シンガポールのGrabが一般消費者向けにマイクロ投資やローンの金融サービスを提供へ

Grab(グラブ)は米国時間8月4日、これまで主に起業家や零細事業者向けのサービスにフォーカスしていた金融部門が、マイクロ投資やローン、健康保険、後払いプログラムなどを含む消費者向けプロダクトを立ち上げると発表した。

シンガポールに拠点を置くGrabは2012年に配車サービス会社として創業し、その後オンデマンド配達などの分野へとサービスを拡大した。そして、デジタル保険マーケットプレイスを構築するために2019年1月にZhongAn Insurance(ゾンアン・インシュアランス)と合弁会社を立ち上げた。以来、金融サービスのポートフォリオは提携やBento(ベント)買収を通じて増加した。Bentoの買収によって投資や資産管理のサービスも提供できるようになった。

2020年2月にGrabは決済と金融サービスの開発をスピードアップするために8億5600万ドル(約905億円)を調達したと発表した。

8月3日にBloomberg(ブルームバーグ)はGrabが韓国のプライベートエクイティ会社であるStic(スティック)から2億ドル(約212億円)を調達したと報じた。これにより累計調達額は100億ドル(約1兆577億円)、バリュエーションは143億ドル(約1兆5124億円)となった。Grabの広報担当は今回の資金調達について、TechCrunchのコメントの求めに応じなかった。

成長マーケットへの参入

記者会見での黒字化達成タイムラインについての質問に対し、Grab Financial Group(グラブ・ファイナンシャル・グループ)のシニアマネジングディレクターであるReuben Lai(ルーベン・ライ)氏は、タイムラインはまだないが「今日立ち上げようとしているプロダクトに対する真の需要があることが調査でわかった。消費者にフォーカスし、彼らが使うプロダクトを届けたい。収益性や持続性は後からついてくると考えている」と話した。

Grab Financial Groupの新プロダクトには、消費者がGrabのアプリを通じて小額を投資できるプラットフォーム、消費者ローン、後払いプログラムそしてまずはインドネシアで立ち上げる入院保険を含む保険関連商品などがある。

Grabの新たな消費者プロダクトの取り組みは新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミック前に始まっていたが、新型コロナ危機でオンラインショッピング、デジタル決済、保険のようなサービスに対する需要が加速した、とライ氏は話している。

Grabの消費者プロダクトは、シンガポール拠点のオンライン投資プラットフォームStashAway(スタッシュアウェイ)のようなサービスと競合する。しかしライ氏は、Grab Financial Groupの強みは数百万人ものGrabユーザーが東南アジアにいることだと述べた。つまり、信用力を決定するのに使うスコアリングモデルを絶えず最新のものにするための消費者ベースとデータがすでにある。

Google(グーグル)とTemasek(テマセク)による研究プログラムであるe-Conomy Asiaの2019年レポートによると、東南アジアの人口の70%が「underbanked(銀行口座を開設できない貧困層)」だ。これはクレジットカードや長期貯蓄プロダクトへのアクセスがないことを意味する。アジアの金融センターの1つであるシンガポールですら消費者の約40%がunderbankedだ。Bainとe-Conomyは東南アジアのデジタル金融サービスの売上高が2025年までに600億ドル(約6兆2460億円)となると予想しており、Grabにとって儲かるマーケットとなる。

マイクロ投資と保険

Grab Financial Groupの保険の大半はこれまでGrabプラットフォームのドライバーや販売事業者など社内エコシステムを専門としていた。しかし、まずインドネシアで立ち上げられる同国のヘルスケアシステムを補完する入院費用保険などの新たなプロダクトは消費者をターゲットとしている。

2016年にBentoを設立し、現在はGrabInvestの責任者であるChandrima Das(チャンドリマ・ダス)氏は、Grabの新マイクロ投資ソリューションはGrabのデジタルウォレットを通じて利用できる、と話した。ユーザーは Fullerton Fund ManagementとUOB Asset Managementが管理する流動債券ファンドに1シンガポールドル(約77円)から投資し、利率1.8%でリターンを得ることができる。こちらは9月初めにまずはシンガポールで提供が始まる。

Grab Financial Groupはすでにドライバー向けに運転資金ローンを、プラットフォーム上の小売業者に融資を提供しているが、新たな消費者クレジットプロダクトにはPayLaterが含まれる。このサービスはユーザーがGrabサービスの支払いを月末にすることができるというもので、最初にシンガポールとマレーシアで利用可能になる。

また、認可を受けたサードパーティーの銀行や金融機関の消費者ローンも提供する。Grab Financial Groupの貸付部門責任者、Ankur Mehrotra(アンクール・メロトラ)氏は、手続きはシンプルで「ソファに座ってNetflixを観ながらできる」と話す。

メロトラ氏は、小売事業者向けのプログラムのメリットとして、流通取引総額や1回の取引量の増加、カート離脱(商品をカートに入れても購入に至らないこと)率の低下を挙げた。

画像クレジット:SOPA Images / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

VolocopterとGrabが航空タクシーサービス展開の可能性を東南アジアで調査

空飛ぶモビリティのスタートアップであるVolocopter(ヴォロコプター)は、オンデマンド輸送、食品配送、ペイメント企業のGrab(グラブ)と協力して、東南アジアの空飛ぶモビリティに関する調査を進める。この共同調査は、この地域のいくつかの都市でのエアタクシーサービスの展開の可能性を探るために両社が署名した覚書(MOU)の一部として実施される。

これは最終的に実際に試験飛行を実施し、エアタクシーサービス展開のためのルートを確立することにつながりうるパートナーシップの最初のステップであるが、どこまで提携が進められるかは調査の結果とその後の両社の意向によると思われる。

Volocopterはドイツのスタートアップ企業で、2011年から電気垂直離着陸機の開発/実証を行っており、すでにシンガポールで現地の航空当局と協力して機体の実証を行っている。また昨年10月には、市内で世界初とされる本格的なエアタクシー「VoloPort」を発表し、提携しているSkyportと協力して、これらの都市型エアタクシーステーションのスケーラブルな商業モデルを開発した。

GrabはVolocopterやその空飛ぶタクシーサービスを、同社がさまざまな交通手段を組み合わせるパズルの、潜在的なピースとして見ているようだ。「このパートナーシップにより、Volocopterは東南アジアの通勤者に適した都市型エアモビリティソリューションの開発が進められ、通勤者は予算、時間的制約、その他のニーズに基づいた、シームレスな方法で好みの移動方法を決定することができる」とGrab VenturesのCEOであるChris Yeo(クリス・ヨー)氏はプレスリリースで述べている。

Volocopterは昨年、シンガポールは商用サービスを開始し、オフィスを開設するのに最も競争力のある地域の1つになる可能性があると伝えた。同社は以前、ほかにもドバイやドイツなどで、商用サービス提供の可能性があると述べていた。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

GrabとSingtelが提携しシンガポールでデジタルバンクのライセンスを申請

ライドシェアサービスやフードデリバリーなどの機能を搭載したスーパーアプリを提供しているGrabとシンガポール最大の通信会社の1つであるSingtelは米国時間12月30日、デジタルフルバンクのライセンスを共同で申請すると発表した。このライセンスが承認され、シンガポール金融管理局(MSA)の基準を満たしていれば、完全な銀行機能の運用の前に簡単なクレジットや投資商品を提供できるようになる。

コンソーシアムではGrabが60%、Singtelが残りの40%の株式を保有する。共同声明によると、両企業は「(中小企業を含む)シンガポールの消費者および企業セグメントの十分なサービスが提供されていないニーズに対応する、差別化されたサービスを提供することにより金融サービス分野への貢献に取り組む」という。運転資金の確保は東南アジア全域で大きな課題となっており、いくつかのスタートアップや金融機関が信用力を試算し、融資を管理するための新しいツールに取り組んでいる。

Grabは2012年に相乗りサービスとしてスタートしたが、現在は「東南アジアを代表するスーパーアプリ」を自称し、交通、物流、食品配達、チケット、ホテル予約、金融など幅広いサービスを1つのポータルで提供するアプリを提供している。

Grabは2016年にデジタルウォレットのGrabPay Walletを導入することで金融サービスに参入し、2019年にはGrab Financial Groupをローンチした。同社によると、Grab Financial Groupのサービスにはオンライン決済、融資、保険商品が含まれ、東南アジア全体で1億人のユーザーに利用されているという。

Grab Financial GroupのシニアマネージングディレクターのReuben Lai(ルーベン・ライ)氏はプレスリリースにて、同コンソーシアムの計画は「アクセスしやすく、透明性が高く、手頃な価格のさまざまな銀行および金融サービスを提供する、真に顧客中心のデジタル銀行を構築することだ」と述べた。

MASは6月にシンガポールの銀行部門の自由化の一環として、最大2行のデジタルフルバンクのライセンスと、3行のデジタルホールセール(大口向け)銀行のライセンスを発行すると発表した。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

JapanTaxiがGrabと連携、Grabアプリから日本のタクシーを呼べる

JapanTaxiは11月18日、シンガポール拠点で東南アジア各国で配車やデリバリーのサービスを展開しているGrabと連携を発表した。この連携は英国とシンガポールに拠点を置くモビリティマーケットプレイスのSplyt Technologiesとの協業によるもので、11月19日から訪日時にGrabのアプリと決済方法を使って、JapanTaxiと提携しているタクシー会社のタクシーを呼び出せる。JapanTaxiとしては、訪日外客数2位の韓国・カカオT、3位の台湾・LINE TAXIに続く連携となる。なお、Splyt TechnologiesはGrabの出資先企業だ。

サービス開始時点の対象エリアは、東京、京都、札幌、名古屋・沖縄の5拠点で、タクシー運営会社36社、タクシー台数1万3620台をGrabから呼び出せるようになる。対応するのは即時配車のみで予約配車には非対応。もちろん、ユーザーは日本語を話せなくても、乗車地と目的地をアプリに入力するだけで日本国内をキャッシュレスで移動できる。

Grabは、シンガポール、インドネシア、フィリピン、マレーシア、タイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジアの8カ国で展開しており、1億6300万台のモバイルデバイスへダウンロードされ、ユーザーは900万以上の運転手や商店などでサービスを利用できる。交通サービスだけを見ても、2012年の創業以来、ユーザーの合計乗車数は40億回以上になるそうだ。

国内ではDiDiの参入で盛り上がっているタクシー配車サービスだが、東南アジア最大手のGrabが国内最大手のJapan Taxiと連携したことでアジアからの訪日客の取り込みではJapan Taxiがより優位な立場に立ったといえるだろう。

JapanTaxiといえば、11月14日にティアフォーと自動運転タクシーについて提携を発表したばかり。国内外での同社の攻勢が続く。

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配車サービスのGrabがソフトバンク・ビジョン・ファンドから1630億円超を調達

シンガポールを拠点とするGrab Holdings(グラブ・ホールディングス)は3月6日、ソフトバンク・ビジョン・ファンドから14.6億ドル(約1634億円)の調達を発表した。GrabのシリーズHの資金調達ラウンドの合計調達額は45億ドル(約5035億円)を超える。

同ラウンドのそのほかの出資企業は、トヨタ自動車、オッペンハイマーファンズ、現代自動車グループ、ブッキング・ホールディングス、マイクロソフト、平安保険、ヤマハ発動機など。トヨタは2018年6月にトヨタ本体から10億ドル(約1110億円)を出資したほか、2017年には次世代技術基金(Next Technology Fund)を通じて資金を投入している。

Grabは、東南アジアでUberやLyftのようなオンデマンドの配車サービスを運営している、2012年設立のスタートアップ。自家用車向けにGrabCar、オートバイ向けにGrabBikeの配車サービスを提供するほか、相乗りサービスのGrabHitch、配送サービスのGrabExpressも手がける。決済サービスとしてGrabPayも提供している。2018年3月には、Uberの東南アジア事業を買収するなど勢いが止まらない。

同社は調達した資金で、アクセスや利便性の向上を目指してサービスを拡充。東南アジアにおいて掲げた「スーパーアプリ」のビジョンを推進している。具体的には、金融サービスやフードデリバリー、配送サービス、コンテンツ、デジタルペイメントなどの事業領域の拡充を続けている。今回調達した資金については主に、Grabが2輪車市場の60%、4輪車市場の70%の市場シェアを占めるインドネシアに投下する予定だ。

さらにオープンな「GrabPlatform」を基盤として、オンデマンド・ビデオサービス、デジタルヘルスケア、保険サービス、オンライン予約サービスなども始める。それぞれ、ストリーミングプラットフォームを手がけるシンガポールのHOOQ、総合健康プラットフォームを提供する中国・平安好医生、保険のIT化に取り組む中国・衆安国際、おなじみ「ブッキングドットコム」のブッキング・ホールディングスと連携する。

東南アジアを席巻し、ケタ違いの資金調達を連発しているGrab。配車サービスに留まらず、ここ数年でフードデリバリーやモバイル決済にも進出するなど、猛スピードで事業を拡大している。東南アジアの次はどこに焦点を定めるのだろうか。

東南アジアのGrabがトヨタから10億ドルを調達、評価額は100億ドル

今年の初めにUberの東南アジアビジネスを買収した配車サービスのGrabが、新規の資金調達を行うことを発表した。調達は自らも10億ドルを出資するトヨタによって主導される。Grabに近い関係者がTechCrunchに語ったところによれば、この案件におけるGrabの評価額は100億ドルを超えているということだ。

資金提供と引き換えに、トヨタは取締役会に席を得て、幹部をGrabのチームに送り込む機会が与えられる。Grabは新しい投資家と協力して「東南アジアの巨大都市における交通混雑を緩和するための、より効率的な輸送網を作り」、そのドライバーたちの収入を増やすことを目指すと語っている。特にそのために、ユーザーベースの保険、新しいタイプのファイナンスパッケージ、予測的な自動車メンテナンスなどの分野に取り組むトヨタモビリティサービスプラットフォーム(MSPF)との緊密な連携が予定されている。

「Grabと協力しながら、私たちは東南アジアの顧客にとって、より魅力的で安全で安心できるサービスを生み出して行きます」と語るのはトヨタ専務役員である友山茂樹である。

トヨタは昨年、次世代技術基金(Next Technology Fund)を通じて資金をGrabに投入したが、今回は親会社から直接資金が提供される。現代(Hyundai)自動車もまたGrabを後押ししている

今回の新ラウンドは、ソフトバンクと中国のDidiが共同で主導した25億の投資ラウンドに続くものである。長期投資を行う両社は、昨年まず20億ドルの投資を行った。そのラウンドは2018年の初めに静かに終了したことをGrabは認めたが、結局誰が追加資金を提供したのかについては明らかにしていない。

同社の評価額は60億ドルであったが、Uberの取引以降、トヨタの投資を得て、さらに40億ドルが積み増しされたことは驚くべきことではない。

Grabによれば、現在シンガポール、インドネシア、ベトナム、タイなどアジア8カ国でアプリが1億回以上ダウンロードされているということだ。同社は、その年間予測収益額が10億ドルを突破したと公表したが、損益の数字に関しては回答を拒んだ。

地域の事業を買い取ることによって、Uberを排除はしたものの(ただし、その買収は当初の計画ほどは円滑には進んでいない)、その動きは新規参入各地域に招くこととなった、特にインドネシアではGo-Jekが主要なライバルとして登場している。現在約45億ドルと評価されているGo-Jekは、最近、4つの新しい市場に拡大する計画を発表し15億ドルに及ぶ多額の調達を行った。

こうした競争とは別に、シンガポールに本拠を置くGrabは、最近ポイントツーポイントのタクシーサービスやプライベートな配車サービス以外のサービスにも拡大を進めている、たとえばモバイルペイメント、フードデリバリー、そして(ドックレスの)レンタル自転車などだ。今月初めには、Grab Venturesを正式に発表した。これは投資とメンタリングによって、エコシステムの構築を支援することに焦点を絞った部門だ。

Grab VenturesはVC専任組織ではないが、この先の2年間で8から10件の投資を行うことを計画している。またそれは「成長段階」のスタートアップに対してのアクセラレータープログラムも提供する予定だ、ただしそこには現金による株式投資は含まれていない。当部門はまた、新しいビジネスアイデアのインキュベーションにも注力する。これには、様々な企業のオンデマンドバイクを集約し最近開始されたGrab Cycleも含まれている。

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(翻訳:sako)

東南アジアでUber事業を買収したGrab、フードデリバリーにも進出――インドネシアのGo-Jekは強力なライバル

さる3月下旬にUberの東南アジア事業を買収したタクシー配車サービスのGrabがフードデリバリー事業にも乗り出した。今日(米国時間5/28)、GrabFoodがスタートした。

このサービスはここしばらくタイなど数カ国でベータ版としてテストされていたが、いよいよGrabの本社があるシンガポールで正式にスタートした。また近くGrabの主要マーケットである東南アジア6カ国で営業を開始する。

Grabが東南アジアでUberの事業を買収した中にはUberEatsも含まれていた。UberEatsの運営を停止する前にマーチャントとユーザーベースはそのままGrabFoodに引き継がれる。

GrabFoodはシンガポールではスタンドアローンのアプリとなるが、オンデマンドでオートバイ・タクシーを提供している諸国ではGrabの配車サービスと一体で提供される。新サービスは既存のDeliveroo、FoodPanda、Go-JekのGoFoodその他がライバルとなる。

GrabFoodはGrabのポイント・システムなどのロイヤルティプログラム、GrabRewardsの一部となる。利用者は代金をキャッシュ、クレジットカード、GrabPayで支払うことができる。配達時間の指定ができること、利用最低額が設けられていないことが大きな特長だ。

前述のようにGrabは3月にUberの東南アジア事業を買収したことを発表しているが、現実の事業移行は難航した。 先月TechCrunchが報じたように、各国の規制、UberからGrabに移管されることになった従業員の不満、Grabが市場を独占することへのユーザーの懸念などがGrabにとっては「成長の痛み」となっている。

とはいえ、Grabは声明で「フードデリバリーへの参入は消費者の日々を生活をインターネットによって結び付けられたエコシステムによってさらに快適なものにする」という戦略において重要な部分を占める」と述べた。

最大のライバルだったUberを排除したことはこの目標を現実的なものにしたかもしれないが、依然として Grabは地域のライバル多数と競争する必要がある。たとえばインドネシアでは市場のリーダーはGoogle、Tencentが支援するGo-Jekだ。同社はベトナム、タイ、シンガポール、フィリピンの市場に近々参入することを確認している。Go-Jekはこの事業拡張に5億ドルを用意している。同社は他国への展開にあたって現地のパートナーを活用するモデルを採用するものとみられ、パートナーがそれぞの国情に合わせてブランドを含めた事業内容を決定していくという。

Grabも手を拱いてはおらず、 Wall Street Journalによれば、100億ドルの会社評価額で新たに10億ドルの資金を調達する。これは昨年7月に日本のSoftBankと中国の滴滴出行から20億ドルの資金を得たときの評価額60億ドルと比べて大幅なアップだ。

一方、Go-Jekも最近Tencent、JD.com、Google、Allianz、Meituan、シンガポールのファンド、GICやTemasekを含む多数の投資家から15億ドルを調達している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Uber、東南アジアのビジネスをライバルに売却――Grabの27.5%を得たのはwin-winの取引

スポーツの世界では「強いチームは調子が悪くても勝つ」と言われる。Uberがそれに当たるかもしれない。

Uberが東南アジアのライドシェア事業をGrabに売却することは大きな反響を引き起こしている。しかしこれをGrabが勝ってUberが負けたと捉えるならものごとを単純化し過ぎる。以下この点について背景を交え検討してみよう。

普通に考えればUberの東南アジア市場からの撤退はGrabの勝利だ。しかし神は細部に宿ると言われる。この取引は詳しく見ていけば双方にとって利益をもたらすwin-winの関係だとわかる。勝敗というより新たな提携関係の樹立という側面が重要だ。

まず事実関係をみていこう。

Uberは最近60億ドルと評価されたGrabの27.5%を得た。この所有権は単純計算で16.5億ドルの価値がある。過去5年間にUberが東南アジア市場に投じた資金は7億ドル程度だったことを考えれば、まずこれだけで十分なリターンを得たことがわかる。

一方、Grabは最大のライバルの事業を閉鎖させることに成功した。急成長中のフードデリバリーサービスのUber Eatsも含め、Uberのドライバー、顧客のすべてを手にすることになる。

数年前にスタートしたGrabは、当初は免許のあるタクシーに限った配車サービスで、しかも顧客は料金をキャッシュで支払う必要があった。Grabがライドシェア・ビジネスに転じたのは3年前に過ぎない。Uberが進出したことによって市場の性格は一変した。今度はその市場をGrabがほぼ独占できることになった。この点、Grabにとって画期的な取引だったことは間違いない。

資金、戦略ともGrabが優勢

スタートは比較的ささやかなだった(マレーシアで創立され、後にシンガポールに本拠を移した)にもかかわらず、 Grabはこの2年で長足の進歩を遂げた。現在、タクシー配車、自動車共有、自転車共有、バイクタクシーなど10種類の交通サービスを8カ国で展開している。Grabのローカライゼーションの取り組みはきわめて印象的であり、成長の重要な要素となってる。

ライドシェア企業にとってフードデリバリーへの進出はいわば定石だが、Grabは GrabPayで金融サービス部門にも進出を果たしている。これはオフラインでの商品販売やサービス料金などの支払いを可能にするサービスで、Grabはさらに少額金融や保険といった新たな分野も手がけている。

Grabの目標は単に新しい交通サービスを提供するにとどまらない。交通サービス以外の新しい分野はユーザーに利便性を提供するだけなくGrabにとっても利益率が高いという。

ただし―ここが重要だが―注意すべき点があった。つまり新規事業が現実に利益に反映されるには時間がかかるため、Uberとの競争には役立っていなかった。

ビジネス上の競争は結局のところ資金という要素に行き着くことが多い。

簡単に言えば、Grabは投資家にひんぱんに新たな投資を要請する必要があった。過去2年間、資金調達はGrabに有利に展開してきた。2016年には7億5000万ドル、 2017年には25億ドルを調達することに成功し、60億ドルの評価額に対して総額40億ドルの資金を得ている。

この間、Uberが東南アジア市場に投じた資金は7億ドルだったことと比較すれば、Grabが資金という重要な側面で優位に立っていたことが見てとれる。Uberが世界の市場に投資した資金の総額は印象的だが、東南アジアに関してはUberは投資額に枠をはめていたようだ。

またGrabへの投資には戦略的な意味が見てとれる。

SoftBank と中国版UberのDidi〔滴滴〕は直近の20億ドルのラウンドをリードしている。またトヨタ、Hyundai、Tiger Global、Coatue Management、またインドネシアの有力企業Emtek、Lippoも年来Grabを支援してきた。

こうした広汎なネットワークの構築に成功したことがGrabに大きな利益をもたらしているが、その一つは優秀な人材の獲得だ。特筆すべきなのは1年半前に辣腕のディールメーカーとして名高いMing Maaをプレジデントとして迎え入れたことだろう。Maaはゴールドマン・サックス出身でSoftBankの投資部門にも在籍していた。

Uberは国際化に当って、現地支社にローカライゼーションの主導権を与えているとたびたび主張してきたが、東南アジアにおける現地化にはかなりの混乱が見られた。Uberは早くから東南アジアに参入したにもかかわらず、事業のトップを任命したのは4年後の昨年8月だった。このことはUberが東南アジア戦略の確立にあたってそうとうに出遅れたことをよく象徴している。

Win-winの取引

しかしUberは中国からの撤退でもロシアからの撤退でも有利な取引をまとめている。今回もその例に漏れない。

Grabは未上場企業なので正確な株主情報は得られないが、Uberは今回の取引で最大の株主の一人となったことは間違いない。 東南アジアはライドシェア市場としてもっとも有望と考えらえれているので、この市場で最大の企業の大株主となるのはUberにとってもその投資家にとっても理想的な展開だ。

GrabにとってもUberにとって東南アジア市場は赤字だが、売上は過去2年で倍増しており、Googleも加わっている最近のレポートによれば、2017年には50億ドルの大台に乗ったという。Uberは投資を続けて事業を継続することも十分可能だったはずだが、むしろGrabという代理を通して東南アジア市場におけるプレゼンスを維持することにした。前述したとおり、Uberが保有することになるGrabの株式は直近のラウンドの評価額をベースにすれば16億ドル以上の価値がある。しかも今後利益が出るようになればGrabの価値はさらに大きくアップする見込みだ。

今回の取引にきわめて近い情報源によれば、Uberの500人前後の社員とUber Eatsを含む3カ国でのライドシェア事業を引き取るにあたってGrabはキャッシュでUberに1億ドル弱を支払うという。

Uberは赤字を出す事業を止め、キャッシュを得るだけでなく東南アジアのGrab、中国のDidiに大株主として参加する。UberのCEO、ダラ・コスロウシャヒはGrabの取締役会に加わるという。これは単なる金銭的価値を超えてUberがGrabに強い影響力をもつことを保証するものだ。

東南アジアにおけるライドシェア事業の焦点はGrab対インドネシアのGo-Jekの対決に移る。同社はGoogleやTencentといった有力企業が支援する50億ドルのスタートアップだ。Go-Jekはインドネシアを超えて事業を拡大する野心をがあり、事業分野はまさにGrabとバッティングすることになる。

Go-Jekに近い筋がTechCrunchに語ったところでは同社は今月中にもフィリピンで事業を開始するかもしれないという。 Go-Jekは慎重に戦略を立てることで知られているが、Uberが退場した今、同社はいよいよ正面からGrabとの対決に臨むことになるだろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Uberの東南アジアのライバルGrabがモバイルペイメントプラットフォームを開発中

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ライドシェアリングサービスを運営する企業が、車での移動という既存のサービスと全く異なる製品やサービスを提供できるということはめったにない。しかし、東南アジアでUberとの競争を繰り広げているGrabが、まさにそれを行おうとしている。

シンガポールを拠点とするGrabは、本日(米国時間7月22日)、同社のペイメントシステムを利用して、ユーザーがGrabのサービス以外の支払も行えるようにしていくと発表した。「GrabPay」はGrabのキャッシュレスデジタルウォレットサービスで、年初にはじめて発表されて以降Grabアプリ内に設置されている。

「Grabは、ペイメントプラットフォームをGrabPay内のモバイルウォレットオプションとして、Grabアプリ上に統合していきます。これにより、モバイルユーザーはGrabアプリを使って、日々の交通手段だけでなく、その他の生活サービスの支払も行えるようになります」と同社は説明した。

Grabは、はじめに2億5000万人の人口を誇る東南アジア最大の国インドネシアをターゲットとし、今年中に「ペイメントプラットフォーム」をインドネシアのユーザーに対して提供しようとしている。このプロジェクトでGrabは、インドネシアの10億ドル規模の小売コングロマリットLippoとパートナーシップを結んでいる。Lippoは、Grabの投資家でもあり、近年eコマーステック投資の分野へ進出している。GrabにとってLippoは初めての小売パートナーであり、Lippoのビジネス(デパート、映画館、オンラインショップなど)の顧客に対してGrabアプリを通じての支払サービスを提供していく。そのうち、他の小売企業もGrabのプラットフォームに加わっていくかもしれない。

ライドシェアリングからペイメントサービスというのは不思議な拡大路線のように感じられるが、市場全体を支配するひとつのペイメントシステムが存在しない新興市場においては、とてもロジカルな動きだといえる。ペイメントサービスを提供することで、今後さらにサービスの利用頻度が増えることが予想される既存顧客との結びつきを強めるだけではなく、もっと多くの人にサービスの魅力を伝えることでGrabのユーザーベースを拡大することにもつながる可能性があるのだ。東南アジアでは、「クラウド」という言葉には効き目がある。というのも、オンラインペイメント業界は、モバイルオペレータや銀行、Lineのようなメッセージアプリを運営する企業などがそれぞれのサービスを市場に売り込んでおり、細分化がかなり進んでいるのだ。Lippoとの協業は、間違いなくGrabにとって大きな後押しとなるが、決してそれで勝負が決まってしまうわけではない。

「東南アジアでのペイメントプラットフォーム開発の可能性は無限大です」とGrab CEOのAnthony Tanは、声明の中で語った。「東南アジアの人の大半が携帯電話を持っていながら、銀行口座を保有していません。私たちは、彼らにお金の管理ができるようなキャッシュレスソリューションを提供する必要があると考えており、モバイルウォレットはその一歩となります」

実は同様の動きは既にアジアで起きていた。Uberのインドのライバルであり、Grabと協力関係にあるOlaは、昨年11月にOlaアプリ内のペイメントシステムを、スタンドアローンのアプリとして展開していた。Grabは、少なくとも当面の間、ペイメントシステムをコアとなるGrabアプリ内にとどめておく意向だが、間違いなく同社は「アンチUber同盟」の仲間であるOlaにコンタクトをとり、ペイメントプラットフォームに関するヒントやアドバイスを求めていただろう。

Grabは、インドネシアがライドシェアリングの乗車数で最大の市場であると言っていたものの、同社のビジネスは今後インドネシアからさらに拡大していくと考えられ、今回のGrabPayのプラットフォーム構想が、どこかの時点でさらに5つの市場(シンガポール、タイ、ベトナム、フィリピン、マレーシア)への拡大を想定していることを示唆していた。

「私たちは、各地域のローカルパートナーと協力し、東南アジアの大部分でキャッシュレス決済を現実のものにしていきます」とGrabは声明の中で述べた。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter