にとってチャレンジであり、差別化要因だと話した。配達するものにもよるが、Tyltgoは商品の鮮度を維持できる時間を決め、その時間に合わせてドライバーをマッチする。同社はまた、数多くの配達を配達人の車両のサイズに合わせて割り当てる高度な車両管理プラットフォームを導入した。

「初期においての最も困難な部分は、商品にダメージを与えることなくそうした鮮度維持時間をマッチさせることでした」とペレイラ氏は話した。「ロジスティックでは、交通状況や気象状況、他のすべてを考慮しなければなりません。しかし35件の配達を行うのに8時間の配達時間があります」。

もう1つの課題は、ギグエコノミーの中で展開しながらTyltgoが宣伝する最高品質のサービスを確保することだ。信頼できる配達人の選択はTyltgoの業務のスピードを時に緩やかなものにしたが、同社はエラーの上限値を低く維持できる場合にのみ対応能力を拡大させる。

「当社は、配達に対応する能力がなく期待にも応えられないと考えれば、事業者をサービスに引き込みません」と同氏は述べた。

Tyltgoの食事キットへのフォーカスが長期的に事業拡大へとつながるかどうかはさておき、プラットフォームそのものはしっかりとしている。ペレイラ氏の目標は、同社がすべての小売業の部門での購入後顧客エクスペリエンスの一部になることだ。ここには配達に加えて顧客サービス、ブランディング、決済への業務拡大が含まれる。

「当社がこのサービスを行っているのは、小規模の実在店舗小売業者の多くが世界のAmazonと競うことができるようになるための時間やリソースを持っていないということが主な理由です。当社は小売業者の手に力を与えることができるようになりたいのです」とペレイラ氏は述べた。

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

Postmatesの元グローバル公共ポリシー担当副社長が語るギグワーカーの将来

現在は「元」が付くPostmates(ポストメイツ)のグローバル公共ポリシーおよび戦略的コミュニケーション担当副社長であるVikrum Aiyer(ビクラム・エイヤー)氏は、元同僚たちと、ギグエコノミーの利害関係者たちに宛てて、この業界が次に必要としているものに関する彼の考えをまとめた意見書を送った

その中でエイヤー氏はこう述べている。「雇用者の分類を微調整したり、1つの州が住民投票を行っただけで、米国人が本当に不安に感じている問題、つまり雇用機会、家族の面倒、将来への不安に抜本的に対処し、堅実な道筋を築けると考えているようでは、過ちを犯します」。

彼はさらに、テックプラットフォームも労働者擁護者も出資者も「それぞれのモデルを改変したり、寸分たりとも動かすことを望んでいない」と指摘する。つまり「臨時雇用にも社会的セイフティーネットにも進歩は期待できない」という。エイヤー氏は「労働者と資本家、テクノロジーと労働組合、保守とリベラルという、この無意味な戦い」を終わらせたいと考えている。

この文書でエイヤー氏は、臨時職員に頼るテック企業にいくつか提言を行っている。たとえば企業は「正規職員と個人事業主との間の待遇の差を縮める」ことに繋がる、取締役会への投票権を持つかたちでの労働者の参加、継続可能な福利厚生の支給を提案し、ギグワーカーの部門別交渉については、次のように考えている。

個人事業主のための部門別交渉は、個人事業主の分類を維持したままで、収入と福利厚生の部門全体にわたる最低基準の革新的な改善に繋がります。一部の組織化された労働者は、分類に関わらず、すべての労働者の交渉権の拡大を主張しています。それを業界が完全に退けてしまわないうちに、またこれは米国では前例のないものであるために、連邦議会、米国政府説明責任局、または大学の労働研究センターが厳格な審査を行う理由は十分にあり、交渉参加希望者の署名入りカードを回収して労組結成を認める制度、反トラスト法、連邦法の優先制度がどのように機能するかを調査すべきです。理想としては、それが労働者に力を与え、誠実性に欠ける企業が底辺への競争で優位になることを阻止できます。

エイヤー氏は、PostmatesとUber(ウーバー)と並んで、ギグワーカーを不法に個人事業主として分類するカリフォルニア州住民立法案(Proposition 22)の提案者ではあるが、まったく同じ法律を米国全土に適用すべきとは考えていないと話す。

「Proposition 22は、テック企業は勤務形態に柔軟性を持たせることで個人事業主の条件をさらに優位な方向へ調整すべきという議論においては、一歩前進でした。しかし、今後に向けて対処しておくべき問題が2つあります」と彼はTechCrunchに語った。

1つめは、こうした種類の勤務形態は、特に新型コロナウイルスのパンデミックにより米国中で数百万もの人々が職を失っこともあり、むしろますます好まれる傾向にあるという点。2つめは、他の地域や連邦レベルで施行されている似たような法律を推進したい企業は、労働者の声を聞くことが重要になるという点だ。

エイヤー氏は、ロサンゼルスとニューヨークとではPostmatesの配達員に大きな違いがあるという。ロサンゼルスでは、Postmatesの配達員の多くはクルマを利用している。それに対してニューヨークでは自転車を使う人が多い。Proposition 22は、保険に関して新しい最低基準を設けたが、「自転車を使っている人が、同じ補償内容を求めるとは限らない」とエイヤー氏は話す。

「Proposition 22は、カリフォルニアでの最低基準を定めましたが、広い意味でのセイフティーネットの改良に上限を設けるものではなく、国全体に押し広めるべきポリシーというわけでもないのです」と彼はいう。

しかし一部のギグワーカーは、優遇措置があったとしても個人事業主にはなりたくないと主張し続けている。企業に雇用され、正規職員とまったく同じ待遇がほしいと訴える人たちもいる。

結論としてエイヤー氏は、福利厚生を受けられる従業員と、受けられない個人事業主が存在する現在の二元的社会には、間違った対立があると考えている。

「フルタイムの正規職員の待遇と、個人事業主の福利厚生のレベルの向上の両方を手に入れられたらどうでしょう」とエイヤー氏。「しかしそれを、労働者と労組を推進する人たちとに分け隔てなく実現するには、ギグワーカー法成立以来、本格的に行われてこなかった議論を最後まで進める必要があります」。

エイヤー氏は、2020年1月初めの、Uber傘下のPostmatesを去る最後の日、彼の意見書によって、この分野での立場の違う利害関係者たちの対話が再び活性化されることを願うと私に伝えた。彼自身の今後については、公益的な仕事に就くことになるとのことだ。

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タグ:ギグエコノミーギグワーカーProposition 22労働問題

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(文:Megan Rose Dickey、翻訳:金井哲夫)

バイデン新大統領の労働政策とギグワーカーの未来

オバマ-バイデンの選挙戦で事務局長を務め、ホワイトハウスでは主席補佐官代理だった私は今、サンフランシスコに住んでテクノロジー分野の仕事をしている。そんな私がバイデン-ハリス政権に対して、スマートな政策と規制の安定性を導入することで、業界の大きな可能性をさらに引き出す能力を持っていることに期待している。もちろん、彼らの冷静で思慮あるリーダーシップによる、経済の拡大にも大いに期待したい。

新政権は、シリコンバレーが直面している最も重要な問題の多くに新しい展望をもたらす。確かに、イノベーションの経済とオバマ-バイデン政権のコンビは米国に繁栄をもたらしたが、今やテクノロジー分野は米国人の生活のほとんどあらゆる面に関わっている。

その結果として生じている緊張は、新政権が規制者としての役割を真剣に演じるべきだということを意味しており、投資家と企業はともにバイデン大統領の早急でタイムリーな政策執行を見逃してはならない。とりわけそれは、仕事の未来と米国経済の復興に関わっているからだ。

2020年がギグカンパニーにとって豊年だったことには、疑いの余地がない。ライドシェアの利用は大幅に減ったが、料理や食料品などあらゆるものがデリバリーされ、しかもカリフォルニアの州法Proposition 22の勝利により時価総額は跳ね上がり、多くのスタートアップが上場を目指した。ウェストコーストは大喜びしたが、ワシントンは別のことを考えていた。

議会は何カ月も前から、ギグワーカーの身分を法制化するPRO Actと呼ばれる法案を検討してきた。その法案は、カリフォルニアで叩かれた州議会下院の法案California Assembly Bill 5(AB 5)と酷似していたが、内容のほとんどはProposition 22によって否定された。しかしながらそれは、労働者から広く支持され2021年に息を吹き返す可能性もある。労働者側はすでに、さまざまな議会連合からの支持獲得に奔走しており、同時にギグエコノミーの企業は、彼らの豊かな財力でそれと戦う用意を整えている。

残る問題は、バイデン大統領はどうするかだ。かなり前に彼はAB 5の支持を表明し、選挙戦中にも労働者の分類の間違いを解決する計画を披露していたが、彼は政権スタッフに、テクノロジーに明るい人々を任命している。バイデン大統領は、ほとんどのスタートアップ創業者の年齢よりも長く政治と関わり、妥協の図り方をはじめとしたワシントンの力学を熟知している。法案をめぐる論争において、実際に議論されているのが、その法律の施行方法であることを彼はよく知っている。

法案の多くが何千ページもあるが、それでも具体的な規定は乏しい。詳細は省庁の仕事だ。バイデン大統領は米労働省を監督していたが、PRO Actが成立したら、中身をまとめるのは省の担当だ。

バイデン政権が労働省と業界を召集して、企業による労働者保護の制度化を実現する方法を検討しても意外ではない。バイデン大統領が労働長官に指名したボストン市長のMarty Walsh(マーティ・ウォルシュ)氏は、労働者の強力な支援者であると同時に、企業からは協力し合えるし、妥協に到達することも可能な人物として好感を持たれている。

そのような状況になりそうな理由は、州を見ればわかる。ギグカンパニーはすでに6つの州でProposition 22のような作戦を展開しているし、すでに州法が実効化している州も同程度ある。2021年内におよそ3分の1の州で、Proposition 22をモデルとする労働者保護が法制化されるだろう。

このような時代の勢いというものは無視できないし、労働者もそのことを知っている。労働者はPRO Actの支持では一致しているが、州のアクションに対しては曖昧だ。たとえば北東部の州の多くでは何十年も前からブラックカーとタクシーが参観だ。

したがって、たとえばニューヨーク州とニュージャージー州では、ギグの法律における労働者の位置づけがワシントン州やイリノイ州とはまったく異なる。後者の州ではギグワーカーというものが比較的新しくて、ほんの数年前にUberやLyftが支持した規制が書かれたインクもまだ乾いていない。労働者はPRO Actの支持に関しては一致しているが、全国的な運動はなく、妥協の余地を残している。

これはテクノロジー業界にとっては良いニュースだ。ギグエコノミーの原動力である労働者を、規制が最終的に保護することはないだろうと考えるのは夢物語だ。そしてそれは良いことだ。テクノロジー業界には労働者が正しく行動する道義的責任がある。しかしながら、そういう規制が簡単にテクノロジーに課せられることはありえない。むしろ何週間も、何カ月も運動と法案の審議が各州と議会で行われて、最後に交渉と妥協に辿り着くのだ。

あるいは、何年もかかって規制のプロセスが刷新されることもあるだろう。それらの過程のすべてを、新大統領が監督する。彼は自らの全キャリアを通じて、イノベーションが国を成長させ正常化することを目撃したきた人だ。

4年間続いたトランプ氏の頑固な否定主義と呪術的思考と経済的損害の後を継いだバイデン大統領は、革新的なソリューションに向けて協働するために、厳正な政策と公共の精神、そして民間部門の創意工夫を推し進めるだろう。それは困難な仕事で、しかも決してきれいごとにならないだろう。それでも私たちは、米国のテクノロジー主導のダイナミズムという新しい時代の幕開けを期待すべきだ。

【Japan編集部】本稿著者のJim Messina(ジム・メッシーナ)氏は政治と企業経営のアドバイザーで、The Messina GroupのCEOだ。2009年から2011年までBarack Obama(バラク・オバマ)大統領のもとで大統領主席補佐官代理を務め、2012年にオバマ氏が再選された選挙戦ではキャンペーンマネージャーを務めた。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
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画像クレジット:Chip Somodevilla/Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa