宇宙ロボットのGITAI、トヨタの月面モビリティ「有人与圧ローバ」向けロボットアームの開発に着手

宇宙ロボットのGITAI、トヨタの月面モビリティ「有人与圧ローバ」向けロボットアームの開発に着手

宇宙ロボットスタートアップのGITAI(ギタイ)は12月13日、トヨタが開発を進めている月面用モビリティ「有人与圧ローバ」(Luna Cruiser。ルナ・クルーザー)向けのロボットアームの開発に着手したことを発表し、開発中の試作機を公開した。

GITAIとトヨタは、2021年6月25日にLuna Cruiser向けロボットアームの開発を進める共同研究契約を締結している。今回公開されたのは、ロボットアームの先端ツールを着脱するシステム「グラップルエンドエフェクタ」(本体側インターフェイス)と「グラップルフィクスチャ」(受け手)のブレッドボードモデル(宇宙機における初期段階の設計実証用試作機)。

グラップルエンドエフェクタ

グラップルフィクスチャ

月面での探査・点検・メンテナンスを行うためには、ロボットには複数の仕事を行う「タスク性能」と、広範囲での作業を可能にする「移動性能」が求められる。この2つの課題を解決するのが、グラップルエンドエフェクタを両端に装着したロボットアームだ。ロボットアームは、片側のグラップルエンドエフェクタを有人与圧ローバ壁面のグラップルフィクスチャに固定して、反対側のグラップルエンドエフェクタに様々なツールを着脱して、いくつもの仕事をこなすことになる。移動は、ローバー壁面の別のグラップルフィクスチャにアームの先端を嵌合(かんごう。軸と軸受けがはまり合っていること。はめ合わせるといった意味)し、反対側を切り離すことで行う。フラップルフィクスチャをローバー以外の建造物などに設置すれば、移動範囲は無限に広がる。

床や壁面に設置されたグラップルフィクスチャと嵌合(かんごう)することで移動するロボットアーム

床や壁面に設置されたグラップルフィクスチャと嵌合(かんごう)することで移動するロボットアーム

グラップルエンドエフェクタとグラップルフィクスチャは、嵌合すると、機械結合、電力結合、通信結合がなされる。またアームには充電器があり、グラップルフィクスチャに充電機能を備えれば、移動しながらの充電も可能となる。

今後は、2029年のLuna Cruiserの打ち上げを目指し、自律制御技術と、低重力・真空・極低温~高温・レゴリスといった月面特有の過酷な環境への対応に取り組んでゆくという。

 

東京の宇宙ベンチャーGITAIが国際宇宙ステーション内で自律型ロボットアームの技術実証に成功

東京の宇宙ベンチャー企業であるGITAI Japan(ギタイジャパン)は、日本時間の2021年10月13日から10月17日にかけて、国際宇宙ステーション(ISS)内で行われた自律型ロボットアームの技術実証に成功した。これは、同社が宇宙でサービスとしてのロボット技術を提供する準備に向けた重要なマイルストーンとなる。

「GITAI宇宙用自律ロボットS1」と呼ばれるこのロボットアームは今回、ケーブルやスイッチの操作と、構造物やパネルの組み立てという2つの作業を行った。これらの作業は、一般的にクルーが行う作業だが、宇宙におけるさまざまな活動で汎用的に使用することができる。今回の実証が成功したことで、NASAはGITAIロボットの「技術成熟度(Technology readiness levels、TRL)」をTRL7に引き上げた。TRLは全部で9段階まであり、GITAIがロボットを商業化するには、すべてのTRLを満たすことが重要になる。

この技術実証は、宇宙企業であるNanoracks(ナノラックス)の「Bishop(ビショップ)」エアロック内で行われた。Bishopエアロックは、ステーションの外装に取り付けられた世界初(かつ唯一)の商用エアロック・モジュールだ。Nanoracksは今回、打ち上げ機会の提供、軌道上での運用管理、データのダウンリンクも担当。同社は先週、Voyager Space(ボイジャー・スペース)およびLockheed Martin(ロッキード・マーティン)と共同で完全民間の商業宇宙ステーションを起ち上げる計画を発表している。

関連記事:民間宇宙ステーション「Starlab」は地球低軌道経済の到来を予感させる

GITAI宇宙用自律ロボットS1は、8月末に実施された23回目の商業補給サービスミッションで、SpaceX(スペースX)の「Cargo Dragon(カーゴ・ドラゴン)」カプセルに搭載されて軌道へ輸送された。日本のスタートアップ企業であるGITAIは、軌道上での宇宙船の整備や建設・製造作業など、宇宙における一般的な作業を行うためのロボットを開発している。次のステップは、ISSの外で、GITAIロボットの試験を行うことだ。

「今回の実証の成功は、GITAIロボットが、汎用性があり、器用で、比較的安全(人間の生命を脅かすリスクが少ない)で、安価な労働力を求める宇宙機関や商業宇宙企業のソリューションになり得ることを証明するものです」と、NASAは技術実証の最新情報を更新し「このオプションの提供は、宇宙の商業化という目標達成を促進させることになります」と述べている。

しかし、GITAIは単にロボットアームを作ることだけを目指しているわけではない。同社の長期的なビジョンでは、ロボットは月や火星の表面にスペースコロニーを建設するための重要なツールになると考えている。このようなロボットによる労働力は、地球外の環境で人間が生存できるようになるのを加速させるために役立つ可能性が高い。2021年3月、同社は総額18億円のシリーズB資金調達を完了し、2023年に予定されている軌道上船外技術実証に向け、人件費と開発費に投じている。

先週行われた技術実証の映像はこちら

画像クレジット:Gitai

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

GITAI Japanの宇宙用汎用作業ロボットアームがSpaceXのロケットでISSに到着、10月に汎用作業遂行技術実証を開始予定

GITAI Japanは8月31日、宇宙用汎用作業ロボットGITAI(ギタイ)を載せたSpaceXロケットの打ち上げが成功し、国際宇宙ステーション(ISS)に到着したことを発表した。このロボットは、2021年10月頃からISSで汎用作業遂行技術実証を開始する予定。

アメリカ現地時間8月29日、SpaceXのFalcon 9ロケットによって打ち上げられたDragon宇宙船の23回目の商用フライト(CRS-23ミッション)にて、GITAI Japanの宇宙用ロボットアーム「S1」がISSに送り込まれた。この実証実験は、民間宇宙利用を促進するアメリカの宇宙サービス企業Nanoracks(ナノラックス)と共同で、同社がISSに設置した商用エアロックモジュール「ビショップ」内にて実施される。

このモジュールにロボットアーム「S1」を設置し、スイッチやケーブルの操作といった船内作業と、宇宙用パネル組み立てといった宇宙組み立て作業を行う。作業は、自律制御と、ヒューストンのNanoracks管制室からの遠隔操作との両方が試される(動画は、GITAI社内で撮影した、S1による宇宙組み立て作業模擬タスクの実施状況)。

GIATAI Japanは、「宇宙に安価で安全な作業手段を提供する」ことを目指す宇宙ロボットスタートアップ。2016年7月に設立し、宇宙ステーションの船外作業、衛星の寿命延長や宇宙デブリの除去といった軌道上サービスのためのドッキング・寿命延長・修理・メンテナンス作業、月面探査および基地開発作業を行うロボットの開発を行っている。

現在は、今回の実証実験に使用されるS1、宇宙船の内外や月面基地開発などに使用する汎用作業ロボット「G1」、宇宙のロボットを地上から操作するためのロボット操縦システム「H1」の開発に加えて、新たに月面作業用ロボットローバーの開発にも着手した。

「2040年には世界的な宇宙ロケット開発企業と対等なパートナーとして、月や火星に都市を建設したり宇宙コロニーを建設する安価で安全な労働力を提供しています」とGITAI Japanは将来を語っている。ロケット開発企業は輸送手段を提供し輸送コストを下げるのに対し、GITAI Japanは「作業手段」を提供し、作業コストを下げるとのことだ。