実験室でフォアグラを生み出すスタートアップ「Gourmey」

フランスのスタートアップGourmey(グルメイ)が、株式と融資による1000万ドル(約11億円)のシードラウンドを実施した。このスタートアップは、実験室で動物の細胞からの食肉培養に取り組んでいる。特に同社は家禽類に力を入れており、世の中のシェフたちに同社の製品をレストランで採用してもらうことを目指している。

「私たちは2万年前から動物を飼育してきました」と語るのは共同創業者でCEOのNicolas Morin-Forest(ニコラ・モラン・フォレスト)氏だ。「私たちは細胞を育てます。こうすることで食べる分だけ生産できるので、はるかに効率的なのです」。

他の2人の共同創業者であるVictor Sayous(ビクター・サユー)氏とAntoine Davydoff(アントワーヌ・ダヴィドフ)氏は、分子生物学と細胞生物学のバックグラウンドを持っている。スタートアップのためにチームを組んだ彼らは、集約的な畜産の検討を始めた。

「このテーマに足を踏み入れてみると、これは単に動物愛護だけではなく、地球や人類にも関わることなのだと気づかされます」とモラン・フォレスト氏は語る。

Gourmeyは、肉の代替品を作り、それを大衆向けの商品にしたいと考えているスタートアップ企業たちの一員だ。従来の食肉を代替しようとした第一世代のスタートアップたちは、植物由来の代替品に大きく賭けていた。Beyond Meat(ビヨンド・ミート)やLivekindly Collective(ライブカインドリー・コレクティブ)などがよく知られている。

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最近では、Eat Just(イート・ジャスト)、Mosa Meat(モサ・ミート)、Meatable(ミータブル)など、細胞を使った肉に注目している新世代のスタートアップ生まれている。Gourmeyは、実験室で肉の培養を行うフランス初のスタートアップだ。

他の実験室食肉培養スタートアップと同様に、Gourmeyは幹細胞(ステムセル)を利用している。その細胞を、適切な温度で適切な栄養素と組み合わせて、バイオリアクターの中で成長させる。

Gourmeyは、プレミアム製品とプレミアム販売戦略からスタートする。彼らのスタートアップは、人工培養されたフォアグラ──彼らの言葉を借りるなら、屠殺を行わないフォアグラに取り組んでいる。フォアグラの味を再現するのもまた複雑な作業であるため、Gourmeyはそこに大きな期待を寄せている。

国によっては、フォアグラには大きな不名誉が与えられ、スーパーの棚から撤去されている。その結果、実験室で培養されたフォアグラに魅力を感じる人もいることだろう。Gourmeyは、特にシェフたちに第1弾の製品を試してもらい、高級レストランで使用してもらいたいと考えている。またGourmeyは、その製品を通常のフォアグラとほぼ同じ価格で販売したいと考えている。

そしてスタートアップの規模が大きくなるにつれて、より多くのマスマーケット向け製品を発売することを考えている。生産ラインが最適化され、Gourmeyの製品に十分な需要が生まれれば、他の鶏肉や鴨肉などの製品も登場することだろう。

スタートアップが実験室で作った製品を世界で販売するには、いくつかの規制上のハードルをクリアする必要がある。Eat Justはシンガポールで、実験室で培養された肉の販売を開始したが、たとえばヨーロッパで培養肉が見られるようになるにはまだ数年かかるだろう。そのような新製品は、食品安全規制当局が承認する必要があるからだ。

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Gourmeyの資金調達に関しては、Point NineとAir Street Capitalが共同で1000万ドル(約11億円)のシードラウンドを主導している。Heartcore Capital、Partech、Big Idea Ventures、Eutopia、Ataraxia、Beyond Investingそして数名のエンジェル投資家もラウンドに参加している。Gourmeyは、Bpifrance(公共投資銀行)や欧州委員会などの公的機関からも支援を受けている。

Point NineのマネージングパートナーであるChristoph Janz(クリストフ・ジャンズ)氏は「培養肉は、エネルギー効率が高く、持続可能なタンパク質を世界に提供するための最も有望なソリューションの1つです」と述べている。「しかし、本物に負けない味が成功の鍵を握っていることに変わりはありません。私たちは、Gourmeyのおいしい製品と、科学と味の両面で記録的な速さで進歩する同社の能力に、心から感銘を受けました」。

今回の資金調達により、同社はパリにパイロット生産ラインを設置する予定だ。フォアグラ製品を販売できるようになるのは、2022年後半から2023年前半を予定している。

画像クレジット:Gourmey

カテゴリー:フードテック
タグ:Gourmeyグルメ食事資金調達培養肉フランス

画像クレジット:Gourmey

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(文:Romain Dillet、翻訳:sako)