【コラム】2021年、テック見本市は復活するのか?

この1年はカンファレンス業界にとって壊滅的な1年だった。これはTechCrunchでも取り組んできた問題であり、我々はすでにプログラムをバーチャル環境に移行している。地理的条件、出席率、その他のさまざまな要因に応じて、個々のケースごとに個別の解決策が必要であることは明らかである。

IFAは対面の要素について強気であることを実証している。ベルリンで開催されたテクノロジーショーは、ヨーロッパにおける数少ないイベントの1つとなった。IFAは2020年9月に、大幅に縮小されたもののリアルイベントを開催した。

「少し詩的な表現をすると、例年の夏の終わりには、ベルリンには特別な空気があり、朝外に出るとこの空気を感じることができます」とディレクターのJens Heithecker(イェンス・ハイテッカー)氏は2020年のイベントについて筆者に語った。同イベントの出展企業は2300社から約170社に規模が縮小されている。

新型コロナウイルスとその変異株に対する懸念が長期化しているにもかかわらず、案の定、同組織は2021年大規模な復活を計画している。このショーの秋の復活を発表するプレスリリースは、まさにお祝いモードである。

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「新型コロナウイルスのパンデミックから世界が回復に向けて前進する中、IFAベルリンは2021年9月3日から7日にかけて、フルスケールのリアルイベントを開催します」と同社は記している。「あらゆる業界のブランド、メーカー、小売業者がベルリンで出展し、ネットワークを構築し、ともにイノベーションを推進することに大きな関心を寄せています」。

同組織は、2020年のイベントから引き続き行われる安全衛生対策を強調し、まだ規模について語る準備は十分に整っていないものの、カンファレンスの新しい内容や方向性をいくつか紹介している。

同社は声明で次のように述べている。「これまで同様、訪問者や出展者の安全を守ることが最優先事項です。ご来場のみなさまの健康を確保するために入念な感染予防対策を講じますので、IFAベルリン2021が出展企業数や来場者数で過去最高記録を更新することは難しいかもしれませんが、業界を再びリードするべく、IFAは本格的な復活を目指します」。

一方スペインでは大手企業数社が「バーチャル」でのみショーに参加する意向を示しているため、GSMAは現在も方向性を検討している。

主催者はTechCrunchに以下の声明を提供した。

MWCバルセロナ2021では、すべての企業の参加は難しい状況ですが、Verizon※、Orange、Kasperksyなどの出展企業に参加していただくことをうれしく思います。誰もが独自のMWC体験を楽しめるように、業界をリードするバーチャルイベントプラットフォームを開発しました。MWCバルセロナに集う方々全員が最適なかたちで参加できるよう、リアルとバーチャルのオプションが用意されています。一部の出展企業の決定を尊重し、それぞれの企業と協働しながらバーチャルプラットフォームへの参加を推進しています。

(※情報開示:Verizonは本誌TechCrunchを所有)

Google、IBM、Nokia、Sony、Oracle、Ericssonはすでにリアル参加しないことを表明している。その他の大手企業はまだ未定のようだ。すべては、最終的に中止が決まった2020年のイベントを思い起こさせる。

こうした大規模なイベントの必要性は、パンデミックが発生する前から疑問視されていたが、バーチャルイベントへの移行にともなって真に浮き彫りになった。実際のところ、ハードウェア関連のリアルイベントには依然として価値があるが、多くはバーチャル環境に適応してきている。先日開催されたCESで学ぶところがあったとしても、このシステムにはまだ解決すべき問題がたくさんある。特にコンテンツの優先順位づけに関連する問題として、すべてが同じファネルを通して効果的に配信されていることが挙げられる。

さまざまな要因が、こういったイベントへの参加意欲を左右する。最も基本的なレベルでは、個人が安心できるか否かだろう(過去のイベントの混雑した写真を見るたびに本能的な反応を示すのは筆者だけではないだろう)。多くの人にとって、大規模な室内カンファレンスにいきなり参加することは、システムに対するストレスのようなものを多少なりとも感じるものではないだろうか。ワクチン接種や特定の地域におけるパンデミックへの対策に関連する要因も存在している(いずれも数カ月のうちに大きく変動する可能性がある)。

米国時間4月15日、ドイツの連邦保健大臣が緊急警報を発し、規制を強化するよう各州に求めた。「2020年の秋以降、迅速な行動の必要性が顕著になっている」とJens Spahn(イェンス・シュパーン)保健大臣はメディアを通じて警鐘を鳴らした。

この他にも、参加を検討している人の居住地や職場が出張を承認するかどうかなど、さまざまな要素がある。多くの企業は不要不急の出張を制限しているが、仕事が何かによって「不要不急」の定義は異なってくるかもしれない。しかし、その間にどれだけの変化が起こり得るかを考えると、多くの人にとって最も健全な戦略は、リモートで物事に取り組むことだ。

4月第3週の初め、GSMAはこれまでの参加者に向けて「MWCバルセロナ2021が開催される理由について」というタイトルの電子メールを配信した。このメッセージは、バーチャル出展を選択する出展者に対して直接話しかけているように受けとれる。

「これを読まれる時期によって異なりますが、バルセロナで開催されるMWC21の開幕まで残り約12週間となりました」とCEOのJohn Hoffman(ジョン・ホフマン)氏は記している。「2020年は混乱をもたらしたというだけでは不十分な表現であり、新型コロナウイルスの影響を受けたすべての方々に心よりお見舞い申し上げます。私は将来に希望を持っており、またMWC21で私たちのエコシステムを招集できるということをとても楽しみにしています。誰もがリアル参加できるわけではないことを認識しており、MWCバーチャルプログラムでショーのコンテンツをお届けすることで物理的なイベントを補強しますので、その点は問題ありません」。

フラッグシップショーを1年間中断していたら、壊滅的だったかもしれない。こうした主催者、そして観光費に頼る地方自治体の多くにとって、2年間という期間は考えられないだろう。新型コロナウイルスのパンデミックが発生した年のMWCのバーチャル戦略は、当然のことながら未熟なものだった。

しかし1年以上が経過した今、GSMAをはじめとする各組織はより強固な戦略を確立しているはずだ。実際のところ、バーチャルへの移行は1回や2回限りのものではない。パンデミックの影響を強く受けている多くの企業や人々にとって、これは未来の姿を象徴しているのだ。

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(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)