スタートアップ支援事業を手がけるWARCが約3億円を調達、管理部門特化型の転職サービスを強化

スタートアップ支援事業を手がけるWARCが約3億円を調達、管理部門特化型の転職サービスを強化

成長企業の管理部門のハンズオン支援、管理部門人材紹介、HR Techサービスなど提供のWARCは11月16日、第三者割当増資による総額約3億円の資金調達を発表した。引受先はマネーフォワード、STRIVE、East Ventures、個人投資家など。累計調達額は約5億円となった。また、マネーフォワードとの業務提携も明らかにした。

今回調達した資金は、管理部門特化型の転職サービス「SYNCA」の開発および成長企業支援のための体制強化に投資する予定。

WARCは「想いをカタチに出来る世の中を創る」というミッションを掲げ、管理部門のハンズオン支援を行うCo-WARC事業、M&Aアドバイザリー事業、管理部門人材紹介を行うWARC AGENT事業、管理部門特化型の転職サービス「SYNCA」などのサービスを提供。

マネーフォワードとの業務提携では、スタートアップ・ベンチャー企業支援をさらに強化するため、両社のノウハウを相互に活用した施策を予定しているという。

  • 両社のサービスを相互提供:WARCのクライアント企業に対して、IPOを目指す企業向け会計ソフト「マネーフォワード クラウド会計Plus」の導入を推進。またバックオフィスSaaS「マネーフォワード クラウド」ユーザー向けに、WARCのHR techサービスの導入推進を検討
  • 管理部門業務のオペレーション構築支援:マネーフォワードのカスタマーサクセスが蓄積したクラウド導入のノウハウをWARCに共有し、クラウド導入支援プログラムを両社で構築。またWARCのクライアント企業に対して、管理部門のオペレーション設計を実施する
  • マネーフォワードシンカとWARCによるスタートアップ共同支援の実施:マネーフォワードシンカは、フィナンシャルアドバイザリーサービスやキャリア支援を提供する、マネーフォワードのグループ会社。資金調達、上場準備、M&A、税務、人材採用など、スタートアップ・ベンチャー企業が抱える課題に対して、両社の強みを掛け合わせた共同での支援を実施。また、共同でのイベントを開催

関連記事
エグジット経験のある2人の元CFOが創業したWARCが2億円を調達、知見活かしスタートアップの成長支援へ

カテゴリー: ネットサービス
タグ: WARCHR Tech資金調達(用語)日本(国・地域)

Web面接ツール「HARUTAKA」運営が8億円調達、面接体験を改善する“面接官育成AI”開発へ

Web面接サービス「HARUTAKA」を開発するZENKIGENは3月18日、WiLなど複数の投資家を引受先とした第三者割当増資により総額で8億円を調達したことを明らかにした。

ZENKIGENでは2018年6月にシードラウンドにてグロービス・キャピタル・パートナーズ、WiL、みずほキャピタルから2億円を調達済みで、今回のシリーズAラウンドを含めると累計調達額は10億円となる。本ラウンドで同社に出資した投資家陣は以下の通りだ。

  • デライト・ベンチャーズ(AI領域)
  • PKSHA SPARXアルゴリズム1号投資事業有限責任組合(AI領域)
  • パーソルキャリア(HR領域)
  • エスプール(HR領域)
  • ツナググループ・ホールディングス(HR領域)
  • WiL(既存投資家)
  • グロービス・キャピタル・パートナーズ(既存投資家)
  • 社名非公開の金融関連企業

ZENKIGENでは調達した資金を活用してエンジニアを中心とした人材採用を進める計画。既存事業であるHARUTAKAの拡大に加えて、現在PoCを実施している面接官育成AI「ZIGAN」の早期事業化を目指し組織体制を強化する。

詳しくは後述するが、ZENKIGEN代表取締役CEOの野澤比日樹氏によると今回の新規投資家とはAI領域とHR領域において事業連携も見据えているという。

Web面接で面接を効率化、200社以上が導入

HARUTAKAはWeb面接を通じて「面接の場の効率化」を実現するSaaS型のプロダクトだ。

面接方法はWebを介してリアルタイムに実施する「ライブ面接」と、候補者が自身のデバイスを使って撮影した動画を企業に送る「録画動画面接」の大きく2種類。たとえば書類選考から1次面接を録画動画面接、2次から3次面接をライブ面接という形で、この2つを組み合わせながら面接フローを設計している企業も多い。

野澤氏によると特に録画動画面接のナビゲーションにはこだわっているそう。候補者は企業側が設定した「学生時代に頑張ったこと」などの質問に対する回答を自分で撮影する形になるのだけど、最初に人事がナビゲーション動画に出てきて「緊張しないで大丈夫ですよ」と声かけをすることで緊張をほぐす。

人となりを見たい部分に関しては動画形式にする一方で、「転勤のありorなし」など基本的な質問への回答は選択式にすることで候補者の過度な負担がかからないようにもしている。

Web面接は上手く活用できれば、企業と候補者双方にとってメリットが大きい。企業側は動画面接を取り入れることでエントリーシートだけでは判断しづらい候補者の人となりや雰囲気を把握でき、面接に進む人数を絞り込める。遠方に住む候補者ともスピーディーかつフェアに面接ができるので、担当者の業務工数を削減できるだけでなく優秀な人材の離脱を防ぐ効果も見込めるだろう。

候補者にとっても場所や時間の制約を取っ払って面接を実施できるため、交通費や移動時間などの負担が少なくて済む。

現在HARUTAKAはWeb面接SaaSとして月額5万円からの定額モデルで提供。すでにソフトバンクや日本たばこ産業、カルビー、USEN-NEXT HOLDINGSを始め大企業を中心に200社以上で活用されている。

一例としてUSENでは一次面接を全て録画エントリーに変え、二次面接から役員面接までを現地での面接とライブ面接から選べるようにした結果、地方の学生などの離脱が減り、内定を出した後の入社率が1.5倍にアップするなどの効果に繋がっているそうだ。

Web面接ツールに関しては米国発の「HireVue」や以前紹介した「インタビューメーカー」などがよく知られている。基本的な機能は似ている部分が多いものの、HARUTAKAの場合は採用管理システムとの連携を積極的に進めていて、これが1つの特徴になるとのことだった(現時点で7つのATSと連携)。

数年以内に「動画面接が爆発的に普及する」

ZENKIGEN代表の野澤氏はインテリジェンス(現パーソルキャリア)、創業期のサイバーエージェントを経てソフトバンクに入社し、電力事業であるSB Powerの営業責任者や「自然でんき」の事業責任者などを務めてきた人物だ。

ソフトバンク退社後の2017年10月にZENKIGENを創業。多くの社会人が寝ること以外で1番時間を使っている「仕事」の領域、特にそのど真ん中となるHR分野で勝負をしようとこのドメインを選んだ。

HRといっても様々な切り口があるが、Web面接に決めたのはサイバーエージェントの創業者である藤田晋氏の「上りのエスカレーターに乗れ」という言葉が頭に残っていたからなのだそう。要は伸びる市場を選べということで、「今後人口が減る中で人材の取り合いが加熱し、採用領域がホットになる」との考えから採用に目をつけた。

「考えてみれば4Gやスマホ、自撮り文化など社会情勢は変わっているのに、面接のやり方自体は20年前からほとんど変わっていない。Web面接も当時は浸透していなかったが、2〜3年以内には爆発的に普及するという感覚があった」(野澤氏)

ソフトバンクアカデミアに参加していた際に孫正義氏からAI事業におけるデータの重要性を聞かされてていたこともあり、ゆくゆくは面接の動画データとAIを組み合わせることで面白いプロダクトが作れるかもという構想のもと、創業と同時にサービスをスタートした。

プロダクトローンチ当初こそ「動画で面接ってどうなの?」となかなか導入が進まず苦戦した時期もあったそうだが、この2年半ほどで採用市場でのWeb面接の認知度も上がり状況が好転。今では多くの企業で当たり前のようにWeb面接が検討されるようになってきているという。

特に直近1〜2ヶ月はコロナウイルスの影響もあり、リモートで面接が実施できるプラットフォームとして問い合わせが急増しているようだ。

蓄積したデータを活用した面接官育成AIの事業化へ

ここまで紹介してきたように、ZENKIGENでは創業から2年半に渡ってWeb面接に特化してプロダクトを磨いてきた。今後も同社にとってHARUTAKAが主力事業であることに変わりはないが、これからはそこで蓄積されたデータを活用した取り組みにも力を入れていくフェーズになる。

それが冒頭でも触れた面接官育成AIの「ZIGAN」だ。HARUTAKAが「面接の場を効率化する」ものだとすれば、ZIGANは「面接の質自体を向上させる」ことが目的。面接における候補者体験を高めるために面接動画データとAIを活用する。

「世界的にみてもHR×AIの分野では『AIが人を評価する』という方向に行きがちで、その代表例がAI面接官だ。特に欧米は効率化が重視される文化なのでその傾向が強いが、ZIGANでは全く別のアプローチからこの領域にチャレンジする」(野澤氏)

野澤氏の話では「面接を受けたことで、この会社に入りたくないと思った人が85%存在するという調査がある」そう。主に面接官の不快な態度や言動が原因だが、これまでは面接が密室で行われブラックボックスになっていた。

「一方でGoogleなど先進的な企業は面接での候補者体験を重要視していて、面接官の育成にも力を入れている。その結果として面接に落ちた人材の約8割が他者にGoogleを勧めるといった現象も見られるほどだ。ZIGANが目指すのは動画を解析した上で面接官にフィードバックを与え、誰でも候補者体験の良い面接を実現できるようにすること。それをAIでサポートする」(野澤氏)

現在は複数社とPoCに取り組んでいる段階ではあるが、面接動画に映っている表情や声のピッチ、仕草、姿勢などの情報から特徴量を抽出し「面接の心地よさをゲージで表示する」ような仕組みの研究開発を進めているそう。まずは面接に特化する形だが、次の段階では1on1など職場領域での応用も考えているという。

ZIGANのように人工知能によって人の感情や感性、仕草などを解析する分野は「アフェクティブ・コンピューティング」と呼ばれ、近年グローバルで注目を集めている。ZENKIGENとしてはこの領域で世界に通用するプロダクトを作ることを念頭に置き、2018年から東京大学の道徳感情数理工学社会連携講座との共同研究も進めてきた。

Pepperの感情エンジンなどを作ってきた東京大学の特任准教授・光吉俊二氏の研究室とタッグを組みながら、彼らの開発するエンジンをいかにHR領域に社会実装していけるかを日々研究しているそうだ。

アフェクティブ・コンピューティング領域で国内トップ企業狙う

今回の資金調達はこの取り組みをさらに加速させるためのエンジニア採用が大きな目的だ。

現在はDeNA出身の2人のエンジニアが中心となってZIGANのプロダクト開発を進めているが、研究者や技術者を仲間に加え「アフェクティブ・コンピューティングの国内トップカンパニーを狙う」(野澤氏)という。

新規投資家であるDeNA(デライト・ベンチャーズ)やPKSHA Technologyとも主にZIGANのおけるAIの研究開発領域で連携を見据えているとのことだ。

一方でHR系事業会社3社とは「明確な事業シナジーがある」ため、まずはHARUTAKAの活用に関する連携からのスタートとなる。パーソルキャリアに関してはコンサルタントと候補者のコミュニケーションなどに、採用アウトソーシング分野の大手企業であるエスプールやツナググループ・ホールディングスとはクライアント企業における選考業務にWeb面接ツールを活用できる余地があるという。

ZIGANが実用化に至った際には、こちらを用いた連携も十分に考えられるだろう。

「プロダクト進化のストーリーを明確に描ける段階になってきた中で、ここからはそれをいかにスピーディーに実現していくか。特にアフェクティブ・コンピューティングの領域では世界で見てもまだ突き抜けているプレイヤーはいない。ZIGANもまだPoC段階ではあるが、すでにプロダクトを開発しているという意味でもこれから戦っていけるチャンスはある」

「ソニーやホンダを初めとしたメーカーの活躍があったからこそ今までの日本の繁栄があるが、ネット系の新興企業でグローバルでチャレンジできている企業はまだまだ少ない。ZENKIGEN(全機現)もZIGAN(慈眼)も禅の言葉から取ったもの。日本的な感覚や思想をプロダクトに取り入れ、世界にはないアプローチから日本発のグローバルカンパニーを目指していく」(野澤氏)

GitHubをAIで解析して“スキル偏差値”算出、エンジニアのキャリア選びを支援するFindyが2億円調達

「Ruby67、Java63、トータル67」——これはエンジニア転職サービスなどを開発するファインディが算出した独自の“スキル偏差値”の一例だ。

同社ではエンジニアユーザーのGitHubをAIを用いて解析し、開発言語別の偏差値を算出している。公開リポジトリが解析の対象で、書いたコードの量や、他のプロジェクトへの貢献度、他者からのコードの支持などがベースだ。

ファインディ代表取締役CEOの山田裕一朗氏は「1番重要視しているのは、エンジニアのキャリアアップに繋がる指標になること。転職活動時などに自分のスキル偏差値を1つの武器として使ってもらえるようにしたい」と開発にかける意気込みを語る。

このスキル偏差値を活用して、エンジニアの転職や案件探しをサポートする事業を2017年より展開。現在はコアとなるアルゴリズムに磨きをかけ、さらなる事業拡大を目指している最中だ。

そのファインディは6月5日、グローバル・ブレインを引受先とした第三者割当増資により約2億円を調達したことを明らかにした。

同社は昨年PKSHA Technology代表取締役の上野山勝也氏、レアジョブ代表取締役社長の中村岳氏、クロス・マーケティング代表取締役社長の五十嵐幹氏を含む複数の投資家から資金調達を実施。今回はそれに続くシリーズAラウンドの資金調達となり、サービスやアルゴリズムの開発スピードを加速させるべく、セールス・エンジニアの採用を強化していく計画だ。

「売れなかった」求人票採点サービスからのスタート

現在ファインディではAIを活用したエンジニアのスキル評価と、それを活用したエンジニアのキャリア支援を核として事業を展開している。

主要なプロダクトは転職サービスの「Findy 転職」とフリーランスや副業の案件をマッチングする「Findy Freelance」の2つ。エンジニアとITベンチャーやデジタルトランスフォーメーションを進める大企業などを繋ぐのがファインディの役割だ。

同社は2016年7月の創業。CEOの山田氏は三菱重工業、ボストンコンサルティンググループを経て2010年に前職となるレアジョブに入社し、執行役員も務めた。

取締役CTOの佐藤将高氏は学生時代にレアジョブでアルバイトをしていたことがあり、山田氏とはその時からの付き合い。東京大学の大学院で自然言語処理やデータマイニングの技術を学んだ後、新卒で入社したグリーでのエンジニア職を経て山田氏と共にFindyを立ち上げた。

現在は2人を中心に約16名の社員・アルバイトの他、30人ほどのフリーランス・副業メンバーでプロダクトの開発を進めている。

最初のプロダクトはAIによる求人票の採点サービスだった

ファインディはもともと「Findy Score」というAIによる求人票の採点サービスからスタートしている。ただ、山田氏いわく「ある程度興味はもってもらえたけれど、一切売れなかった」そうだ。

当時は特にやることもなかったので「無料で求人票を書きます」と募集してみたところ、応募のあった10社の内9社がエンジニアの求人票に関するものだった。これが現在の主力事業にも繋がったという。

「エンジニアにヒアリングをしてみると『人事のエンジニア職種や開発言語に対する理解が不足していること』や『エンジニア自身が技術力や経験値を上手く伝えきれていないこと』などの悩みがあり、これがミスマッチの原因にもなっているとわかった」(山田氏)

この現場のペインを解消するプロダクトとして、2017年5月にスキル偏差値を軸にエンジニアと企業をマッチングするFindy 転職をリリース。2018年2月にはエンジニアのフリーランスや副業ニーズに対応したプロダクトとして、Findy Freelanceの運営も始めた。

Findy 転職は現在約1万人のエンジニア、約100社の企業が利用するサービスに成長。Findy Freelanceについても大手IT企業出身者や在職中のエンジニアを中心に約2000名が登録しているという。

ファインディのプロダクトを導入する企業

年収アップに結びつくスキル偏差値の開発へ

2つのプロダクトに共通する特徴は冒頭でも紹介したスキル偏差値だ。GitHub上で日本国内のユーザーと判定できるエンジニアの公開リポジトリ約15万件を解析し、個々のスキルを偏差値として数値化する。

コントリビューション数閲覧画面

「(技術に対する)人事とエンジニアの理解度の壁が大きかったので、その共通言語を作ることに加えて、算出した偏差値が年収とも相関してくるのが重要だと考えている。英国数理社の偏差値をあげたところで必ずしも収入に繋がるわけではないので、エンジニアのキャリアアップを支援する観点で『このスコアなら、これくらいの年収は目指せる』という目安を作りたい」(山田氏)

山田氏によると、このスキル偏差値を新卒採用などのシーンで使いたい企業もいるようだ。書類選考時など多くの候補者を判断する場合には、採用担当者が学歴(大学の偏差値など)を基準に技術力の高い学生を不採用としてしまい、有能な人材を逃してしまうケースもある。

実際、偏差値自体はそこまで高くない大学に通う学生が中退して就職するべくFindy 転職を使ったところ、数社から中途採用枠で内定が出たそう。スキル偏差値が65を超えるようなエンジニアは「学生だったとしても中途枠で内定が出るし、フリーランスとして時間単価で5000〜6000円稼ぐような人もいる」(山田氏)という。

「Findy 転職」ユーザーにアンケートを取ったところ、スキル偏差値が高いエンジニアは年収も高い傾向となった

エンジニア側のユーザーは腕試しも兼ねて登録しているケースも多く、大手IT企業からスタートアップに務めるエンジニアまで幅広い。特に副業については現職でテックリードを勤めているような人材や、マネジメント業務が多く現場でもっと手を動かしたいというベテランも多く、結果として優秀なエンジニアにアプローチできているそうだ。

スキル偏差値以外に関しては比較的シンプルなプロダクトだが、1企業あたりが1週間に押せる「いいね」の上限数に制限があったり、企業側だけでなくエンジニア側も興味を示していないとスカウトメールが送れなかったりと各機能はエンジニア目線での開発にこだわった。

「エンジニアが、エンジニアユーザー向けに機能を企画して作っているのが1番の特徴と言えるかもしれない」と山田氏が話すように、転職だけではなく普段のOSS(オープンソースソフトウェア)活動を応援する仕組みも実装している。

コントリビューションオブザイヤーの取り組み

スキル偏差値もフックとなって「そこまで積極的に転職活動をしていないエンジニア」も多数登録しているのは1つの特徴だ。ファインディのサービス上で自分が気になる企業が見つかり、転職顕在層になることなく転職するユーザーもいるという。

特にFindy 転職の場合は求人票のアドバイスなど企業側のサポートも徹底的に実施することでマッチングを後押ししている。この辺りは求人票採点サービスで培ったナレッジや経験なども活かされているようだ。

テクノロジーとビジネスを繋ぐ“接着剤”目指す

ファインディのメンバー。前列1番左が代表取締役CEOの山田裕一朗氏、1番右が共同創業者で取締役CTOの佐藤将高氏

ファインディでは今回調達した資金を活用して人材とアルゴリズムへの投資を強化する方針。「コアとなるスキル偏差値の算出やマッチングに関わるアルゴリズムの精度向上に一層力を入れていく」(佐藤氏)ほか、特に大企業の顧客獲得に向けたマーケティング活動にも資金を使っていく。

「かつて日本は技術立国としてハードウェアの領域で優れたプロダクトを生み出し、世界を驚かせてきた。今後はソフトウェアやアルゴリズムの領域でどれだけ戦えるかが重要。テクノロジーが組織に紐づいてきたハードとは異なり、ソフトやアルゴリズムでは個人の力の影響度が大きい。事業を通じて新たなテクノロジーの担い手となる個をエンパワーしていきたい」(山田氏)

現在はアルゴリズムを用いてエンジニア個人のスキルを見える化することに挑んでいるが、ゆくゆくは企業の技術力やカルチャーを評価する指標も開発していく予定。「テクノロジーとビジネスを繋ぐ接着剤になること」を1つの目標に、プロダクトの改善と拡張に取り組んでいくという。

【FounderStory #4】SmartHR宮田氏が「労務管理」領域からスタートした“社会の非合理を、ハックする”

Founder Story #4
SmartHR
代表取締役
宮田昇始
Shoji Miyata

TechCrunch Japanでは起業家の「原体験」に焦点を当てた、「Founder Story」シリーズを展開している。スタートアップ起業家はどのような社会課題を解決していくため、または世の中をどのように変えていくため、「起業」という選択肢を選んだのだろうか。普段のニュース記事とは異なるカタチで、起業家たちの物語を「図鑑」のように記録として残していきたいと思っている。今回の主人公はSmartHRで代表取締役を務める宮田昇始氏だ。

宮田昇始
SmartHR 代表取締役
熊本県で生まれ育ち、大学進学を機に上京。ITベンチャー、フリーランスなどを経て、医療系Webサイト開発会社でWebディレクターを務める。2013年にSmartHRの前身となるKUFUを設立。2015年にはTechCrunch Tokyoのスタートアップバトルで最優秀賞を受賞。今なお事業を急成長させ続けている。
Interviewer:Daisuke Kikuchi
TechCrunch Japan 編集記者
東京生まれで米国カリフォルニア州サンディエゴ育ち。英字新聞を発行する新聞社で政治・社会を担当の記者として活動後、2018年よりTechCrunch Japanに加入。

中高生時代から強かった「古い慣習」への反骨心

「起業当初は、プロダクトの作り方というものをまったくわかっていなかった」

――株式会社SmartHR代表取締役、宮田昇始氏は創業からの迷走期をそう振り返る。

「自分たちに何ができるか」を起点として2つのサービスを作り、いずれも失敗。次に「ユーザーのニーズ」に目を向け、いくつものアイデアを出したが、「自分たちがやる意味」を打ち出せるものが見つからない。しかし、自身の生活での実体験から社会課題を発見したとき、ようやくヒットプロダクト「SmartHR」が生まれたのだという。

SmartHRとは「クラウド人事労務ソフト」。雇用契約や入社手続きをペーパーレスで行い、従業員情報を自動で蓄積して一元管理する。年末調整の手続きやWeb給与明細の発行機能も備える。つまりは、「面倒な労務関連業務を楽にする」サービスだ。

利用企業は中小から大手まで2万社を超え、労務管理クラウドとしてシェアNo.1を誇る。

熊本県で生まれ育った宮田氏。中学・高校時代は私立の進学校に通い、寮生活を送っていた。寮の規則は厳しく、夜は早い時間に電源が落とされ、外出も当然禁止。そこで仲間たちと画策し、トイレの換気扇から電源を引っ張ってきてTVを観たり、カーテンをつなぎ合わせて雨どいをつたって抜け出したりしていたという。


宮田氏その頃から、古い規則や慣習に縛られるのがすごく嫌だったんですよね。そこを皆で工夫してハックするのが楽しかった。今も当社で掲げるキャッチフレーズは『社会の非合理を、ハックする』です

難病に苦しんで決意した「好きなことをして生きていく」

大学進学を機に上京。ITベンチャー、フリーランスなどを経て、医療系Webサイト開発会社でWebディレクターを務めていた27歳のとき、のちの起業につながる転機が訪れた。
「10万人に1人」と言われる難病「ハント症候群」を発症。三半規管に水ぼうそうができ、顔面まひ、聴覚障害、味覚障害などを引き起こす病だ。医師からは「完治の見込みは20%」と宣告された。


宮田氏自分の将来どうなっていくのか……って真剣に考えたとき、今の会社で働くよりも好きなことをやりたいと思った。この頃には、ずっとインターネット業界で食っていくという意志を固めていたので、『自分たちのWebサービスをつくろう』と。現・副社長兼CIOの内藤研介を誘って、2013年に立ち上げたのが株式会社KUFUです


社名の由来は、ジャパニーズヒップホップの先駆者Rhymesterの楽曲「K.U.F.U.」。メンバーから提案されたときはピンと来なかったが、歌詞の意味を知って納得した。


宮田氏K.U.F.U.とはそのまま『工夫』。持ってない奴が持っている奴に勝つための武器は工夫だ、という意味の歌詞なんです。下剋上感、スタートアップ感があっていいな、と思って。メルカリさんの社名が最初はコウゾウだったように、一見意味のなさそうな社名でも、サービスをヒットさせて社名を変えるのがかっこいいと思ってたんですよね(笑)


しかし、創業からしばらくは苦戦が続く。

まずは自分たちが得意とする領域から着手し、Webクリエイターと企業のマッチングサイトを立ち上げた。採用成立時の仲介手数料で稼ぐことを目論んだが、双方のニーズが合わずマッチングが成立しない。1年ほどで閉鎖を決めた

次に生み出したのは、法人向けクラウドサービスを比較できるクチコミサイト。滑り出しは順調に見えたが、3ヵ月ほどで成長が止まってしまう。何がだめなのか、わからなかった。

このタイミングで、スタートアップ育成を目的としたアクセラレータープログラム「Open Network Lab」に応募した。そこで受けた指摘により、宮田氏は自らの課題に気付く。


宮田氏『ユーザーのニーズに刺さっていないのではないか。ユーザーヒアリングから始めなさい』と言われて。そこで初めてユーザーの声を探り始めたら、ニーズがない、というか『あれば使ってみるけど、これで意思決定はしない』というものだったことがわかったんです。これまで自分たちは机上の空論だけでサービスをつくってたんだな、と思い知らされました

自分たちがやるからこそ意味があることって、何だ?

それからは「ユーザーニーズ」に目を向け、世の中の課題を探った。しかし、課題とソリューションを思いついても、仮説を立てて検証してみると「やはりだめだ」という結論に至るケースが続く。つくってみたものの、世に出すことなく終わったサービスは10個に及ぶ。


宮田氏中には『まぁまぁいけそう』というものもあったんです。でも、結果的にやらなかった。
当時、アイデアを思いつくと、メンターのような存在の方々に壁打ちをさせてもらっていたんですが『それ、あなたたちがやる意味は何?』と問われて答えられなかったからです


それでも、試行錯誤を繰り返すうちに、社会課題への嗅覚は鋭くなっていった。「誰か、何か困っていることはないか」――。そしてある日、宮田氏は一つの「可能性」を嗅ぎ付ける。

それは自宅でのこと。当時、妊娠9ヵ月だった妻が産休・育休の申請手続きをしていた。テーブルに広げられたたくさんの書類をのぞき込むと、いかにも複雑そうな内容。妻はそれらを一つひとつ手書きで記入している。

「社会保険の手続きって、どんな企業もやっている。かなり面倒な作業なのに、これを便利にするソリューションって聞いたことないな」。これは普遍的な課題だ、と感じた。

そして、宮田氏はこのジャンルに「自分がやる意味」を見出す。


宮田氏難病を患って2ヵ月間働けなかったとき、社会保険制度の一つである傷病手当金を受給した。このおかけで生活費を確保でき、リハビリに専念して完治できたんです。社会保険制度のありがたみを知っている自分が、このジャンルの課題を解決する――そんなストーリーは、今後の資金調達、広報、採用などにも活かせるのではないかと考えました


しかし、当時は収益源となる製品がなく、会社の残高も個人残高も10万円を切る寸前。開発を始めていいものか悩んだ。

そんな折、Open Network Labの「DemoDay」で優勝。開発資金を獲得する。

こうして、2015年11月、クラウド人事労務ソフトSmartHRの提供開始にこぎ着けた。その後、数々のスタートアップイベントで優勝を勝ち取ることになる。
こうしたイベントは、現・CTOである芹澤雅人氏との縁ももたらした。「TechCrunch Tokyo 2015」の会場を訪れ、「今日出ている会社で、一番ビビッときた会社に転職する」と決めていた芹澤氏が、「エンジニア募集中」という宮田氏の呼びかけに応えたのだ。

HRテックを盛り上げた後、HR以外への領域に挑戦したい

ローンチから3年にして、導入企業は2万社を超えた。この成長の裏側には、ローンチ後の「2つの決断」があったという。


宮田氏実はサービス出して半年後くらいに、ターゲットユーザーをがらっと変えたんです。当初は10人未満の企業を想定していたんですが、数十~数百名規模の企業からの引き合いが多かった。それに対応するため、根幹の仕組みをリプレイスしたんです。組織体制が固まっていない時期だったので大変でしたが、初期に対応しておけたのはよかったと思います。そして1年半くらい経つと
『1000名以上規模の顧客を狙っていくべきかどうか』という議論が持ち上がった。その規模になると全国に拠点があり、拠点ごとに社会保険制度の『事業者番号』が割り当てられている。これに対応するには大きなシステム改修が必要になるので迷いはあったんですが、メンバーの『攻めましょう』の声に後押しされ、決断しました。その2つの転機が、今につながっています


現在は、アップセルプロダクトの開発にも注力。『SmartHR Plus』としてプラットホーム化を目指す。


宮田氏昨年夏には雇用契約書締結のアプリを出しましたが、本体の初期の伸びよりも2倍ぐらい速いスピードで成長しています。ゆくゆくは当社の仕組みを外部に開放し、HR系のSaaSの会社さんがSmartHRに乗っかれるようにしていきたい。そうすれば、彼らは製品づくりに集中できて、SmartHRを利用している会社さんは製品を簡単に導入できる。そんなプラットホームを提供し、HRテック分野を活性化させたいですね。そしていずれはHR領域にとどまらず、テクノロジーを使って社会全体の非合理をハックしていきたいと思います

( 取材・構成:Daisuke Kikuchi / 執筆:青木典子 / 撮影:田中振一 / ディレクション:平泉佑真)

採用管理システム「HERP ATS」正式リリース、社員参加型採用にも対応

近年、労働者人口の減少や通年採用などにより、人材採用の世界にも変化が訪れており、担当者は柔軟な採用への対応と効率化を求められている。そんな中で、アナログな採用活動に代わって採用業務をサポートするものとして導入が進んでいるのが「ATS(Applicant Tracking System)」=採用管理システムだ。

複数の求人媒体と自動連動する採用管理システム「HERP ATS」を2018年1月からベータ版として提供してきたHERPは3月18日、同プロダクトを正式にリリースしたと発表。正式リリースに伴い、採用担当者だけでなく、全社で採用に取り組みたい企業向けに機能を強化し、本格的にサービスをスタートした。

HERP ATSは、既存の求人媒体と情報を連携して応募を自動で登録し、一括管理できる採用プラットフォームとして、2018年1月にベータ版が公開された。IT系企業が利用する10以上の求人媒体からの応募情報を自動取得。採用担当者の事務作業を自動化し、より本質的な採用活動に取り組めるようにすることを目的としている。

今回の正式リリースでは、さらに媒体との連携だけでなく、エージェント推薦や社員紹介など、別の経路からの応募情報も集約し、採用候補者の情報を一元管理できるようにした。

また、候補者情報や面接内容は、採用の選考プロセスに関わるメンバーへSlack連携で自動で共有される。また採用成果は職種別にレポートすることも可能。選考の意思決定のスピードアップ、精度の向上や、採用担当者から現場メンバーへの、より本質的なフィードバックが期待できる。

さらに面接スケジュールを登録すると、面接官を務める社内メンバーへ通知が送られる。選考フローをスムーズに管理することができ、採用の進捗もリアルタイムで把握可能。選考プロセスが可視化されることで、採用に関わる現場メンバーが採用に参画しやすくなるという。

これらの拡張機能はいずれも、採用活動を採用担当者だけのものとするのではなく、リファラル採用など、日本の企業でも取り入れられるようになってきた、全社一丸となって社員採用に取り組もう、というトレンドに沿ったものだ。採用担当者に採用業務が集中することを回避し、「現場の社員が自社の採用に積極的に参加しやすい仕組みとなった」とHERPではコメントしている。

HERP ATSは現在、IT系を中心に、導入企業が50社を超えている。導入企業には「CASH」のBANKや「ホテル番付」の空、スキルマッチングのココナラなど、TechCrunchでもおなじみのスタートアップも多く、採用に手間をできるだけかけず効率的に、かつ社員主導型で取り組みたい、というニーズは高かったということだ。

HERPは2017年3月、リクルートとエウレカで採用に携わっていた代表取締役CEOの庄田一郎氏が設立。TechCrunch Tokyo 2018スタートアップバトルではファイナリストとして出場した同社は、人材採用業界版のOpen API、「Open Recruiting API構想」を掲げ、HR Tech各社とのAPI連携も進めている

副業で就活生を推薦、学生・メンター・企業をつなぐ「就活メンターズ」

学生向け履修管理アプリ「Orario」を開発・運営するOrarioは3月5日、就活生と社会人、そして新卒採用をしたい企業とをつなぐ就活支援サービス「就活メンターズ」をリリースした。

就活メンターズでは、メンターとして学生の就活支援を行いたい社会人と就活生とをマッチング。メンター登録している社会人は、企業のリファラル依頼に応えて、適切と思われる学生の推薦文を送ることで1推薦あたり500円、学生の入社が決まれば10万円〜の成功報酬が得られる。

メンタリングでは学生の課題に応じて、自己分析やエントリーシートの添削、面談練習などが行われる。対面だけでなく、ビデオ通話やチャットでのやり取りも可能だ。

メンターによる学生の推薦は社会人の「副業」という位置付けで、実施にあたっては、有料職業紹介免許を持つOrarioと雇用契約を結ぶ形を取る。

一方、企業の採用担当者は、採用したい新卒人材について「○○な学生を紹介してほしい」と就活メンターズに掲載すれば、その後はメンターからの推薦を待てばよい。掲載する内容は例えば「機械学習の研究をしていた学生を紹介してください」「1年以上の留学経験がある学生を紹介してください」「100名以上のサークルの代表学生を紹介してください」といった具合だ。

人事担当者にとってはスクリーニングやスカウト送信など、手間のかかる作業が省け、人材会社ではなく、社会人として現場で働くメンターによる情報が得られるのが利点だ。また、メンターが内定後、入社までのフォローを行うことで、学生の内定辞退を抑えることも期待できる。

企業が紹介報酬を支払うのは内定が決まった時点で、完全成果報酬型となっている。内定辞退が発生した場合には料金は返金される。

メンター登録の際には、Orarioによる本人確認、在籍確認などの審査が行われ、採用関係者や人材エージェントはメンターとして登録できないようになっている。これは学生が現役社会人による中立的な支援を得られるようにする、という目的のほかに、昨今問題となっている、OB・OGが訪問した学生に見返りを求めるセクハラ・パワハラなどの不祥事を防ぐための対策でもあるということだ。

またメンターとしての実績や、学生によるメンターのレビュー評価の公開も実施。今後メンターへの教育コンテンツの提供、メンターのスコアリングの仕組みやプレミアムメンター制度の導入なども予定してされているという。

Orario代表取締役の芳本大樹氏は、「推薦文をとにかく書いて『数打ちゃ当たる』ということではなく、メンターとしての質を担保する仕組みを投入していく」と話している。

「社会に出る人が在学生に還元する仕組みを」

Orarioは2016年6月の創業。芳本氏が既存サービスである履修管理アプリ、Orarioを開発したのは、立命館大学在学中のことだ。Orarioは、ユーザーである学生が自分のID・パスワードを使って大学サーバーへアクセスし、ウェブオートメーションにより時間割の生成に必要な情報を取得。スマホなどユーザーのデバイスにダウンロードして表示する仕組みだ。

現在、関東・関西の18大学に対応し、14万ダウンロードに達したOrario。芳本氏は「単にシラバス管理アプリというだけでなく、受講者同士でのノート共有やチャットなど、SNSのように使える点がポイント」とOrarioの特徴について説明している。

今後はOrarioを「大学生のためのカレンダーアプリ」として大幅アップデートする予定だという芳本氏。履修情報に加えてアルバイトやイベント、就活などの情報も入力できるようにすることで、同社としてはビッグデータビジネスにつなげたい考えだ。

Orarioが「新入学生が合格後の3月から4年生の3月までは使ってもらえる」サービスであるのに対して、就活メンターズは「社会に出る人が、大学に在籍する人に還元する仕組みを作りたい」として開発されたサービスだ。このため「(自動化、AIではなく)あえて人が関わる就活サービスとした」と芳本氏は話す。

就活メンターズ提供の背景には、2020年度から始まる新卒採用ルールの廃止と、副業の解禁とがある。

「今、企業が攻めの採用へとシフトする中で、新卒人材の通年採用も始まれば、人事担当者はさらに忙しさが増す。従来のOB・OG訪問といった社内リファラルから、他社に所属する人でも本当にいいと思った人材なら推薦できる他社リファラルも取り入れて、社外にもファンを増やす仕組みが必要となっていくだろう」(芳本氏)

また、OB・OG訪問は今、半数以上の学生が実施するという調査もあるのだが、1度の訪問で、その場限りでやり取りが終わる傾向にあるという。「これまでのOB・OG訪問では、長期のメンタリングで学生と企業を線でつなぐことができていなかった」と芳本氏。既存のOB・OG訪問マッチングサービスとは異なり、内定まで長期サポートすることで、無償のボランティアではなく報酬も得られる「メンターマッチングプラットフォーム」として就活メンターズを開発したと話している。

クローズドでサービスを提供していた2019年1月時点でのメンター登録者数は300人。これを「2020年1月には3000人に増やしたい」と芳本氏はいう。テストケースではIT系スタートアップを中心に採用されているとのこと。ある企業が学生向けに行った説明選考会の例では、エントリーから実際の参加に至ったコンバージョン率は、ウェブ経由の60%に対し、メンター経由では90%と高い割合だったそうで、これが「内定決定率にも影響するのではないか」と芳本氏は見ている。

芳本氏は「人材紹介は今後、会社から個人へと移っていく」として、個人と個人とのつながりで就活をサポートする就活メンターズの浸透にも自信を見せていた。

AIがキャリアシナリオを診断・提示するアプリ「VIEW」正式ローンチ

20代の転職者を対象に転職支援サービスを提供するアサインは2月27日、ミレニアル世代のためのキャリアシミュレーションアプリ「VIEW(ビュー)」を正式にローンチした。

VIEWは、ユーザーが経歴と価値観を登録するとAIがキャリア診断を行い、今後のキャリアシナリオを提示してくれるアプリだ。ユーザーの価値観に合う職業、生涯年収やロールモデルなど、そのキャリアを選んだ場合の将来像を見ることができる。

キャリアシナリオは業界・職種単位で提示され、合計1000以上の業界×職種の組み合わせから、ユーザーに合ったものをランキング形式で確認できる。興味のあるシナリオを見つけたら、それぞれのシナリオを得意分野とするプロの転職エージェントへ無料で相談することもできる。

アサインは2016年12月の創業で、若手層を対象に転職エージェント事業を行ってきた。副業解禁や採用ルールの廃止など就労を取り巻く環境を踏まえ、「特に若手ハイクラスの転職は活性化している」としながら、「若手の転職志望者は働き方の多様化が広がる今、『このままでいいのかわからない』という漠然とした悩みを抱える傾向にある」と同社の調査結果を公表している。

若手転職希望者の意識調査(アサイン調べ)

そうした中で、若手転職者層の価値観と経歴によってキャリア支援を行ってきたノウハウと、独自のAIエンジン「VIEW AI」とを組み合わせ、今回のアプリ開発・提供に至ったという。

今後、アサインでは新卒採用領域へのサービス範囲拡大も視野に入れながら、VIEW AIの利用を広げてデータを蓄積し、機械学習によるレコメンド精度の向上を図るとしている。

人材採用のOpen API構想を掲げるHERPが「doda」と連携開始へ

(写真左から)パーソルキャリア 転職メディア事業部プロダクト開発統括部転職メディアBITA部プロダクトBITAグループマネジャー 松岡諭史氏、ビジネス開発部DODA Recruitersビジネス開発グループ 原田歩美氏、プロダクト企画統括部ビジネス開発部ゼネラルマネジャー 福島直人氏、HERP代表取締役CEO 庄⽥⼀郎氏

求人媒体連動型の採用管理システム「HERP ATS」を開発・運営するスタートアップ、HERP。TechCrunch Tokyo 2018スタートアップバトルのファイナリストでもある同社は、人材採用業界版のOpen API構想、「Open Recruiting API構想」を掲げている。

企業の採用業務に関連するあらゆる情報をオープン化する、というこの構想でHERPが目指すのは、エージェントや媒体に偏りがちな求職者の情報、企業の情報のオープン化による、採用業務の合理化だ。企業・候補者・採用媒体それぞれにとって、よりメリットある形に採用を進化させることを目的としている。

Open Recruiting API構想のもと、同社は2018年7月には第1弾として「Find Job!」「SCOUTER」とのAPI連携を発表。今年1月には、第2弾として「bosyu」「Findy」「YOUTRUST」とのAPI連携を発表していた。

そして今日2月26日には構想の第3弾として、パーソルキャリアの中途採用管理システム「doda Assist(デューダ アシスト)」が保有する応募者データとの連携を4月から開始することを明らかにした。

doda Assistはパーソルキャリアが運営する「doda」ブランドの転職サービス、「doda求⼈情報サービス」、「doda⼈材紹介サービス」、「doda Recruiters」を利用する企業が、中途採用業務全般を一元管理できるシステム。選考・応募者情報・⼈材紹介会社の管理機能や、メール連絡、doda Recruitersを使ったスカウト機能などで、採⽤業務の効率アップを支援している。

パーソルキャリアではHERPとの業務連携、Open Recruiting API構想への参加により、「dodaを利用する顧客の採用事務工数を削減し、より価値が高い採用業務に注力できるよう、取り組んでいく」としている。

HERPは2017年3月、リクルートとエウレカで採用に携わっていた代表取締役CEOの庄田一郎氏により設立された。実際に採用現場に携わった経験から庄田氏は、Open Recruiting API構想を表明。構想発表時の取材でも庄田氏は「採用、HRの業界構造を変えたい」「今後、採用にまつわる情報は複雑化する。これを見据えて、データオープン化への対応を準備していく」と語っていた。

HERPでは引き続き、企業の採⽤活動で合理的な意思決定をサポートするとともに、HR業界のより良い未来を実現すべく、プロダクト開発に取り組む、としている。

SCOUTERが月額制リファレンスチェックサービス「back check」β版の事前登録を開始

有名な企業に務めている誰もが優秀なわけではないが、採用選考時には候補者が所属する会社の知名度によって合否が左右されることは珍しくはないだろう。だが一人当たりの転職回数が増え、副業やフリーランスを始めとした働き方が多様化した結果、従来の履歴書や職務経歴書から取得できる所属企業の知名度、在籍期間、転職回数といった情報は意味を持たなくなりつつある。

そんな時代に重要となってくるのがリファレンスチェックだ。クラウド求人プラットフォーム「SARDINE」などを提供するSCOUTERが1月17日、採用候補者の同僚や上司などから簡単にリファレンスを取得できるリファレンスチェックサービス「back check」β版の事前登録を開始したので紹介したい。

back checkはリファレンスチェックのサービスで、面接や書類からだけでは見えてこない採用候補者の経歴や実績に関する情報を、候補者の上司や同僚といった一緒に働いた経験のある第三者から取得することができる。要するに採用後のミスマッチや職歴詐欺を防げたり、逆に面接では見えてこなかった候補者の“優秀な側面”も元同僚からの評価で判明したりする。

back checkでは採用予定の職種やポジションに合わせて数十問の質問を自動生成。利用経験がないユーザーでも“候補者の情報を登録するだけ”で簡単にリファレンスチェックを実施することができる。

リファレンスチェックで得られた回答はback check上ですべて確認することができ、候補者の人物像や仕事における強みと弱みが一目でわかるようにデザインされている。また、リファレンスチェック時の質問内容は企業ごとにカスタマイズ可能なため、職種やポジションに合わせた最適化が可能だ。

月額価格、サービス利用開始日は未定(事前登録者に随時配信)だが、「ライト」「スタンダード」「エンタープライズ」の3つのプランから選ぶことができる。SCOUTERいわく「業界一低コスト」であり、実施単価は従来のリファレンスチェックの1/10程度。そのため大手企業からスタートアップまで幅広いスケールの企業の利用を同社は見込んでいる。

面接時、多くの採用候補者は口頭による説明以外に過去の実績を証明する手段が少なく、もう一方で、発言内容のファクトチェックも困難だ。同社いわく、それが実態と評価の乖離が発生する要因となっているのだという。「日々の業務における信頼と実績を、次の会社に繰越せる」社会をリファレンスチェックによって実現するべく、同社はback checkの開発に踏み切った。

同社は短期的には選考時の不正や採用後のトラブルやミスマッチの減少を目標としている。中長期では候補者が在籍している「会社の知名度や雇用形態」によるバイアスを解消することで、より一人一人の“本当の価値”による採用の合否が実現された社会を目指す。

SCOUTERは3月中にもback checkを正式リリースする予定だ。

企業を“卒業”したアルムナイとの新しい関係づくりをSaaSで支援、ハッカズークが資金調達

人事・採用に携わる人やHR Techの関係者なら、「アルムナイ(alumni)」という言葉を一度は聞いたことがあるのではないだろうか。もともと学校の「卒業生」「同窓生」といった意味だが、企業のOB・OGの意味でも使われるようになっている。

HR Techスタートアップのハッカズークが提供するのは、そんなアルムナイと企業との関係性を退職後もつなぐためのプラットフォーム「Official-Alumni.com」だ。1月16日、ハッカズークは、ドリームインキュベータと複数の個人投資家を引受先として第三者割当増資による資金調達を実施したことを明らかにした。

企業とアルムナイとの新しい関係性を築く

「採用活動から勤務中の人事管理で、候補者や社員との関係性を築いてきた企業が、退職後も退職者との人的リレーションを保ち、企業と退職者との新しい関係性を築こう、というのがアルムナイリレーションの考え方だ」ハッカズーク代表取締役CEOの鈴木仁志氏は、このように同社のサービスについて説明する。

人材不足の折、アルムナイリレーションシップは再雇用やリファラル採用など、採用活動の場面で注目されることが増えている。だが、鈴木氏によれば「現在、当社のサービスを利用する顧客企業はみんな、再雇用だけでなく、アルムナイを業務委託パートナーとして活用したり、退職した企業のお客さんになるアルムナイもいる」とのこと。

元社員の再雇用やリファラル採用での口コミ・紹介といった制度をアルムナイ向けに用意することのメリットは、採用に直接関係する部分でもあり、想像が付きやすい。さらに、ともに仕事をする相手として、また顧客としても、その企業をよく知るからこそ接点を持ち続けるメリットがあるそうだ。

そのほかにも「アルムナイと取り組むオープンイノベーションは、うまくいきやすい」と鈴木氏はいう。「アルムナイは一度社外に出ることで、古巣にどのような変革が必要かは分かっている。一方で社内の政治力学も知っているので、全くの他人が推し進めるのとは違い、よい提案になる」のだそうだ。

アルムナイリレーションでは「会社だけが得をする形は絶対うまくいかない、といつもクライアントにも伝えている」と鈴木氏は述べ、アルムナイとの関係性を続けることの効果を説明している。

「アルムナイは、社外にいながら古巣の良さを一番知っている。組織の中で一度は折り合いが付かずに辞めてしまったとしても、そこでの仕事自体は好きだったり、サービスには愛着があったりする人も多い。そうした人たちと企業が互いにポジティブな関係性を育むことで、働き方改革ならぬ“辞め方改革”が進むはずだ」(鈴木氏)

鈴木氏は「退職したら関係が切れる、という前提では、退職者はきれいな辞め方をしないこともある。退職後もつながる前提なら、きれいに辞め、企業にもメリットが大きい」という。

アルムナイ特化型SaaS「Official-Alumni.com」

アルムナイリレーション専用SaaSのOfficial-Alumni.comは、2018年1月にベータ版がリリースされた。ハッカズークでは、このシステムに加え、制度の企画・設計コンサルティング、運用サポートをサービスとして提供している。

Official-Alumni.comは、企業がアルムナイとの接点を作り、「今アルムナイがどうしているか」を知るためのウェブアプリだ。チャット形式のメッセージ機能で、アルムナイとのコミュニケーションの接点を保ち、データを蓄積。実名でのやり取りだけでなく、「意見箱」のように匿名でアルムナイが情報発信する機能も備えている。

「匿名メッセージは、例えば企業がよいと思って取り入れた人事制度に、社員が実は不満を抱えている、といった本音の評判をOB・OG経由で聴き取る、というような形で利用されている」(鈴木氏)

それぞれのメッセージ機能は1対1のやり取りが基本だが、グループチャットができる「ルーム機能」も備えている。

「SNSなどでOB・OGグループを作ると、メンバー間で迷惑メッセージの発信リスクが生まれるが、Official-Alumni.comでは個々のメンバーの検索はできないので、その心配がない。一方で『○○年退職組のグループ』というように目的や属性ごとにグループが作れるので、活発なコミュニケーションは行える」と鈴木氏。「SNSやチャットツール、CRMといった非特化型のほかのサービスとは違う、アルムナイ特化型システムとなっている」と話している。

システムにはNPS/eNPSを活用して、アルムナイのエンゲージメントを測定する「Gauge(ゲージ)」も採用されている。管理画面はCRMライクな見た目だが、こうした機能を取り入れ、やはりアルムナイ管理に特化したつくりになっているという。

「アルムナイ」への理解を進めて成長加速を目指す

「アルムナイという言葉が浸透してきた今、言葉は広がってきたが『企業が退職者をも搾取するためのもの』といった誤解もある」と鈴木氏は語る。こうした風潮を変えていくことで、ハッカズークの成長を加速させたい、という思いが資金調達の背景にはあるそうだ。

ハッカズークは2017年7月の設立。鈴木氏は人事・採用のコンサルティング・アウトソーシングのレジェンダ・グループのシンガポール法人で代表取締役社長を務めていた人物だ。海外のHR Tech動向に明るく、TechCrunch JapanにHR Tech Conferenceのレポートを寄稿したことや、イベントTechCrunch Schoolで海外HR Tech市場のトレンドを解説してもらったこともある。

今回の資金調達は2018年5月に実施した、複数のエンジェル投資家による調達に続くもの。ドリームインキュベータのほかに、ポケラボ創業者でジラフ執行役員の佐々木俊介氏、ほか個人投資家1名から出資を受けた。調達金額は明らかにされていないが、関係者によれば数千万円規模だということだ。

新たに株主となったドリームインキュベータについて鈴木氏は「調達金額の多寡よりも、戦略コンサルティングとインキュベーションで力のあるVCのドリームインキュベータの支援を得ることで、事業拡大を加速したいと考えた」と話している。

調達資金は、PR、プロダクト開発、そしてコンサルティングやカスタマーサクセスのための人材採用に充てる。「PRに関しては、アルムナイリレーションが企業にとっても、個人にとっても必要で、なくてはならないものになるということを伝えたい。企業がアルムナイとつながること、アルムナイも企業とつながることが当たり前で、メリットになるということを発信していく」(鈴木氏)

「Official-Alumni.comの熱狂的ファンをつくるのが、2019年の目標」と鈴木氏は語る。「顧客の中には、後輩のために熱心にコミュニケーションを取るアルムナイがいる企業もあって、チャットで使える『アルムナイスタンプ』まで作っている。そういう機能を入れられるのは、特化型サービスの強みだ。強いカルチャーは、熱量のあるカルトを醸成する。その中でアルムナイと企業が永続的につながることができる」(鈴木氏)

現在の顧客企業は規模も業種も、アルムナイリレーションを取る目的もさまざまだと、鈴木氏はいう。「システム開発や人材系企業ではオープンイノベーションのために利用している例がある。また飲食・小売などでは、店舗のディスプレイなど“ビジュアルマーチャンダイジング”やメニューの新商品開発などで、アルムナイから意見をもらうケースも」(鈴木氏)

どういった規模や目的でサービスの利用が進み、どこでOfficial-Alumni.comがスケールするかは、今後見極めていくという鈴木氏。直近では、辞めた人が何をしているかを把握することができて、アルムナイへのメリット提供や関係性が作れるように、システムに加えてコンサルティングで対応していくと話していた。

写真左端:ハッカズーク代表取締役CEO 鈴木仁志氏

人の創造性を定量化するイノベーションテックのVISITS Technologiesが5億円を調達

独自のアルゴリズムによって創造性を可視化する「ideagram」やOBOG訪問サービス「VISITS OB」を提供するVISITS Technologies。同社は7月9日、CAC CAPITAL、未来創生ファンド、FFGベンチャービジネスパートナーズ、みずほキャピタル、個人投資家を引受先とする第三者割当増資により、総額約5億円を調達したことを明らかにした。

VISITS Technologiesは2014年の設立。2017年7月にパーソルホールディングス、ベクトル、三菱UFJキャピタル、グローブアドバイザーズなどから5.7億円を調達しているほか、それ以前にも代々木ゼミナールグループ、ウィルグループインキュベートファンドなどから資金調達を実施。

これまでの累計調達額は今回も含めて約14億円になるという。

共感を軸に人のつながりを生みだすOB・OG訪問プラットフォーム

VISITS Technologiesでは現在大きく2つのサービスを展開している。そのひとつが前回調達時にも紹介したVISITS OBだ。

VISITS OBは「ビジョンに共感し合える人のつながり」を生み出すことを特徴とした採用サービス。よくありがちな同種のサービスとは違い、OB・OGは会社の紹介などではなく、自分がこれまでどんなことをしてきたのか、これからどんな挑戦をしていきたいのかといった個人的なエピソードをプロフィールとして記入する。

社会人と学生双方のプロフィールをディープラーニングにかけることで「人が何に興味を持つのか、どんなことに共感するのか」を抽出。共感をベースにしたマッチングの実現や、企業のブランディング最適化のサポートを行う。

サービス開始から2年半でユーザー数は約10万人。掲載企業数も約2000社に上り、マッチング数は100万件を越えた。昨年からはユーザー専用のコミュニティスペース「HELLO,VISITS」を複数のエリアで設立するなど、新しい取り組みも始めている。

クリエイティビティを科学しイノベーションを創出する新サービス

VISITS Technologiesが展開するもうひとつのプラットフォームが、2017年10月に発表した「ideagram」だ。

このサービスはこれまで定義することが難しかった人の創造性や目利き力、アイデアの価値を定量化することで企業内の人材発掘や育成、イノベーションの創出を支援するというもの。具体的には「アイデア創造」と「アイデア評価」という2つの試験をオンラインで実施。参加者のデータを独自のアルゴリズムで分析する。

おもしろいのは単なる多数決などではないということだ。ideagramではアイデア創造の結果によって各メンバーの目利き力を予測し、アイデア評価の際に各々の目利き力を考慮する(ウエイトを加重する)。これによって「多くのメンバーがイマイチだと言っていたとしても、目利き力が高いとされるメンバーがおもしろいと言ったアイデア」が評価されるようになる。

つまり従来は多くのメンバーに理解されずに埋もれしてしまっていたような「破壊的イノベーションに繋がるようなアイデア」に、個々のクリエイティビティやアイデアの価値を可視化することで気づけるようになるかもしれないということだ。

もちろん社内で誰がクリエイティブか定量的にわかるようになれば、人員配置を考える際にも役に立つし、研修用のツールとしてクリエイティビティをトレーニングすることもできるという。

少し説明をはしょってしまったけど、厳密には上述したプロセスを経て「参加者全体として『どのような創造性と目利き力の確率分布に従っていれば、全体として最も納得性の高い合意形成が成立するか』という『説明力最大化問題』を数学で解き明かしている」とのこと。

この独自の合意形成アルゴリズムがideagramの特徴となっている。

AI時代に必要なクリエイティビティを数式で可視化する

VISITS Technologiesで代表取締役を務める松本勝氏は元ゴールドマンサックスのトレーダーであり、その後人工知能を用いた投資ファンドの設立にも携わってきた人物。AIに関わってきた歴も長いからこそ「AIは決して万能ではない」と話す。

基本的にAIは過去のデータから学習して判断を行うもの。つまり「教師データ」がある場合に、一層そのパワーを発揮する。

一方で破壊的イノベーションと呼ばれる類のものは、そのほとんどが前例のないアイデア。AIが生み出したり、見つけたりするのが苦手だけれど価値があるものだと言える。

「AIが進化することで、人に求められる能力や人がフォーカスする領域も変わる。そこで重要なのが(AIには難しい)クリエイティビティであり、その源泉となる共感。これこそが1番のフォーカスポイントだと以前から言われているのに、これまではそのスキルが定義されることもなく、育て方もわからないままだった。ideagramではこのクリエイティビティを科学する」(松本氏)

共感を科学するという点では、以前から運営してきたVISITS OBから一貫するテーマだ。

VISITS OBは共感という軸で、共に新しい社会価値を創造する仲間を見つけるためのサービス。ideagramは、社会価値に繋がるアイデアを見つけたり、必要なスキルを磨くためのサービスという位置付けだという。

松本氏によるとideagramはすでに大手企業を中心に約20社に導入が決まっていて(運用を開始している企業も含め)、今後も引き続き展開を加速させていく予定だ。

また企業向けのプロダクトだけでなく、同社のエンジンとブロックチェーンを組み合わせたオープンな社会課題解決プラットフォームを開発しているそう。登録された社会課題とさまざまな企業が持つ技術などのシーズの組み合わせから最適なものを自動抽出することで、社会課題の解決と同時に、新たなイノベーションの種を発掘するエコシステムの構築を目指しているようだ。

副業ヘッドハンティングのSCOUTERが人材紹介会社向けサービス「SARDINE」を提供開始

個人が副業で、知人や友人などの身近な転職希望者を企業に紹介して報酬を得られる——ソーシャルヘッドハンティングサービス「SCOUTER」はユーザーが人材エージェントとして登録する、というちょっと変わった切り口の人材紹介サービスだ。このサービスを運営するSCOUTERが5月29日、個人ではなく人材紹介会社が求人情報を利用できる、月額制の法人向けサービス「SARDINE(サーディン)」を正式リリースした。

2016年4月のSCOUTER運営開始から、約2年。SCOUTER代表取締役社長の中嶋汰朗氏によると、「スカウター」と呼ばれる個人の紹介者(ヘッドハンター)は順調に増えていて、審査応募数では約9000人となっているとのこと。求人を掲載する法人も約1000社となり、幅広い業界の大手からスタートアップまで求人がそろう。

そうした中、副業でなく本業として人材紹介を行っていた元エージェントや現役エージェントにも、スカウターとして登録するユーザーが現れてきた、と中嶋氏は話す。

有料職業紹介、つまり人材紹介を行う事業所は日本全国で約2万カ所。有効求人倍率が増え続け、紹介免許の許可基準が緩和されたこともあって、さらに増加が見込まれる。そして、そのうちの約85%が従業員数10名以下の小規模事業者と言われている。

しかし、中小規模のエージェントでは求人がそろえられず、転職希望者に紹介できる案件がないケースも多いという。そうした中小エージェントから「SCOUTERを会社で使いたいという要望が出てきた」と中嶋氏。しかしSCOUTERでは紹介者が得られる報酬は転職者の年収の5%に限られる。このため、法人向けにより高い報酬が得られるサービスが求められていた。

新サービスのSARDINEは「月額利用料のみ」「紹介手数料は100%還元」というモデル。毎月利用料を支払えば、SCOUTERと共通でサービス上に掲載されている約1000社の求人を、自社が抱える求人と同様に転職希望者に紹介することが可能になる。

「紹介免許の取得が容易になったことで、人材紹介会社は個人や小規模にシフトし、数も増えている。ただし、どこも同じような業務になっていて、求職者が分散している。SARDINEではクラウドサービスとして個人・小規模業者を一カ所に集めることで、管理コストを減らすことができる」(中嶋氏)

特に中小規模の紹介会社では、求人開拓のリソースが不足していることが課題となる、と中嶋氏は言う。「求人開拓をしなくてもいい、集客しなくてもいい、となれば、その分の時間を企業と求職者のマッチングに充てることができる。アナログ作業も多い業界だが、面談以外の時間を無くせば、人と向き合う時間が増え、求職者に満足いくサポートもできる。結果として採用される確率も高くなり、求職者の満足度も高くなる」(中嶋氏)

SARDINEでは、これまでSCOUTERで蓄積したノウハウをもとに、選考管理に関する機能もエージェントへ提供。面接スケジュールの調整や選考結果のメール・電話連絡などのアナログ作業を削減できるようにしている。

また求人を行う企業にとってのメリットも増える。「求人をサービスに載せるだけで、SCOUTERに加えて複数の紹介会社から一括で紹介を受けることができるので、効率的に採用ができるようになる」(中嶋氏)

SARDINEと同じように中小規模のエージェントと企業をマッチングするサービスでは、groovesが運営する「Croud Agent(クラウドエージェント)」などがあるが、これらのサービスでは月額課金に加え、成約時に成功報酬の30%を利用料として支払うことになっている。

SARDINEは月額利用料のみで利用できる。月額利用料は公表されていないが、3カ月に1人紹介が成立すれば収益化できる金額だということだ。SARDINEはこれまでにクローズドベータ版として、数十社の人材紹介会社向けに運用されていたのだが、既に1000万円を売り上げたところも出ているという。

中嶋氏は成果報酬を100%還元することで「エージェントがインセンティブが高い求人を優先するのではなく、転職者本人が希望する求人を選択してプッシュすることになるので、選択をねじ曲げず、マッチング率も高められる」と話す。

さらに成果報酬の還元でエージェントの利用が増えれば、データの集約・蓄積も進むと中嶋氏は考えている。「求人、エージェントをひとまとめにすることで、紹介数が増え、紹介が増えることでフィードバックがたまり、紹介の精度が上がる。レジュメが蓄積されるだけでは、採用されるかどうかはハッキリわからないが、選考が進めば情報がたまる。そうしたデータはSCOUTERでも共通で使える。利用が増えて、情報がアセットとしてたまるのが我々としては理想だ」(中嶋氏)

サービス名のSARDINEはイワシを意味する。イワシは群れで泳ぐことで生存確率を高め、泳ぐエネルギーを節約できるとも言われる。中嶋氏は「SARDINEは小規模な紹介会社をグループ化して、個の力を集めて大手にも対抗しうる存在となることを目指している」と言う。

「紹介が多く情報が集まる大手と中小エージェントとの差は開きっぱなしだった。しかし小さいからこそきめ細かくできる、というクオリティもある。(クラウドサービスは)中央集権的ではあるけれど、集まる情報を使って、大手だからできていたことを小さいところでもできるというのが大事。それで格差を埋めることができる」(中嶋氏)

「小さなエージェントがビジネスとして成立することで、求職者にも選択肢を提供できる。そのために(成果報酬を手数料に入れない)サブスクリプション型に振り切った」と中嶋氏は、新サービスで求職者へのメリットも増えると話す。

「サービスを通して、どの人がどの分野で成約率が高いかといった、エージェントに関する情報も持つことができ、それを求職者に提供できる。いいことをやっているエージェントに次の仕事が来るように、適切な評価軸を提供することも大切」(中嶋氏)

中嶋氏は「サービスはプロダクトを作る力と、企業の人事担当に営業して説明する力、両方がないと成り立たない。2年間のSCOUTER運営を通じて、そのバランス感覚がわかってきた」と話している。

SCOUTERとSARDINE双方で相互協力も進め、人材紹介カテゴリーでトップを取っていきたい、という中嶋氏。そのために「エージェントが仕事をしやすいように効率化し、データを活用しつつ、求人が集まり、求人が集まれば紹介も増える、といういい循環を作っていきたい」と語った。

ミスマッチをなくし成果が上がる、エンジニアの採用・評価テクニック——TC School #13

TechCrunch Japanが主催するテーマ特化型のイベント「TechCrunch School」で、2017年3月から5回にわたって人材領域をテーマに開催してきた「HR Tech最前線」。その第5弾となるイベント「TechCrunch School #13 HR Tech最前線(5) presented by エン・ジャパン」が3月22日に行われた。

イベントの前半部分をお伝えした前編に続き本稿では、昨年7月のイベントから2度目の登壇となる及川氏を中心に「エンジニア人材の採用、教育、評価」について話を聞く、パネルディスカッションの後半部分をレポートする。

登壇者は前半と同じく、プロダクト・エンジニアリングアドバイザー(フリーランスコンサルタント)の及川卓也氏とグロービス・キャピタル・パートナーズ パートナー/Chief Strategy Officerの高宮慎一氏、そしてエン・ジャパン 執行役員の寺田輝之氏。

及川氏は米Microsoft、Googleを経て、Qiitaを運営するIncrementsで勤務した後、現在はフリーランスとしてスタートアップを中心とした企業の支援を行っている。高宮氏は、ベンチャーキャピタルとしてスタートアップに投資をしながら経営に参画する立場。そして「HR Tech最前線」シリーズの全イベントに登壇してきた寺田氏は今回、HR Techサービス提供者であり、スタートアップ成長期の経験者でもある立場から、半ばモデレーター的な役割で参加してもらっている。

ミスマッチをなくすための企業の基準作りと採用プロセス

イベント後半では、まず2017年7月に行われた「HR Tech最前線(2)」でも紹介された、エン・ジャパン調査による、エンゲージメントに関するアンケート結果が取り上げられた。

「中途採用した人材が早期に活躍する(エンゲージメントを高める)ために最も大切だと思われることは?」という設問に対し、圧倒的に多かった回答は「ミスマッチのない採用」だった。この結果について寺田氏は「結局はエントリーマネジメントが大事ということ」と述べる。

「入社後に、企業カルチャーを説明したり、評価で辞めそうな人材を引き留めようとしたりするのは、どのようにしても後の祭り。エントリーマネジメントをしっかりするというのが一番、社員の活躍につながるポイントだ」(寺田氏)

ではエンジニア採用で、ミスマッチのない採用のための仕掛けづくりとは、どのようなものなのか。及川氏に尋ねたところ、企業の基準をきちんと作ることと、基準が候補者に合っているかどうかを確認するための場として採用プロセスを設計することが大事になる、ということだ。

プロダクト・エンジニアリングアドバイザー 及川氏

基準作りについては、エンジニアから企業を見たときの3つの視点で説明があった。1つめはほかの職種と同じく、給料や職場環境、福利厚生などの条件。ただし及川氏によれば、エンジニアの場合、これらの条件の良さへのこだわりは「ほかの2つに比べるとそれほど強くない」という。

2つめはその企業のビジョンに対する評価。エンジニアを採用するということは製品やサービスを提供する、ということになるが「それによって社会がどう変わるのか、人々の生活はどのように良くなるのか。それに候補者がどれだけ共感を覚えられるか」が大事だと及川氏は言う。

3つめは「技術者として面白いかどうか」。技術者として成長していきたいという人にとって、「自分が使いたい技術をその企業が使っている」あるいは「自分が既に持っているスキルをフル活用できる」などなど、人によって価値は違えど、そうした価値観をエンジニアは重視する、と及川氏は話す。

「この3つの部分を『我々の企業はこういうふうです』といかに企業が提示できて、ミスマッチがないようにしていくかが大事」と及川氏は続ける。

「実はこれを言語化できていないことが多い。言語化できていないと、そもそも募集要項にそういった“思い”が入ってこない。かつ、採用プロセスが始まって社員が書類選考し、面談していくときにも判断基準がバラバラになってしまう。結局よくわからない人が入社して、実はミスマッチだった、ということが起こる」(及川氏)

及川氏は「言語化といっても、きれいな言葉にしておかなくてもいい。『どういう人材を我々は迎え入れたいのか』ということを決めておくことが必要だ」と話す。そして「それができたら次に、採用プロセスの場でそれをきちんと確認していくことだ」と続けた。

「採用プロセスというのは、採用候補者が自分たちの仲間として社内に入ったときのシミュレーションをする場だと考えるといい。エンジニアの場合なら、ある機能を開発しようとするときの設計について議論をしてもらう。(その人が入社して)コードを書いたらコードレビューがあって、ほかのエンジニアがそのコードを見ることになる。それと同じことを面接の場でやる。技術的な内容を聞くということが大事」(及川氏)

具体的には次のように進めるとよいそうだ。「候補者の過去のプロジェクトの内容でもいいし、今その企業が抱えている課題を抽象化して伝えるのでもいい。例えば『こんな感じのシステムを作ろうと思っているが、このデータベースのところにアクセスがたくさん集まったときの負荷処理をどうすればいいと思いますか?』とか。入社したらやるかもしれない話を、30分なり1時間なりといった面接の場でしてみるといい」(及川氏)

採用時のコードチェックについて及川氏は「しない会社が多いようだが、Googleでは行っていた」とその内容を説明する。「ホワイトボードに擬似コードでもいいから書いてもらい、それに対してチェックをする。これはもちろん、コーディングスキルやアルゴリズム、システム設計に対する能力を見ているのだが、同時に、社内に入ったときにコードレビューでやるようなプロセスでもある」(及川氏)

コードチェック実施のメリットについて、及川氏は「(コードが)間違っていてもよいのだが、間違っていることを指摘したときにどう答えるかだとか、採用側が出した質問がわからなかったときに、どのように質問を返してくるかといったことを面談の場で見ることによって、求める人材とのミスマッチを面談、採用プロセスの時点で解消することができる」と話していた。

エン・ジャパン 寺田氏

ここで寺田氏から「エンジニアの採用基準を作る際、非エンジニアしかいない場合はどう基準を作ればよいのか」、また「今いるメンバーより良いエンジニアを採用したいときに、現メンバーで採用基準を作るのは難しいと思うがどうすればよいのか」という2つの質問があった。

及川氏は「非エンジニアがエンジニアの採用基準を作ってはいけない」と言う。「どうにかしてエンジニアのスキルを入れない限り、『社会人としては極めて立派だけど……(エンジニアとしてはいかがなものか)』という人が採用されかねない。もちろん仲間として迎え入れるときに技術的な能力以外のところを見る必要もあるので、そこに非エンジニアの方が入ってもらうのはいいと思う。ただ技術者として採用するためには技術軸が必要。自社にエンジニアのマネジャーがいなかったとしても(現場の)エンジニアの意見を入れるなり、外部の方にアドバイスをもらうなりして、技術的な軸を入れるべきだ」(及川氏)

また2つ目の質問に対しては「自分より上の人を入れることができない、その軸が作れない、ということは、採用とは別に、その組織が技術的に欠陥を抱えている可能性がある」と及川氏は答えている。

「今や、クラシックでレガシーな大企業以外であれば、多くの企業のエンジニアは自分の会社の狭いコミュニティだけでなく、外のコミュニティと触れ合っているし、触れ合っていなければ成長はない。首都圏に住んでいれば毎晩のようにどこかでIT系の勉強会もあるし、オープンソースのコミュニティもある。Slackなどでいろいろな意見交換もしているし、技術者の間で話題になるようないろいろなブログもある。外の世界との接点があれば、自分の周りだけでは『どんなエンジニアが優秀であり、どんな人と働きたいか』ということが見えなかったとしても、外を見てわかるものだ。それをある程度、基準として入れていくようにすればいい」(及川氏)

それができないのだとすれば、まず採用の前に自社のエンジニアに「もっと外の世界を見るようにさせてあげる」ことから始めるべき、と及川氏は言う。

評価基準づくりにはリバースエンジニアリング的手法が効く

採用に続いて、エンジニアの評価に関する話題に移った。MicrosoftやGoogleなどグローバルなエンパイア企業とスタートアップ、両方を経験した及川氏に、成長企業で評価制度をどのように設計していけばよいのか、事例も交えて聞いてみた。

及川氏がMicrosoftやGoogleに入社した頃は、現在に比べればまだ小さいが、それでも既に数千人規模の組織。「マネジメントもしっかりしていて、評価制度もかなりカッチリしていた」という。

「職種・職位のマトリックスがあり、それぞれの位置で期待されることがあって、それが何軸かに分かれていて、実際のエンジニアとその内容を比較することによって評価が行われる。360度評価や数階層のキャリブレーションもあって、かなり確立した立派な仕組みだった」(及川氏)

そうした「立派な」制度を、例えばエンジニアがまだ数十人しかいないようなところに導入しようとしても「ヘビーウェイト過ぎて全く機能しない」と及川氏は言う。「逆に評価のプロセスが多すぎて、(本来行うべきことに手が付かず)評価を行う月の生産性が悪くなる、ということになりかねない」

及川氏は、多くの企業での評価基準の作成方法について「企業のビジョン、ミッションからコアバリュー、そして評価基準へと、トップダウンで、コンセプチュアルなベースから落ちてきている」と話す。

そして「それは悪くはないんだけれども、(基準が)あまりにも立派で、技術者としては関係ないものだったり、(良いとされている基準について)全部が丸な人がいたとしたら逆に人間として気持ち悪い、というようなものになっている。そのため、できあがった評価基準を実際には使っていないことが多い」という。

そこで及川氏は「評価基準はせっかく作ったものなので、それはそれとして使えるようにしつつ、エンジニア向けにはボトムアップ型でリバースエンジニアリング的な評価のやり方を、自分が支援する企業には勧めている」ということだ。

その方法を、AIによる画像認識になぞらえて具体的に説明してもらった。「画像認識でネコかネコじゃないかを判定するには、特徴量を抽出していって機械が判定する。それと同じことを評価でやろうとしている。例えば10人のエンジニアがいたら、10人を1から10まで並べてもらう。そして『なぜそのような順位にしたのか』理由を書いてもらう。これを1人がやるのではなく、できれば2人か3人のリーダークラスが、またはドラスティックにやるならエンジニア全員が、自分も含めた周りのエンジニアを全部ランク付けする」(及川氏)

及川氏は「ほかの職種でもそうかもしれないが、エンジニアって『できるエンジニア』がわかる。また『できないエンジニア』もわかる」という。ただし単にランキングのためにこの評価方法を使うのではない。

「順位を並べて書いてもらうときに『なぜか』を書いてもらうと、『この人はコーディングがめちゃくちゃ早い』とか『この人はコードレビューのときに非常に丁寧に教えてくれる』とか『この人は誰も見ていないけれども、お客さんからバグ報告が上がったらすぐに再現テストをし、バグ登録をし、時間があったら直している』といったことが書かれている。全部ができればいいが、これらはだいたいトレードオフ。コーディングが速かったらクオリティーがちょっと落ちてしまうこともあるかもしれない。すると書かれた『なぜか』で、その組織において大事にしていることがわかってくる」(及川氏)

そこで書かれたことをピックアップすることによって、その会社がエンジニアリング組織において、どういうことを大事にしているかがわかる。「これぞまさしく(機械学習でいう)特徴量抽出。それを採用基準のほうにも混ぜていくとよい」と及川氏は語る。

評価するエンジニアの数が少ない場合は、今までに採用面接をしてきた人もランク付けの中に入れてみるとよいそうだ。採用しなかった人を「なぜ落としたか」、理由を見ていくと評価の価値基準に持ってこられるものもある、と及川氏は話す。「そういうのも含めて、コンセプチュアルな評価とリバースエンジニアリング的な評価を混ぜていけばいいんじゃないかな、と思う」(及川氏)

高宮氏は及川氏が紹介した手法を「エース営業マンの行動特性を分析して、それをロールモデルにしていくときと同じやり方だ」と言う。「しかも副次的なメリットとして、キャリアパスが見えるようになる。エースを師匠としたロールモデルにすることで、その先どういうところへ行き着けるか、組織の中で自分がどうキャリアを立てていくのか、先が見えてキャリアプランニングがしやすくなる」と人材の成長にも効果があると、高宮氏は話している。

OKRは個人の評価と連動させてはいけない

ここからは会場の質問に答える形でディスカッションが進められた。最初は及川氏への質問で「OKR(Objective and Key Result:目標と主な結果)を個人の評価に用いるべきか。GoogleではOKRを個人の評価・給与に活用していたか」というものだ。

四半期ごとに目標を設定し、各期末に100%(1.0)を最大値としてスコアを付ける目標設定・管理の手法、OKR。3月に刊行されたばかりのクリスティーナ・ウォドキー著『OKR シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法』の解説も担当している及川氏は、「私はOKRを個人の評価とは連動させるなと言っているし、Googleもそう表明している」と話す。

ただしGoogleでも「OKRを全然見ていないかというと、そういうわけではない。OKRのスコアを評価に直接連動させることをしていない、という意味だ」と及川氏は続ける。

「OKRについてGoogleで言っているのは『ストレッチで(背伸びした)ゴール設定をしろ』ということ。全部できても0.7ぐらいになるようなゴールがよいとされている。スコアが悪かったとしてもそれは個人やチームが悪いのではなく、次回のOKRのプランニングのときの材料にすればよい」(及川氏)

及川氏は「常にアグレッシブなゴール設定にしなさい、という方針なのに、OKRのスコアを評価に連動させるのは無意味」と言う。

また「仮にそういう方針がなかったとしても、もしスコアを成績に連動させようとしたら、人は保守的になる。1週間でできるものを『2週間かかる』という調子で目標設定していけばいいわけだから。で、それをやられてしまったら、事業はどんどんスピードダウンしてしまう」と警告。「そういうことのないように、アグレッシブなゴール設定をしてもらい、スコアを評価に直接連動させない、ということにしている」(及川氏)

もうひとつ、OKRを評価に用いない理由を及川氏は例を使って説明した。「例えばプロダクトのあるKPIを上げたいという話になって、そのために『この機能を入れればよい』と考えた企画側の人がいるとする。その企画にチーム全員が合意して実装し、世の中に出した。ところが機能としてはちゃんと動いているけれども、KPIは上がらない、ということがある。ここでKPIが上がらなかったからといって、エンジニアの成績を悪くするか、というと、そんなことはしてはいけないわけで」(及川氏)

及川氏は「ゴールが達成できたかどうかではなく、会社・チームとして設定したゴールに向かって『あなたは貢献していたか』というところを見なければいけない」と言う。「OKRの方向性に向かって仕事をしていたかということと、その質は見るんだけれども、単純にスコアだけを見て成績に連動させるようなことは、絶対にしてはいけない」(及川氏)

日本でもOKRの導入が進み、及川氏のところにも相談が来るが、OKRと成績・評価を連動させているところは多いそうだ。「連動させたくなる気持ちはとてもわかる。楽だから。でもそれをやっちゃったら、もはやOKRじゃない」(及川氏)

及川氏はOKRを「目標管理の設計であると同時に、むしろ、チームあるいは全社をひとつの方向に向かわせるためのエンパワーのツールだ」と語る。「実際に結果がどうだったかというのはもちろん大事なんだけれども、ダメだったら次にがんばればいいだけの話。みんなの進むベクトルが分散することなく、同じ方向に向かわせるための道具がOKRであって、それができているかどうかをしっかり見ることが一番大事」(及川氏)

グロービス・キャピタル・パートナーズ 高宮氏

ここで高宮氏から、OKRに限らず目標管理と評価との関係性について、人事の“アート”での見方の提示があった。

「OKRでもほかの目標管理でも、まず経営目標や部署の目標があって、個人にブレイクダウンされていく。個人のエンパワーと行動・結果の管理をどこまでやるかというのは、結局その会社のカルチャーや、事業戦略達成のための手段として(目標管理を)どう見ているかによって決まると思う」(高宮氏)

プロセスドリブンでマイクロ管理をするという戦略を持つ会社に向いている事業もたぶんある、と言う高宮氏。「営業ドリブンな会社が、営業の行動一つ一つを管理していて、『訪問数何件、成約何件、リピート何件を、半期で達成しなければ詰める!』というやり方も、戦略としてはあり得る。そういう会社ならば(目標管理と成績を)連動させてもいい」と話す。

一方で「個人の自由に任せて自発的・自主的にやったほうが結果が出る、というカルチャーの会社だったら、絶対連動させない方がいい」と高宮氏は言う。「どこまで個人のマイクロ管理をしていくか、企業の価値観、戦略と連動した部分だと思う

及川氏は「OKRでも個人管理の部分では考え方が分かれる」と述べ、「個人ではOKRを必ずしも作らなくていいと思う」と言う。「OKRを作るのは基本、チームまででいい。個人のOKRは、本人が作りたければ作る、という形で十分。各プロジェクトやチームのOKRには、私は担当者を書くように言っている。自分が担当者になっているものを集めれば、個人としてのOKRができあがる。だから重複するようなものを別に作る必要はない」(及川氏)

また及川氏は「会社の目標とは連動しないけれども自分のゴールを持ちたい」として個人の目標を持つことはよいことで、個人としてのパフォーマンス評価もあるべきだと話している。

「OKRなどの目標管理とは全く無縁に個人の評価というのもあるべき。GoogleでもOKRとは別に自己評価のシートがあり、達成したことを書く。それらは多くの場合は必然的に連動するが、必ずしも連動していなくていい。『OKRにはないけれど、実はこれだけでかいことをやった』というのは奨励されるべき。それを自分の成績、評価してほしい項目として書けばいいし、実際にそれが評価されるということもたくさんある」(及川氏)

それが高宮氏の話した「ボトムアップ的に、自由にやって成果が出る」というパターンにつながる、と及川氏は述べ、「そういう余地もきちんと残しておくということも大事だと思う」と言っている。

高宮氏も同意して「人事の仕組みを作るときには、“遊び”の部分も重要」と話す。

「定義しているものしかこなさなくていい、となってしまうと、組織としてはよくない。また遊びがないと、経営者が戦略的に『誰それを抜擢する』という話もやりにくくなる。遊びの部分が、1%なのか5%なのか10%なのか、というのは人事のアートの部分だけれども、半期先のやるべきことをガチガチに今定義して決めておくというのは、競争環境を100%読み切れば勝てると言っているようなもの。定義しきってしまうと不確実性に弱くなってしまう。管理型でグリグリやるとしても、遊びの部分は大事になる」(高宮氏)

最初のエンジニアはリファラルか、技術がわかる人を味方にして探す

続いて取り上げられた質問は「そもそもなかなかエンジニアを取れない組織が、何とかエンジニアのチームを作りあげるにはどのようにしたらよいでしょう?」というものだ。

「文系でチームを作ったときに、最初のエンジニアはどうやって採ればよいのか」「エンジニアが採用できないときに何をすればよいのか」という課題に対して、どのように取り組めばよいのか。

及川氏は「これは難しい問題。正直言うと、エンジニアとどうにかして知り合いになるしかない」と答えている。

「先ほども挙げたIT系の勉強会のようなところに『自分も勉強したい』といって入り、そこで知り合った人に声をかける、ということをやっている人は多い」と及川氏。ただし「勉強はした方がいいんだけれども、実際、これはすごくエンジニアに嫌われることもある」とも述べている。

「『こいつは明らかにエンジニアをスカウトしに来ているな』という人が最近多いので、勉強会への参加はお勧めするとは言いにくいところ。だが、何らかの形で知り合いにならない限りは誘えないので、誰かと知り合いになるか、知り合いから紹介してもらうなど、最初の一人はリファラルというか知り合い経由でたどっていった方がいい」(及川氏)

また採用エージェントなどの活用について及川氏は「もちろん、それでうまくいっているところもあるので、やったほうがいいと思うが、エージェントに声をかけたとしても、まわりに技術のことがわかる人が誰もいなかったら、たぶん採用の判断すらできない。だからどうにかして、技術がわかる人をまわりに付けないと、ことは始まらない」と話している。

「それこそ私みたいな技術アドバイザーをやっている人もいるので、何かの形でそういった人を見つけるのがいいと思う」(及川氏)

技術顧問については高宮氏からも「最近だと、元ミクシィ、元Viiber CTOの松岡さん(レクター代表の松岡剛志氏)が『CTOたちで作るCTOコンサル/組織構築コンサル』といったことをやっているし、元アトランティスCTOの加藤さん(イロドリ代表の加藤寛之氏)もいろいろなところでアドバイザーをしている」と、スタートアップの技術支援に携わる企業や人の紹介があった。

ここで寺田氏から「技術顧問を付ける、というのは一つの大きな選択だと思うが、その方にどう説明すればよいのか。エンジニアリング部門の方々にとっての『自社の魅力』をどう発見していくか、というのも悩みのポイントだと思うが、そのあたりはどうしていけばよいのか」との問いが投げかけれられた。

及川氏はこの問いに「先ほど話した、エンジニアを引きつけるのと全く一緒」と答えている。「技術的なところではなく、その組織、企業が作ろうとしているサービスや製品がどれだけ魅力的なものかということ、その魅力的なものを実現したいのでエンジニアリング組織を作ろうと思うが協力してもらいたいということを訴えていくしかない」(及川氏)

採用メッセージ発信は飾らず、一貫性を持たせること

最後の質問は、創業期スタートアップ代表の方からで「0から1を立ち上げるフェーズに面白さを感じるエンジニアやビジネスサイドの人に加わってもらいやすいように、事前にメディアやSNS上でコンテンツをためておいたほうがよいのか。発信するメッセージで工夫するべきことや、Tipsはあるか」というものだ。

「僕は酔っ払った次の日に泣きながらTwitterで前日のツイートを消している人なんで、僕に聞くのも間違っていると思うんですが」と答えて場内の笑いを誘った及川氏だが、質問に対しては「やっぱりそういうことは(わざわざ)やってもバレちゃう。人間性だと思うんですよね」と真剣に答えていた。

「普段から自分がどういう人間か、というところが大事。結局5人とか10人の創業期だとしたら、もちろん事業の方向性などもあるけれども、一方で創業メンバーにほれる(ことで人が集まる)。それってもう隠せないところがあるので、自分の思いとかを素直に出していくのがいいと思う。下手にデコレーションしてもダメ」(及川氏)

むしろメッセージを飾り立てておいて、入社してからミスマッチを感じさせることのほうが問題、と及川氏は続ける。「入った後に『SNSではこんなにカッコいいこと言っていたのに、社内に入ったら言ってることと違うじゃないか』となって、ミスマッチが発覚してエンゲージメントができないよりも、自分の本当の思いを生の言葉で出していくのがいいと私は思う」(及川氏)

高宮氏は「創業メンバーに近い4〜5人は、一本釣りで口説くしかない」と話す。「(事業成長に)必要な機能と候補者をリストアップして、営業のパイプライン管理と同じようにシステマチックに会って進捗管理していくことだ。あるスタートアップでは上場直後、毎週経営会議をやるたびに、役員全員が各機能でリストアップした人について『この間メシを食いに行って口説いたけれども、まああと1年はかかるね』というようなことを突き合わせて、パイプライン管理をしていたという話があるぐらい」(高宮氏)

及川氏も「自分たちで採用候補者をリストアップして、それぞれが今パイプラインのどのステージにいて、『この人はまだだ(入社してくれない)けれども3カ月後にはもう一度メシを食いに行こう』、『今度は誰々が行け』というのをローテーションを組んで決めたりするのは普通に行われている」と話している。

高宮氏はこの方法のポイントは「上場するような大企業になったところでも、一本釣りをしなきゃいけないような人は、役員クラスが気合いで口説きに行く、人と人との関係性」にあると言う。

また「最初の4人が集まった後は『4人が4人ずつ集めてこい』という世界になる。その時に一貫性を持たせた方がいい点がある」と高宮氏は言う。

まず高宮氏は「どんなステークスホルダーであっても、何かをコミュニケーションするときにはマーケティングの観点があると思うが、マーケティングの意味とは、大きく見せることではなく、価値あるものの価値を正しく伝えるということ」と述べている。

その上で採用候補者というステークスホルダーに関しては「プロダクトをターゲットユーザーに対して一生懸命マーケティングするのと同様、自分の会社というプロダクトを採用候補者にどう伝えれば、価値がちゃんと正しく伝わるのか。それは間違いなく『報酬が高い』とかいう話ではなくて、『こういうふうに世の中を変えていく』だとか、『こういう面白い事業でチャレンジングな楽しい旅ができる』という話。何を売りにしているのかということを発信し続けていくことが大事」と話す。

高宮氏はまた、発信するメッセージについて「顧客向け、投資家向けなど、どのステークスホルダーに向けるかで微妙に伝え方は変わる。だけどコアの部分はぶれないことが大切」と語っている。

「『顧客向けにはこう言っているのに、採用向けでは逆のことを言っている』となると破綻する。一貫した、会社としての価値を発信し続けるべき。カッコいいけど平易な言葉、というとコーポレートブランディングみたいだけれども、あまり小難しく考えすぎずに自分たちの価値を伝えきることだ」(高宮氏)

及川氏はさらに「高宮氏の言う、一緒に食事をして人を誘ったときに話した口説き文句を、SNS上にも書けばいい」とアドバイスする。

「ロック歌手がステージ上で『俺はお前たちを愛してるんだ!』と全員に愛を語るんだけど、実は目の前の女の子1人を口説いてる、ということってあるわけじゃないですか。それと同じことをやればいい。採用候補者とランチを食いに行ったときに、その人にいろいろと思いを込めて話をする。その後、ちょっと時間が経ってから、その人に向けて話したことをSNSに書いてもいいわけだ。誰に、ということは言わなくていい。『私たちの会社に興味がある人、全員にお伝えしたいのはこんなこと』と言えば、一貫性もあるし、いいかもしれない」(及川氏)

パネルディスカッションの終わりに、5回にわたって行われた「HR Tech最前線」シリーズの締めくくりとして、寺田氏からシリーズ全体を通しての感想を聞いた。

1年前は、HR Techのツールを使う手前の段階、例えば、『データをちゃんと整備しておくべき』といったところから話が始まった。だがその後、皆さんとセッションをしながら、だんだん『大きな課題は、採用のところにあるな』と感じるようになった」(寺田氏)

「今日の2人の話でもそうだったが、採用やHRを考えるときには、人と企業との距離をどう縮めていくのかが重要」と寺田氏は述べ、「エンゲージメントという言葉や採用の広報のあり方を取り上げてきたが、テクノロジーを使って、必要とする人材を惹きつけ、魅力づけし、活躍し続けてもらう事がHR Techの本質の1つだと思う」と語った。

寺田氏はエン・ジャパンが提供する「engage」の採用HP作成などのサービスにも触れ、「自社について、なかなか伝えられない、知ってもらいたいけれども、どう表現していいかわからないということも多いと思う。しかし、何も表現しなかったら存在しないと同じ。自分たちが何をやっているのか、しっかり言語化して発信していくことが、人材を魅力づけし、お互いの距離を縮めるために重要なことだ」と述べた。

「求職者として会社を見たとき、どういう情報が載っていれば自分が不安じゃないか、よりその会社に興味が持てるのか、といった目線で、ぜひ皆さんにも発信をしていってほしい。この1年でも、テクノロジーやツールがたくさん出てきている。いろいろなものをうまく使いながら、自分たちのことを表現していくこと、伝えていくことを意識していっていただければと思う」(寺田氏)

人材分析サービス「HRアナリスト」開発のシングラーがパーソルグループに参画

人材分析サービス「HRアナリスト」は、採用候補者への事前アンケートと人事ノウハウの組み合わせによる、クラウド型のHR Techツールだ。10分程度で完了するアンケートへの回答をもとに、採用設計、面談・面接方針、コミュニケーション方針や志望度を上げるトピック、自社のアピールポイントなどを、候補者ごとに具体的に提案してくれる。

HRアナリストを提供するシングラーは5月7日、パーソルグループのパーソルキャリア(旧インテリジェンス)の連結子会社となり、パーソルグループに参画することを明らかにした。株式の取得比率や金額については非公開。今後両社は、人材サービスの共同企画、開発を通じて協業していくという。

上段左から:パーソルキャリア 経営戦略本部 エグゼクティブ マネジャー 柘植悠太氏、シングラー 執行役員 田口弦矢氏、シングラー 執行役員 三角勇紀氏、パーソルキャリア 執行役員 岩田亮氏
下段左から:シングラー 代表取締役CEO 熊谷豪氏、パーソルキャリア 代表取締役社長 峯尾太郎氏

今回のパーソルグループへの参画について、シングラー共同創業者で執行役員 COOの三角勇紀氏は「双方にメリットがあるもの」として次のように話している。

「セールス、資金面で力を持つパーソルグループとの今回の協業により、シングラーとしては、プロダクト開発に集中でき、よりよいもの、よりマーケットにフィットしたものを提供できると考えている。パーソルキャリアとしては、求職者と採用意欲の高い企業をより適切にマッチングすることが可能となる」(三角氏)

今後の協業内容について、具体的な取り決めはこれからだとのことだが「HR Techで人材採用を変える、というシングラーの王道の路線は外さず、進めていきたい」と三角氏は話していた。

シングラーは2016年11月の設立。2017年8月にはHRアナリストで、B Dash Venturesが開催したスタートアップイベント「B Dash Camp 2017 Summer in Sapporo」のピッチアリーナ準優勝を果たしている。

“求人へ応募”ではなく“企業をフォロー”から始まるタレントコミュニティ、「TalentCloud」公開

「今の採用市場は空前の人材不足状態で、多くの企業が人材採用に苦労している。売り手市場と言われることも多いが、実際は求職者側も多くの応募者の中でふるいにかけられるなど、双方が幸せになれていないのが現状。その原因のひとつが、応募者を募っていることにあるからだと考えた」—— タレントクラウド代表取締役の寺師岳見氏は、現在の採用市場の課題についてそのように話す。

そんな同社が本日リリースしたのが、求人へ応募するのではなく、企業とユーザーが「フォロー」という関係で継続的に繋がれる採用サービス「TalentCloud」だ。

企業にとっては、自社に関心を持った採用候補者の母集団を作れる場所。ユーザーにとっては、タイムラインやチャットを通じて気になる企業の最新情報を手軽に収集できる場所。TalentCloudが目指しているのは、企業とユーザーをつなぐそのようなコミュニティだ。

ユーザーはエリアや職種、希望する働き方といった条件で企業を検索。すると該当するポジションの採用情報やブログ記事が出てくる。ここまでは既存の採用サイトの仕組みと変わりはない。ただ大きく違うのは個別のページに進んだ際、設置されているのが「応募ボタン」ではなく「フォローボタン」であることだ。

フォローした企業の情報はユーザーのタイムラインに表示されるようになるほか、企業との間でチャットが開設され気軽にコミュニケーションがとれるようにもなる。就職活動や転職活動が本格化する前からじっくりと情報収集できる点が特徴だ。この点はSNSで企業のアカウントをフォローする感覚に近いかもしれない。

個人ユーザー側の画面(デモ版)

企業としては、将来的に自社の仲間になる可能性のある母集団を構築する際に活用できる。応募者ではなくフォロワーを集めるため、「いずれ必要となるポジション」を前もって掲載することも可能だ。

寺師氏によると、タレントクラウドではもともとタレントプールの構築から採用管理までに対応した企業向けのSaaSを1年半ほど提供していたという。ただ「タレントプールの候補者が集まらないという中小企業や、採用手法を変えるのが大変という大企業の課題にも直面し、興味を持ってもらっても導入まで至らないことも多く苦労した」(寺師氏)そうだ。

その中で企業の要望としてでてきたのが、タレントプールの土台となる候補者を集められるサービス。そこで企業側だけでなくユーザー側の目線も加えた“タレントコミュニティ”として、TalentCloudを立ち上げた。

もちろん集まったフォロワーの管理機能も搭載していて、特徴やステータスごとにユーザーを検索したり、チャットを通じて一括でメッセージを送ったりすることもできる。ユーザーは完全に無料で利用可能。企業は無料、月額2万円、5万円、10万円の4プランから選ぶ。タレントプールの構築自体は無料で、プランごとに閲覧できるユーザープロフィールの上限数が異なる(無料プランだと5名まで)。

企業側のダッシュボード(デモ版)

最近は「採用広報」という形で、企業がオウンドメディアやSNSを通じて積極的に社員のインタビューなど情報発信をしている。WantedlyのFeed機能を活用する企業も多く、それこそ同サービスにはフォローという概念もあり似ているようにも思う。

その点について寺師氏は「最終的な目的が応募なのか、フォローなのかの違いは大きい。TalentCloudは応募の一歩手前にいるフォロワーを集める、タレントプールを構築するという点に特化したサービス。まだ募集し始めていないポジションや一旦募集を終了したポジションも含めて、事前に候補者の母集団を作り関係性を構築できる」と話す。

通常はユーザーが求人に応募した後で初めてコミュニケーションをとれるようになる(Wantedlyなどは企業からのスカウトを起点に会話をすることも可能ではある)。TalentCloudの場合はフォローというもう少し手前の段階から相互に交流できるため、そこが1番の違いと言えそうだ。

今後はイベント機能や企業からユーザーをフォローできる機能、AIを活用した高度なレコメンド機能などの実装、各種SNSとの連携を進めていく予定。「『ふるいにかけない、いつでも採用』をテーマに、企業とユーザーの繋がりを深められる、新しい切り口の採用サービスを目指していく」(寺師氏)という。

タレントクラウドは2016年5月の設立。代表の寺師氏はマーケティングリサーチのプラットフォームを手がけるベンチャー企業の出身で「企業がマーケティングにSNSやコミュニティを活用するように、それを人材採用にも活かせるのではと思ったこと」がタレントプールサービスを立ち上げた背景にあるそうだ。

なお同社は、2017年のTechCrunch Tokyoスタートアップバトルに登壇した企業の1社でもある。

「成長しない企業の人材流出は当たり前」成長企業の人材戦略、新規事業取り入れの心得を聞く——TC School #13

TechCrunch Japanが主催するテーマ特化型のイベント「TechCrunch School」では、2017年3月から5回にわたり、人材領域を軸に講演やパネルディスカッションを開催してきた。その第5弾となるイベント「TechCrunch School #13 HR Tech最前線(5) presented by エン・ジャパン」が3月22日に行われた。

今回はこれまでの「HR Tech最前線」シリーズの集大成として、これまでのイベントを振り返りつつ、成長企業の人材戦略、そしてエンジニアの採用・教育・評価について識者に話を聞くパネルディスカッションが実施された。このイベントの模様を前編・後編に分けてお伝えしよう。

登壇者は、グロービス・キャピタル・パートナーズ パートナー/Chief Strategy Officerの高宮慎一氏とプロダクト・エンジニアリングアドバイザー(フリーランスコンサルタント)の及川卓也氏、そしてエン・ジャパン 執行役員の寺田輝之氏。モデレーターはTechCrunch Japan 副編集長の岩本有平が務めた。

高宮氏は、ベンチャーキャピタルとしてスタートアップに投資をしながら、社外役員として従業員が数人規模のアーリーステージから上場するところまで経営に参画している。そこで経営者と週1回ぐらいのペースで議論をするそうだが、議題の半分以上は組織に関することだと話す。

「成功の特効薬や万能の解のようなものはないけれども、失敗パターンや考え方のフレームワークなどはある」(高宮氏)

及川氏は外資系コンピューター企業から米Microsoft、Googleを経て、スタートアップであるIncrementsに1年半ほど勤務した後、現在はフリーランスとしてスタートアップを中心とした企業の支援を行っている。「技術アドバイザー」「プロダクト戦略の策定・実施・グロース」「エンジニアリングの組織作り」の3つのメニューで活動しているという及川氏も、「3番目の組織づくりの話が圧倒的に多い」と話す。

「プロダクト戦略を考え、技術を駆使してモノを作るのは結局人なので、組織の話を別には語れないことが多い。逆に組織さえしっかりしていれば、企業は成長し続ける力があると思っている」(及川氏)

寺田氏は、2002年エン・ジャパンが50人弱のスタートアップだったころに入社し、インターネット黎明期からその成長とともに、求人サイトをはじめとするサービスやプロダクトを作ってきた。現在はクラウド採用ツール「engage(エンゲージ)」やオンライン適性分析「タレントアナリティクス」、面接前に利用できる「ビデオインタビュー」機能などを提供している。

これまで約1年にわたり「HR Tech最前線」シリーズの全イベントに登壇してきた寺田氏は今回、HR Techサービス提供者であり、スタートアップ成長期の経験者でもある立場から、半ばモデレーター的な役割で話を進めていくこととなった。

イベント前半では、スタートアップの人材戦略に精通する高宮氏を中心に、成長企業の組織・人事戦略、そして成熟企業が新規事業を取り入れるための心得などについて話を聞いた。

スタートアップのビジョン・カルチャーと人材の適合度の見極め方

パネルディスカッションではまず、高宮氏が2017年9月に登壇したTC School #11のキーノート講演「成長企業の組織・人事戦略/5つのあるあると要諦」を振り返った。講演の詳細についてはイベントレポートをご覧いただければと思うが、その概要は以下の5つにまとめられる。

あるある1. 傭兵による組織崩壊
《対策》成長企業における採用は、スキルだけでなく、ビジョン・カルチャー適合度でも妥協してはいけない。

あるある2. 一貫性のない処遇で不平不満が蔓延
《対策》早期から評価制度と報酬テーブルを用意して運用することが大事。目標達成と人材育成の仕組みとしても活用する。

あるある3. ストックオプション(SO)の場当たり的な乱発
《対策》あらかじめSO付与の目的(思想)と割合を明確にする。その上で付与のルールを作成し、それに基づき運用する。

あるある4. エースの突然の退職
《対策》事業の成長に合わせ、組織の成長を先回りして設計。その中で個人のキャリアゴール、キャリアパスとのすり合わせを行う。

あるある5. 必要機能の未充足
《対策》既存の人材に合わせて組織を設計するのではなく、事業を成功させるために必要な機能ありきで、理想とする組織を設計すべし。

採用時に「ビジョン・カルチャー適合度をどう見極めていくか」という点については、寺田氏から「そもそも、自分たちのカルチャーを言語化できている企業はあまり多くない。その上で新しく採用していく人を、どう見極めていけばよいのか」という問いかけがあった。

グロービス・キャピタル・パートナーズの高宮慎一氏

高宮氏は「確かに難しい。会社が大きくなったら当然、ビジョンやカルチャー、価値観を言語化するという話は出てくるが、ベンチャーでメンバーが4〜5人しかいないのに『言語化しましょう』と経営合宿などでやるところはあまりないし、やるだけ時間がもったいない」としながら、適合度を見極めるための対応についてこのように話している。

「(小さな組織では)空気感、ノリみたいなものは結構あると思う。まずは夜と週末だけでもいいので『インターンでおいでよ』といった感じで巻き込んで、社員と一緒になった中で相性を確認するというようなことは、大事なのではないか」(高宮氏)

高宮氏は「面接だけでビジョンやカルチャー、共感度を測るというのは相当難しい。やはり何かを一緒にするというのが、すごく大事なんじゃないか」と考えを述べた。

では何を一緒にやればよいのか。高宮氏は「最低限でも飲みに行く。あるいは趣味を一緒にやるのでもいい。例えば釣りに行っちゃうとか、バーベキューとかでもいいし、そういうアンオフィシャルな場で人を見るのもいいんじゃないか」と話す。

プロダクト・エンジニアリングアドバイザー 及川卓也氏

一方、及川氏は「仕事をしてもらうのが一番」と言う。「マッチングというのは、一方的に企業が候補者を選ぶものと考えがちだが、実は逆も非常に大事。候補者のほうからも、将来どうなるかわからないリスクの高い会社に入るにあたって、自分が本当にその会社に合うかどうかを見る。要は(両者の)お見合いだ。それを本当に確認するためには、仕事をするのが一番いい」(及川氏)

「一緒に働くというのは難しい面もあるが、今は兼業を認める会社も増えてきているし、内緒で来てもいいという人もいるかもしれない。そういう人に『夜でもいいし週末でもいい、もし有給が取れるんだったら1日来てもらえるとうれしいんだけど』と言って、一緒に(仕事を)やっちゃうのがいいと思う」(及川氏)

そこで寺田氏が「(そういう形で)一緒に仕事をやろうとしたときに、どんな仕事を頼めばいいのか悩む」と言うと、及川氏は「エンジニアの場合は比較的それは楽。もちろんコードベースに慣れるまでの時間などもあるので、短期間でどこまでできるかというのは現実的にはあるが」と答え、WordPressのホスティングを行っているAutomattic社の採用プロセスについて紹介してくれた。

エン・ジャパン寺田輝之氏

「Automatticはオフィスがなく、全員がリモートワークしていることで有名だ。彼らは実際の採用プロセスの中に『一緒に仕事をする』というのを入れていて、2週間ぐらいの時間をかけて採用を行う。もし可能ならば、そういう風にガッツリ仕事を切り出して、やってもらうというのがいいと思う」(及川氏)

また「日本では、働きながら転職をする人が圧倒的に多い。その中でうまくカルチャーフィットを見極めながら、一緒に仕事をできるようなポイントはあるか」との問いには「どうにかして時間を作ってもらうしかないかと。一緒に仕事をするのはなかなかハードルが高い面も実際にはあると思うので、一番最初は飲みに行くのでも、ミーティングに参加してもらうのでもよいので」と及川氏は答えている。

「ある人の例で、ある会社の経営者からいきなりLinkedIn経由で『あなたの書いていたブログが面白いから、一度ランチで話を聞かせてくれ』とメッセージが来たので会いに行った。そこで彼らの新規事業のアイデアを聞かせてもらったので意見を言ったら『悪いんだけど夜に行っている定例のミーティングに、可能な範囲で出てくれないか』ということになった。それをしばらく続けていたのだが、結局面白くなって転職してしまった、というのがある。もっとも経営者はそうなることを見越して声をかけたようだけれども」(及川氏)

スタートアップ界隈では、Twitter経由で声をかけて、インターンなどを募集するという話も聞くことがある。これについては、高宮氏は創業初期の採用での活用については懐疑的だ。

「創業最初期の段階では、インターンレベルの人を入れて管理コストがかかる状態にするのではなくて、むしろ一騎当千の人を先に入れて、その人に統制してもらえるようにした方がいい。(Twitterなどで採用対象の)母集団を増やしてパイプラインを広げるというよりは、知っている人を一本釣りしにいくのがよいのではないか。インターンなどはそのキーマンを採用できた後の方が効率的なのでは」(高宮氏)

ただし高宮氏は「数を打って取りに行くというよりは、ピンポイントでスナイプ的に行くべき」と言いつつも、ブランドもなく報酬があまり払えないベンチャーでは、正式採用に至るまでの確率は低いかもしれない、として「ポートフォリオではないが、必要な機能の人材を同じ機能につき複数の候補を挙げて、全員と話をしていくようにするのがいいだろう」と述べている。

高宮氏は及川氏の話にも触れ、「本当に採用が上手な人は、なし崩し的に人を巻き込むのがうまい。取りあえず飲みに行こう、遊びに行こうというところから、気が付くと仕事が振られている。しかも『ベンチャーに入ったらこういう世界だよ』と事前に期待値を調整するかのごとく、(仕事を)まるっと無茶振りする。それでも引き受けてくれて仕事ができる、セルフスターター的な人のほうがベンチャー向きではあるので、そうすることである意味、ふるいにかけるような効果もある」と話していた。

始めからストックオプション交渉が激しい人の採用は要注意

続いて話題となったのは、ストックオプション(SO)発行に関する話だ。前の高宮氏の講演でも「SOの場当たり的な乱発は避け、付与の目的を明確にすべき」という課題が挙げられていたが、そのあたりの生々しい事例を具体的に高宮氏に聞いた。

高宮氏は、SOに限らず、金銭的なインセンティブについて、採用時にネゴる人がいる、という話は散見されると話す。

「大きくなったベンチャーや大企業から来る人だと、ベース(給与)のところでギャップがあるというのは確か。一定程度条件を下げてくれなければ、創業期のスタートアップにはさすがに払いきれない。だからその代わりに、キャピタルゲインをちゃんと取ってもらうことで補填する、というのがいいと思う」(高宮氏)

ただし「経歴はピカピカだけど、採用の入口でものすごくSOについて交渉をしてくる人は、黄色信号。よくよく、その人についてデューデリして(調査して)みた方がいい。お金で来る人は、お金で去るリスクがある」と高宮氏は続ける。

また「給与を上げられない時に、代わりにSOをばらまくのも危険」として高宮氏は別の例も挙げた。

「日本の資本市場では、上場した後に投資家が気にならないオプションの量は、だいたい10%から15%と業界慣習的に言われている。そんな中、早いタイミングでSOを10%もバラまいてしまうと、その後上場に向けてCFOを採用したい、でもオプションの実弾はない、となってしまう。その状況で年収1000万円クラスの人に、『700万円でCFOとして来てほしい、でもSOはない』と言ってもそれは難しい話だとなってしまう」(高宮氏)

成熟企業は「成熟企業ならではの面白さ」でエンジニアを獲得すべし

その後は、会場からの質問を受けて「成熟企業での採用」についての話題へと移った。質問は「事業が成長しているときには優秀なエンジニアがどんどん入ってくるが、減衰フェーズになるとエンジニアの応募が減り、選考に来てもらっても採用競争で負けてしまう。成長が頭打ちになった成熟企業で優秀なエンジニアを獲得するためにはどうすればいいか」というものだ。

高宮氏は「“エンジニア”との質問だが、“優秀なマーケター”“優秀なCFO”など、他の企業の優秀な人と置き換えてもよいかと思う。先ほどの報酬やインセンティブの話とも絡むが、仕事をするときに何をインセンティブとして設計するかという話だ」と答える。

「給与、ボーナス、SOといった金銭的なインセンティブと、自己実現、やりがい、社会貢献といった金銭以外のインセンティブに分けて考えたときに、事業が成長している企業では、すごく分かりやすくエキサイティングな魅力がある。一方、事業がまだ初期で勢いがなく、採用しづらいときには、単純にPL的な業績や売上、シェアを超えて、数字ではないところで『我々のやっている事業は意義がある』『魅力的な組織だ』というような、ビジョンやカルチャーで引っ張るというのがひとつの方法だ」(高宮氏)

もうひとつ高宮氏が挙げたのは、新規事業の采配を任せることでインセンティブとする方法だ。「そもそも仮に上場を目指す企業や上場しても成長を目指す企業なら、既存事業が成熟化してしまったら新しい事業を作って伸ばさなければいけない。『こういう新規事業を考えている。こういうチャレンジをしてみないか。ここはまるっと任せるから』といった形で、自己実現の部分を刺激してあげるというような、非金銭系の報酬を前面に打ち出していくというやり方はある」(高宮氏)

及川氏からは「エンジニアの感じる面白さは人それぞれ違う。今の成熟した事業、サービスにおいて、どういう点が面白いかということを考え、それを訴求するようにすれば、そこに合った人を集められるのではないか」との回答があった。

「エンジニアからすると、0でなく1から作ってくれというのでも難易度はメチャクチャ高い。でも、安定稼働させるというのも、それはそれですごく大変なことだ。一番最初のユーザー数は0。そこからスケールさせることを考えていくのは面白いけれども、逆に育たない可能性もある。既にある程度成熟していて、100万人のユーザーがいるものをちゃんと安定稼働させるというのも、それはそれで面白いと思う人もいる」(及川氏)

成長しない企業の人材流出は当たり前。濃淡をつけてリテンションを

ここで寺田氏から高宮氏に「成熟企業では新しく人を採用する理由、来てもらう理由も作りにくいと思う。改めて来るためのモチベーションも上がりにくいだろう。高宮氏の話にもあった『機能ベースでの組織設計』をもう一度やり直すこともあると思う。そういうとき、どう臨めばよいのか」との問いかけがあった。

高宮氏は「組織というのは結局は、事業の成長と会社が達成しようとしているビジョンを実現するための“HOW”だ。だから『組織を変える(という目的の)ために組織を変える』というのは本質的ではない。例えば『そもそも再成長をしなければならない』とか『再成長をするためには、どういう事業が必要なのか』といった検討がまずあって、その実現のためにハコとしての組織をどうあるべき姿にするか、ということになる。だから、その時の事業戦略次第かと思う。ケース・バイ・ケースではないか」と話した。

「極端に言えば『今のメンバーでもう一回がんばろう!おう!』みたいな話もあれば、今いるメンバーではモチベーションもちょっと微妙だし、新しい事業をやらせてもケーパビリティにミスマッチがあるから、入れ替えをしていかなければならない、という話も両方あり得る」(高宮氏)

人の入れ替わりについては及川氏も「成熟しちゃってたら、人が逃げていくのは仕方がない」と話す。

「今は成熟している企業も(創業期から成長期には)成長のために人を奪ってきているわけで、成熟してしまったら自分たちの人材が流出してしまうというのはやむを得ない。高宮氏が言うように、もう一度事業を成長軌道に乗せるのか、新規事業を成長させていくのかのどちらかだと思う」(及川氏)

「Googleはいまだに、すごい勢いで成長をしているとは思うのだが、あのGoogleでさえ『もう成熟している』と思うエンジニアが流出してしまって、シリコンバレーの新たなスタートアップに行ってしまうということがたくさん起きている。そういうものだと考えて、常に成長させていくしかない」と及川氏は、かつて所属していたGoogleを例に説明を続けた。

「Googleは、イノベーションの自転車操業をやっている会社だ。新しいイノベーションをどんどん導入していっている。これはもちろん、自分たちの会社の成長を考えてのことだが、同時にそれでエンジニアも引き留めている。例えば『あるサービスの開発に長年関わっていて、そろそろ新しいことをやりたい』というエンジニアに、『お前、ライフサイエンスをやらないか』とGoogle Xを立ち上げたり、『(Googleの持株会社である)Alphabetの下にはこういうところのポジションもあるよ』と見せたりしたら、確かに『今と同じぐらい面白いことができるところへ社内で異動できる』となるわけだ。そうしたことで、できるだけ人材の流出を食い止めているという側面もある。Googleは特殊かもしれないが、特殊と思わずに、すべての企業は同じように人材を惹き付ける努力をしなければいけない」(及川氏)

及川氏はさらに「0を1にする、1を10にする、10を100にする、というそれぞれのフェーズで、人材は違う人が必要だと言われるが、エンジニアは特にそれが顕著だ」ともうひとつ別の観点から、エンジニアの流出について説明をしてくれた。

「例えば、ある大企業でインフラを一通り先輩と一緒に作ったが、その後は運用だからつまらない、とスタートアップに移った人がいるとする。その人は自分の能力で0からインフラを設計できる。AWSにするかGCPにするかの選択から、今どの技術を使うべきかのリスク判断まですべて行って、設計が終わってしまったら、後は基本、安定運用を目指すことになる。そうなればその人が再び『もうつまらない』と思ってしまうことはおかしくない。また『新しく0から作るところへ行きたい』となるのはやむを得ない」(及川氏)

高宮氏はファイナンス、経営者の目線でドライに見たときの人材流出について「成熟し、成長性が鈍化して収益が悪化したとき、平均値で言えば、固定費が下がるということは必ずしも嫌な話ではない。人を減らして収益性をもう一度担保し、キャッシュカウ(金のなる木)化しようというのは、組織の話を抜きにして、純粋に業績(改善)としてみれば当たり前のことだ」と話す。

そうした状況での「人材のリテンション」について、高宮氏は話を続ける。「人事の生々しい側面では『辞めてほしい人には辞めてもらって固定費を下げたいけど、エースには辞めてほしくない。残ってほしい人には残ってほしい』という話が出ることがある。経営的な観点からは、平均値とか総固定費で考えがちだが、そこは濃淡を付けて、リテンションしたい人にフォーカスしてリテンションすべき」(高宮氏)

「えこひいきに見えるかもしれないが、本当に辞めてもらいたくない人にだけは、ハイタッチなケアをすることも経営者としては必要。人事としても社長をツールとしてうまく使ってエースを引き留めるということも、やってもいいんじゃないか。例えば引き止めておきたいエースには社長との食事をセットするなど」と高宮氏は述べた。

スタートアップのカルチャー転換、新規・既存事業の両立について

高宮氏から及川氏には、こんな質問があった。「スタートアップ初期のエンジニアは一騎当千で、フルスタックで何でも知っていて、新しいものを作るのがエンジニアとしてもチャレンジングで楽しい、といった人が来る。で、そういう人がエンジニアとしてかっこいい、というカルチャーができがちだ。しかし、そこからスケールしていくと、安定稼働してサービスを落とさない、スケーラブルである、といったような、ちゃんと組織的・サラリーマン的にやるという点が重視されはじめて、カルチャーもがらっと変わらざるを得ない。また人も変わっていく。そういうときに、カルチャーの転換はどのように行えばよいのか?」

及川氏は「ひとつは、カルチャーを変える方がよいのか、というところもある。カルチャーを変えない、ということは、先ほど話した成長事業を常に考えていくということにもつながるし、イノベーションの自転車操業的なものを自分たちの企業で取り入れるかどうか、ということでもある」としつつ「でも、変える、というときには明確にメッセージを出した方がいい」と答えている。

「『クオリティーよりむしろスピードを重視します』とか『ユーザーはこういう人たちしか考えていません』というところから、『我々はマスに向けてやります』というところへ変わるときには、ハッキリと打ち出した方がいい。そうじゃないと、絶対にミスマッチが生じる。で(新しいカルチャーを)『それはそれで面白い』と思う人もたくさんいるはずだが、『やはり0から1の立ち上げがやりたい』という人もいる。そういう人には『0→1はもうない』と言ってあげた方が私はよいと思う」(及川氏)

及川氏の話を受けて、高宮氏は「経営者は二兎を追いがちだ」と言い、取り入れた新規事業と既存事業と両立について、さらに及川氏に問いかける。

「成長性は鈍っているけれどチャリンチャリンとキャッシュが入ってくる、キャッシュカウ化した既存事業の一方で、次なる成長性は新規事業で狙っていく、となると『新規事業のほうが偉い』みたいな空気になりやすい。すると既存事業のほうでは『カネ稼いでるのはこっちなのに、カネを使う割にあいつらばかりチヤホヤされる』といった社内派閥のようなものが生まれることがある。そこを両立するための組織とはどういうものか。特にエンジニアの場合、エンジニアの指向によって組織を完璧に分けるべきか、融和させるべきか?」(高宮氏)

及川氏も「新規事業に限らず、ひとつの事業でも運用側と新規開発側とか、あるいは既存の機能をグロースさせるやり方と完全に新規機能を作るやり方というところでも、後者の方がセクシーで楽しい感じがするので、そちらの方にみんな憧れる。でも、そういうものはまだ全然お金を稼いでいなくて『大事なのはグロースさせることですよ』みたいな話になる」と認める。

そして「実はこれはどこでも“あるある”な話。この時に重要なのは、エンジニアの異動をどういうポリシーで行うかだ。やっぱりみんなが『新規開発をやりたい』となったときに、全員の希望は通らないことが多いわけで。そこにあるルールを設けて、それができるだけ公平・中立なものにしておくことが大切」と語る。

外から来た人材と新規事業の立ち上げを成功させるには

もうひとつ、会場からの質問が取り上げられた。質問は創業70年ほどの企業の2代目社長の方からのもの。「既存事業は古参に任せつつ、(必要な)ケイパビリティーが異なる新規事業の立ち上げを別会社で、新たな経営チームで行いたい。その際、ナンバー2クラスを人材紹介経由で中途採用したいが、どのようにジャッジすべきか悩んでいる。良い手法があれば教えてほしい」ということだ。

高宮氏は、このように答えている。「基本的には自分の右腕、左腕となり、新規事業に対してカルチャーもケイパビリティーもフィットする人を集めることになると思う。一方で先ほどの話ではないが、『キャッシュカウ化して稼いでいるのは誰だと思ってるんだ』と古参の人たちは言うに決まっている。この2代目の方はトップとしてナンバー2の人たちを守ってあげないと、あっという間に古参に抵抗勢力化されてしまうだろう。そういう点で、(別会社に)ハコを分けたというのは大正解だと思う」(高宮氏)

また寺田氏は、自身も新規事業立ち上げを行ってきた経験から「外から連れてきた人に任せた、というのは失敗しやすい」と話す。「既存の人が情報提供してくれない、共有してくれないという風になって、だいたい、つぶされてしまう。うちも外から傭兵のように連れてきてやってみたことがあるが、やはり難しい。既存の領域もありながら、外からいきなりリソースも持ってくるというのは、うまく行きづらい」(寺田氏)

そんな中でも成功するのは、2つのパターンだと寺田氏は言う。「ひとつは外から人を調達するなら、その人がやりたいことが明確になっていること。それに対して資金がいくら必要なのか、どんな協力が必要なのかというのを全部聞いて、それに完全にコミットしてやらせる。そして金は出すけど口は出しちゃダメ。そういう状況の元で、覚悟を決めてやるのがいい」(寺田氏)

もうひとつは既存事業で一番力を持っている人と新事業を立ち上げることだ、と寺田氏は続ける。「自分が稼いだリソースを新しい方に使えるという状況をうまく作ってあげて、既存事業の人員も連れてこられるしお金も使える、という風にしないと、なかなか難しい」(寺田氏)

高宮氏も既存組織をうまく使う方法として「組織にはオフィシャルなレポートライン、公式なコミュニケーションラインとは別に、人間関係ベースの非公式なラインが絶対にある。それこそ創業期から支えた番頭さんとか、すごく人間力の高い部長さんみたいな人は非公式にルートをたくさん持っているはず。そうした、社内で尊敬されていて、いろんな人に非公式に協力を取り付けられるような人とペアを組ませてあげるのは手だ」と述べていた。

レポート後編では、昨年7月のイベントに続いて2度目の登壇となる及川氏を中心に、エンジニア人材の採用、教育、評価について話を聞いた、イベントの後半部分をお伝えする予定だ。公開まで少しお待ちいただきたい。

「能力は誤差」スタートアップが見るべき人の資質、妥協しない採用とは——TC School #12

TechCrunch Japanでは2017年3月から4回にわたり、イベント「TechCrunch School」でHR Techサービスのトレンドや働き方、人材戦略といった人材領域をテーマとした講演やパネルディスカッションを展開してきた(過去のイベント一覧)。HR Techシリーズ第4弾として2017年12月7日に開催された「TechCrunch School #12 HR Tech最前線(4) presented by エン・ジャパン」では「スタートアップ採用のリアル」をテーマに、キーノート講演とパネルディスカッションが行われた。この記事では、パネルディスカッションの模様をお届けする(キーノート講演のレポートはこちら)。

パネルディスカッションの登壇者はプレイド代表取締役の倉橋健太氏、dely代表取締役の堀江裕介氏、ジラフ代表取締役の麻生輝明氏、エン・ジャパン執行役員の寺田輝之氏の4人。創業者、あるいはHRサービスの提供者の立場から、それぞれが体験した「スタートアップ採用のリアル」について話を聞いた。モデレーターはTechCrunch Japan副編集長の岩本有平が務めた。

始めに各社から、自己紹介も兼ねて事業の内容や現在の体制について簡単に説明してもらった。

まずは倉橋氏が2011年に設立したプレイドの紹介から。プレイドは従業員数約70人。ユーザーを「知る・合わせる」をコンセプトに、ウェブサイトの訪問者のリアルタイムな解析とアクションを可能にするカスタマーアナリティクスサービス「KARTE」を提供している。倉橋氏は楽天に2005年に入社、2011年まで約7年間在籍し、Webディレクション、マーケティングなどさまざまな領域を担当してきた。その倉橋氏が独立し、KARTEをリリースしたのはなぜか。

プレイド代表取締役 倉橋健太氏

ウェブサイトでは、ユーザーがいて、何らかのプロダクトやサービスを提供した結果、パフォーマンスが生まれる。倉橋氏は「残念ながら、インターネットのビジネスでは、ユーザーはトラフィック、サービスはサイトと捉えられていて、パフォーマンスから考える傾向が強い。この方法では『いかに高転換なサイトに人をたくさん流し込むか』ということだけ重視され、いろいろなところで疲弊してきているし、運営していても面白くない、ということになる」と述べる。

「昨日新規ユーザーが100人来た、と言っても、その100人は誰なのか。そういうことをしっかり可視化しながら、プロダクトやユーザー体験を良くしていきましょう、ということで、KARTEを提供している」(倉橋氏)

人の可視化が重要、と話す倉橋氏は、イベントの前の週にリリースしたKARTEの新サービス「K∀RT3 GARDEN(カルテガーデン)」を動画で紹介。これまでは、平面の管理画面で人を可視化していたところを、オンラインに来ているユーザーの行動をリアルタイムにVR空間で描画する試みだ(TechCrunch Japanの記事でも詳しく紹介している)。

カルテガーデンでは、人が商品を「手に取って」見ているところや売場を歩き回っている様子を、VRで見ることができる。「データを数字として見ることが多くの人は苦手なので、難しい。それを“人”として見ると、身近に感じて一気に簡単になる。(分かりにくい)データや数字はマーケティングから退けていきたいとの思いから、事業をやっている」と倉橋氏は話す。

続いて堀江氏から、delyの設立から今までの歩みについて紹介してもらった。堀江氏がdelyを立ち上げたのは2014年。2014年から2016年までは、現在とは違うサービスを提供していたがうまくいかず、2016年にピボットして、レシピ動画の「kurashiru」を作った。

dely代表取締役 堀江裕介氏

delyの従業員数は、現在130人ぐらい。うち社員は内定者を含めて60人だ。「昨年は十数人だったので、一気に増えた」と堀江氏は言う。「直近の四半期では50人採用した。このスピードで採用していると、相当失敗もしている。いい採用だけでなく、悪い採用もしているし、どういう採用チャネルがあるのか、どういった採用ハック方法があるのか、いろいろ試しているので、今日は参考にしてもらえると思う」(堀江氏)

正社員の採用チャネルは「基本的にリファラルとWantedlyで、7割近くを占める」そうだ。今のところまだ、エージェントと媒体を利用した採用は、それぞれ約10%で「社員の満足度が高いときには、やっぱりリファラルでの採用がガンガン効く」と堀江氏は話している。「Wantedlyの運用も、今は人事担当を1人つけて、がんばっている。あと、SNS経由については、僕が毎日どんどん発信しているので、これがかなり効いているかな、と思っている」(堀江氏)

ジラフ代表取締役 麻生輝明氏

次に紹介があったのは、ジラフの麻生氏だ。ジラフは2014年の創業。麻生氏が大学在学中に、買取価格の比較サイト「ヒカカク!」を始めたのが創業事業だ。その後、別のサービスもリリースしているが、会社として大きく人を増やし、組織も拡大するきっかけとなったのは、2017年3月にポケラボを売却したシリアルアントレプレナー・佐々木俊介氏が参画し、同時にポケラボのリードエンジニアだった岡本浩治氏がCTOとして参画したことだ、と麻生氏は言う。

「そこからビジネス側、開発側で人を一気に拡大し、だいたい8カ月ぐらいで2.5倍ぐらいの規模になった」と麻生氏は話している。現在は従業員全体で60人ぐらい、社員が30人ぐらいだという。

直近では、2017年10月に「スマホのマーケット」をリリース11月には資金調達も行ったジラフ。資金調達については「組織面が強化されていることも評価された」と麻生氏は言う。今後、スマホ即金買取サービスの「スママDASH」の公開も予定しているとのことだった(イベント後の12月21日、ジラフはTwitter経由の匿名質問サービス「Peing(ペイング)質問箱」を買収、さらに2018年1月15日にはスママDASHをリリースしている)。

エン・ジャパン執行役員 寺田輝之氏

エン・ジャパンの寺田氏は今回、スタートアップへ人材サービスを提供する側としての登壇だが、寺田氏自身もエン・ジャパンがスタートアップだった頃に入社している。現在はエン・ジャパンの執行役員を務める寺田氏の持論は「スタートアップは、成功するまではプロダクトづくりに専念しろ」というもの。自身がかつて直面した採用の課題に対して、先回りして解決できれば、ということで提供しているのが、クラウド採用ツールの「engage(エンゲージ)」だ。

engageでは「採用からエンゲージメントを意識してほしい」ということで、基本的に無料でサービスを提供。2016年8月のローンチから1年3カ月で5万7000社に導入され、「HRアワード 2017」では優秀賞も受賞した。

engageで提供する主要サービスのひとつが、スマホ対応の採用HP作成。寺田氏は「媒体やWantedlyで企業からの採用メッセージを発信することは絶対やった方がいい。その上で、メッセージを見た人は必ず企業のホームページも見に来る。これはエージェントを使っても一緒。そこで、事業内容やサービス内容に加えて、採用のページも充実させておくことで、面談や面接で会う前の魅力付けをすることが必要だ」と採用HPを用意することの意義について説明する。

「採用ページを個別に用意するのは結構コストがかかる。だったら僕たちの方で作ってしまって、ばらまいてしまおうと。さらに『エンジニアやデザイナーはプロダクトに集中すべき』という考えから、応募者管理のためのCMSや、ノンエンジニアがページを更新できるような機能も入れている」(寺田氏)

また、エン転職会員や提携するindeedなどを対象にした、採用のマーケティング支援もengageで実施。さらに性格・価値観テストと知的能力が測定できる「タレントアナリティクス」も月に3人分まで無料で提供している。

「スタートアップ採用あるあるとして、候補者のスキルは分かるが、カルチャーフィット、その人たちがどういう性格や価値観を持っているのかが、なかなか分からない、というのがある。特に創業初期の段階で、それが合わない人たちを入れてしまうと、結構苦労する。だから、カルチャーフィットの部分もしっかり見ていこう、というのがタレントアナリティクスのサービスだ」(寺田氏)

もうひとつ、寺田氏が紹介したサービスが、退職予測をアラートする「HR OnBoard」。入社して何年も経てば退職理由もいろいろ出てくるものだが、入社後1年以内に退職する人については傾向があると寺田氏は言う。エン・ジャパンでは3000社以上の企業の状況を分析した結果をもとに、「HR OnBoard」をリリースした。

「多いのは『思っていたのと違う』というギャップ、直属の上司とのリレーションのズレ、そして業務量が多すぎる、または少なすぎるというズレ。これらをずっと分析して『このタイミングで社員からこういう回答が出るときは、退職の危険性が非常に高い』『こういう回答なら大丈夫』というパターンを出し、ビッグデータからアルゴリズムを作って提供している」(寺田氏)

何もないところから日常的にコミュニケーションを取って、採用した人が退職しないようにフォローするのはなかなか難しいものだが、アラートが出て「このまま行けば辞められてしまう」となれば、一生懸命止めることができる。そのためのツールとして用意した、と寺田氏は説明する。

「私自身の経験も含めて、スタートアップでこれから起こりうるトラブルは絶対あるはず。そこに先回りできるツールを提供していく。さらにこうしたツールはこれまで、結構なコストを投入しなければ導入できなかったが、SaaSとして提供することで民主化した。ミスマッチのない、エンゲージメントの高い対応が実現できるように、ということで提供しているので、良ければ使ってみてほしい」(寺田氏)

「最初の5人」採用はやはり知人・リファラルが中心

各社紹介の後、話題は「創業して最初の5人はどうやって集めたか」へ移った。

ジラフの麻生氏が1人目の社員を入れたのは、創業1年ぐらいのタイミング。それまでは全業務の統括をひとりでやっていたという。「No.2が欲しい、ということで探していたが、そこにハードルがあった。COOを務められるNo.2人材は、起業しようという気力がある人でなければいけない。けれども、そういう気力のある人は、代表をやりたいわけで、ちょうど良い感じの人がなかなか見つからなかった。結果的に、VCから紹介してもらった人と会ったところ、その日に入社を決めてくれた」(麻生氏)

次に入社したのはエンジニア2人で、1人は業務委託で手伝ってくれていたメガベンチャー出身者。もう1人は「4月1日に会ったら、東大を卒業したところだけど就職が決まっていない、というちょっと変わった子で、その日のうちに採用を決めた」のだそうだ。

その後、現在は執行役員 兼 営業部長を務める人を採用。「彼は大手商社の出身で転職してきてくれたのだが、元々、大学時代にインターンが同じだったのが縁。最初の5人については、いずれも紹介や縁で入社してもらっている」(麻生氏)

delyの堀江氏は、サービスをピボットして実質2回の創業を経験しているが、1回目のサービスがうまくいかなかった際には、20人ぐらい一気に辞めたという。「唯一残っている最初からのメンバーは、現CTOの大竹(大竹雅登氏。TechCrunch Tokyo 2017でCTOオブ・ザ・イヤーにも選ばれた)。自分は『プライベートの友だちは絶対に誘わない』と決めていた。またエンジニアの友人もいないので、Facebookのプロフィールに『エンジニア』と書いてある人に片っ端から連絡を取った。100人ぐらいに声をかけたのだが、一番最初に引っかかってしまった(笑)のが彼だ」(堀江氏)

その後、第2創業期のメンバー集めでは「一度チームが崩壊してしまったので、チームメイキングができる人間が欲しいと考えた」という堀江氏。「大学時代に一度、VCのピッチの場で会った人が、起業をやめて大手消費財メーカーに就職したと聞いていた。彼に久しぶりに連絡をしたところ、話して3日後に辞表を出して、2分の1の給料で入社してくれることになった」と次のメンバー入社のいきさつを話してくれた。

「彼も大竹も一度起業を目指した起業家で、その後のメンバーも10人ぐらいまでは元起業家。タフなメンバーが今でも活躍している」と言う堀江氏に、元起業家を口説くときの方法を聞いた。「『自分で事業をやるより、俺とやった方が勉強できるだろう?』という謎の雰囲気を出す(笑)。本当は何も教えることなどなくて、自分が教えてもらってばかりですが」(堀江氏)

プレイドの倉橋氏は、ビジネスマンを7年弱経験してからの起業だ。楽天を辞め、初めはコンシューマー向けのアプリ提供やECコンサルを行っていた。最初のメンバーは役員4人。すべて知人、リファラルでの採用だった。

「取りあえずやりたいことをやるために会社を作ったが、会社ってそんなにうまくいくわけがない。他の仕事を持ちながら4人が集まったということもあり、サービスをローンチした後、初動は良かったが、なかなか伸ばすことができなかった」(倉橋氏)

そのため1年目に一度切り替えよう、ということでメンバーもリセット。同じ会社を器として使いながら、今のCTOと楽天時代の同期の紹介で知り合い、現在に至っているという。

「だから僕も2回創業があって、1年目はウォーミングアップだったと捉えている。その後、役員以外の社員が入りはじめてから20人弱ぐらいまでは、全員リファラル採用を行ってきた」(倉橋氏)

「スキル」よりは「学習能力」「フィットネス」を重視

では「最初の5人」のフェーズを終え、そこから拡大していくときに、各社はどういう基準・指標で人を採用していったのだろうか。

従業員70人、うち社員として60人を抱えるプレイドの倉橋氏は、社員の採用チャネルについて「まだリファラルが半分強。残りの半分のうちの半分がWantedly経由で、もう半分がエージェント」と概観を説明。「つまり信頼できる人を確実に誘っていく、ということをやってきた。社会人経験があることから、人を介して人につながる、ということはやりやすかった」と話している。

倉橋氏は「役割ごとの人数を(採用)計画に落とし込むということは、これまでほとんどやってきていない」と言う。「僕らの事業はまだまだ、これから立ち上がるフェーズだと思っている。だから人材を(初めから)見極めて採るという市場感ではなく、いい人をできる限り採る、それだけでやってきた。エンジニアかビジネスか、ぐらいの区分はあるが(細かい)役割を決めて採用するということは、いまだにほとんどしていない」(倉橋氏)

人材のフィット感を確かめる方法として「全員にアルバイトか契約社員で入社してもらい、3カ月見る」ということもやってきた、という倉橋氏。「中には9カ月ぐらいアルバイトしてから社員になった人もいる。そこで妥協しなかったことが、今の(企業)文化構築につながったと考えている」とのことだ。

採用基準については倉橋氏はこう語る。「新しい価値観を提供していくときに、一番重要なのは学習だ。個々人として、組織として、またプロダクトとして学習していく、という中では個人の役割なんて簡単に変わる。だから変化への許容度が高い人をいかに採るか、ということを優先してきている」(倉橋氏)

人の良し悪しの判断については「社内でも、CTOなどと話しているのは『能力は誤差だ』ということ」と言う倉橋氏。「そもそも新しいことをやっているのだから、その人の経験が100%ダイレクトに生きる、なんていうことは、まずない。経験や成功体験を疑える人にまず来て欲しい、というのが前提だ。だから『人間として好きかどうか、人間性が信頼できるか、真面目か』といったところを見ているのと、自分の言葉として事業に共感してくれているかどうか、能力よりも『一緒にやりたいかどうか』といった“人”っぽいところを基準に見ている」(倉橋氏)

採用チャネルの3割がリファラル、というdelyの堀江氏は「採用の基準は超簡単」と面白い視点を紹介してくれた。「会ったときに『この人とサシで飲みに行く約束をした1時間前に、イヤにならないか』ということを見ている。カルチャーフィットする人なら、気軽に飲みに誘える。定性的ではあるけれども、採用してからの感覚ともだいたい合っている」と堀江氏は言う。

「能力に関して言うと、見てはいるが、入社してから半年も経てば、そのジャンルに対する知見などは周りと変わらなくなってくる。だから過去の経験よりは、学習意欲の高さや学習スピードの速さを重視している」(堀江氏)

ここで寺田氏が「Googleでは『エアポートテスト』、つまり採用基準として『次に乗る飛行機が飛ばなくなり、空港の近くのホテルで泊まらなければならなくなったときに、一緒に泊まって会話ができるか』というテストを、科学的に行っている」と紹介。堀江氏に「イヤになるかならないか」を判断するときには、何を見ているのか尋ねた。

堀江氏は「うさんくさくない人かどうか」が基準だと話す。「前年比1500%達成!といった経歴を書く人がいるが、そもそも前年の運用期間が少ない、とか、話を盛っちゃう人はうさんくさいので、飲みに行きたくなくなる。自分の失敗や弱みまで含めて語れるような人は、僕はいいな、と思っている。カルチャーフィットというのは、ある意味、自分の彼女に対して『性格も良くて料理もできて、謙虚で』といった全部の条件を求めているようなものだけど、別に『会社に合わせろ』ということではなくて、何か間違ったときに素直に認められるような能力というのを、僕らは見ている」(堀江氏)

ジラフの麻生氏は、スタートアップとしての「採用のフェーズが変わってきた」という実感があるようだ。「創業から1年半ぐらいまでは、精神論的だが(基準が)『頑張れる人』みたいな感じだった。起業家プラス5〜6人、というときには、その温度感を一緒に持ってやれる人かどうか、というところを見ていた」と言う麻生氏。

「そこから規模が大きくなるにつれて、不器用な人というか『必殺技は持っているんだけど、今いる会社では上司から好かれない』とか、ちょっと変わった人が入ってくるようになってきた。ジラフではそういう人が多いので、みんなお互いに認めあっている、という環境になってきた」(麻生氏)

フェーズが変わったタイミング、きっかけについては「資金調達をして、大きめのオフィスに移転して、人をどんどん採用していくという中で、業務を回すために『頑張れない人』、定時に来て定時で普通に帰る、という人を入れていく時期は来る。今はそういう時期だな、と思っている」と麻生氏は言う。

また、倉橋氏や堀江氏と共通する点として「ポテンシャルがある人、過去の経験にとらわれず、会社が求めていることの説明を素直に受け止めてもらえて、うまくいかなくてもすぐに違う挑戦ができる、試行錯誤できる人を採用するようにしている」と麻生氏は言い、「そういう人は若い人に多い。今は20代の人を採用させてもらっている」と話している。

「ただ、20代は能力差が結構あって。すごく優秀な人を1人採るのと『普通に仕事ができます』という人を2人採るのでは、優秀な人を1人採った方がいい。そういう人は他の人も連れてこられるし、正の循環が回るというイメージがある。そこの質をどう担保するのか、ということも同時に意識はしている」(麻生氏)

リファラル採用、それぞれの「巻き込み方」「口説き方」

続いては、リファラル採用について。それぞれ、知り合いをどう巻き込むのか、成功している事例を各社に聞いた。

堀江氏は「自分事として考えること」が大切だという。「経営者は自分事として考えないことが多いけれど、もし自分が社員だったとして、この会社に本気で親友を誘えるか、と考えると、それは『この会社が好きかどうか』にかかっている。あとは、業績・社風的に信頼できるかどうか。僕らは、業績を上げることはもちろんだが、サービスの魅力を上げることなどで、まずは社員に好きになってもらうように頑張ることが大事」(堀江氏)

好きになってもらったその後は、社員の中で紹介を頑張った人を積極的に表彰し、Slackなど全社員の見えるところで称賛する文化を作ったことで、リファラル採用が加速した、と堀江氏は説明する。

「僕は学生起業家だったので、(自分の周りには)まだそれほど人材がいない。社員経由のリファラル採用のほうが最終的には増えてくると思う。また、1人の知り合いよりも100人の知り合いを探した方が圧倒的によいので、自分の紹介での採用もあるが、社員の紹介もかなりある」(堀江氏)

麻生氏は、基本的には自分がつかまえてきた人材が多い、と言う。「僕の場合は、採用したい人は2年かけて追いかける、ということをやっていた。3カ月おき、半年おきに飲みに行ったり、ごはんを食べたりして、定期的に会う。これはDeNA(創業者)の南場さんが『SHOWROOM』プロデューサーの前田さん(現在はSHOWROOM代表取締役社長の前田裕二氏)を採用するときに数年かかった、という話を聞いたのだが、それを真に受けてやっている感じだ」(麻生氏)

実際に2年かけて採用したエンジニアや、半年以上かけて口説いて入社した人事責任者が、現在ジラフでは働いているそうだ。

面談からどう踏み込ませるかについては、社員に会わせることが強い武器として機能している、と麻生氏は説明する。「うちは現場に自信があるので、口説いた上で『じゃあ、実際働く人に会いに来てみなよ』と来てもらい、社員に会わせるとだいたい一緒に働きたいと思ってもらえる」(麻生氏)

またジラフでは比較的早い段階で、CxO経験者を採用している。その手法について麻生氏はこう話している。「優秀な人ほどキャリアアップを真剣に考える。スタートアップに挑戦したいが、考えた結果、不安が大きくなることも。そういう方に対しては、今のキャリアから次のキャリアに進むときに『ステップアップしてるよね』という状態をちゃんと作るために、ポストや部署を用意する。その代わり、『そのポストで、これ以上の人は採れない』というギリギリの一番いい人を採用する、ということは毎回やっている。そこは妥協しているつもりはない」(麻生氏)

スタートアップでは「今後それよりいい人を採れなくなる」ということを恐れて、ポストを用意しない起業家も多いが、麻生氏は「僕はちゃんとポストを用意し、ストックオプションなども提示して、僕らの会社に普通なら来ないような人を取り込む、ということを連続的に繰り返している」と言う。

倉橋氏はリファラル採用について「仕組み化するのが難しい」と述べている。「社員が少ないときは一通り候補に当たり終わると、どうしよう、みたいな話になるので、あまり効率的な仕組みではない。ただ、僕らの場合は社員の平均年齢がだいたい30〜32歳ぐらい。そこで『日本酒を飲みまくる会』など、お酒の力を借りて、ガードが弱くなったところで仲良くなるようにしている(笑)。月に1〜2回、外の人を気軽に呼んでこられるような場を用意する、これだけはちょっとした仕組みとしてやっている」(倉橋氏)

もうひとつリファラルに効くテクニックとして、倉橋氏は「今のフェーズまでは、現実的な話を社内でもあまりしない、というのを貫いてきた」と言う。「夢のある話の方が、みんな楽しそうに話すので、外にも伝播しやすい。いざその話が外に伝わって新しい仲間が増えたときにも、はじめに夢で共感している場合、現実化するところでも人はなかなかぶれない。だから入社した後も安定しやすい」(倉橋氏)

こうして、とにかく夢を社内全員で語るようにしている、というプレイドで、倉橋氏が「ここまで来たか!」と思ったエピソードがあるそうだ。「採用候補者に『みんなものすごいレベルで夢を語りますね。これって事前に準備しているんですか?』と質問された。それほど、気持ち悪いぐらいに、それぞれの口から夢が出てくる。そういう会社って強くなれるんじゃないかな、と信じている部分はある」(倉橋氏)

ここで寺田氏から「メンバーと一緒に採用にチームとして取り組んで動き、ありがたかったこと、うれしかったことは?」と質問があった。

麻生氏は「僕の場合は学生起業ということもあり、中途採用のときに『スタートアップに転職するのはいいですよ』と僕の口から言うと、ポジショントーク感が強くなる。それを大手企業から転職してきた人に説明してもらうと、説得力が変わる、ということはある。また、口説きに行く、というやり方は一般の従業員では難しいケースが多いが、僕以外でもCFOなど、目的意識が強い人間が説得して『逃さず採りに行く』という採用ができる人がいるのは、すごく助かっている」と言う。

また倉橋氏は、人事採用の責任者から日々聞いていた苦しみとして「求人票を作れない」という話を紹介。「要は『こういうことができる人が欲しい』という求人を一切出してきていないわけで、エージェントも困るだろうし、人事採用担当もこのギャップを埋めるのは大変だったと思う。けれども、会社の成長も含めて、時間をかけながら、採用責任者がエージェントとコミュニケーションをしっかり取ってきてくれたおかげで、『変だけど、めっちゃいい会社があります』という感じで紹介してもらえるようになった。難しかった部分ではあるが、突破できると逆に強みになるのではないか、という気が最近ではしている」(倉橋氏)

採用失敗エピソード、やっておけば良かったことは?

この後は、会場からの質問で「一番の採用失敗エピソード」を各社に教えてもらった。

麻生氏は「経験者を採りたい時期に中途採用をしたが、あまり一緒に頑張ろう、という気持ちでやってもらえなかった事例があった」ことを紹介。「今では明確な採用失敗というのは起こらなくなってきた。社内で選考フローも作り始め、『こういう項目を見ましょう』というのも体系化されてきている。あとは、必ずどんな人でも僕が面接に1回は入るようにし、自分で見て『この人なら』という人だけを採るようにしている」(麻生氏)

堀江氏からは、採用の失敗ではないが初期メンバーとそれ以外のメンバーとのギャップについての悩みが打ち明けられた。「最初の10人がものすごくファイタータイプというか、タフな人間が多かった。となると後半に入ってくる100人目、120人目とかが、それを見てビックリしてしまう。そういうわけで、あらかじめ『めっちゃ働いている人もいれば、18時に帰ってる人もいるよ』とある程度、現実とのすりあわせが僕らにも必要なのかな、とは思っている」(堀江氏)

倉橋氏も失敗ではないが、やっておけば良かったこととして、採用すべき人材の順序・時期について述べた。「僕のようなビジネス系、マーケティングやディレクション系人材の採用は、スタートアップでも比較的困らないケースが多いと思う。だが、難しいのがエンジニアやデザイナーの採用。特に僕たちのようなB2Bのプロダクトの場合、デザイナーが一番難しい。うちはエンジニアについては初期から良い人材がいて助かっているけれども、デザイナーとして中核になる人間を、社員数5人10人のフェーズで1人でも採れていたら、立ち上がりはもう少し早かったのではないか、という気はする」(倉橋氏)

最後に、寺田氏からの「採用PRとして、こういうことを発信すべき、また注意すべきという点は?」との問いにも各社に答えてもらった。

堀江氏は、四半期に50人を採用したときの話として「僕自身が一番、社内だけでなく社外にも夢を語りまくっていた」と話す。「社長の思い、ビジョンを元々知った状態で面接に来てもらう、ということをとにかく心がけている。採用の確度も高まるし、社長自身が発信することは大事だ」(堀江氏)

麻生氏からは「僕らはストレッチして、優秀な人を採っていくようにしている。けれども優秀な人ほど、いろいろなことがすぐにできてしまい『褒められるのが当たり前』という環境になって、仕事が面白くなくなっていくことが多い」と“良い人材”を採用することに対しての注意点を述べた。

「僕らの環境では『いろいろなところで褒められてきた人たちが真剣にやらないといけない』という状況にするようにしている。30歳になろうという人たちが、真剣にキャッチアップしていく、という環境を作っていこうと思っているし、そこに挑戦的な気持ちで参加できる人に来て欲しい」(麻生氏)

倉橋氏は「採用広報、PRは正しく伝えることだと思う」と言う。「採用広報、PRを考え始めると、伝え方を間違えそうになるというか、自分たちらしくない伝え方や、いいところを探そうとして、そんなに大した話ではないのに外に出そうとしてしまうなど、自分たち自身が迷い始めることがいろいろある。でも、プロダクトも採用も、自分たちの努力以上のものは外には伝わらない。だから良く思われたいんだとしたら、本当に努力するしかないかな、と思っている」(倉橋氏)

採用とは候補者の人生の時間投資を引き出すこと——TechCrunch School #12:キーノートレポート

写真左から:インキュベイトファンドGeneral Partner 和田圭祐氏、HR Partner 壁谷俊則氏

TechCrunch Japanでは今年3月から4回にわたり、イベント「TechCrunch School」でHR Techサービスのトレンドやスタートアップの人材戦略など、人材領域をテーマにイベントを展開してきた(過去のイベントについてはこちら)。HR Techシリーズ第4弾として12月7日に行われた「TechCrunch School #12 HR Tech最前線(4) presented by エン・ジャパン」では「スタートアップ採用のリアル」をテーマに、キーノート講演とパネルディスカッションが行われた。この記事では、キーノート講演の模様をレポートする。

登壇者はインキュベイトファンド General Partnerの和田圭祐氏とHR Partnerの壁谷俊則氏。インキュベイトファンドは創業期の投資・育成にフォーカスしたベンチャーキャピタル(VC)だ。キーノートではVCの立場から、スタートアップの採用戦略や支援の手法について紹介してもらった。

最初に和田氏がインキュベイトファンドの投資の取り組みについて説明した。インキュベイトファンドでは、4名の共同パートナーにより、累計300億円、300社のポートフォリオを運用。会社設立前のプレシード期から積極的に事業相談に応じている。最近では金融・医療・エネルギーなど既存の大きなマーケットに切り込む戦い方をするスタートアップや、研究開発を行い難易度の高い技術を活用する企業も投資先に増えているそうだ。

背景には、VCへの資金流入が増えていることがある。既存産業の主要プレーヤーである大企業も、スタートアップに期待をして資金を投入している。「こうした資金の最大の使途は基本的には人材だ」と和田氏は言う。「人材は事業の成長の加速度や成否が大きく左右される、最大のファクターだ。資金流入の加速により、数年前に比べても、CxOになる人たちは明らかにハイスペックな人が増えているという実感がある」(和田氏)

そうした状況下、資金を提供するだけではなく、採用の支援も行おうということで、4月からインキュベイトファンドのHR専任担当に就いたのが壁谷氏だ。壁谷氏はフューチャーベンチャーキャピタルを経て、人材紹介事業を行うクライス&カンパニーでマネジメント領域の転職支援、ランスタッドでキャリアコンサルタントのマネジメントを行った後、インキュベイトファンドに参画。現在は、投資先企業20〜30社の採用ステージを支援しているそうだ。

スタートアップ創業初期の採用は創業者の個人戦

スタートアップにおける採用のやり方は、創業初期の初めの5人を集める段階と、組織全体で数十人規模の採用を行っていく段階とで、かなり変わっていく。「それぞれのフェーズでどう採用を行っていくか、またフェーズによる差異をどう吸収していくか、ということを悩んでいる企業は多い」と和田氏は言う。

VCが投資を行い、採用活動をサポートする場合は、初めの5人の段階で手伝うことが多く、パートナー自身のネットワークの中で一緒に人を口説くこともやる、と和田氏は話す。「このタイミングでは創業者のカリスマ性やリーダーシップ、プロダクトにかける情熱など(を武器に)、アナログな戦い方で一人ひとりタレントをそろえる。プロダクトや会社としての実績、基盤や組織もできていない状況では、社長の魅力で勝負していくことになる」(和田氏)

このフェーズでは、投資は決定しているがファウンダーが一人しかいない。だが、やろうとしていることの規模感から考えると一人ではとても足りない、という状況だ。VCは、事業戦略に合わせてどんなコアメンバーが必要で、それぞれがどういったスキルセットをどれくらいの基準で持っていなければならないのかを創業者と徹底的に話し合い、バイネームで誰が欲しいかまでを記すような、具体的なスカウトリストを一緒に作ると和田氏は言う。

「ファウンダーのネットワークの中で候補となりそうな人を共有しながら、VCのネットワークでも該当しそうな人がいれば紹介していく。候補者の感触が良ければ、継続的にコミュニケーションを取っていく」(和田氏)

候補者を口説くプロセスについては、和田氏はこう話している。「初めからいきなり、『これから立ち上がるスタートアップに参画してくれ』といっても、なかなか踏ん切りが付かないものだ。また優秀な人ほど、今の職場でも非常に評価されていたりする。そこで時間をかけ、事業のアップデートがあれば随時、丁寧に伝え続けて口説くという手法をとる」(和田氏)

採用候補者がスタートアップや経営の経験を持つ人材の場合は、創業者の強みや弱み、癖などを客観的に見てどうかといった意見も、VCに対して求められることがあるという。また、どういうチームプレーやサポート関係になれば理想的になるか、と聞かれることもあり、ナンバー2、ナンバー3としての働き方をサポートしていくこともある、と和田氏は述べる。

採用強化フェーズで大切にしたい3つのポイント

初めの5人を集めた後は、数十人規模へ組織化していくフェーズへと移る。ここからは壁谷氏から、チームづくりと採用について説明してもらった。

このフェーズは、資金調達から人材採用に大きく舵を切り、会社全体の組織戦として採用を強化するとき。引き続き10人に満たない時点では、経営陣はアナログに採用を行いつつも、事業も大きくなり、忙しくなってくるため、それだけでは追いつかなくなってくる。壁谷氏は「この段階からは、採用の入口から出口までプロセス全体を設計し、アプローチからアトラクト(魅力付け)までをしっかり選んでやっていかなければならない」と話す。

また、この段階では最初期とは違い、サービスや事業の実績・評判、プロトタイプなどの先進的な事例は出ているはず。それを表に出して共有しながら「この事業を一緒により拡大していくために、皆さんの力が必要です」ということを伝えていくことになる。「(創業者の)思いだけではなく、事例も合わせて伝えていくことが必要になってくる」と壁谷氏は言う。

そして会社がまだ十数人規模の段階では「会社のメンバー全員が採用担当です」と言い切って採用活動が行える環境をつくることが大事だと壁谷氏は言う。「そういう意味では社長一人の努力でなく、組織文化や各人の業務範囲、権限委譲なども重要なファクターとなってくる」(壁谷氏)

投資先の採用強化フェーズで、壁谷氏がVCとして大切にしている点が3つあるという。1点目は採用計画の共有。事業計画を形にするためには、どういう採用を実現しなければならないかを共有し、採用フローの全体像を把握する。この時点ではメガベンチャーでもない限り「あらゆる手段を使って」採用を行うにはリソースが足りない。どの手段をとるかを決めて、採用をスタートしていく。

2点目は、誰を採るか、採用人材のターゲティングだ。「ややもすると『うちのようなスタートアップに来てくれる、アツい、イケてる人』といった漠然としたターゲットになりがち。『今どの会社で何をしている人が必要で、そうした人が自社のようなスタートアップに来る動機があるとすれば、転職理由はここなのでは?』と仮説を持ってターゲットを設定していくことが必要。仮説をたくさん持つことでターゲットを広げていくことはあり得るが、ぼんやりとしたターゲットにすることは適切ではない」(壁谷氏)

ターゲット設定はなぜ必要なのか。壁谷氏は3点目の「採用広報」と関係があると指摘する。「自社ホームページやWantedlyなどで採用広報をかけていくときに、ターゲットと仮説が曖昧だと、出すメッセージも曖昧になる。この人に読んでほしい、こういう志望動機の人に見てほしい、というのがなければいけない。ターゲットがハッキリしたら採用広報を強化し、事業ビジョンやマーケットの課題、それを解決するための自社のポジショニングなどを発信していく」(壁谷氏)

同時に資金があるなら、リソース不足を補うために人材紹介会社も活用できるが「ここでも、情報やターゲットをしっかりとエージェントに展開しなければいけない。何となくいい人連れてきてください、ということでは良い人材は出てこない」と壁谷氏は話している。

転職者の「企業選定」「面談」には手厚く対策すべし

続いて壁谷氏は、採用で起こりがちな課題を“打ち手”ごとに紹介した。

上図の左側の課題に対して、右側のような状況になることが理想なのだが、どうすれば“意図的に”そうした状況を作っていけるのだろうか。

壁谷氏は「企業側の採用フローと転職者の応募のフローを並べてみたときに、企業側は転職者の『企業選定』と『面談』への手当が抜けていることが多い」と指摘する。「企業側の採用フローの中で、転職者の企業選定と面談への対策は『アプローチ』と『面談』の間ぐらいにあるのだが、ここへの手当が少なくなっている」(壁谷氏)

では具体的に、どのように手を打てばよいのか。まず、採用候補者が企業を選定するフェーズでの対策について、壁谷氏は「この時点では転職者は、自分の興味関心のある分野の企業や共感できるビジョンを探している」と説明する。

転職者が企業情報から何を読み取るかといえば、

  • 事業領域、マーケットの伸び
  • 事業モデルのユニークさ、競争優位性
  • 経営チームの経歴や社長メッセージへの共感度
  • ポジションの魅力、将来的なキャリアの展望

といったポイントだ。壁谷氏は「このあたりのポイントをコンテンツとして出しておかなければ、そもそも次の面談に進まない。採用広報コンテンツには、これらの要素を盛り込んで発信することがとても大事だ」と言う。そこで壁谷氏が勧めるのは「採用PITCH資料」の作成だ。

壁谷氏の言う採用PITCH資料とは、求職者向けに会社のことを知ってもらうために、ファイナンスやプレゼンコンテストとはまた別に用意するピッチ資料のこと。この資料を作ることこそが採用コンテンツを作るためのベース作りになるのだと壁谷氏は言う。「我々はVCとして、いろいろな会社からプレゼンテーションを受ける。経営者は、まだ会社を立ち上げる前からしっかり資料を作り込んでピッチを行うが、それは我々から投資を引き出すため。だが採用も、候補者の人生の時間を直接投資してもらうことだと考える。もう戻らない、かけがえのない時間をその人から引き出すためには、その人が魅力に思い、自分の時間を投資してもいいと思えるような情報を伝えていくことが必要だ」(壁谷氏)

壁谷氏が言う「採用PITCH資料」に盛り込むべき内容は以下の通り。

  1. Vision・事業概要・会社情報
  2. メンバー紹介/ボードメンバーの経歴概要
  3. マーケットの課題(現状)と自社のポジショニング
  4. 今後の成長戦略
  5. サービス導入のケースと顧客の声
  6. チーム体制・組織図(現在→1年後→3年後)
  7. 採用ポジション情報
  8. 今のフェーズで入ることの面白さ、魅力
  9. ニュース、職場風景、イベント記事等の掲載

このうち、1〜5については、資金調達の際に作るようなピッチ資料でカバーされているはずのコンテンツ。6〜9が新たに採用候補者向けに盛り込むべき内容だ。

チーム体制や組織図については、事業戦略をもとに「事業計画通りに行けば、1年後、3年後にはこういう組織になる」というものがあれば、候補者にとって「今入社すれば3年後にどれぐらいの組織体になっていて、このポジションになっているんだろうな」ということがイメージしやすく、自分の時間を投資して良いかどうかを判断しやすいという。

これらの情報がきちんと準備され、四半期に1度ぐらいで更新されていれば、採用広報の場面では情報を「Twitterでどう出そうか」「Facebookでどう展開しようか」という出し方を考えればよい、というわけだ。壁谷氏は要素を盛り込むときには、Wantedlyの「なにをやっているのか、どうやっているのか」といった「問い」が参考になる、とも話している。

次は、採用候補者が企業と面談するフェーズでの対策について。ここで言う「面談」は正式な「採用面接」の前段階に当たる、カジュアルな面談のことだ。壁谷氏は、キャリアコンサルタントとしての経験から「面談・面接・相談はそれぞれ言葉が違う。面談とは何か、ということをきちんと定義しておいた方がいい」と語る。

「私としては、面談とは、候補者が今までどんな思いでどういうことをやってきたかというキャリアの棚卸しをし、次に将来ビジョンやその人の持つ仕事の価値観を引き出した上で、では一緒にこれから、こういうキャリアストーリーを描いていこう、ということを出していく場だと考える。最終的には、企業の人事や採用に関わる人が協力し、自社への強い応募動機につなげることを目的とするものだ」(壁谷氏)

この目的のために面談で実施することは、候補者の仕事力、価値観、状況、意思決定のポイントの“確認”と、自社からの事業ビジョン説明、候補者を理解した上でのやりがいの提案、キャリア価値の提案・共有といった“情報提供”だ。

壁谷氏は、スタートアップの悩みとしてよくある「たくさんの候補者に会っていても、候補者の志望動機が上がらない、次のステージへ進まない」というのは、上で述べられたような意図・目的で面談に臨んでいないからだ、と指摘する。

「企業側の採用フローにおける面談も、人材紹介会社が候補者にやっている面談と同様に、意図を持ってやらなければいけない。目的を見失うと、カジュアル面談の場で自分たちまで“カジュアル”になってしまう。演出上、敷居を低く、接点を多くしてカジュアルに面談を行うのはよいが、目的をイメージして面談に臨んでもらいたい」(壁谷氏)

意図・目的を持ち、面談の実施がうまくいけば、必ず次の正式面接に強い志望動機や高いモチベーションを持って、候補者が進んでくれる、と壁谷氏は話す。「採用情報の提供のときに事前の情報提供をしっかり行い、面談のときにも採用PITCH資料を渡せるといい。そして面談の中で候補者のキャリアの棚卸しにきちんと協力して、『うちで働くとこういうキャリアイメージがあるが、それはあなたにとってどうだろう』という話をし、本当に興味があって仮説が正しいと思ってもらえる人に正式にエントリーしてもらう。これでぐっと採用力は上がってくる」(壁谷氏)

エージェントが紹介する「最初の3社」に選ばれるために

壁谷氏はさらに「人材紹介会社をうまく使うということも、スタートアップ企業にとっては大事なこと」と続ける。採用エージェントとの関係においても「普通に声だけかけると、エージェントの担当者にも企業開拓のノルマがあるのでアポイントはいっぱい入ってくるが、本当に(人材を)出してくれるかどうかは分からない」と壁谷氏は明かす。

その理由は、エージェントビジネスの儲けの構造にある。エージェントは、人材を獲得しやすい案件で、書類選考から内定までの通過率が高く、採用者の年収が高くエージェントフィーの率もよい案件を好む。しかし「スタートアップ企業への人材紹介ビジネスは『市場の失敗』領域じゃないかと思えるぐらい逆」と壁谷氏は言う。

「全然知られていないスタートアップでは応募への反応がない。また、高スペックの人を選びながら採用に至らないことも多いので、エージェントの気持ちも萎える。さらに採用者の年収が低めでフィーも安くしてくれ、と言われるとエージェントとしてはやりたくなくなる」(壁谷氏)

もちろん人材紹介会社の中にも、スタートアップにぜひ人を紹介していきたい、という志ある人はいるが「経済合理性だけでは難しい。気持ちや社会的意義でやってくれるというエージェントは、ぜひ大事にしてほしい」と壁谷氏は言う。

また、壁谷氏は「担当エージェントのマインドシェアを高めることも重視しなければならない」と言う。エージェントの1カ月あたりの候補者との面談数は、キャリアコンサルタントとリクルーティングコンサルタントを兼ねる一気通貫型の担当で20名、分業型の場合で40〜80名。つまり分業型の場合、1営業日あたりで見れば2名以上、多い会社では5〜6名と面談することになる。

「1時間の面談の中で、エージェントは30分は候補者の話を聞く。後半20分で企業案件の提案をし、最後の10分で諸々の手続きなどを行うとすると、案件の説明には1社あたり5〜7分かかるので、提案できるのは平均3社ぐらい。スタートアップはエージェントと候補者の初回面談のときに、対面で提案するこの3社の中に入っていかなければいけない。それ以外の会社は『こういう候補もありますので後で見ておいてください』となってしまう」(壁谷氏)

エージェントがちゃんと熱を持って語った会社なら、スタートアップであっても魅力に感じてもらえるし、志望動機は上がっていく、と壁谷氏は言う。では担当者のマインドシェアを高めるためには、どうすればよいのか。

壁谷氏は「特に分業型エージェントの場合、リクルーティングの担当者だけではなく、候補者と対面するキャリアコンサルタントの手元に自社に関する情報がすぐある状態を作らなければならない」と説明。これは採用PITCH資料があればできる、と話す。

「話題が多ければ、エージェントは候補者に話したがる。またFacebookやYouTube、Twitterなどでの情報発信も、エージェントへの提供材料となり、印象も変わる。こうしたコンテンツ、ネタがあればあるほど最初の3社に入りやすい。誰かに話したくなるような、ユーザー体験をエージェントに持ってもらうことも大切。エージェントと経営陣との接触機会を増やしていくこともよいだろう。そうすることでエージェントのマインドシェアを高めていくことができ、(明確な)志望動機を持ったよい候補者が出てくるようになる」(壁谷氏)

「ダイレクトリクルーティングを行う場合にも同様だが、面接をするまでにどれだけ仕込みができるかに採用成功はかかっている」と言う壁谷氏。「そのためには、最初にも話したとおり、ターゲティングから仮説を考え、最適な情報提供をしっかりしていくことだ。スタートアップはどの企業よりもそれをやらないと、放っておくと情報は勝手に薄くなっていくので、それを意識すべきだ」と語り、キーノート講演を締めくくった。

【増席】TC Schoolは12月7日開催、テーマは「スタートアップ採用のリアル」——プレイド倉橋氏、dely堀江氏、ジラフ麻生氏ら登壇

いよいよ来週12月7日に迫ってきたイベント「TechCrunch School」。登壇者のアップデートと、増席のお知らせをしたい。

TechCrunchでは、毎年11月に開催するイベント「TechCrunch Tokyo」の他に、テーマを設定した80〜100人規模のイベントであるTechCrunchSchoolを開催している。今年は3月からHR Techサービスのトレンドや働き方、人材戦略といった人材領域をテーマにしたイベントを展開している(過去のイベントについてはこちらを参照)。

今回12月7日のテーマは「スタートアップ採用のリアル」。以前もお伝えした通りだが、スタートアップ業界の基本となるのは「人」だ。だが創業期に優秀な人材、カルチャーにフィットした人材と出会うのは難しい。そこで今回は、経験豊富なキャピタリストや気鋭の起業家をお呼びし、採用の現場でのリアルな体験、成功や失敗について学んでいきたい。特に、創業メンバー数人から数十人規模になるというフェーズについて聞ければと思っている。

今回のTechCrunch Schoolもキーノートスピーチとパネルディスカッションの二部構成となっている。キーノートスピーチでは、新ファンドの立ち上げを発表したばかりの独立系ベンチャーキャピタル、インキュベイトファンド代表パートナーである和田圭祐氏と、投資先の人材支援を手がけるHR Partnerの壁谷俊則氏に登壇頂き、パートナーを中心にして創業期のメンバー集めから先、数人〜数十人規模の人材を集めるための施策について語って頂く予定だ。

またパネルディスカッションでは、すでに告知済みのdely代表取締役の堀江裕介氏、ジラフ代表取締役麻生輝明氏、エン・ジャパン執行役員の寺田氏に加えて、プレイドの倉橋健太氏に登壇頂く予定だ。各社ともTechCrunchでもご紹介させてもらっている成長中のスタートアップだが、ここまでの成長、そして採用にはさまざまな苦労があったと聞いている。このあたりの「リアル」な話を聞いていきたいと思っている。また、告知からすぐに埋まってしまった座席についても、このタイミングで追加している。もちろん参加費は無料だ。

イベント会場は、TechCrunch Japan編集部のある東京・外苑前のOath Japan株式会社オフィスのイベントスペース(通称「スタジアム」)。セッション後はドリンクと軽食を提供する懇親会も予定している。

また、パネルセッションでは質問ツールの「Sli.do」も利用して、会場からの質問にも回答しつつ、インタラクティブで熱量の高いセッションを展開してきたいと思う。創業メンバーから人材を拡大したい起業家、人材採用に悩むスタートアップの経営陣、人事担当者など、幅広い参加をお待ちしている。

【イベント名】TechCrunch School #12 「HR Tech最前線(4)」 presented by エン・ジャパン
【開催日時】12月7日(木) 18時半開場、19時開始
【会場】Oath Japanオフィス(TechCrunch Japan編集部のあるオフィスです。東京都港区南青山2-27-25 ヒューリック南青山ビル4階)
【定員】80人程度
【参加費】無料
【主催】 Oath Japan株式会社
【協賛】エン・ジャパン株式会社
【当日イベントスケジュール】
18:30 開場・受付
19:00〜19:05 TechCrunch Japan挨拶
19:10〜19:40 キーノート講演(30分)
19:45〜20:30 パネルディスカッション(45分)
20:30〜20:40 ブレーク
20:40〜21:30 懇親会(アルコール、軽食)

【スピーカー】
■キーノート
インキュベイトファンド 代表パートナー 和田圭祐氏
インキュベイトファンド HR Partner 壁谷俊則氏

■パネルディスカッション
プレイド 代表取締役 倉橋健太氏
dely 代表取締役 堀江裕介氏
ジラフ 代表取締役 麻生輝明氏
エン・ジャパン 執行役員 寺田輝之氏
TechCrunch Japan 副編集長 岩本有平(モデレーター)

申し込みはこちらから

TC Schoolは12月7日開催、テーマは「スタートアップ採用のリアル」——インキュベイト和田氏、dely堀江氏、ジラフ麻生氏ら登壇

明日はいよいよ大型イベント「TechCrunch Tokyo 2017」が開催されるが、ここでは12月7日、人材に特化したイベントを開催することをお知らせをしたい。

TechCrunch Japanでは、「TechCrunch School」の名称で、特定のテーマを設定したイベントを開催している。これまで3月、7月、9月には人材領域を軸に、HR Techサービスのトレンドや働き方、人材戦略といったテーマでイベントを繰り広げてきた(過去のイベントについてはこちらを参照)。

今回のテーマは「スタートアップ採用のリアル」。資金調達や新サービスのローンチと、ポジティブなニュースが飛び交うスタートアップも、そのすべての基本となるのは「人」がいてこそ。だが創業期のスタートアップが優秀な人材、カルチャーにフィットした人材と出会うのはそう簡単なことではない。それこそ昨年のTechCrunch Tokyoのセッションのひとコマでは、「はっきり言ってしまえば、『スタートアップには新卒でも中途採用でも、優秀な人は来ない』という前提で採用活動をする必要がある」なんていう厳しい意見も飛び交ったくらいだ。そこで今回は、経験豊富なキャピタリストや気鋭の起業家をお呼びし、採用の現場でのリアルな体験、成功や失敗について学んでいきたい。特に、創業メンバー数人から数十人規模になるというフェーズについて聞ければと思っている。

今回のTechCrunch Schoolもキーノートスピーチとパネルディスカッションの二部構成となっている。キーノートスピーチでは、11月に100億円規模の新ファンドを立ち上げたことを発表したばかりの独立系ベンチャーキャピタル、インキュベイトファンド代表パートナーである和田圭佑氏に登壇頂く。インキュベイトファンドと言えば創業期からのスタートアップを支援するベンチャーキャピタル。資本施策やプロダクトだけでなく、人材採用などの支援もしている。最近では専任のHR Patnerが就任。ヘッドハンターや人材会社に対して投資先を紹介するといった取り組みも行っている。そんなインキュベイトファンドの和田氏に、スタートアップの人材施策について語ってもらう予定だ。

またパネルディスカッションでは、dely代表取締役の堀江裕介氏、ジラフ代表取締役麻生輝明氏、エン・ジャパン執行役員の寺田氏らに登壇頂く予定だ。delyと言えば、3月には総額30億円という大型資金調達を実施。自社で手がける料理動画の「KURASHIRU」も好調だが、以前には、ピボットに際して共同創業者を除く社員全員が辞めるという経験もあったという。堀江氏にはそんな苦い経験からの学び、そして現在に至るまでの採用ストーリーについて聞いてみたい。

一方価格比較サービスの「ヒカカク!」やスマートフォンフリマサイト「スマホのマーケット」などを提供するジラフは、創業間もなくグリー投資担当だったCOOが参画。そのほか会社経営経験者3人を含んだ経営体制を早い時期から作ってきているという。麻生氏にはその体制作りや仲間集めの方法について聞いていきたい。エン・ジャパン執行役員の寺田輝之氏には、自社の採用とともに、企業の採用について長年見てきた立場からアドバイスをもらえればと思っている。さらなる登壇者も調整中だ。

イベント会場は、TechCrunch Japan編集部のある東京・外苑前のOath Japan株式会社オフィスのイベントスペース(通称「スタジアム」)。今回も80人程度の参加を予定している。セッション後はドリンクと軽食を提供する懇親会も予定している。参加は無料となっている。

また、パネルセッションでは質問ツールの「Sli.do」も利用して、会場からの質問にも回答しつつ、インタラクティブで熱量の高いセッションを展開してきたいと思う。創業メンバーから人材を拡大したい起業家、人材採用に悩むスタートアップの経営陣、人事担当者など、幅広く参加をお待ちしている。

【イベント名】TechCrunch School #12 「HR Tech最前線(4)」 presented by エン・ジャパン
【開催日時】12月7日(木) 18時半開場、19時開始
【会場】Oath Japanオフィス(TechCrunch Japan編集部のあるオフィスです。東京都港区南青山2-27-25 ヒューリック南青山ビル4階)
【定員】80人程度
【参加費】無料
【主催】 Oath Japan株式会社
【協賛】エン・ジャパン株式会社
【当日イベントスケジュール】
18:30 開場・受付
19:00〜19:05 TechCrunch Japan挨拶
19:10〜19:40 キーノート講演(30分)
19:45〜20:30 パネルディスカッション(45分)
20:30〜20:40 ブレーク
20:40〜22:00 懇親会(アルコール、軽食)

【スピーカー】
■キーノート
インキュベイトファンド 代表パートナー 和田圭祐氏

■パネルディスカッション
dely 代表取締役 堀江裕介氏
ジラフ 代表取締役 麻生輝明氏
エン・ジャパン 執行役員 寺田輝之氏
ほか調整中
TechCrunch Japan 副編集長 岩本有平(モデレーター)

申し込みはこちらから