Amazon傘下になったGoodreadsは、統合を密にしつつインディーズの立場を守る

今日(米国時間3/28)の午後AmazonがGoodreadsの買収を発表した後、私はGoodreadsのCEO Otis ChandlerとAmazonのKindleコンテンツ担当VP Russ Grandinettiのふたりと話す機会を得た。いちばん気になっていた2点、即ち契約に至った経緯とKindle/Goodreads統合の詳細計画については、ふたり共曖昧さを貫いていたが、それでも将来の計画についていくつかのヒントを漏らしてくれた。

Chandler(写真は妻で共同ファウンダーのElizabethと一緒)によると、Kindleとの統合はGoodreadsユーザーの間でも人気が高く、Grandinettiは、Kindleデバイスやアプリ上でのソーシャル体験を「超カンタン」にしたかったと言った。どんな形になるかに関しては「機能については発売時にお話ししたい」と言うだけだった。

本誌のDrew Olanoffがこのニュースを報じた際、これによってAmazonが電子書籍のライバル、特にAppleに対してソーシャル的な優位性を得られのかどうかが注目的の一つだった。Amazonの買収によってGoodredsの非Kindleデバイスとの統合が不可能になるのかという私の質問に対して、Grandinettiは、AmazonチームはKindleアプリがiOS、Android上でも動くよう頑張っていると答えた。つまり、例えばiPadのKindleアプリ経由でGoodreadsを利用できることになりそうだ(ただしこれは、むしろiBookstoreに関して重要視していたDrewの指摘を消し去るものではない。また、Amazonは以前ソーシャル読書のスタートアップ、Shelfariも買収しているが、ソーシャル面の急転回にはつながっていないことも指摘しておきたい)。

Goodreadsが今後もFacebookと密に連携していくのか、Amazonでスタンドアロンのソーシャル体験を作っていくのかについても質問した。Chandlerは、「Facebookは今後もGoodreadsにとって重要だ。われわれのミッションは人々が読書を通じて自分を表現するのを支援することであり、Facebookの膨大なユーザー基盤はそれを容易にすると答えた。

さらにChandlerはこの買収に関する自身のブログ記事で、「Goodreadsはサイト利用者が喜ぶものすべてを引き続き提供し続ける」と書いている。ちなみに、Goodreadsチームは全員今後もサンフランシスコに残る。Chandlerは「ZapposとIMDbの形態」と似た形の独立子会社として運営されるだろう」と言っていた。

「これからも採用も続け、チームを大きくしていく」と彼はつけ加えた。

AmazonとGoodredsは過去に何度か衝突があった。中でも昨年1月には、Amazonのデータに制約が多いという理由で、Goodreadsは書籍データの主要入手先をAmazonからIngramへと乗り替えた。今日この件に触れたところ、Grandinettiは、「GoodreadsがAmazonのAPIを使わなくなったことはどちらの利益にもならなかった思う」と語り、今こそ「発見と読書の全く新しい領域を探る」ためにAmazonのデータをGoodreadsに取り戻す時だと彼は言った。

Chandlerは、Amazonデータを止めたことによる不都合の一つが海外データだったと言う。この買収によって、Goodreadsは再びそのデータを利用できるようになる。

APIと言えば、Chandlerは別のインタビューで、Goodreadsは今後も自身のAPIを公開し、Koboへのレビューフィードも続ける予定だと語った。

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(翻訳:Nob Takahashi)


Amazon、ユーザー1600万人のソーシャル読書サービスのGoodreadsを買収―Kindleとの統合で圧倒的優位を狙う

今日(米国時間3/28)、Amazonは有力なソーシャル読書サービス、Goodreadsを買収したと発表した。金額などの詳細は不明。買収手続きは第2四半期に完了する。

Goodreadsは2007年1月のスタート以来、True Ventures他から275万ドルの資金を調達している。 去年8月にわれわれが取材した際には、ユーザーは1000万人以上、 投稿された本は3億6000万冊以上で、毎月2200万冊が新たに投稿されているということだった。現在GoodReadsではユーザーは1600万人だと発表している。

この種のソーシャル・サービスを傘下に持つことは、Amazonにきわめて大きな比較優位性を与えることになる。たとえばオンライン電子書籍販売でのライバル、Appleはソーシャルな要素をまったくといってよいほど持っていない。もっぱら本についての情報を共有し、活発に議論をするソーシャル・サービスがAmazonの一部となるというのはまったく理にかなったことだ。

Amazonは当面Goodreadsのユーザーに対して特別割引などの優待キャンペーンができる。しかしそれ以上に、Amazon自身のソーシャル読書ネットワークとして本体への緊密な統合を図ることができるだろう。

下は昨年8月時点での毎月の登録書籍刷数の推移を表すグラフだ。Kindleと連携することでこの数はさらに飛躍しそうだ。

AmazonのKindleコンテンツ担当副社長Russ GrandinettiはAmazonのeブック事業にとってこの買収がきわめて重要であるとして次のように述べている。

AmazonとGoodreadsは読書体験の再構築に向けて情熱を共有している。Goodreadsは読者が新しい本を発見し、それについての意見を交換する新しい枠組みを作った。一方、AmazonはKindleで世界中、いついかなる場所でも本が読めるように読書体験を拡張した。さらにAmazonとGoodreadsは何千人も著者に新たな読者を紹介し、著作によって生活ができる道を開いてきた。われわれ両社が力を合わせることにより、読者と著者の双方に新たな喜びを与える方法がいろいろ発見できるものと期待している。

一方、Goodread’sの共同ファウンダー、CEOのOtis ChandlerはAmazonの買収によって開かられた新たな展望について次のように述べた。

本とその中に表現された物語や思想は、われわれの社会を織りなす重要な糸のひとつだ。人々は読んだ本について語り、その体験を共有するのが好きだ。私はAmazonとKindleと提携する機会を与えられたことにこの上なく興奮している。われわれは今やGoodreadsのソーシャル読書体験を今までにないスピードで世界中の何百万という読者に広めていくことができるようになった。

Goodreadsは公式ブログの記事でもう少し詳しくAmazonへの参加の意義や、Kindleとの統合が最優先課題であることなどを説明している。Chandlerによれば、

Amazonへの参加には以下の3つのメリットがある。

1. Amazonのユーザーと資源をもってすればGoodreadsの活発な読書家のコミュニティーをさらに多くの新たなユーザーに対して紹介し、また既存のユーザーの体験を改善することができる。

2. Goodreadsのユーザーは以前からeリーダー上でGoodreadsを作動させるよう要望してきた。今やGoodreadsは世界最大のeリーダー・プラットフォーム、Kindle上での展開を視野に入れることができるようになった。

3. AmazonはGoodreadsの独立性を尊重し、われわれがこのブランドと独特の文化を維持したまま活動を続けてよいと約束してくれた。

ソーシャル機能に加えてGoodreadsは長年の間に高度な本の推薦テクノロジーを確立している。これもAmazonにとっては喉から手が出るほど欲しかった資産だろう。

一方で、ライバルのAppleが手がけたデジタル・コンテンツ販売に関連するソーシャル機能といえば音楽ソーシャルネットワークを目指したPingくらいのものだ。しかしPingは人気を得ることができず、昨年10月に閉鎖された。Amazonがデジタル・コンテンツの各分野でGoodreadsに相当するような有力ソーシャル・サービスの買収に成功するならその分野での優位性は動かぬものとなり、当然売上にも反映されるだろう。とにかくGoodreadsが保有している膨大なユーザー・データの価値を考えただけでもこの買収は見事なスラムダンクだ。

また最近Amazonは著者自身による出版ビジネスにも参入して予想以上に売上を伸ばしているが、これもGoodreadsとの相乗効果が期待できる分野だ。

Goodreadsは興味ある数字を発表している。

過去90日間にGoodreadsのメンバーは毎秒4冊以上を『読みたい本』として登録している。

こうした数字がAmazonによる買収の決め手となかったのかもしれない。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+