偏頭痛の原因をスマホで解明する「頭痛ログ」、GREE Venturesなどから約1億円を資金調達

世界では10億人が偏頭痛持ちだと言われているが、その原因はよくわかっておらず、抑制する薬もあるが根本的な解決にはなっていない。シンガポール発のHealint社は、この原因をスマートフォンアプリで解明しようとしているスタートアップだ。患者がアプリで記録した症状を、世界中の患者の症状ビッグデータと照合することで、偏頭痛の原因を特定する。例えば、睡眠時間が短か過ぎる、 アルコールの飲み過ぎ、といったことがわかれば、生活習慣を個人個人で改善すれば偏頭痛の症状を予防することができるはずだ。

Healintは日本で「頭痛ログ」のAndroidアプリを提供していたが、本日3月27日にiOSアプリをリリースした。TechCrunch Japanはこれを機会に来日したCEOのフランソワ・カディウ(Francois Cadiou)に話を聞いた。彼によると、日本人はアプリを長期的に使ってくれると言い、膨大なデータを取得できるのではと期待しているようだ。

Healintはこの来日で、Wavemaker pacific (DFJ network)、GREE Ventures、Shinryoku、エンジェル投資家などから計110万シンガポールドル(約1億円)あまりを調達完了している。

偏頭痛が起こる原因は複合的で人それぞれ

偏頭痛は頭痛とは違うものといわれている。頭痛は何か体に疾患があって、それが原因で起こるが、偏頭痛は違う仕組みで起こる。その原因は個人個人で異なり、スポーツをしてホルモンが出過ぎて起こるとか、コーヒーとストレスでなる人もいる。ある日、花粉がトリガーとなり偏頭痛になった人もいる。また、偏頭痛を抑制する薬の飲み過ぎ、例えばイブプロフェンの飲み過ぎなどによっても起こる。

従来は患者がどんなときに頭痛が起きたかを細かく紙媒体に記入し、医師が小規模な統計データを取っていた(右の写真のような手帳)。Healintは、こうした紙媒体のやりとりをアプリで実現するものだ。解析システムと直結して、世界中から症状データを取得できるようにしている。

既に海外ではアプリがリリースされていて、米国では通院しているクリニック等で使用を勧められてアプリをダウンロードするケースが多いという。アプリ内で症状を報告する項目はかなり詳細にわたるが、むしろ患者は「これでも足りない、もっと詳細に記録すべきだ」と訴えているほどだという。Healintのアプリは現在全世界で5万ダウンロードされている。

花粉、季節、気温や大気汚染も要因

Healintによるビッグデータの解析は始まったばかりだが、それでもいくつかの事実はわかってきた。 花粉、季節、気温の変化等がファクターになっていることがわかってきている。また、大気汚染もファクターになっている可能性があり、現在解析を進めているところ。まだサンプルが少ないという。以下はこれまでに分かった日本の利用者の偏頭痛の傾向を示すインフォグラフィックだ。

Healintでは、偏頭痛の症状のビッグデータ解析により世界のどこで偏頭痛が起こっているのかをマップにできる。しかし日本ではデータがないので、今のところ真っ黒になっている。ここをもっと詳しく調べてみたいとHealintでは考えているという。 国内では「頭痛ログ」と同様なアプリがいくつかある。Pockeの「頭痛~る」は、頭痛と気圧が関係するという仮説のもと、気圧が通常より大きく下がるときにグラフ上に表示してお知らせする。スリーエースの「頭痛 web ノート」は、偏頭痛患者がスマートフォンに登録した頭痛履歴を、医師が確認できるアプリ。Plusrの「頭痛ノー ト」は突発的に起こる頭痛の頻度や程度、誘因や前触れ、服薬記録を行えるアプリ。

父親の脳卒中がキッカケで起業

フランソワが起業したのは、彼の父親が脳卒中で2度倒れたことがきっかけだった。不随になった父親を、緊急時にどうしたら助けられるか。そう考えたフランソワは、脳卒中になった瞬間でも、スマホを振るだけで緊急事態を知らせるアプリを自前で開発。それは「ShakeIt」というアプリサービスだったが、その後の偏頭痛アプリ開発につながった。

フランソワは日本に交換留学したことがあり、卒業後フランス製薬会社大手Sanofiに勤務し、新薬開発のための統計データのマネージメント等を担当した。その流れでヘルスケアにフォーカスしてきたという。

その後、Healint社を立ち上げるため、最初ベンチャーキャピタルに相談したが全く聞き入れられずに苦労した。紆余曲折を経て、ヘルスケア分野のマーケティングプロフェッショナルと機械学習プロフェッショナルを共同創業者に迎え、JFDI等から資金調達したと いう。

この事業のビジネスモデルでは、患者からでなく、製薬会社等企業から資金を得るようにしている。製薬会社からバイアスはかからないのかという質問に対しては、それは製薬会社トップの人物を見極めてやっていて、誠実な企業としか取り引きしないという。

ビッグデータによる偏頭痛の解析というビジョンのほか、今後医療方面のデータ活用はどう進展いくのだろうか? 彼によると、これからヘルスケア分野ではプレシジョン・メディスン(Precision Medicine)がもっと発展していくという。プレシジョン・メディスンとは、がんや希少疾患を対象として、「ゲノム情報・環境要因・ライフスタイル」が「健康維持・疾病発症」にどのように影響するかを調べ、個人個人にあった治療法や発症予防法を開発するものである。

(Hiroki Takeuchi / POYNTER CEO Ph.D)


匿名で皮膚病(および性病)の診断を受けることのできるFirst Derm

First Dermは皮膚の様子を写真にとり、それに基づいて匿名で医師に相談することのできるアプリケーションだ。

スウェーデン発のこのアプリケーションが最初にリリースされたのは2009年で、当初は性病(STD)を対象とするものだった。発疹、腫れ物、できものなどや、あるいは痣などの写真を撮って報告するものだった。

ただ、性病専門のアプリケーションでは、口コミによる展開があまり期待できないという状況もあった。そうした状況を受けて、First Dermは性病以外の皮膚病にも対応することにしたのだ。

但し、ファウンダーのAlexander Borveによると、今でも70%以上が下半身関連の相談なのだそうだ。

病状を相談するには、2枚の写真を撮影する。ひとつはクローズアップで、ひとつは全体が入るようにしたものだ。そしてオンラインで提供される投稿フォームに必要事項を入力して送信する。するとデータはFirst Dermと提携する医師に送られ診察してもらうことができる。費用は40ドルだ。

実のところ、値段は保険に入っている場合の自己負担額より高額だ。費用には匿名で受診できるメリットと、病院に出かけて行って待合室ですごさなければならない時間の分も含まれていると考えれば良いだろう。

診療結果は、ほんの数時間で得られることもある。First Dermは、24時間以内に診療結果を戻すことを保証している。これまでの相談内容では、70%程度が適切な薬品を利用することで治るもので、30%ほどが対面による医師の診断を必要とするものだった。

アプリケーションを利用するのに、個人情報を入力して利用者登録をする必要はない。メールアドレスやFacebookを利用したログインも必要ない。外部サービスと何ら連携することもなく、匿名で利用することができる。

アプリケーションのダウンロード数はこれまでに1万件に達し、1月に提供を開始して以来、1000件の診療が行われたそうだ。

どのような病気が診療の対象となっているのかについては、こちらに一覧が掲載されている。

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(翻訳:Maeda, H


医師にメッセージを送って相談することのできるFist Opinion、140万ドルを追加調達

First Opinionが140万ドルの資金を調達したようだ。出資したのはTrue VenturesおよびFelicis Venturesなどだ。今回の分を含め、調達額は合計で260万ドルとなった。これまでにはGreylock、Yuri Milner、および500 Startupsなども出資を行っている。

サービスはiOSアプリケーションで提供される。医者にメッセージング経由で医者に質問を投げることができるというものだ。今回の資金調達と同時に、アプリケーションも新バージョンとなった。このFirst Opinionでは、月に一度は無料で相談を投げることができる。追加で質問があるときは、同じ医師を相手に3つまでの質問権がパッケージされて12ドルよりとなっている。今回のアップデートにより、24時間制の対応が可能となっており、質問への回答はたいてい9分以内に為されているとのことだ。

昨今のヘルスケア関連サービス(RiseThriveOn、およびTalkspaceなど)と同様に、First Opinionも予防ケア系を意識したサービスだ。

ファウンダー兼CEOのMcKay Thomas曰く、もともとは妊婦を対象としたサービスをイメージしたものだそうだ。とくに陣痛が起こり始めて、医者にいくべきなのかどうかを判断したいお母さん向けを考えていたのだそうだ。そうして考えるうち、不眠症や頭痛、不安神経症などの場合にも使えるだろうと考え始めたのだそうだ。

プライバシー面に配慮して、First Opinionの利用登録についてはファーストネームとメールアドレスのみを入力するようになっている。試してみたところでは、医者にメッセージを送ることができるようになるまでに必要な時間は5分程度だった。ちなみに利用したのは深夜の時間帯だったことも申し添えておく。

テスト利用時にマッチングされた相手方のドクターはAnkitaという方だった。これまでにFirst Opinionを使って、1500以上もの質問に答えてきたのだそうだ。これを機会に、疲労感に悩まされる最近、血液中の鉄濃度検査などを行った方が良いのかどうかについて尋ねてみたりもした。30分ほどの間、メッセージ交換を行い、いろいろと疲労感を感じる原因などについて教えてもらうことができた。

結局のところ、血液検査をして見るほうが良かろうというアドバイスをもらった。実のところ、長らく検査すべきなのだろうと思いながら放置していたのだった。しかしメッセージングセッションにて、医師に確認すべき要点まで指摘されたので、病院に行ってみるしかあるまい。

調達資金は、共同ファウンダー兼CTOであるJay Marcyesの医師-患者マッチングプログラムの高性能化を行うのに利用したい意向であるらしい。彼は以前PlancastPathでも働いていた経験をもつ。迅速に、かつ有効なマッチングを行うようなアップデートを行いたいとのこと。今のところ、利用者が医師を希望してからマッチングの完了までに15分以上かかるケースもあるようだ。これを30秒にまで短縮したいという考えを持っているのだそうだ。

こうした機能改善を睨んで、First Opinionは医師であり、かつCOOでもある、フィラデルフィアで活動していて、Wharton SchoolのMBAをもつVik Bakhrと協同して、いつでも迅速かつ有効な回答を引き出すことのできるマッチングプログラムを開発しているとのことだ。

Thomas曰く「かかりつけの医者を訪問するうち85%は無用の行為なのだそうです」とのこと。たいていは「もっと体調が悪くなったらいらっしゃい」という言葉を聞くために、30ドル以上を支払っているのだとのことだ。

First Opinionを使ってメッセージのやり取りをすれば、医者に行く必要があるのかどうかを判断するのに役立つことだろう。時間に追われることの多い現代人に、それでもともかくやりくりして医者にいくべきなのかどうかという判断材料を与えてくれる。

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(翻訳:Maeda, H