スウェーデンの電動航空機スタートアップHeart Aerospaceが200機を受注

スウェーデンの電動航空機製造スタートアップHeart Aerospaceは、これまでで最大の受注を獲得した。同社初の電動航空機ES-19を200機、航空大手United Airlines(ユナイテッド航空)と地域航空会社パートナーMesa Air Groupから受注した。

最大100機の追加購入オプションを含むこの取引は、3500万ドル(約38億円)のシリーズA資金調達ラウンドとともに発表された。本ラウンドはBill Gates(ビル・ゲイツ)氏のBreakthrough Energy Ventures、ユナイテッド航空のベンチャー部門、およびMesaが主導し、シード投資家のEQT VenturesとLowercarbon Capitalも参加している。

ES-19は19人乗りのリージョナル(地域間輸送)航空機で、従来のジェット燃料の代わりにバッテリーと電気モーターで飛行する。同社によると、最初の商用機は2026年までに出荷され、現行のバッテリー技術で最大250マイル(約402km)の飛行が可能になる。Heart Aerospaceの創業者で航空宇宙エンジニアのAnders Forslund(アンダース・フォルスランド)氏は、同社は商用運用の最初の段階において、より短いルートに注力すると述べている。ユナイテッド航空が運航する路線には、シカゴ・オヘア国際空港からパデュー大学空港までの118マイル(約190km)の路線や、サンフランシスコ国際空港からモデストシティカウンティ空港までの74マイル(約119km)の路線などが含まれる。

「当社の初期のフォーカスは、レンジの最大化ではなく、ユニットの経済性の最適化です」とフォルスランド氏はいう。「電動航空機の場合、ルートが短くなるほど、充電時間が短縮され、バッテリーの消耗が抑えられ、日々の飛行回数を増やすことができます」。

Heart Aerospaceは、技術革新の核となる電気推進システムの本格的なプロトタイプを作り上げた。しかし、商業運転開始までにはまだ多くのステップを完遂する必要がある。その中でも特に重要なのは、実際に完全な航空機のプロトタイプを組み立ててテストし、米国と欧州の関係当局の認可を得ることだ。

フォルスランド氏がTechCrunchに語ったところによると、今回の資金調達ラウンドは、航空機に搭載すべき多種多様なシステム(アビオニクスシステム、飛行制御システム、さらには重要な除氷システムなど)の安全性と信頼性の検証に向けてサプライヤーと協働するためのものだ。これらの残存要素について、同社は約50社のサプライヤーと協議しているという。同社はまた、ES-19の完全なプロトタイプを組み立ててデモを行うための大規模なテスト施設も建設中だ。

Heart Aerospaceは既存の航空インフラに乗る意向であるため(ES-19専用の垂直離着陸用飛行場はない)、少なくとも規制当局に関しては、電動エアタクシーよりも相対的に有利な立場にある。大きな技術革新であることが明らかな電気推進システムとは別に、同社は他の個々のシステムについて既存の技術にも依拠していく。

画像クレジット:Heart Aerospace

フォルスランド氏はTechCrunchとのインタビューで次のように述べている。「2026年というローンチ時期は、当社がインターネット上で展開したいと考える壮大な目標として掲げるものにとどまらず、協働するサプライヤー、そして認証機関がともに目指しているものでもあります」。

同社はスウェーデンに拠点を置いているが、少なくとも一部の航空機の最終組み立ては北米で行われ、これらの国の企業からの注文に応じる可能性が高いとフォルスランド氏は付け加えた。

Heart Aerospaceとの契約は、ユナイテッド航空が2021年行った、電動航空機に関する最新の賭けと言えるだろう。同社は2021年2月にも10億ドル(約1100億円)の発注を行っており、エアタクシースタートアップのArcher Aviationに投資している(フォルスランド氏はユナイテッド航空の発注金額を明らかにしていない)。ArcherとHeartとの購入契約はいずれも、一定の安全基準と運用基準が条件となっており、双方とも市場に出るまでに少なくとも数年はかかるとみられる。この投資は、低排出ガス技術とゼロエミッション技術(すでに個人向け自動車輸送でかなり進行している)に向けた航空業界の大きな変化の始まりを示すものだ。

この取引は、かってはこの地域の空の旅の主力であった19席の航空機を活気づけることにもなるだろう。このタイプの航空機は利益率の低さの犠牲になり、過去30年間で1500機以上が退役した。地域の航空旅行も、1990年代以降、米国において減少の一途をたどっている。Mesaは一時期、19席仕様の最大のオペレーターであった。

Heart Aerospaceは自社のウェブサイトで、小型の従来型航空機は、エンジンの所有コストが19席または70席と同等である場合、もはや経済的ではないと指摘している。しかし、同社の電動航空機はその方程式を変えるという。ES-19の電気モーターは、同等のターボプロップの20分の1の費用しかかからず、メンテナンスコストも100分の1に削減される、とHeartは主張する。

Heart Aerospaceは、スウェーデンのヨーテボリにあるChalmers University of Technology(チャルマース工科大学)の研究プロジェクトからスピンアウトして2018年に設立された。同社はY Combinatorの2019年冬コホートに参加し、同年5月に220万ドル(約2億4000万円)のシード資金を獲得した。Heartの従業員数は約50人に成長し、その勢いは衰える気配がない。

「航空機製造は難しさがありますので、車輪を再編成しない機体を構築したいと考えています」とフォルスランド氏は語る。「電気式で、安全性、効率性、信頼性に優れ、航空会社にとって収益性の高い航空機の製造に注力しています」。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:電動航空機飛行機Heart Aerospace資金調達スウェーデン

画像クレジット:Heart Aerospace

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Dragonfly)