凧で風力エネルギーを得るMakaniにAlphabetが終結宣言

Alphabet(アルファベット)は米国時間2月18日、同社の風力エネルギー用凧であるMakaniの開発を中断すると発表した。凧を開発するMakaniは2006年に創業し、7年前にGoogle XのプロジェクトとしてGoogle/Alphabetの事業になった。2019年にX(エックス)の手を離れて、Alphabet傘下の独立企業になったが、Alphabetの「その他の事業」としてのMakaniの寿命もこれで終わりになる。しかし同社は、初期のパートナーの1つであるShellの協力を求めて、その技術の新たな用途を探ろうとしている。

Makaniの取締役会の会長Astro Teller(アストロ・テラー)氏は声明で「Makaniの商用化への道のりは、期待していたよりも長く険しいと思われるため、Alphabet傘下の企業であり続けることは困難である」と述べている。なおテラー氏は、Alphabetの「その他の事業」を統括していない。

「気候変動関連のアイデアは何でも投資に値すると思いがちだが、偉大なるアイデアのすべてにリソースを割きつづけることが良いビジネスなわけではない。気候変動と同じくらい緊急の対応を要する危機ではその考えは不可欠だ」とテラー氏は言っている。

X/AlphabetでMakaniのチームは、20kWのデモプロジェクトに成功し、最大出力600kWの拡張ユニットも作った。しかし、それでもAlphabetはMakaniを、十分な長期的商用化の可能性のあるプロジェクトとは認めなかった。

2015年にXでMakaniのリーダーになったFort Felker(フォート・フェルカー)氏は 「まったく新しい種類の風力エネルギー技術を生み出すことは、ビジネスとしてのチャレンジであると同時に、エンジニアリングのチャレンジでもある。技術開発は強力に進んだが、商用化への道のりは思った以上に長くてリスクも大きいので、本日をもってAlphabetにおけるMakaniの時間は終わりを迎える」と記している。

GoogleがMakaniを買収した当時は、事業としての可能性を真剣に検討しなかったと思われる。しかし、Googleのそんな自由気ままな社風は今や過去のものだ。前衛的であっても良さそうな「その他の事業」も、これからは個々の独立企業としての将来性を厳しく問われるだろう。

関連記事: Google X Acquires Makani Power And Its Airborne Wind Turbines…Google XがMakani Powerとその浮揚型風力タービンを買収(未訳)

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Google XのLoon、Wing、グループ企業に昇格――アストロ・テラーが祝福

Google XのプロジェクトとしてスタートしたLoonとWingがXを卒業し、Googleグループの親会社、Alphabet傘下の独立企業となった。Google Xとムーショット・プログラムのの責任者、Astro Tellerが昨日(米国時間7/11)、Mediumに記事を書いている。

Xのプロジェクトとしてスタートしたときには予想されなかったことだが、 LoonとWingは メンバーの懸命な努力と過酷なフィールテストの繰り返しという長くクレージーな期間を終え、今やXを卒業し、Alphabetグループの独立企業2社となることが決まった。

Loonは2013年、Wingは2014年にそれぞれスタートしている。 当時はで突飛なアイディアの典型的なムーショットと考えられていたが、その後大きな進歩を遂げた。

Loonは多数の無動力の巨大気球の編隊で、辺鄙な地域やインフラが未整備の国でインターネット接続を安価に提供する。たとえば昨年夏にペルーで水害に襲われて通信手段を失った何万人もの人々にインターネットが使えるようにした。秋にはハリケーン・マリアによって大被害を出したプエルトリコでも活躍している。

一方、 Wingは宅配サービスに自動操縦の電動大型ドローンを使おうとするもので、遠隔地への配送の効率化とCO2排出の低減を狙っている。テストではオーストラリアのメキシカン・ファーストフード店、Guzman y Gomezのブリトーを奥地に配達している。この5月にアメリカ運輸省はドローンテクノロジーを一段と進歩させるためのUnmanned Aircraft Systems Integration Pilot Program10チームの一つとしてWingを選定した。

Tellerは声明でAlastair WestgarthがLoonの初代CEOに、 James Ryan BurgessがWingのCEOにそれぞれ就任する予定だと明らかにした。WingではAdam Woodworth がCTOに就く。

LoonとWingは自動運転のWaymoやサイバーセキュリティー分析プラットフォームのChronicleなどX出身のGoogle企業の仲間入りをする。同時に、SpaceXのインターネット衛星(プロトタイプ段階)やAmazonが以前から宣伝しているドローン配送システムのライバルとなる。

当然、前途には厳しいものがあるはずだが、Alphabetという巨大な後ろ盾を得ていることはこれらの若い企業にとって非常に心強いだろう。

画像:Alphabet

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Googleの無人ドローンによる自動配達プロジェクトProject Wingが第一段階のテストを完了

Googleの実験的部門Google Xの、ドローンを使った無人配達のプロジェクトProject Wingが今日(米国時間6/7)、その取り組みの重要なアップデートを一般に共有した。同社は、無人航空機システム(Unmanned Aircraft Systems, UAS)の航行管理に関する、FAAとNASAが制定した一連のテストを完了した。それは、人間操縦者のいない機がある地点まで到達して、荷物やそのほかの品物を、大規模に自動化されているネットワークの一部として配達できるために、欠かせない要件だ。

Project Wingは、未来のための準備だ。その未来には、同社やそのほかの企業が、数千機から成るドローンの編隊を運用し、荷物の配達などの機能を実行している。そしてその飛行は、建物や悪天候やそのほかのUASに遭遇する環境で安全にインテリジェントに行われる。さまざまな要素が楽器のように加わるその交響曲は、有能な指揮者を要するが、バージニア工科大学のテストサイトで火曜日(米国時間6/6)にWingが行ったテストは、まさにその存在を示した。一人の地上操縦士が3台のWingドローンを同時にコントロールし、それぞれに、別々の集荷と配達ミッションをやらせた。そしてそのとき、同じ空域に、Intelのドローン2機とDJI Inspire 1機を飛ばせて、全員が同時に航行した。

そのデモでは、Wingの航行管理プラットホームが実際の野外環境で、それら全機の航路を自動的に計算把握し、それらを避ける自分の航路を飛行中にリアルタイムで見つけていった。このプラットホームを作るときとくに力を入れたのが、同じ空域を複数のドローンが飛んでいるときの航路計画、リモートの操縦者やその空域の各種警報によって予期せぬ変化が起きたときの通知と対応、そして山火事などの事変に対応する自動的な航路修正だった。

次は、もっと多い台数による同時飛行と、もっと複雑な環境に挑戦する。今回のテストは、あたりにほとんど何もない、都市部の複雑過密な空域とは大違いの環境で行われた。まだまだ初期的なテストだが、自動化ドローンによる自動配達の実現のためには絶対に必要な過程だ。規制当局を満足させ、都市の住民の安全を確保するためには。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

無人航空機によるインターネットアクセスの研究開発は挫折、GoogleはTitanのチームをProjects LoonとWingに移動

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GoogleがTitan Aerospaceを2014年4月に買収したとき、同社はその成功を確信していた。その高空を飛ぶドローンは同社にさまざまな可能性を提供し、中でも文明の恩恵に浴さない遠隔地に気球を利用して低費用でインターネットアクセスを提供するProject Loonをさらに拡張できる、と期待された。

そのUAV(unmanned aerial vehicle, 無人航空機)メーカーは、同じ時期にFacebookもねらっていたと言われるが、Googleにとっては、高品質なリアルタイムの画像をGoogle Mapsに提供して、災害救助などを助ける可能性もある、と同社は当時語っていた。

2015年の初めに、GoogleのトップSundar Pichaiは、その年の後半にTitanの最初のテスト飛行を行う、と発表した。同社のTitan部門はその後、Google/Alphabetの傘下となり、多少の異動もあったが、最終的には同社の実験部門であるGoogle Xに行き着いた。Xの仕事は、まだ誰も手を付けていない未踏の分野*の探究(例: 不老長寿)である、とされている。〔*: 英語ではmoonshot(s)だが、日本語の適訳がない。〕

しかし9to5Googleの最新の記事によれば、Titan部門は閉鎖され、その社員はProjects LoonやWingなど、ほかの部門へ移る。Wingは、ドローンによる配達を研究開発しているチームだ。

Titanの閉鎖について同社は、TitanをXに移してから比較的すぐに、ドローンによるインターネットアクセス提供サービスの探究は取り下げられ、すでに成功していた気球を用いるProject Loonに統合されていた、という。

この件に関してXの担当者は、本誌TechCrunchに次のような声明文をくれた:

Titanのチームは2015年にXに統合された。それからしばらく後(のち)に、弊社における、高高度UAVによるインターネットアクセスの探究は終了した。それとは対照的に当時は、Project Loonの経済的および技術的フィジビリティの方がはるかに有望と思われ、実際に世界の僻地にインターネット接続を供給できると考えられた。Titanチームからは多くの人びとが、今ではLoonやProject Wingなどの高高度飛行プロジェクトに出向して、その専門的知識や経験を役立てている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Alphabet(旧Google)の秘蔵っ子、日本のSchaft Inc.が、東京でまったく新しい二足ロボットをデモ

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今度(東京に)現れた新型ロボットは、Naoみたいに可愛くもなく、SpotやBigDogのように不気味でもなく、Atlasほど人間らしくもないけど、これらのどれよりも実用的かもしれない。二足歩行をするが、それは人間のようでも、熊のようでもない。AlphabetがオーナーであるSchaft Inc.が考えた、独特の動きをするロボットなのだ。

この、まだ名前のないロボットは、日本で行われたNew Economic Summit(新経済サミット)のステージ上を誇らしげに歩き、Schaftの協同ファウンダーYuto Nakanishiと共に、笑顔の群衆に対面した。次に上映されたビデオに登場したロボットは、ステージ上のロボットと同じものではなかったが、機能はほぼ共通していた。

いちばん重要なのは、その歩行システムだろう。人間の足並みは複雑にコントロールされる上下運動だが、このロボットの足(脚)は可撓部のない剛体で、レールのように上下にスライドする。

したがって物を持ち上げたりするときの、曲がる(しゃがむ)動作がない。上部のジョイントにより脚は斜めに突き出され、底部の“関節”が凸凹の地面でも安定性を提供する。電池とモーターは両脚のあいだにあり、低い重心に貢献している。

ロボットが動き回るための方法としては、とても効率的に見える。ビデオではロボットが、森の中や、岩だらけのビーチ、雪原、それにED209(エド・ツーオーナイン)やDalek(ダーレク)たちの弱点である階段すらも歩きまわる。階段を上(のぼ)りながらRoombaみたいなブラシで各段を掃除するやつもいる。Atlasにも、やらせてみたいね。

人間の捕獲者が仕掛けた金属の棒の上でも、滑ったり転んだりせずに、十分に敏速に動き回る。Skynetが本当に人類を滅ぼし始めたときにはきっと、昔見たこのビデオのことを思い出すだろう。

このロボットには腕がないし、掌(てのひら)のような握る部分もない。上にバーベルが載っているプロトタイプもあるから、物を持ち上げて運ぶことはできるのだろうが、荷台や操作部はない。このロボットの設計目的がほかにあるのか、それとも、今回は歩行をデモすることだけが目的で、他の機能や装具を装備してないだけなのか。

終始曖昧な書き方で申し訳ないが、なにしろ具体的な情報は乏しいのだ。Schaftは2013年にGoogleに買収され、その後音沙汰がなかったが、DARPAのRobotics Challengeでは優勝した。同社は今、Webサイトすらなく、その操業内容とプロジェクトはAlphabetのX部門の中で厳しく守秘されている。

この記事の素材はすべて、東京のロボットライターTim HornyakRakutenのツイートで、XがIEEE Spectrumに載せた記事も参考にしている。その記事は、“製品の発表でも、具体的な製品のロードマップでもない。ただ単純に、進捗の現段階をお見せできたことを、嬉しく思っている”、と声明している。

本誌はこの隠密ロボットメーカーに情報を求めているが、彼らのこれまでの3年と次の3年が同じなら、多くは期待できない。この革新的なロボットは、今後もっと社会への露出度を大きくすべきだし、今後も秘密のままキープするのは、もったいない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Googleの自動走行車、AI運転中に接触事故を起こす

lexus

実はGoogle車はここ数年で10回以上接触事故を起こしている ― しかしこれまでのケースでは、事故が起きた時実際に操縦していたのは、当局に乗車が義務づけられている人間ドライバーだった。

今回のケースでは、車両は自動運転モードだったことをGoogleが明言している。

DMV(車両管理局)の報告書にはこう書かれている:

GoogleのLexusモデル無人走行車(以下「Google AV」)は、無人モードでマウンテンビュー市エルカミノレアル通り東方向の右端車線を走行し、カストロ通りとの交差点に接近していた。Google AVは交差点に近づくとカストロ通りに赤信号で右折する意志を表示した。Google AVはその後車線の右側に寄り、同じ車線を直進するために停止していた他車を追い抜いた。しかし、Google AVは、前方を阻んでいた雨水排水口を囲む砂袋を避けるために停止しなくてはならなかった。何台かの車が通過した後、Google AVは砂袋を避けて中央車線に戻り始めた。後方から公共輸送バスが接近してきた。Google AVのテストドライバーは左サイドミラーでバスが接近するのを見たが、バスは停止あるいは減速するだろうと信じ、Google AVに走行を続けさせた。約3秒後、Google AVが車線中央に戻ろうとした際、バスの側部に接触した。Google AVは無人モードで動行中であり速度は時速2マイル以下、接触時にバスは時速約15マイルで走行していた。

Google AVはバスの左前フェンダー、左前輪ホイール、および運転手側センサーの一つに損傷を与えた。現場での傷害は報告されていない。

要するに、Googleの車は停車中の何台かの車を避けようとしたが、路上の砂袋のために停止せざるを得ず、別の車線に合流しようとしたところ、通過するバスの側面に衝突した。Google車は、バスが減速して道を譲ってくれるものと仮定していた…怪我人はなかった。

これは珍しい例外的なケースだが、こうした例外的ケース〈こそ〉が、自動走行車の開発を著しく困難にしている。事故はどんな人間でも起こす ― ただしベイエイリアで何年か運転していれば、バスが減速して道を譲ってくれるなどと信じることはないだろう。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Google自製の完全自動走行車がマウンテンビューの路上を走り始めた

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Googleは自動走行車プロジェクトの情報をアップデートし、最新のプロトタイプがすでにマウンテンビューの路上を走っている ことを明らかにした。これは昨年12月にGoogleがお披露目したキュートなミニカーの改良版で、Googleがすべてを内製した。完全な自動運転を目的としており、車内にはハンドルなどのコントロールがない。

ただし現在は路上テストの際には万一の事態に備えたバックアップのドライバーの搭乗が義務付けられており、取り外し可能なハンドル、アクセル、ブレークなどが装着される。また自動運転モードでは最高速度は時速25マイル(40キロ)に制限される。ソフトウェアはLexusに搭載されてすでに長距離を走っているものと同一だ。

Beta public roads edit

Googleのパンダ風のミニカーは先週からスタートしたデザインを公募するプロジェクトのおかげで一層かわいくなった。Googleは「私のコミュニティー、私の隣人」というキャッチフレーズを掲げて、カリフォルニアのアーティストから自動走行車をさらに親しみやすくするペイント案を募集している。

自動走行車が人間の運転より安全だといかに統計的に証明しても、人間というものは統計ではなかなか動かないものだ。むしろかわいらしいボディーペイントの方が普及には効果的かもしれない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

気球からネット接続を提供するGoogleのLoonプロジェクト、オーストラリアの実験でさらに前進

GoogleのProject Loonは世界のインフラ未整備地域の成層圏上層に気球を飛ばしてインターネット接続を提供しようという試みだ。このプロジェクトが実用化に向けてまた一歩進んだ。数日前、われわれはGoogleがオーストラリア最大のテレコム企業、Telstraと協力して気球の打ち上げ実験を行う予定だと聞いた。今日(米国時間11/20)、Googleはもう少し詳しい情報を発表した。

たとえば、気球の滞空時間は昨年の実験開始当初より10倍も伸びている。多くの気球が100日間飛び続け、130日間飛び続けたものもあるという。気球の飛行距離は延300万キロにもなる(もっとも数日前に南アフリカに墜落した気球はそんなに長く飛べなかったようだが)。.

またGoogleは、気球のコントロールでも進歩があったとしている。Loonチームは今日 Google+ に、 「何千もの飛行パターンのシミュレーションを続けた結果、われわれは気球を相当の精度で目標に近づけることができるようになった。たとえば、あるフライトでは9000キロを飛行した後で目標の1.5キロ以内に着陸させることができた。気球は成層圏の風向、風速を予測、利用することによってのみ制御された」と書いている。

Googleはまた気球をふくらませるための新しい装置を開発した。これによって1基わずか5分で必要なガスが注入できるようになった。Googleは「現在、毎日20個の気球を打ち上げる能力がある」としている。

今年始めに、Google Xのチーフ、アストロ・テラーはわれわれのインタビューに答えて、「Googleはこのプロジェクトの実用化にあたってはテレコム企業と提携していく」と語った.。 つまりGoogleはインターネット接続を提供する際に、自ら周波数帯域を購入することはせず、既存のプロバイダーと提携し、それらが得ている許可を利用して気球からの送信を実施するという仕組みのようだ。当初はまさしくクレージーなアイディアに思えたが、Googleが真剣に取り組んでいるのは疑いない。しかも着実に前進を続けているようだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


Google、モフェット空軍基地の運営をNASAから全面引き継ぎ―秘密研究所Xの本部に

Googleは長年にわたってお隣のモフェット空軍基地を自家用ジェットの発着に利用してきた。今日(米国時間11/10)発表されたところによれば、Googleはモフェット基地の管理運営を完全に引き続くことでNASAと合意した。底地所有権はアメリカ政府が保持する。基地のリース期間は向こう60年。

NASAのプレスリリースによれば、Googleがこのリース契約のために設立したペーパーカンパニーのPlanetary Ventures LLCが総額11億6000万ドルの賃貸料を分割支払いする。 Googleへの移管ににより、アメリカ政府は年額630万ドルの節約になるという。

愉快なのはプレスリリースでNASAのチャールズ・ボールデン長官が述べた言葉だ。長官は「NASAは宇宙での存在をますます拡大していく計画だが、地球上での存在は縮小するつもりだだ」と述べている。

サンフランシスコ市の南、湾に面して1000エーカー〔4平方キロ〕にわたって広がるモフェット基地にはハンガー・ワン〔写真右側の巨大建造物〕からハンガー・スリーまでの3棟の格納庫、2本の滑走路、航空管制設備、ゴルフコースなどが含まれる。こうした設備の利用と運営は今後すべてGoogleが引き継ぐことになる。

この春に妥結した予備交渉でGoogleは「ハンガー・ワンやシェナンドア・プラザ地区など歴史的建造物と地域の復元と維持」を約束していた。しかしもちろんGoogleはそれ以上のことを計画している。プレスリリースによると、GoogleはPlanetary Venturesを通じて今後2億ドルの投資を行うという。またGoogleは基地の歴史的由来を啓蒙する施設やシリコンバレーのテクノロジー産業の進歩のための施設を建設し、一般に公開していく。

またプレスリリースによれば、ハンガーワンは宇宙開発を含むさまざまなハイテク開発のために利用される。

リノベーションの完了後、ハンガー・ワンはハイテク・イノベーションのための施設として利用され、宇宙、航空、ロボティクスその他の先端テクノロジーの研究開発および実験の場となる。ハンガー・ツーとハンガー・スリーも同様の目的に利用される。

モフェット基地は、Googleの秘密先端技術研究チーム、Google Xの本部となるらしい。

〔日本版〕ハンガー・ワンは1930年代なかばにアメリカ海軍の飛行船、メイコンの格納庫として建設された。格納庫は奥行き345m、間口94m、高さ60mという巨大なもの。老朽化のため全面改修が必要となり、現在は外壁が剥がされて骨組みだけになっている。これほど巨大な屋内空間は世界的にも最大級。ドローンのテストには絶好だろう。またGoogle Xの研究チームの少なくとも一部はすでにモフェット基地をベースにしているという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


Google[x]、ナノ粒子を飲んでガン細胞を早期発見する画期的検査方法を開発中

近い将来、カプセルを飲むだけでガン細胞を発見することができるようになるらしい。Wall Street JournalのDigitalカンファレンスで、Googleのライフサイエンスの責任者、Andrew ConradはGoogleの秘密研究所、Google[x] がナノテクノロジーとウェアラブルデバイスを結合した疾病検査テクノロジーを開発中であることを発表した。

「われわれは受け身の検査から能動的な検査への転換を図ろうとしており、そのためのツールを開発中だ」とConradは説明した。このナノテクノロジーによる医学的検査はGoogle[x]のライフサイエンス部門として、糖尿病患者の血糖値をモニタするスマートコンタクトレンズ、Parkinson病患者の手の震えを軽減するデバイスに続く3つ目のプロジェクトだ。

このシステムでは疾患特有の細胞と結合する抗体で覆われたナノ粒子を利用して疾患の早期発見を行う。検査を受ける人はカプセルに入れた粒子を経口服用する。吸収された粒子は体内を循環し、異常な細胞があればそれと結合する。粒子はその後専用のウェアラブルデバイスによって「呼び戻され」、分析されて疾患の有無、種類が判定される。

「ナノスケールの『自動運転車』のようなものだ。われわれはこの粒子をコントロールして望む場所に駐車させようとしている」とConradはGoogle[x]のもうひとつのさらに大規模なプロジェクトを引き合いに出して説明した。Conradによれば、現在の医療システムは「エンジンが焼き付いて壊れてから初めてオイル交換をするようなもの」と述べた。

Bikanta’s tiny diamonds luminesce cells in the body.

Y Combinatorが支援するBikantaが開発中のダイヤモンドのナノ粒子を用いたガンの早期発見システムと同様、Googleのナノ粒子もガン細胞をMRIスキャンに写りやすくする特性を持たせることができるという。これにより今までよりずっと早期にガンを発見できるようになる。

またこのテクノロジーの応用範囲はガンの発見にとどまらず、医療のあらゆる分野に及ぶ。今日(米国時間10/28)のGoogle[x]のコメントによれば、 「動脈壁に蓄積したプラークが発する酵素を検知して心筋梗塞や脳卒中の早期発見に役立てることができるだろう。またサードパーティーがガンの手術や化学療法を受けた患者に対して感度の高い再発監視システムを開発するかもしれない。これは非常に需要の高い分野だ。付言すれば、われわれはこのテクノロジーの実用化を自ら行うことはせず、医療分野の専門企業にライセンスする計画だ。特定の疾病の検査手法の開発や安全性を確認する臨床検査などはすべてそのサードパーティーが実施することになる」という。

Conradによれば、われわれは病院に出向いて尿や血液を医師に提出する必要はなくなるという。Googleのナノ・ピルを服用し、専用デバイスを身に着けて結果を日々モニタすればよい。そのデータはクラウドにアップロードされ、医師が判定を行う。すると医師は「これまでは順調でしたが、2月ほど前からこれこれの病気の兆候が現れています」などと診断することになる。

医療分野ではプライバシーとセキュリティーがことの他重要になる。Googleはこのところアメリカ政府の要求に応じて情報を引き渡したとして非難されている。Conradは上記のように、Googleは実施面にはタッチせず、サードパーティーの医療専門企業が実用化を行うことを強調した。「(X線装置を製造している)GEが患者のX線写真を扱わないのと同じだ」とConradは例を挙げた。

ナノテクノロジーに関してはアメリカ政府もきわめて熱心で、2013年には200億ドルを研究開発に投資している。

Conradはこのナノ検査テクノロジーが10年以内にすべての医師が利用できるようになると期待している。またConradのチームは単に異常細胞を検知するだけでなく、そうした細胞を破壊する薬剤を運搬できるナノ粒子の開発も目指している。「ただし、正しい細胞を破壊するのでなければ危険なので、一層慎重な研究が必要になる」とConradは付け加えた。

現在、Google[x]では医学、物理学、化学、電気工学などの専門家100人がナノ粒子プロジェクトに携わっている。Conradは「不必要な死をできるかぎり退けるのがわれわれの目標だ」と語った。

画像:Flickr USER bfishadow

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Google、コーディングする女性を育成する “Made With Code” に5000万ドルを投資

先週Googleは、若い女性がプログラミングに興味を持ち、業界の男女格差を減らすことを目的とする新ちな取り組み “Made With Code” をスタートさせた。背景にあるアイデアは、スマートフォンのアプリからお気に入りの映画まで、若い女性の大好きなものがプログラムで出来ていること、そして学習したスキルを自分自身の情熱に応用できることを教えることにある。

Googleは、同プロジェクトに今後3年間で5000万ドルを投資する。Made With Codeでは数多くのパートナーがコミュニティーの育成を助ける。Chelsea Clinton、Mindy Kaling、MITメディアラボ、全米ガールスカウト、Girls Inc.、Girls Who Code、National Center for Women and Information Technology、およびメディアパートナーとしてTechCrunchも加わる。

Made With Codeウェブサイトには、子供たちがプログラミングを学ぶためのリソースやプロジェクト、仲間、あるいはメンターと問題やプロジェクトについて議論するためのコミュニティ、そして地域のイベントに関する情報等が提供されている。すべては、未来のテクノロジーに関して、女性が主役の座につくための取り組みだ。

数字で見る限り、米国女性のコンピュータ・サイエンス学科人気は減少している。

Google XのEVP Megan Smithは、これを変えることのできる要素はいくつかあり、いずれも手の届くところにあると説明する。第一に、若い女子にコーディングをやってみるよう薦める、たとえ薦める人自身に技術的素養がなくても。「誰かにコーディングを薦めるために、あなたがコードの書き方を知っている必要はない」。

さらにSmithは、一部の女の子たちにとっては、コーディングをやってみる明確な手段がなく、目標にするヒーローもいないと指摘する。テレビ番組の中でさえ、コンピュータ・サイエンスといえば女性より男性に代表されることの方がずっと多い。

Made With Codeはこうした問題を解決すると共に、若い女性にコーディングしてみるよう勇気づけることを他の人々にも薦め、目指すべき人物像を示せることを目標にしている。

発表イベントの様子と、関係者のインタビューを下のビデオに収めてある。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


Disrupt キーノート―Google Xの責任者、Astro Tellerがテクノロジーの理想のあり方を語る

Astro TellerがTechCrunch Disrupt NYでキーノート講演を行った。TellerはGoogleのムーンショット・プロジェクト〔月旅行のような遠大な計画〕を進めるGoogle Xの責任者だ。このチームは自動走行車、Project LoonGoogle Glassなどを開発している。しかしTellerがキーノートで語ったビジョンは意外なものだった。

Tellerによると、テクノロジーにおける真のイノベーションというのはわれわれの生活の中でまったくそれと気づかづに使えるようなものでなくてはならないという。Tellerはその例として自動車のブレーキのABSシステムを取り上げた。ドライバーがABS装着車のブレーキを踏むとき、実はブレーキそのものを作動させているのではなく、ある種のロボットに指示を出しているのだ、という。

「これこそすばらしいテクノロジーだ。ユーザーは一切面倒なことをする必要がない。やりたいことするだけでよい。日常生活の中でテクノロジーにこのレベルの不可視性を獲得“させることがわれわれの最終的目標だ。それは生活に溶け込み、自らの存在を消してしまう。そのようなテクノロジーは『あなたがそれをする必要はない。私が代わってそれをする』と語る」とTellerは述べた。

いちいち持ちあるく必要がなくなったとき電話は素晴らしいものになる。

Tellerによれば、「現在われわれはテクノロジーといえば、スマートフォン、ノートパソコン、スマートウォッチなどのことだと考える。現在のテクノロジーは人間の認識力を強化するというより、むしろ妨げている。それは生活の中に無用な煩わしさを持ち込んでいる。電話というテクノロジーはデザインやバッテリー駆動時間が改良されたからといって本質的に良いものになるわけではない。いちいち持ちあるく必要がなくなったとき電話は素晴らしいものになる」という。

これがGoogle Xのさまざまなプロジェクトの背後にあるビジョンだ。ある意味、反テクノロジー的なアプローチといえる。Google Xチームは「テクノロジーは自らを背景に消し去ったときにもっとも効果的なものとなる」と考えている。

邪魔なテクノロジーを消し去るためにどのようにテクノロジーを利用したらよいかをわれわれは追求している。われわれはみなたいへんな労力をかけて自動車の運転を習う。そして運転しながらメッセージを入力したりブリトー食べたりメークを直したりする。その結果、アメリカでは交通事故で毎年3万人もの人々が死亡している。

自動車は将来、すべてGoogle Xが開発しているような自動走行車に置き換えられるはずだ。われわれは過去を振り返って、自動車をいちいち人間が操縦していたことを不思議に思うようになるに違いない。

次にTellerはウェアラブル・テクノロジーについて語った。Google Glassについては「ユーザーを現実から引き離し、上の空にさせる」という批判をよく聞く。ではTeller自身はどう考えているのか?

「理想的な世界ではユーザーはユーザーインターフェースを意識さえしないですむ。ユーザーがユーザーインターフェースを意識するのは何らかの事情でそれが作動を停止したときだけだ。そういうテクノロジーは人間性を減らすのではなく豊富にする」とTellerは主張する。

Google Xはそういう未来を探り、創りだすための活動だという。「しかしテクノロジーをそのような不可視性のレベルにまで高めるための前途はまだ遠い。われわれはテクノロジーを意識させないテクノロジーを生み出すことにはまだ成功していない」とTellerは結論した。

〔日本版:アストロ・テラーは本名Eric Teller。コンピュータ科学者、起業家、作家。2010年からGoogle Xの責任者を務めている。祖父は水爆開発やスターウォーズ計画に大きな貢献をしたハンガリー生まれの科学者エドワード・テラー。知性と人格を獲得したプログラムとプラグラマーの女性との心の交流を描いた異色のSF小説は日本語にも翻訳されている。〕

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+