AI契約書レビューのAI-CON Proに秘密保持契約の校正・評価機能が加わる、迅速なNDA締結を実現

GVA TECHは6月8日、AIを利用した契約書校正サービスの「AI-CON Pro」に秘密保持契約書(NDA)の校正機能「AI-CON Pro for SalesNDA」を追加したことを明らかにした。これにより、法務部や法務担当者に依頼しなくても営業部で秘密保持契約書を校正(レビュー)可能になる。

AI-CON Proは、企業が自社のノウハウとして持っている契約書ひな型や法務知識を登録することで、自社の法務基準に則して契約書を校正できる業務支援サービス。属人的になりやすい契約書の校正業務をAI-CON Proが共有・平準化し、法務部や法務担当者以外でも契約書を校正・評価できるようになる。

秘密保持契約書とは、他社と業務提携する際に機密情報の取り扱いについて定めた契約書。例えば、新製品や新サービスの販売を控えた企業と報道各社が契約を結んで、情報解禁日などについて同意する際に使われる。国内では口約束のケースもいまだに多いが、外資系企業や国内大手企業では秘密保持契約を締結したうえで説明会や内覧会を実施している。

通常、企業間でこのような契約書を締結する場合、法務部、もしくは各部の法務担当者が内容をチェックするケースが多いが、大企業でもない限り法務部や法務担当者はマンパワー不足のことが多い。

一方で依頼する側は、法務部などにチェックを依頼すると時間がかかるという問題もある。、秘密保持契約書は、作成した企業によって言い回しなどの差異はあるものの、内容はほとんど変わらないので「なぜ遅い?」とストレスを感じこともしばしば。責任の所在や契約を破った際、破られた際のリスクを社内で統一しておけば、わざわざ法務部が内容を逐一確認する必要がないケースがほとんどだろう。

AI-CON Pro for SalesNDAはこの問題をAIで解決するサービス。法務部でルールを定めた秘密保持契約書の評価・校正方針をAI-CON Proを通じて社内展開することで、法務部や法務担当者を介さずに契約書の校正や評価などの作業を完結できるようになる。

これにより法務部の負担軽減や契約処理のスピードアップが可能になるほか、評価基準はクラウド上で管理するため常に最新の基準を共有できるというメリットもある。

実際にAI-CON Pro for SalesNDAを先行導入した、管理部門や士業に特化した転職サービスを運営するMS-Japanは「法務担当がノウハウとして持っている、修正依頼の多い条文での返答例や注意すべき内容をAI-CON Proに集約することで、営業担当自身がNDAや人材紹介契約書などの定型的な契約書のレビューを完結できるようになれば、契約締結までのスピードが早くなり、事業が伸びていくことを期待している」とコメントしている。

AI契約書レビューのGVA TECHが契約書管理サービスのHubbleと提携、オンラインでの契約締結までを一気通貫で

企業向けのAI契約書レビュー支援サービス「AI-CON Pro」(アイコン・プロ)を開発・提供するGVA TECH(ジーヴァテック)は5月18日、契約書の管理・共有サービスを開発・提供するHubble(ハブル)との提携を発表した。両社の提携により、契約書の内容確認(レビュー)はもちろん、交渉内容や契約書のバージョン管理、電子サインによる締結までの契約書審査業務のフローをオンラインでワンストップ提供可能になる。なお、電子サインには別途契約が必要だが、弁護士ットコムが提供しているCLOUDSIGN、もしくは米国のDocuSign(ドキュサイン)が提供しているDocuSignを利用可能だ。

契約書のレビューから契約の締結までの流れは以下のとおり。

  1. 相手企業から自社の営業担当にひな型がメールで届く
  2. 自社の営業担当がHubbleを使用して法務部に契約書のレビュー依頼をする
  3. 自社の法務部はAI-CON Proを使用して「自社基準」で契約書レビューをする
  4. 自社の法務部はHubbleを使用して営業担当に返答する
  5. 自社の営業担当はメールで相手企業に返答して交渉(2〜5を繰り返す)
  6. 契約合意が取れた内容を法務部から電子サインで締結する

なお両社は今回の提携で生まれたサービスついて6月4日13時からオンラインセミナーを開催予定だ。

オンライン法人登記支援サービス「AI-CON登記」が役員変更の登記に対応

リーガルテックのスタートアップ、GVA TECHは12月2日、オンライン法人登記支援サービス「AI-CON登記」において、役員変更登記への対応を開始した。

GVA TECHいわく、役員変更は、法人の登記の中では最も件数の多い登記種類。同社は「法務局に提出される登記書類のうち、50%近く(2017年度は48.3%)が役員変更の登記だ」と説明し、「役員変更の登記に対応しているサービスはAI-CON登記のみ」と加えた。

AI-CON 登記は必要書類をアップロードし、登記上の変更したい最低限の項目を入力することで、法人登記の申請書類を自動作成するサービスだ。このサービスにより自動で作成された書類に押印し、収入印紙を貼り、法務局に送付するだけで登記申請が完了する。

司法書士などの専門家に依頼すると、内容や登記の種類によっては数万円程度の費用が必要となってしまうが、AI-CON登記を使えば1万円以内で登記書類の作成が可能だ。そして最短15分で作成可能なのも同サービスの強みとなっている。

1月のリリースの際には、本店移転と増資の2種類でサービスを開始したが、今では作成できる会社の変更登記書類が7種類となった。その7種類は以下のとおりだ。

  • 株式会社の役員変更(新任・辞任)登記

  • 株式会社の本店移転登記

  • 株式会社の募集株式発行(増資)登記

  • 代表取締役の住所変更登記

  • 株式会社の商号変更登記

  • 株式会社の目的変更登記

  • 株式会社の株式分割登記

今回の対応では役員変更のうち「取締役および代表取締役の新任」または「取締役および代表取締役の辞任」のみが対象となっているが、同社は「ニーズの高い登記を中心に、引き続き対応登記のラインナップを増やしていく」と説明した上で、新任と辞任の組み合わせや重任などについても、今後対応を予定していることを明かした。

GVA TECHはAI-CON登記の他にも、AI契約書レビュー「AI-CON」を提供しており、11月15日に開催されたTechCrunch Japan運営のイベントTechCrunch Tokyo 2019では、エンタープライズ向けのAI契約法務サービス「AI-CON Pro」β版のリリースを発表した。2017年1月設立の同社で代表取締役を務めるのは、GVA法律事務所でスタートアップ企業のクライアントに特化し、1000社以上を支援してきた山本俊氏。同社はAI-CON Proの提供を通じて、スタートアップだけでなく、幅広い規模の企業をサポートし、「法務格差のない世の中」の実現を目指している。

GVA TECHがエンタープライズ向け“自社の法務基準に合った”契約書レビュー「AI-CON Pro」β版をリリース

AI契約書レビュー「AI-CON」や法人登記支援サービスの「AI-CON 登記」を提供するGVA TECHは11月15日、TechCrunch Japanが運営するイベントTechCrunch Tokyo 2019にてエンタープライズ向け“⾃社専⽤”のAI契約法務サービス「AI-CON Pro」β版のリリースを発表した。同社は9月2日、同サービスのα版を発表していた。

従来のAI-CONはスタートアップや中小企業向け、そしてGVA TECHはAI-CON Proはエンタープライズ向け。今後のGVA TECHは幅広い規模の企業の「法務格差を解消すること」を目指す。

GVA TECHはTechCrunch Tokyo 2018にて開催されたピッチバトル、スタートアップバトルのファイナリストだ。同社の代表取締役、山本俊氏が当時のピッチで紹介したのはAI-CON。そして山本氏は今年、AI-CON Proと共に再び壇上に登り「プロダクトアップデート」を発表した。

山本氏は「AI-CONを提供する中で、様々な企業の法務の課題が見えてきた。それらを解決ために作った」と、AI-CON Pro開発に至った経緯を説明。

山本氏いわく、AI-CON Proの最大の特徴は“カスタマイズ性”。大手企業からの問い合わせでは「自社の基準を反映させたいという要望が非常に多かった」ため、AI-CON Proは「企業が使用している契約書のひな型や法務基準」を利用し、それぞれの環境に則した契約書レビュー支援を行うサービスとなっている。

機能としては、自社のひな型と比較し不足している項目をAIが見つける「不足項目」機能、事前にセットした削除するべき項目をAIが見つけアラートを出す「削除項目」機能、ボタンをクリックすると事前にセットしたひな型と同様の項目が書いてある条文を見つけカーソルを当てることができる「フォーカス」機能、法務担当者の法務知識をセットアップし法務部員間で知識を共有することができる「解説」機能を備えている。

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    「不足項目」機能
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    「削除項目」機能
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    「フォーカス」機能
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    「解説」機能

AI-CON Proは現在、ウイングアーク1stがβ版を本導入しており、セガサミーホールディングス、東急不動産、そしてDBJキャピタルがβ版をトライアル導入している。

ウイングアーク1stが「企業の法務業務、とりわけ契約関連業務におけるノウハウ共有、属人化および効率化は喫緊の課題」、東急不動産が「働き方改革の取り組みが進む昨今、専門的なスキルが必要とされる法務業務の属人化は大きな課題の一つ」と言及するなど、寄せられたコメントには“属人化”というキーワードが目立つ。

山本氏いわく、今後AI-CON Proは英文や中文へ対応し、事業部が契約書のレビューをできるようになっていく。また、デロイトトーマツ ファイナンシャルアドバイザリーも同サービスをβ版トライアル導入する予定だ。

AI契約書レビュー「AI-CON」に新機能、NDAを500円で“即時チェック”できるように

AI契約書レビュー「AI-CON」や法人登記支援サービスの「AI-CON 登記」などを提供するGVA TECH。そんな同社は10月21日、AI-CONをリニューアルし、新機能である「即時チェック」の提供を開始したことを発表した。

2017年1月設立のリーガルテック領域のスタートアップであるGVA TECHの当初のミッションは法務担当者いのいない中小企業やスタートアップにサービスを提供し、法務格差を解消することだった。だが、大手企業からのニーズに気付き、9月には「AI-CON Pro」のα版をリリース。年内には正式な提供を開始する予定だ。

そして、本日発表されたAI-CONの新機能である即時チェックのターゲットは、フリーランサーや企業に所属しながら副業する人。これまで、そのような人たちもAI-CONを利用していたが、「1通あたり数千円〜1万円程度かかる今までのAI-CONでは、フリーランスや副業をされる方にとっては高額だった」(GVA TECH)。

即時チェックを使えば、WordやPDFといった形式の契約書をアップロードするだけで「契約書内のリスク判定」「トラブル事例」「修正例」などのチェック結果を数秒程度でフィードバックしてくれる。

GVA TECHいわく、同社がこれまでに提供していた契約書チェック機能と比較すると、即時チェックでは特にトラブルに繋がりやすい項目を重点にフィードバックする。そうすることで「今まで法務ノウハウやコストが原因で契約書チェックができていなかった中小企業や創業間もないスタートアップ企業、フリーランサー、副業される方の契約書関連業務をサポートする」(GVA TECH)。

即時チェックの提供開始に合わせ、GVA TECHでは「秘密保持契約書(NDA)」を対象に、ワンコイン(税別500円)という低価格でのAIによる契約書チェックを実現した。ワンコインで即時チェック、リスク判定、そして修正例までを提供する。今後はNDAだけでなく、業務委託契約書など他の契約書類型にも対応していく予定だ。

GVA TECH代表取締役の山本俊氏はAI-CONのリニューアル、そして即時チェックの提供開始について後述のように説明した。

「(同社の)メインターゲットは今まで通り、スタートアップや中小企業なのは変わりありませんが、昨今の働き方改革により、エンジニアやデザイナーといったフリーランスに向いている職種だけでなく、企業に勤めながらも副業をする方も増え、個別に相談をもらう機会がでてきました。そのような方にも使っていただきやすいように都度課金かつ500円の安価なサービスにすることにしました。今後も創業の想いである『法務格差を解消する』ために、より多くの方に使っていただきたいです」(山本氏)。

GVA TECHの次の一手は「エンタープライズ向け」、大手の“法務格差解消”目指し「AI-CON Pro」α版リリース

AI契約書レビュー「AI-CON」や法人登記支援サービスの「AI-CON 登記」を提供するGVA TECH。2017年1月設立のLegalTech(リーガルテック)スタートアップである同社の次の一手は「エンタープライズ向け」。GVA TECHは9月2日、エンタープライズ向け“⾃社専⽤”のAI契約法務サービス 「AI-CON Pro」のα版をリリースした。

開発の背景に関して、GVA TECH代表取締役の山本俊氏は「AI-CONはスタートアップ、中小企業向けに提供を想定していたものの、エンタープライズからの問い合わせも非常に多かった」と話す。GVA TECHの理念は「法務格差を解消すること」。今後はスタートアップや中小だけでなく、エンタープライズにおける「法律業務の民主化」もGVA TECHのミッションとなった。

「エンタープライズにおいても法務部と事業部間での法務格差はもちろんのこと、法務部内でも知識や経験の差があるため、法務格差が生じていることがわかった。そこで、大手企業の中でのノウハウや方針を生かしてエンタープライズ企業内での法務格差の解消を行うことにより、法務を企業の中に浸透させることができればと考えている」(山本氏)

山本氏いわく、大手企業からの問い合わせでは「自社の基準を反映させたいという要望が非常に多かった」という。そのため、従来のAI-CONでは「GVA TECHの設定による法務基準」でリスク判定をしていたが、AI-CON Proでは「自社の法務基準で契約書レビューがしたい」という大手企業からの要望に応えた。「顧客企業が使用している契約書の雛形や法務知識をGVA TECHのAIにセットアップすることで、導入企業の法務基準に則した契約書レビューを実現した」そうだ。

「スタートアップや中小企業と違い、内部にノウハウがあるエンタープライズ企業は内部に法務知見があるため、知見を集約して法務部間の法務格差を解消することを当初の目標とし、その後は経営や事業部に一部法務機能を移管することを目指している。また、法務部の時間も効率化や移管によって増加するため、アメリカのように経営や事業に密着した創造的な法務を生み出すことができるようにしたい」(山本氏)

GVA TECHいわく、AI-CON Proでは以下の付加価値を提供することが可能になるという。

  1. 法務担当者の業務効率化および契約書レビュー期間を短縮することができる
  2. 法務担当者の知識をAIにセットアップして自社の法務部門へ共有することで、契約書レビューの精度を標準化し、属人化を防止することができる
  3. 法務部門だけではなく、法務知識が浅い各部門も「AI-CON Pro」を使用することで、契約書をレビューする際の観点がわかる

GVA TECHは年内にはAI-CON Proの正式版をリリースする予定だ。山本氏はこれまでにリリースしてきたプロダクトに関し、次のようにコメントしている。「AI-CONについては多様な企業の利用が増えている。今後はよりスタートアップや中小企業のニーズにマッチするような機能や価格帯により特化していく予定。 AI-CON登記は評判が非常に良く、毎月利用が伸びている。本日も商号変更対応機能が追加されたが、今後も登記事項を随時増加していく予定だ」(山本氏)

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目の当たりにした法務格差、GVA TECH山本氏がリーガルテックで目指す「法律業務の民主化」

Founder Story #1
GVA TECH
代表取締役
山本 俊
Shun Yamamoto

TechCrunch Japanでは起業家の「原体験」に焦点を当てた、記事と動画のコンテンツからなる「Founder Story」シリーズを展開している。スタートアップ起業家はどのような社会課題を解決していくため、または世の中をどのように変えていくため、「起業」という選択肢を選んだのだろうか。普段のニュース記事とは異なるカタチで、起業家たちの物語を「図鑑」のように記録として残していきたいと思っている。今回の主人公はリーガルテック・スタートアップGVA TECHで代表取締役を務める山本俊氏だ。

山本俊氏
GVA TECH代表取締役・GVA法律事務所 代表弁護士)
  • 1983年 三重県生まれ
  • 2005年 岡山大学法学部卒業
  • 2008年 山梨学院大学法科大学院卒業。同年、司法試験に合格
  • 弁護士登録後、鳥飼総合法律事務所を経て、2012年にGVA法律事務所を設立(現在グループで日本法弁護士24名、顧問先250社以上)。
  • 創業時のマネーフォワードやアカツキ等の上場も含め顧問弁護士としてサポートしている。
  • 2017年1月GVA TECH株式会社を創業。AI契約サービス「AI-CON」、契約書自動作成支援「AI-CONドラフト」をはじめとしたリーガルテックを用いたプロダクト開発の指揮を執る。
  • 最近自宅に酸素カプセルを購入。良質な意思決定を効率的に行うためのコンディション作りに励む。
  • 趣味は中学生より続けている麻雀、競馬。
Interviewer:Daisuke Kikuchi
TechCrunch Japan 編集記者
東京生まれで米国カリフォルニア州サンディエゴ育ち。英字新聞を発行する新聞社で政治・社会を担当の記者として活動後、2018年よりTechCrunch Japanに加入。

法務面における「格差の解消」、GVA TECH誕生の秘話

『この契約条件では、明らかにこちらが不利じゃないか』

2011年頃、山本俊氏は企業法務を手がける弁護士として、主にスタートアップ企業の支援を行っていた。大企業との取引が始まり、契約書を取り交わす段階で、山本氏は数多くの「理不尽」を目の当たりにする。大企業側は「これが当たり前ですよ」という顔を見せながら、自社が技術や知的財産を吸い上げる方向へ運ぼうとすることもあった。


山本氏自分が弁護士として付いたことで、契約条件の交渉・修正ができたケースがたくさんあった。そのまま進んだら、スタートアップ企業がやがて行き詰まってしまうような事態を防ぐことができた。そんな役割を担うことで、企業の成長、起業家たちの夢の実現を支援できることに喜びを感じたんです。以来、法務面における『格差の解消』が私のテーマとなりました


山本氏が代表を務めるGVA TECHは、2017年に創業したリーガルテック企業だ。

リーガルテックとは法務面の課題を技術で解決する新分野。AI(人工知能)の進化に伴い、多様なサービスが登場している。

GVA TECHのサービスは主にベンチャー・中小企業が対象。企業同士の契約においては法務知識が必要となるが、ベンチャーでは自社内に専門人材を抱えることができず、専門家に依頼するコストもかけられない。そんなベンチャー・中小企業でも契約業務が円滑に行えるように、AI契約サービス「AI-CON」、契約書自動作成支援「AI-CONドラフト」などを開発・提供している。


山本氏『リーガルテック』というと、大手企業の法務部の業務フローを効率化したり、判例検索をスピードアップしたりと、範囲が広い。その中で私が目指すのは、法律業務をテクノロジーによって『民主化』することです。法務はこれまで、専門知識を持つ一部の人だけが扱えるものでした。けれど法務知識がない人が当たり前に活用できるようになってこそ、リーガルテックが生まれた意味があると思っています

弁護士から起業家へ、AI技術の進展に感じた「可能性」

山本氏が法律分野に目を向けたのは高校3年生の頃。当時は麻雀と競馬に夢中で、将来は「プロ雀士になるかJRA職員になるか」と想像しつつも、大学受験という現実に向き合い、「潰しが利きそう」という理由で法学部に進んだ。


山本氏勉強してみると、面白くて、興味が深まった。高校時代は数学の証明問題などが得意でしたが、それに通じるものがあって。ロジカルに物事を考える部分が性に合っていたんです


学びを深めるため、大学と併行して司法試験予備校に通おうと考えた。ラーメン屋での時給700円のアルバイトで100万円の学費を貯め、予備校入学後はひたすら勉強に打ち込んだ。

大学卒業後は法科大学院に進み、2008年、卒業と同時に司法試験に合格。弁護士として法律事務所に所属し、大手企業の法務を手がけるようになる。

そのかたわら、個人でスタートアップ企業からの依頼も請け負っていた。その案件が増えたことから、2012年に独立し、GVA法律事務所を設立。ベンチャー・スタートアップ企業のクライアントに特化し、1000社以上を支援してきた。


山本氏ビジネスを生み出すことにも興味があったんですよね。弁護士になって上京した頃から、いろいろなビジネスセミナーや交流会に通ううちに、ビジネスの世界に惹かれるようになって。その世界で勝負する人たちを手助けしたいと思ったんです」


とはいえ、自分はあくまでも法律家。ビジネス分野での起業の道は考えていなかった。

しかし2016年、社会に変化の波が訪れる。AIの進展に伴って、金融業界ではフィンテック、農業分野ではアグリテック、教育分野ではエドテックなど、さまざまな分野で「xxTech」が注目を集めるようになった。法律分野も例外ではない。これまでは課題を抱えながらも限界を感じていた法務業務の効率化を、一気に進められると考えた。


山本氏法務業務を効率化できれば、コストも下げられる。つまり、顧問弁護士を雇う余裕がないスタートアップ企業、ひいてはフリーランスや個人事業主まで、幅広い人が法務サービスを活用できるようになる。これは、5年前から課題として意識していた『法務格差』を解消するチャンスだ、と思いました


もともとITを活用したビジネスモデルに興味があり、トレンド情報の収集を続けていたという山本氏。2016年よりプログラミングやAIについて本格的に勉強を開始し、2017年1月、GVA TECHを創業した。

苦労したのは人材採用。何人かと面接したが、「この人なら」という確信が持てず、採用を見送ってきた。サービスの設計ができても実行するエンジニアを獲得できず、外注せざるを得ない状況が約半年続いた。

CTO本田勝寛氏との出会い、GVA TECHの「これから」

しかし創業から8ヵ月後、信頼できる知人からの紹介により、CTOを獲得する。ソーシャルゲーム・アドテク・シェアリングエコノミー領域で実績を持つ本田勝寛氏だ。GVA TECHのプロダクト開発の内製化を実現させた本田氏は、入社翌年、最も輝くCTOを選出する「CTO of the year 2018」のファイナリストとなった。


山本氏私とは逆のタイプです。私はプロダクトを増やそうと、つい突っ走ってしまいそうになるのですが、ほどよくブレーキをかけてくれる。エンジニアの立場から適切な判断をしてくれるんです。トップ2人がブレーキを外した状態で暴走したら、マズイですからね(笑)。冷静さを持ったパートナーを得られてよかったです


創業から2年。現在はエンジニア10名強、リーガルスタッフ10名ほか、デザイナーや管理部門スタッフなど、約30名体制となっている。

2018年には多くのピッチイベントに参加し、手応えを得た。2019年はこれまで開発したプロダクトをブラッシュアップすると同時に、セールス部隊も強化し、ユーザーへ届ける。そしてユーザーからのフィードバックを受け、さらに使いやすく改善していく。


山本氏まずは、法務面においての大企業・中小企業・スタートアップ企業の格差をなくし、どんな企業も手軽に法務サービスを活用できるようにします。そしていずれは、専門知識を持たない個人も、法律をうまく使いこなせる社会になればいい。それを実現できるよう、プロダクトを進化させていきたいと思います」

<取材を終えて>

山本氏の話すとおり、これまで法務は専門知識を持つ一部の人だけが扱えるものだった。AI-CONシリーズは法務格差を解消し、起業家がよりサービス開発に集中できるようにするため、開発された。GVA TECHは1月、法人登記に必要な書類を自動作成する「AI-CON 登記」を新たにリリースしたが、今後は各プロダクトのブラッシュアップに注力するそうだ。その後のAI-CONシリーズの更なる広がりに関しても期待したい。(Daisuke Kikuchi)

【動画】GVA TECH 代表取締役 山本俊氏に聞く20の質問

( 取材・構成:Daisuke Kikuchi / 執筆:青木典子 / 撮影:田中振一 / ディレクション・動画:平泉佑真 )

GVA TECHが法人登記に必要な書類を自動作成する「AI-CON 登記」をリリース

AI契約書レビュー「AI-CON レビュー」や契約書作成支援サービス「AI-CON ドラフト」などを開発・運営するLegalTech(リーガルテック)企業のGVA TECHは1月15日、新たにスタートアップ向け法人登記支援サービスの「AI-CON 登記」をリリースした。

AI-CON 登記は必要書類をアップロードし、最低限の必要事項を入力するだけで法人登記の申請書類を自動作成するサービスだ。

オンライン上に登記情報と株主名簿をアップロードすると、情報が自動的に入力され、あとは移転先の住所など最低限の不足情報を入力するだけで法人登記の際に必要な書類が完成する。なおアップロードのための登記情報はサービス上にて無料で取得することができる。

このサービスにより自動で作成された書類に押印し、法務局に送付するだけで登記手続きが完了する。

「どこの法務局に持っていけばわからない」場合でもAI-CON 登記が機械的に判別し、教えてくれるのもポイントだ。

なおAI-CON 登記は登記に通るための必要な手続きのほか、株主総会、取締役会の実施、議事録の作成など会社法の観点からも適切な手続きを含めたスケジュールを案内する。

GVA TECHによると司法書士に依頼すると通常数日を要するところ、AI-CON 登記を利用すれば最短で数十分から数時間で書類を作成することができる。

GVA TECH代表取締役の山本俊氏は登記申請は「一文字間違えただけで補正しなければならないような世界。少しのミスが大きな面倒を生む。その面倒がビジネスを阻害していた」とAI-CON 登記の開発に関して説明する。

同社いわく、会社の設立、商号や本店住所の変更、役員の変更など、ビジネスを行う上で登記の機会は数多く存在し、これら各種の登記手続きは事由が発生してから2週間以内に行う必要がある。

申請期限を過ぎた場合は裁判所より過料の制裁に処せられる可能性があるため、正確性と迅速性が求められるが、登記書類の作成・申請は複雑であるためビジネスのスピードを損なう原因となっていた。

AI-CON 登記の開発には所属司法書士数において城南5区(渋谷、目黒、世田谷、太田、品川)内で最大規模を誇る司法書士法人ライズアクロスが業務提携先として全面協力している。

ライズアクロスの代表社員、髙橋圭氏は「司法書士に頼むか自分でやるかという話だが、世の中の司法書士は基本的にITリテラシーが低い。適切なプレイヤーがいなかった」とGVA TECHとの業務提携について話す。

AI-CON 登記に関しては「司法書士に本店移転を頼むと5万円くらいする」ため、頼む人がいない場合には自社内でやろうとする傾向にあり、結果、一文字間違えただけで役所に出向く必要が出てくるケースもある、と説明した。

「(スタートアップが)そんなことに時間を使うのであれば、サービス開発に注力してほしいと願っている」(高橋氏)

AI-CON 登記が対応のサービスは登記情報の取得が無料、本店移転と募集株式の発行が5000円ととてもリーズナブルだ。なおAI-CON 登記上で作成した書類を法務局への郵送用封筒と共に届ける「お任せレターパック」というオプションも5000円。

届いた書類には押印箇所が付箋で明示してあるので、付箋に従った押印や簡単な作業、郵便局での印紙購入と送付のみで手続きが完了する。

なおライズアクロス所属の司法書士にメール、電話、Chatworkでの相談が可能で、これは無料となっている。

GVA TECHとライズアクロスは「今後も対象となる登記手続きを順次拡大していく予定」だという。開発中の登記支援サービスは商号変更、目的変更、株式分割、そして発行可能株式総数の変更だ。

2017年1月に設立されたGVA TECHはこれまでに人工知能による契約書レビューのAI-CON レビュー、ならびに契約書作成支援サービスのAI-CON ドラフトをリリースしてきた。2018年4月のリリース以降、事業規模を問わず2000社以上のユーザーに利用されている。

2018年にはTechCrunch Tokyo 2018のスタートアップバトルやInfinity Ventures SummitのLaunch Padなどのピッチバトルに参加してきたGVA TECHだが、リーガル面でスタートアップをサポートする同社が本年、さらに躍進することを期待したい。

TechCrunch Tokyo 2018スタートアップバトル、グループB出場企業を発表

11月15日、16日の2日間で開催されるスタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo 2018」。昨日、創業3年未満のスタートアップによるピッチバトル「スタートアップバトル」のグループAに出場する5社を発表したが、それに引き続きグループBの出場企業を発表する。

グループBに出場するのは、ムスカ、GVA TECH、NearMe、エアロネクスト、RESTARの5社だ。

ムスカ

ムスカの強みはずばり、旧ソビエトの時代から約45年の歳月をかけて選別交配を重ねたイエバエだ。通常は飼料と肥料の生成には数ヶ月の期間を要するが、ムスカのイエバエを活用すれば有機廃棄物を1週間で堆肥化することが可能だ。ムスカはこのテクノロジーにより、タンパク質の需要に供給が追いつかなくなる「タンパク質危機」の解決を目指す。こちらの過去記事も参考にしてほしい。

GVA TECH

GVA TECHは、AIによる契約書レビューツールの「AI-CON レビュー」や契約書作成支援サービス「AI-CON ドラフト」などを提供するリーガルテックスタートアップだ。契約書の条文ごとに、それが自分にとって有利なのか不利なのかを5段階のリスク度で自動判定する機能などが特徴だ。本格的な法律業務をテクノロジーで効率化し、ビジネスにおける「法務格差」の解消を目指すという。詳しい機能などは、こちらの過去記事も参考にしてほしい。

NearMe

NearMeは、“タクシーの相乗り”で日本の交通インフラの改善を目指すスタートアップ。タクシーという日本の既存資産を活用し、ライドシェアとは違うやり方で問題解決を目指す。同社はこれまでにニッセイ・キャピタルなどから5000万円を調達している。最終的には、相乗りだけではく、さまざまな分野で「瞬間マッチングプラットフォーム」を展開し地域活性化に貢献することを目指すという。過去記事はこちらだ。

エアロネクスト

エアロネクストは、UAV(無人航空機)やマルチコプターの機体フレームのあるべき姿を追求するドローンスタートアップ。機体の軸をずらさずに飛行させる重心制御技術「4D Gravity」を武器に、来たるドローン社会に求められる機体の開発を行う。2018年秋に開催されたB Dash Campピッチアリーナでは見事優勝を飾った。B Dash CampとTechCrunch Tokyoのスタートアップイベント2冠となるか、注目だ。

RESTAR

不動産事業者や金融機関向けに、投資用不動産の分析・評価ツール「REMETIS」を開発するのがRESTARだ。物件周辺の空室率や家賃状況など、これまでは複数の資料を参照する必要があったアナログな業務をテクノロジーで効率化しようとしている。三菱UFJフィナンシャルグループが主催する「MUFG DIGITALアクセラレータ」の第3期採択企業。

明日11月7日にはグループCの出場企業を発表する予定だ。チケット購入をうっかり忘れていたという人は、下のリンクから購入できるから安心してほしい。当日、スタートアップバトルの会場は緊張、興奮、感動、喜び、悲しみなどが複雑に入り混じった独特な雰囲気で包まれる。その雰囲気をぜひ体で感じてみてはいかがだろうか。

チケット購入はこちらから

20の質問に答えて契約書を自動生成、「AI-CON ドラフト」がβ版公開――1.8億円の調達も

AI契約書レビューサービス「AI-CON レビュー」など、リーガルテック領域で複数のプロダクトを展開するGVA TECH。同社は9月3日、DBJキャピタルと西武しんきんキャピタルを引受先とした第三者割当増資により、約1.8億円を調達したことを明らかにした。

合わせてAIを活用した“契約書の自動生成機能”を備える「AI-CON ドラフト」のβ版の提供を始めたことも発表している。

弁護士が作る“法務格差”を解消するためのプロダクト

4月にも紹介した通りGVA TECHは弁護士の山本俊氏が2017年1月に設立したスタートアップ。同社ではビジネスにおける法務格差の問題を解決するべく、テクノロジーを駆使した複数のプロダクトを開発する。

法務の専門部署がないような企業が契約を交わす場合、通常は時間とコストをかけて弁護士に確認を依頼するか、十分な確認をせずに契約を締結するかのどちらかが多い。特に初期のスタートアップにとっては少しでも余分なコストを削減したいところだけれど、専門家に確認せずに進めた結果「契約書に潜むリスクを見落とし、自社が不利な契約を締結してしまった」なんてこともありうる。

山本氏自身も弁護士として複数の企業をサポートする中で「一方にとって圧倒的に有利な契約内容」になっている契約書を目の当たりにしてきたという。

その解決策としてGVA TECHが4月にリリースしたのが、AIによって契約書のレビューを自動化するAI-CON レビューだ。同サービスでは契約書のファイルをアップロードすると、1営業日以内に条項のリスクを5段階で判定し、修正案も提案。目の前にある契約書が自分にとって有利なのか不利なのか、人間に変わってAIがチェックしてくれる(現在はAIで判定した結果を弁護士が目視でチェックしているという)。

契約書のレビューにAIを活用するプロダクトとしてはつい先日も「LegalForce」を紹介したけれど、細かい機能面やアウトプットの内容には違いがありそうだ。

条項のリスク判定画面

修正案のレコメンド画面

AI-CON レビューは現時点で業務委託契約や秘密保持契約、投資契約など10種類以上の契約書に対応。無料の登録者数は1000社を突破した。

山本氏によると今の所は法務リテラシーが高い層を中心に、大手企業からベンチャー・スタートアップまで幅広い企業で使われているそう。今後はレビューの精度を上げることで、法務に関する知見がないユーザーでもより使いやすいサービスにすることが目標だという。

「今のAI-CON レビューは統計情報を元に契約書の内容が有利か不利かを判断しているので、この情報を自社として呑むかどうかを別途判断する必要がある。Google翻訳で英語を訳すのに近いような状態で、それ(機械的に翻訳されたもの)をベースに修正すれば業務の効率化にも繋がるけれど、出てきたものを完全に信じて使うにはまだ精度の改善が必要だ」(山本氏)

今後は「事業性も理解したレビュー」についても実現したいそう。これは利用者の事業内容や会社のフェーズも踏まえて条文の内容チェックや修正案の提案をするもので、「ここまでいくと弁護士のヒアリングにも近く、かなり使えるものになるのではないか」と山本氏は話す。

質問に回答すれば自社に合った契約書が自動生成

そしてGVA TECHがレビュー業務と並行して変えようとしているのが、前工程にあたる契約書の作成業務だ。

同社では6月よりAI-CON ドラフトという名称で主にスタートアップやフリーランス向けに、17種類の契約書テンプレートを無料で公開。今回新たにAIを活用した契約書の自動生成機能を追加して、β版として提供を始める。

「AI-CON ドラフト」利用イメージ

質問に回答していく様子

同サービスは契約条件に関する簡単な質問に20個程度回答することで、条件に合った契約書のテンプレートが自動で生成される仕組み。山本氏いわく「契約書作成時の弁護士によるヒアリングに近い」流れになっていて、「弁護士のヒアリングするパターン(各質問および回答)と条文群を両方機械学習にかけて、最適なものをマッチングするようなイメージ」だという。

「たとえばNDA(秘密保持契約書)の場合でも、入退社に関わるもの、業務提携の前提になるもの、業務委託と一緒に結ぶものなど条件ごとに最適な内容は異なる。質問に対する回答に沿った形でカスタマイズされたNDAのフォーマットが作られるのが特徴だ」(山本氏)

自動生成機能についてはリリース時点で対応しているのは秘密保持契約書のみ。9月中旬にはシステム開発契約・保守契約、アドバイザリー・コンサルティング契約、コンテンツ制作契約などの業務委託契約全般に対応する予定で、年内には販売代理店契約書、売買契約書など約20種類の契約書をカバーする計画だ。

ビジネスモデルとしては作成する契約書1通ごとに料金が発生する仕組みを検討しているが、まずはβ版として利用者あたり1通のみ無料で提供する。

「意外と自分の取引実態に合った契約書を持っている人は少ない。たとえば契約書の雛形をネットでダウンロードしていたり、自分の手元にないので相手方にもらっていたような場合、自分にとって不利な内容だと知らずに毎回使い続けてしまっているようなこともある。特にそういった人たちが、少しでも自社の取引実態に合った意味のある契約書を使えるようにしたい」(山本氏)

まだ限定的ではあるものの、これまで手がけていた契約書のレビュー業務に加えてドラフトの作成業務にも対応範囲を広げたAI-CON。契約書に関する業務は大きく(1)ドラフト作成(2)レビュー(3)交渉(4)契約締結(5)管理というプロセスに分かれるが、「AI-CONでは合意形成までのプロセスを効率化したい」という思いがあるそうで、今後も「AI-CON ○○」のように同シリーズのプロダクトが増えていくようだ。

GVA TECHではこれまでエンジェル投資家とチームメンバーから約6500万円を集めているが、VCからの資金調達は今回が初めてとなる。

調達した資金は主にエンジニアや法務人材などの採用とプロダクト強化に用いる計画。まずは2019年の春頃を目処にAI-CONシリーズ全体での登録者数5000社の達成を目指すという。