殺人事件で安全策強化中のDidi、夜間のサービスを一時停止

中国の配車サービス大手のDidiは、先月起こった2度目の女性乗客殺害事件を受け、プラットフォームに取り入れるさらなる安全基準を明らかにした。

20歳の女性はDidiの相乗りサービスHitch を中国東部の浙江省で日中に利用していた。

このp2pサービスの別の女性ユーザーは5月、客室乗務員の仕事を終え帰宅しようと深夜に利用し、殺害された。Didiに身元確認されていなかったドライバーは、自身の父親のアカウントを使っていた(父親は身元確認されていた)。

警察通報のボタンを含む新たな安全策は、数日以内に実行に移される。

Didiは、深夜タクシー、Express、Uber China、Didi Select、Didi Express Pool、PremierそしてLuxe servicesを、9月8日から15日までの毎日午後11時ー午前5時、中国本土における業務展開地域で一時的に停止する、と発表した。なので、安全の観点から、中国本土で大掛かりな夜間のサービス停止が1週間続くことになる。

この期間、バイク、運転代行、バス、海外カーレンタル、中古車サービスは展開されるとしていて、Didiはサービスの運行状況に合わせて移動を計画してほしい、と呼びかけている。

最初の殺人事件後、DidiはHitchサービスの運営に変更を加え、一時的に深夜のサービスを停止した。そして、6月に再開したが、その際はドライバーと同性の客だけを乗せることができる、というふうにした。

8月に起きた2度目の殺人事件では、全国的なサービス停止となった。Didiの広報は今日TechCrunchに対しHitchサービスが当面、無期限停止であることを明らかにした(「我々のユーザーが受け入れるような安全保護メカニズムが確保されるまで」)。

殺人事件を受け、Didiの乗客安全の扱いは激しい批判にさらされた。

二度目の殺人事件では、事件の直前に別の女性乗客がドライバーについて苦情を寄せたことでDidiの安全チームではそのドライバーは要注意、となった。にもかかわらず、カスタマーサービスのスタッフは、2時間以内に調査を開始するという社のポリシーを守らなかった。そのポリシーは5月の最初の事件を受けて導入されていた。

DidiはHitchサービスの統括マネジャーとカスタマーサービス担当副社長をクビにした。しかし、メトリックが乗客の安全確保に失敗したことを正当化するかのように、Didiが事件に関する謝罪文の中にHitchサービスのこれまでの利用回数を押し込んだのは、恐ろしく見当違いだった。

Hitchサービスが一時停止される間、Didiは他の多くの配車サービスを提供する。しかし、今日発表された基準ではそうしたサービスを利用する乗客のリスクは広範にわたって減るようになるはずだ。

今日発表された安全基準で新しいのは7月に導入されたばかりのSOSボタンの運用の変更だ。ワンクリックでユーザーが選んだコンタクトに連絡がいくのを、今後は警察につながるようにする。

また、乗客のアプリにセーフティセンターが追加され、ここでは新たな“警察に通報”ボタンや利用計画シェアを含むさまざまな安全機能に素早くアクセスできる。

また、新機能を利用者に知ってもらうための啓発キャンペーンも全国で展開し、利用計画シェアのための連絡先の登録を勧めていくことにしている。

加えて、ExpressとPremier servicesでは乗車中の音声録音機能を試行する計画もある。同社は「これはドライバーと乗客の安全を守るのに役立つだろう。録音は厳密なデータ保護プロトコルにより暗号化される」と説明する。

運営面での他の変更はというと、ドライバーへの安全教育プログラムのアップグレードがあるーDidiがいうには、ドライバーは毎日、サービスを開始する前に安全知識テストを受けなければならない

さらに、ドライバーの経歴チェックや、ドライバーと車両のミスマッチを防ぐ検査として5月(父親のアカウントを使用していたドライバーをシステムが見抜けなかった後)に導入された顔認識の活用をさらに厳格化する、と述べている。

Didiはまた、“是が非でも犯罪を厳重に取り締まる”ために今後も警察と協力する、と加えた。「我々は理不尽な行為に対してゼロトレランス方式をとる」。

一方で、カスタマーサービスへの追加の投資も発表した。この投資は1万人というカスタマーサービスの下請けに重きをおいているものの、現在5000人の社内チームを年末までに8000人に増やすのにも使われるー明らかに社内オペレーションへの引き込みを図っている(おそらく致命的な苦情対応ミスのリスクを減らすためだろう)。

「基本の安全基準を確かなものにするために広範な社会パートナーシップを構築するあらゆる努力を行い、当局の方針に沿って法を遵守しているドライバーの権利を守る」と述べている。「改善に努める期間の進展やレビューを社会と共有するつもりだ」

先月の2度目の殺人事件後に、中国政府は乗客の安全を高めるために交通機関を改革すると発表した。つまり、より厳しい規制が導入される可能性がある。

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(翻訳:Mizoguchi)

中国の配車サービスDidi、新たな女性客殺害事件を受けてサービスを一時停止

Uberの中国事業を買収した企業価値600億ドルの配車サービスDidi Chuxing(滴滴出行)は、新たな女性客殺害事件を受けてサービスの一部を一時停止する措置を取った。死者は5月の乗客殺害事件に続き今年2人目だ。

今週末、地元警察は、中国東部に位置する浙江省で金曜日にDidiの相乗りサービスHitchを利用した20歳の女性を暴行・殺害したとして男を逮捕した。ロイターの報道では、女性は失踪する前に友人に助けを求めるメッセージを送っていた。

温州市の当局は、Didiが中国全土でHitchを一時停止すると発表する前にサービスを一時的に禁止する措置を取った。Didiの他の(商業的な)相乗りサービスや配車サービスは、今回の一時停止には含まれない。

Didiは「遺憾な過ちによりHitchサービスを停止することを誠に申し訳なく思う」との声明を出した。

Hitchは、ドライバーが向かう方向へ乗客が無料で乗車できるというもので、ヒッチハイキングの現代版といえる。乗客は、ガソリン代に相当するチップを払うよう推奨されるが、考え方としてはそれぞれの乗車をより効率的にしようというものだ。Didiはこのサービスを営利目的で行なっているわけではなく、収益をあげている他のサービスへと乗客やドライバーをひきつけるための戦略の一環だ。

Didiによると、Hitchでは過去3年において10億回もの利用があった。しかし安全性において大きな問題があった。

今回の殺人事件は、Didiのドライバーだった父親のアカウントを使ってDidiのプラットフォームにアクセスできる状態にあったドライバーが、航空会社の客室乗務員を殺害した河南省での事件のわずか3カ月後に起きた。河南省の殺人事件を受け、DidiはHitchのサービスを6週間停止した。そして、多くの制限を設け、特に深夜の時間帯はドライバーは同性の乗客のみ乗せることができるという条件付きで、6月に再開したばかりだった。

警察によると、今回殺害された女性の乗車は深夜1時で、当然のことながら懸念すべき要素が余りある。

逮捕された殺人犯は前科はなく、事件の前日にDidiの安全チームに要注意扱いであることが周知されたばかりだった、とDidiは声明文で述べている。別の女性客が、ドライバーに助手席に乗るように言われ、降車した後にしばらくつきまとわれたとして、Didiに苦情を寄せていたのだ。

ロイターよると、この苦情に対応した安全センターの職員は、2時間以内に調査を開始するという社のポリシーに従わなかった。このポリシーは、5月に殺人事件を起こしたドライバーについて、別の乗客から不快な行為があったとして苦情が寄せられていたという事実を受け、サービスを一時停止している間に導入した。

「今回の事件は、我が社の顧客サービスのプロセスの欠如、特に前の乗客からの苦情に素早く対応できていないこと、警察とスムースに情報共有できていないことを示している。これはあまりにも手痛い代償だ。我々としては、犯罪を防ぎ、ユーザーの安全を守るため、より効率的かつ実用的な共同的な解決策を模索することで、司法当局や関係する皆さまに誠意をみせたい」とDidiは声明文で述べている。

Didiは今回の殺人事件を受け、2人の重役をクビにしたことを明らかにした。1人はHitchの統括マネジャーで、もう1人はDidiのカスタマーサービス担当副社長だ。

Didiはまた、一般人や専門家を交えて共同で業務プロセスを監査するシステムを間もなく立ち上げる、と発表した。

5月の殺人事件後、Didiは安全管理を向上させるために、“関係当局や専門家のプロアクティブなコンサルテーションのセッション”を予定している、と述べていた。

Didiは、2016年にUberの中国事業を買収・統合して以来、中国の配車サービス業界では事実上、独占状態にあった。しかし今年に入って、競合他社が増えている。

特に、ライバルのMeituan Dianping(美団−大衆点評)からのプレッシャーにさらされている。Meituan Dianpingはローカルサービスから始まったが、最近ライドシェアリングサービスを開始し、Mobikeの買収でドックレスバイクシェアリングにも参入した。Meituanは香港市場に新規株式公開を申請し、報道によれば40億ドルを調達する可能性があるという。

Meituanは、中国におけるローカルサービスマーケットの覇権をめぐりAlibabaと激しい戦いを展開しているーAlibabaは自社のEle.meビジネスのために30億ドルを調達したばかりだ。しかし、今回の事件を受け、Didiに取って代わる存在となるために、Meituanがこれまでの倍もの注意を安全策に向けることは疑う余地はないだろう。

Didiは、謝罪の声明の中にあえてHitchのこれまでの乗車回数を具体的に盛り込み、Hitchがかなり利用されているという点を強調した。しかし現時点では、いかにサービスが人気で、あるいは社会的意義があろうとも、全ての乗客の安全が確保できない限りはサービスを停止するのが最善の策のようだ。

イメージクレジット: Bloomberg

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(翻訳:Mizoguchi)