目標は“Indeedのレコメンド版”、AI転職エージェント「GLIT」が6300万円を調達

AIエージェントサービス「GLIT(グリット)」を提供するCaratは5月16日、複数の投資家を引受先とした第三者割当増資により、6300万円を調達したことを明らかにした。

プレシリーズAとなる今回のラウンドに参加したのは求人サイトなどを展開するキャリアインデックスのほか、杉山慎一郎氏、高梨大輔氏、マイナースタジオ代表取締役の石田健氏、元リクルートキャリア執行役員の山本剛司氏。キャリアインデックスとは業務提携も締結し、サービス間の連携を深める計画だ。

Caratは2016年12月の創業。これまで2017年6月にスカイランドベンチャーズとCandle創業者の金靖征氏から1500万円を調達するなど複数回の資金調達を実施済みで、累計の調達額は約1億円となる。

AIが自分に合った求人を推薦してくれるTinderライクな転職アプリ

GLITはAIを活用することで求職者と企業双方の効率的な転職・採用活動を支援するマッチングサービスだ。

iOS版とAndroid版を合わせたユーザー数は約1万人。シリーズAから上場後くらいのITベンチャーを中心に200社近くの企業が活用する。現在は東京エリアに絞ってサービスを展開中だ。

前回「TinderライクなUIが特徴の転職アプリ」と紹介した通り、求職者のプロフィール情報やアプリ上での行動データを基に、AIが個々に合った求人情報を自動でレコメンド。求職者は各求人を左右にスワイプすることで「興味のあり or なし」を示す。

自分で求人情報を検索する手間がかからないので、隙間時間でも手軽に転職活動を始められるのが1つの特徴。プロフィール登録時にシェアリングエコノミーやAIなど「希望テーマ」やエンジニア、マーケターなど「希望職種」を入力しておくことで、レコメンドされる求人をある程度調整することもできる。

マッチングした企業からのみスカウト届く仕様になっているため、自分が全く興味のない企業から立て続けにスカウトが送られてくる心配もない。

一方の企業側に対しては、採用担当者が複数の求人サービスを使うのがごく普通の時代において、人的なコストや手間を抑えつつ新たな人材にアプローチできる仕組みを提供する。

企業が最初にやることは求人情報を登録するだけ。AIが公開した求人に合いそうなユーザーに向けて求人情報を配信し、興味を示したユーザーの中からマッチング率の高い人を自動で選定する。担当者にとってみれば、求職者の抽出業務はAIに任せ、最終的な判断とスカウトを含めたコミュニケーションに時間を使えるいうことだ(もちろんAIの抽出精度が高いことが前提にはなるけれど)。

スカウトの対象となるのは自社の求人に対して興味を示した求職者のみのため母数は絞られるが、その分スカウトに対してはある程度良い反応を期待することもできる。今のところ開封率は平均で約90%、返信率も約20%ほどだという。

なお求職者は一連の機能を無料で使うことが可能。企業側は初期の導入費に加えて、採用が決定すれば1人あたりにつき90万円を支払うモデルだ。

企業版のアップデートでSlack上で採用活動が進められるように

今回Caratでは資金調達と合わせて、企業版の大幅なアップデートとキャリアインデックスとの業務提携についても発表した。

企業版については新たにビジネスチャットツール「Slack」との連携を開始。GLITの管理画面を開かずとも、Slack上で候補者の確認やスカウトメッセージの送信ができる仕組みを整えた。

「今まではメールの通知を確認したり、管理画面にアクセスして行なっていた業務をSlack上でできれば採用活動をより効率化できると考えたのがきっかけ。採用担当者だけでなく経営層や現場のメンバーを巻き込んで採用活動をすることが主流になってきている中で、普段から使い慣れているSlackを使って一連の業務ができれば余計な負担を増やさずに済むし、隙間時間に使いやすくもなる」(Carat代表取締役の松本直樹氏)

特にGLITのユーザーはIT系のベンチャー企業が多いこともあり、Slackとの相性が高いと考えて複数社にテスト版を提供したところ、かなり反応が良かったそう。それを踏まえて、この機能を一般開放することに決めたという。

目指すのは「Indeedのレコメンド版」

また企業の採用活動の支援だけでなく、引き続き求職者のサポートを加速させるための取り組みも進めている。

調達先でもあるキャリアインデックスとの提携も「GLITが膨大な求人情報から各求職者ごとに最適な求人をレコメンドすることで、ワンストップで転職活動が完結できる仕組みを作る」(松本氏)という世界観の実現に向けた、新たな一歩だ。

具体的には今後キャリアインデックスが扱う約50媒体・60万件超の求人にGLITが対応することで、より多くの求人情報をカバーできるようにしていきたいという。

現在GLITでは同サービスに登録されている求人情報に加えて「Green」と「Wantedly」の情報をアグリゲーションして求職者に届けているので、サービス間の連携が進めばここに上述した50媒体がプラスされる形になる。

合わせて求人情報を閲覧してから面接の実施・採用に到るまでのフローをGLIT上のみで完結する仕組みの構築にも力を入れていく計画。現時点でGLIT独自の求人についてはマッチング以降の工程もワンストップで実施できるので、他媒体の求人についても同様の体験を提供するのが目標だ。

「求職者は転職活動をする際に複数媒体を使うことも多いが、各媒体に情報を登録したり、都度チェックするのは大変。最終的にはGLITがWeb上に公開されている求人情報を全て網羅することで『GLITに登録しておきさえすれば大丈夫』という状態を目指したい。イメージしているのは『Indeedのレコメンド版』のようなサービスだ」(松本氏)

今回調達した資金もプロダクトの機能拡充や事業拡大に向けた人材採用の強化と、求職者獲得のためのプロモーションに用いる方針だという。

“腰をすえない転職アプリ”、TinderライクなUIが特徴の「GLIT」が企業向けβ版をリリース

学生のあいだに行う就職活動は、腰をすえてじっくりと取り組む時間がある。でも、働きながら行う転職活動は、まとまった時間が取れないことも多い。

そんななか、日本のスタートアップであるCaratは、TinderライクなUIが特徴的な「腰をすえない転職アプリ」を開発した。同社が2017年6月にリリースした「GLIT」だ。

ユーザーは、アプリに表示される求人情報を左右にスワイプしていくことで、その求人に対する興味度のアリ・ナシを分ける。興味があると回答した求人はアプリ内に履歴として残り、アプリから直接求人に申し込みをすることもできる。20代中盤の忙しいビジネスマンをターゲットにしたアプリだ。

ただし、これまでのGLITが表示する求人情報は外部の求人サイトから取得したものだった。求人への申し込みも、アプリ内に搭載したブラウザから外部サイトを通じて申し込むという流れだ。

そこでCaratは9月27日、GLITの企業向けサービスをβ版としてリリースすることを発表した。Webアプリを企業に提供して、GLIT独自の求人情報を集めることが目的だ。また、ユーザーのスワイプ結果を企業に提供し、興味があると回答したユーザーへ企業側から直接アプローチすることも可能になった。

Carat代表取締役の松本直樹氏によれば、リリース時点ですでに20〜30社の利用が決まっているという。リリースから3ヶ月で集めた個人ユーザー数は約500人だ。

「単に興味のアリ・ナシを企業に通知するのではなく、興味の度合いも提供していく。たとえば、同じ『興味アリ』でも、それが興味アリと答えた100個の求人情報のうちの1つなのであれば、興味の度合いは比較的低いと考えられるだろう」と松本氏は話す。

また、Caratはアプリに機械学習のテクノロジーを利用している。スワイプ結果をデータとして蓄積し、ユーザーの年齢やデータから抽出したキーワードをもとにユーザーをグループ化する。各グループごとに、興味を持つであろう求人情報を表示するという具合だ。

Caratは個人ユーザーにアプリを無料で提供する一方で、企業向けサービスには課金をしてマネタイズを目指す。β版の期間はサービスを無料で提供するため、詳しい料金プランはまだ未定だが、正式リリース後は月額数万円程度のコストで利用できるようにするという。

「企業ユーザーとして想定しているのは、求人エージェントに高いコストを払うだけの体力がまだないスタートアップ企業や中小企業」だと松本氏は話す。

2016年12月創業のCaratはこれまでに、シード資金としてSkyland Venturesおよび個人投資家から1500万円を調達している。

Carat代表取締役の松本直樹氏