持続可能な低炭素ジェット燃料開発のAlder Fuelsに航空大手UnitedとHoneywellが出資

航空産業は脱炭素化が難しいことで悪名を馳せている。これは部分的には航空機が石油ベースの燃料を使って飛んでいるからだ。

Alder Fuels(アルダーフューエルズ)はそうした状況を変えたいと思っている。Bryan Sherbacow(ブライアン・シャーバコウ)氏率いる新興のクリーンテック企業である同社は、既存の航空機やエンジンに手を加えることなく石油燃料と100%互換性のある燃料として使うことができる低炭素のジェット燃料を開発中だ。現在市場で入手可能な持続可能航空燃料(SAF)はまだ従来の燃料との50対50の割合でブレンドする必要があるため、同社の取り組みは注目に値するものだ。

同社のテクノロジーは航空産業の興味をかき立ててきた。Alder Fuelsは現地時間9月9日、航空大手United(ユナイテッド)とHoneywell(ハネウェル)から数百万ドル(数億円)もの出資を受けることで契約を交わした、と明らかにした。またUnitedとは燃料15億ガロンの購入契約も締結した。航空産業におけるSAF契約としては過去最大となる。

Unitedは年40億ガロンの燃料を消費している、と同社の広報担当は語る。つまり、今回の購入契約は同社が1年間に消費する燃料の40%近くに相当することになる。

ただし、Alder Fuelsの燃料がUnitedの航空機を飛ばすようになる前に、さまざまな種類の材料や製品の基準を定める国際組織、ASTM Internationalが定めた規格を満たさなければならない。その後、AlderとHoneywellは2025年までにテクノロジーを商業化する見込みだ。

Alder Fuelsは2021年初めに正式に事業を開始したが、シャーバコウ氏はここ5年ほど同社のテクノロジーを査定してきた、とTechCrunchとの最近のインタビューで述べた。低炭素燃料を支えるテクノロジー、そして特に原材料はスケーラブルで広範に利用できるべき、ということが同氏のこれまでの取り組みで明白になった。

「我々が模索しているのは、こうした炭素を排出する前の油にどのようにアクセスして、既存の精製インフラの中で使えるものに効率的に変換するのか、ということです」とシャーバコウ氏は話した。

その問題を解決するために、同氏は農業廃棄物のような炭素が豊富な木質バイオマスに目を向けた。農業廃棄物は航空燃料を作るのに使うことができる原油に変わる。Alder Fuelsは、バイオマスを液体に変え、既存の製油所に流し込むような方法で扱える、熱分解ベースのテクノロジーを使っている。同社はまずHoneywellが持つ「Ecofining」水素化処理技術を活用する。最終的な目的はすべての精製設備に合う新燃料を作ることだ。

「すでに産業的に集約されているものの、今日まだ経済的価値がなかったりかなり少なかったりする、かなりの量の木質バイオマスがあります」とシャーバコウ氏は説明する。「しかし我々が利用できるカーボンの貯蔵であるため、我々にとっては大きなチャンスです」。林業、農業、そして製紙産業の企業にとっても新たなマーケットを開拓することになる可能性がある。そうした分野の企業はすでに有り余るバイオ廃棄物を生み出している。

Alder Fuelsの研究は米国防兵站局とエネルギー省から支援を受けており、シャーバコウ氏は航空産業の脱炭素化を進める上での官民提携の重要性を強調した。ジョー・バイデン政権にとって気候変動は大きな関心事であり、持続可能な航空燃料に対するインセンティブは議会が現在議論している3兆5000億ドル(約385兆円)支出案に含まれる可能性大だ。

「移行をサポートするのは政府の役目の1つです。企業の行動を変えるためにインセンティブを与える必要があります。そうでもしなければ、企業は破壊的な変化に抵抗するでしょう」と同氏は述べた。

画像クレジット:United

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

量子ビジネス構築に向けCambridge QuantumとHoneywellが合弁会社を設立

つい先日、量子コンピュータへの参入を発表したばかりのHoneywell(ハネウェル)と、量子コンピュータのソフトウェア開発に注力しているCambridge Quantum Computing(ケンブリッジ・クォンタム・コンピューティング、CQ)は米国時間6月8日、Honeywellの量子ソリューション(HQS)事業とCQを新たな合弁会社という形で統合すると発表した

HoneywellはCQと長く提携しており、2020年CQに投資もした。今回のアイデアは、HoneywellのハードウェアとCQのソフトウェアに関する専門知識を合わせ、両社がいうところの「世界最高性能の量子コンピューターと、初の最先端量子オペレーティングシステムを含む量子ソフトウェアの完全な組み合わせ」を構築することだ。

2社(両社のプレスリリースでは「コンビネーション」と呼んでいる)は、2021年の第3四半期に取引が完了すると見込む。Honeywellの会長兼CEOであるDarius Adamczyk(ダリウス・アダムジク)氏が新会社の会長に就任する。CQの創業者でCEOのIlyas Khan(イリヤス・カーン)がCEOに就任し、現在のHoneywell Quantum Solutions(ハネウェル・クオンタム・ソリューションズ)の社長であるTony Uttley(トニー・ウットリー)氏は、新会社でもその役割を継続する。

HoneywellがHQSをスピンオフし、CQと統合して新会社を形成し、リーダーシップと財務面での役割を果たしていく構想だ。Honeywellは、新会社の過半数の株式を所有し、2億7000万〜3億ドル(約300〜330億円)を投資する。また、新会社との間で、量子ハードウェアの中核となるイオントラップの製造に関する長期的な契約を結ぶ。CQの株主は、新会社の45%を所有することになる。

画像クレジット:Honeywell

アダムジク氏は「新会社は業界最高の人材、世界最高性能の量子コンピュータ、初の最先端量子オペレーティングシステム、そして量子コンピュータ業界の未来を牽引する、ハードウェアに依存しない包括的なソフトウェアを有することになります。新会社は、量子コンピューター業界の爆発的な成長を支える重要なグローバルインフラを提供することで、短期間に価値を創造する上で非常に有利な立場にあります」と述べた。

2社は、量子ビジネスを成功させるには、大規模な投資に支えられ、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせたワンストップショップを顧客に提示する必要があると主張している。2社は今回の統合により、それぞれの専門分野におけるリーダーとしての地位を確立し、事業を拡大するとともに、研究開発や製品ロードマップを加速することができるとしている。

「2018年にHoneywellの量子ビジネスを初めて発表して以来、多くの投資家から、このエキサイティングでダイナミックな業界の最前線にある当社の先端技術に直接投資したいという声を聞いてきましたが、今回、それが可能になります」とアダムジク氏は話した。「新会社は、急速な成長を促進するために必要な、新しい多様な資金源を大規模に確保する最良の手段となるでしょう」。

CQは2014年創業で、現在約150人の従業員を抱える。同社は2020年12月に発表した4500万ドル(約50億円)のラウンドを含め、合計7280万ドル(約80億円)を調達した。この最後のラウンドには、Honeywell、IBM Ventures、JSR、Serendipity Capital、Alvarium Investments、Talipot Holdingsが出資した。これは、異なる技術を使用しているものの、多くの点で新会社と直接競合しているIBMが、新会社の(小さな)一部を所有することになったことも意味している。

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カテゴリー:その他
タグ:Cambridge QuantumHoneywell量子コンピュータ

画像クレジット:Honeywell

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nariko Mizoguchi

ドイツのeVTOLメーカーのLiliumにハネウェルが飛行制御システムとアビオニクスを供給

ドイツの電動エアモビリティ企業であるLilium(リリウム)は、同社初のeVTOL(電動垂直離着陸機)である7人乗り「Lilium Jet(リリウム・ジェット)」の電子回路および機械システムの開発において、航空宇宙メーカーのHoneywell(ハネウェル)と提携すると発表した。

ハネウェルは、飛行におけるすべての可動部を制御するコンパクトなフライ・バイ・ワイヤ・システムと、航空電子機器のアビオニクスを、Lilium Jetに供給することになる。同じeVTOL企業であるVertical Aerospace(バーティカル・エアロスペース)の航空機にも、ハネウェルのコンパクト・フライ・バイ・ワイヤ・システムが採用されているが、Liliumが使用するアビオニクス・システムは、Lilium Jet特有の技術的要件に合わせて設計された専用バージョンになるという。

ハネウェルは航空宇宙製造業界の巨人であり、アーバン・エア・モビリティの専門チームをいち早く創設した企業の1つだ。また同社は、Liliumが特別買収目的会社のQell Acquisiton Corp.(ケル・アクイジション)と合併した際に発表された私募増資(PIPE)の募集に参加し、Liliumの投資家にもなっている。

両社は2019年2月から話し合いと協力を続けてきたと、Liliumのチーフプログラムオフィサーを務めるYves Yemsi(イヴ・イェムシ)氏はTechCrunchに語った。同氏によると、Liliumは内製に留めておきたいコアコンピタンス(例えば、推進システムやバッテリーシステムの設計と組み立て、航空機の最終組み立てなど)を特定し、航空機の他の部分に関しては経験豊富な社外のサプライヤーと提携するつもりだという。

「専門家や航空宇宙分野のパートナーと提携することは、当社にとって熟考した上での選択です」と、同氏はいう。「安全性を確保しながら、市場投入までの時間を短縮できます」。

このパートナーシップの大きな利点は、認証プロセスで大いに役立つことだと、イェムシ氏は説明する。ハネウェル製の部品の中には、FAA(米国連邦航空局)が認める最低性能基準であるTSO(Technical Standard Order)をすでに達成しているものがある。TSOに認定された部品を使用することで、認証プロセスの時間を短縮することができるというわけだ。

すでにLiliumでは、Design Production Approval(設計生産承認)とProduction Organization Approval(生産組織承認)の取得に向けてチームを編成している。これらは欧州連合航空安全局(EASA)が発行する2種類の承認で、基本的にその会社が製品を市場に投入できることを証明するものだ。これらの承認は、Liliumの航空機(と他のすべてのeVTOL)が商業運航を開始する前に、FAAとEASAの両方で取得しなければならない型式認証を補完する。

航空宇宙メーカーとして実績のあるハネウェルとの提携は、Liliumの計画を大きく前進させることになるだろう。イェムシ氏によれば、ハネウェルから部品の納入が始まると、次のステップはシステム構築研究施設を使って地上でアビオニクスや電子システムのテストを行い、航空機の開発とテストを進めていくことになるという。

「これから大変な仕事が始まるのです」と、イェムシ氏は語っている。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:eVTOLLiliumドイツHoneywell

画像クレジット:Lilium

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)