Googleがアジア太平洋地域の18の報道機関に約2.5億円の資金を提供

米国時間4月30日、Google(グーグル)はアジア太平洋地域の18の報道機関に対して230万ドル(約2億4600万円)の資金を提供すると発表した。これは世界中の報道機関を継続して支援している同社の取り組みにおける最新の発表だ。

Googleはオーストラリア、インド、パキスタン、香港、日本、台湾など11の国と地域の報道機関に資金を提供する。アジア太平洋地域では、2019年後半からこのイノベーションチャレンジ資金提供の応募を受け付けていた。

Googleによれば、250以上の報道機関がこれに応募した。報道機関は、読者がコンテンツに対して喜んで費用を支払うようなエンゲージメントを高める方策を探り、その「アイデアの多様性と創造性」を示して応募した。

Googleの報道担当者はTechCrunchに対し、この230万ドルのイノベーションチャレンジは、選ばれた18の報道機関に均等に配分されるのではないと語った。また、選ばれた機関に対しGoogleがメンタリングとトレーニングのセッションも提供すると述べた。

インド最大の都市のひとつ、Lucknow(ラクノー)に拠点を置く報道機関のGaon Connectionは、農村地域の人々に影響を与える問題に焦点を当てている。インドでは、Gaon Connectionを含め4社がGoogleから資金提供を受ける。

Gaon Connectionの創業者でベテランジャーナリストのNeelesh Misra(ニーレシュ・ミスラ)氏はTechCrunchとのインタビューで、創業7年の同社にとってこの資金は農村メディアプラットフォームから農村インサイト企業へ転換するために役立つだろうと述べた。

同氏は「我々の事業では、有意義な統計データを活用することを目指してきた。インドの農村の人々の声を調査と研究で裏打ちすれば、その声は広く届くようになるだろう。自分たちには発言権がないという農村の人々の発言を、我々はよく耳にする」と語った。

同氏は「私はコンテンツを作る立場の人間で、技術には明るくない。最初の頃は厳しかった。現在はインドの300以上の地域に地元のジャーナリストがいる。我々がGoogleからの資金でプラットフォームを構築すれば、各地のジャーナリストたちはそのプラットフォームで調査し、ビデオや音声、テキストコンテンツを記録し、データを検討できる。このプラットフォームによってインドの農村部の人々は発言権を得て、都市部にいる政策立案者などは農村部の人々とその要望をもっと理解できるようになる」と述べた。

訳注:上図の「GNI」はGoogleニュースイニシアティブの略。

インドではThe Morning Contextも資金提供を受ける。同社は世界第2位のインターネット市場であるインドで、インターネットやビジネスなどを取り上げるオンラインメディアだ。同社は5月初めにシードラウンドを完了した。

パキスタンのThe Currentは「新鮮で、知っておくべきニュースだけ」を提供している。韓国からは、共同でリアルタイム分析をし、Googleに「読者に応じてカスタマイズしたエクスペリエンス」を提供すると評されたBusan Daily、Maeil Daily、Gangwon Dailyが選ばれた。

オーストラリアのAustralian Community Mediaは、地域の新聞と中小企業に役立つ案内広告の新たなプラットフォームを開発している。日本テレビはニュースアーカイブにARを取り入れている。

Googleのアジア太平洋地域でニュースおよびパブリッシングの責任者を務めるFazal Ashfaq(ファザール・アシュファク)氏は発表の中で「アジア太平洋の報道業界の重要性はこれまでになく増している。我々は今回選ばれた各機関がアイデアを実行に移すことに期待している」と述べた。

今回の発表は、Googleニュースイニシアティブが2018年5月に発表した3億ドル(約320億円)の資金提供の一環だ。同社はこれまでに世界各地で5回のイノベーションチャレンジを開催した。その内訳はアジア太平洋で2回の他、北米、ラテンアメリカ、中東・アフリカ・トルコで各1回だ。

画像クレジット:NARINDER NANU / AFP / Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)

Googleがローカルニュースを支援する助成金制度を発足

Googleは、Google News Initiativeの一環として、COVID-19パンデミックの経済的打撃を受けたローカルの報道機関を財政的に支援する。

そのためのファンドJournalism Emergency Relief Fundは、規模は公表されていないが、Googleのニュース担当副社長Richard Gingras氏のブログ記事によると、その目標は「世界中の中小のローカルニュースパブリッシャーを支える」ことであり、その金額は「小さなハイパーローカルなニュース企業への数千ドルの支援から、地域によって異なる大きな報道機関への数万ドルの支援などだ」、という。

Gingras氏はこう述べる: 「ローカルニュースは重要なときに人びととコミュニティを結びつける必須のリソースだ。今は、その役割がますます重要で、地域のロックダウンや在宅の指示、学校や公園の閉鎖などについて報じなければならない。COVID-19の被害状況も、毎日のように必要だ。しかしニュース産業は今、COVID-19の影響で人減らしや一時休暇、業務の縮小などに苦しんでいる」。

財政支援の申込み受け付けは、もう始まっている。期間は2週間で、米太平洋時間4月29日午後11時59分までだ。

Gingras氏によると、Googleの社会貢献部門Google.orgは、二つのジャーナリスト支援団体、International Center for JournalistsとColumbia Journalism School(コロンビア大学ジャーナリズム大学院)のDart Center for Journalism and Trauma(ジャーナリストの精神的外傷救援団体)に、100万ドルを献金する。

多様な活動でジャーナリズムを支援するGoogle News Initiativeは、およそ3億ドルの当初資金で動いているが、コロナウイルスに関しては、誤報を防ぐファクトチェッカーとその非営利団体への650万ドルの支援金を発表した。その成果としてすでに、COVID-19 Case Mapper(患者地図、患者発生/存在分布地図)のようなツールができている。

Facebookも、現在の危機に対応してローカルニュースを支援するために1億ドルの提供を発表している。2500万ドルが助成資金、7500万ドルがマーケティング支援(広告クレジット)だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Googleはジャーナリスト向けの新たなリアルタイムデータ製品を発表

Googleが、3億ドル規模の予算を持つNews Initiativeを発表してから、1年ちょっとが経過した。これは、独立したジャーナリズムの活動に資金を提供し、Googleが開発した製品も供給するというものだ。

その製品の1つが、News Consumer Insights(NCI)であり、すでにBuzzFeed、Business Insider、それにConde Nastなどの出版社で使われている。あらかじめGoogle Analyticsを通して収集されたデータを取得し、出版社にとってより利用価値の高いデータに加工するものだ。特に、異なる読者セグメントを理解したり、読者が有料の購読者になってくれそうかどうかを判断するのに役立つ。

「生のデータを、ビジネスに関する知力や、実行力を持つ洞察に変えるのです」と、Googleの分析および収益最適化の責任者兼、出版社開発責任者のAmy Adams Harding氏は説明した。

さらにGoogleは、Real-time Content Insights(RCI)という新たなツールを、NCI製品に追加した。

その名前が示すように、RCIは、出版社のサイト上で今何が起こっているのかを、各出版社に伝えることに重点を置いている。それにより、現在トレンドとなっているニュースストーリーを特定することを助け、より多くの読者の獲得に貢献する。初期のNCIデータは、出版社のビジネスおよび読者開発チームにとって、より有用なものだったと、Harding氏は指摘する。それに対してRCIは、「パートナー企業のサイトのコンテンツのダイナミックな動き、つまり何がトレンドなのか、何が下火になったか、牽引力をもっているのはどれか、といった情報を、編集サイドが理解できるよう手助けするために設計された」ものだという。

Real-time Content Insights

Googleは、ニュース出版社にリアルタイムのデータを提供する最初の会社というわけではもちろんない。しかしHarding氏によれば、この「開いてクリックするだけで使える」製品は、小規模のニュース編集室にとっては、特に有用なものになるはず、だという。そうした編集部は、多くのリソースにアクセスできるわけではなく、それほどデータに精通してもいないからだ。

Harding氏は、「ローカルは、Google News Initiativeの大きな柱です」と述べている。「パートナーをサポートするメカニズムとなるツールの開発を手助けするために、私たちに何がでるでしょうか? 彼らは、この変革期の中でも、持続可能であり続けることを目指しています。それは単にデジタル化というだけでなく、この多様化した収益源への移行を乗り切るための努力なのです。それは各出版社が、彼ら自身で引き受けようとしても、十分なリソースが得られない部分なのです」。

RCIは、画像を多用するダッシュボードの形式でデータを表示し、現在何人の読者が記事を読んでいるか、そしてその記事が過去30分間に獲得したビューの数を数字で示す。また、普段の日のトラフィックと比較して、今日のサイトの状況を確認し、地理的、および参照元別に、トラフィックを細分化して分析できる。

さらにこのダッシュボードは、現在Google検索やTwitterでトレンドとなっているトピックも表示する。もちろん、こうしたトピックのすべてが、それぞれの出版社の出版物にとって有効だとは限らない。しかしHarding氏は、それも編集者やライターが、カバーしているトピックの抜けに気付くのに役立つ、としている。Google検索では「人は何に興味を持っているのか?」、Twitterでは「彼らは何を話題にしているのか?」ということが見えるからだ。

ぱっと見には、RCIは、出版社が持続可能かつ多様なビジネスモデルを構築するのを支援する、という大きな目標に直接結びついているとは思えないかもしれない。しかしHarding氏によれば、RCIは、既存のNCI製品と組み合わせて使えるので、最も重要な読者を特定するのに役立つ、という。

「出版社が価値を見出すのは、『そうだ、直接参照されているトラフィックから来るユーザーのほうが重要なんだ。この記事は、そのタイプの読者からのビューを増やすことにつながっている』といったことが分かる状況なのです」と、彼女は説明する。

Googleは、RCIのソースコードをGitHubで公開しているので、力のある出版社なら、それをカスタマイズして、独自のデータ可視化機能を開発することもできると、Harding氏は付け加えた。

(関連記事:Google、サブスクリプション型ニュースを立ち上げ――News Inisitativeに3億ドル投資

画像クレジット:Google

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(翻訳:Fumihiko Shibata)