ボストン・ダイナミクスが物流用ロボットStretchの販売予約受け付けを開始

Stretchはこれまで、Spotほどには注目されてこなかった。当然といえば当然なのだが。というのも、1つにはBoston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)が数十年にわたる研究開発を経て、初めて商品化したロボットではなかったからだ。また、人目につかないところで箱を移動させるなど、舞台裏で活躍することを想定して設計されているからでもある。有名なSpotは、Hyundai(現代自動車)傘下のロボットメーカーBoston Dynamicsにとって、世間の注目を集め、ちょっとした論争を巻き起こす一種のブランドアンバサダー的な存在となっている。

同社のHandleプロジェクトから生まれたStretchは、ここ数カ月で限られた顧客に試験的に使用されている。同社はまた、1月にDHLと1500万ドル(約18億円)相当という大規模なロボット購入契約を締結した。その他、衣料品チェーンのGapやH&Mも初期の顧客だ。

3月30日、このシステムの販売が始まった。2023年か2024年まで納品されないので、予約受付中といった方が正確かもしれない。予想通り、同社はこの新型ロボットへの関心の主な要因として、現在進行中の労働問題を挙げている。

画像クレジット:Boston Dynamics

「人手不足とサプライチェーンの混乱は、モノの流れを維持するための課題を生み出し続けています」と、CEOのRobert Playter(ロバート・プレイター)は話す。「Stretchは物流業務をより効率的かつ予測可能なものにし、倉庫内で最も身体的負荷の大きな作業を担うことで安全性を向上させることができます。当社のアーリーアダプターの顧客の多くは、すでにこのロボットの大規模な導入を決定しており、Stretchが間もなくより広範囲に活用され、小売業者や物流会社が継続的に急増する商品需要に対応できるようになることを期待しています」。

これらのシステムが世界で活躍するのを見るのは興味深い。これまで私たちは主に、制御された環境下でのBoston Dynamicsの動画を見てきた。Stretchは厳しい競争に直面している。企業がAmazon(アマゾン)の巨大な自動化軍団に対抗するための足がかりを探す中で、倉庫や物流は近年ロボティクスで最も注目されている分野の1つとなっている。直近では、そうした企業は雇用のギャップを埋めるのに役立つシステムを探している。

画像クレジット:Boston Dynamics

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

ヒョンデの新型ハイブリッド車に装備されたソーラールーフにはどれほど価値があるか?

Hyundai(ヒョンデ、現代自動車)の新型ハイブリッド車「Sonata(ソナタ)」のルーフには、太陽電池が組み込まれている。1日中太陽に照らしておくと、航続距離が3〜4マイル(約4.8〜6.4km)ほど延びる。しかし、私が所有している電気自動車は、駐車して座っているだけで、航続距離が1日に3〜4マイル以上減る。運転していないときにTesla(テスラ)が何をしているかはわからない。何もしていないのに電力が消費しているところをみると、ひそかにクルマに自意識が芽生え、感情が生まれていて、Elon Musk(イーロン・マスク)への愛を俳句に詠んでいるのではないかとしか思えない。

「ソナタ・ハイブリッドのソーラーパネルは、正確には204Wの容量を持っています。つまり、日当たりの良い場所で太陽に照らされたパネルは200Whの電力を生み出します」と、ヒョンデはウェブサイトに書いている。200Wはゼロではないが、電気自動車の文脈では、200Wはそれほど印象的な数字ではない。50アンペアブレーカーの家庭用急速充電器は9.6kWで充電できる。ソナタの屋根で焼かれる哀れな小さな太陽電池より約50倍も速いのだ。

ヒョンデは「1日5.8時間充電することで、1年間に走行可能な距離が1300km増える」と主張している。計算してみると、1日あたり2.5マイル(約4km)の航続距離がプラスされるだけでラッキーだということがわかる。もしあなたが健常者で、通勤距離が2.5マイル以下なら、歩いた方が環境にも健康にも、そして全体的な交通インフラの平常性にも良いと主張することができそうだ。しかし、1日に2.5マイル以下しか走らない人はたくさんいる。そして、たとえ天候の影響で航続距離が大幅に伸びなかったとしても、駐車していたクルマのバッテリーが、数日間放置した後も同じかあるいは少し増えているなら、それは決して悪いことではないだろう。

平均的なドライバーの年間走行距離が1万マイル(約1万6000km)の世界では、無料で走行可能な距離が1300km増えたら、それは約8%の燃費向上を意味する。どんな世界でも、8%の値引きを提示されたら買ってしまいそうなものだ。ハイパーマイリング(省燃費追求)の本からも引用すれば、それがすべて現実の数字になるのだ。

ソーラールーフの追加費用と複雑さが、長い目で見て本当にお金の節約(あるいは環境の保護)になるかどうかはわからない。しかし、私はここに原則的な問題があると思う。どのクルマにも、トランク、ルーフ、ボンネットなど「役に立つ」ことに使われていない数平方メートル分の不動産がある。もし、それが全体のエネルギー消費量を8〜10%減らすことができるのであれば、バッテリーの蓄電能力を持つすべてのクルマ(EV、ハイブリッド車など)の分を掛け算すれば、すぐにプラスになるだろう。ソーラールーフ機能は、2022年型ヒョンデ・ソナタ・ハイブリッドの最上級仕様である「Limited(リミテッド)」グレードに標準装備されており、その車両価格は3万5500ドル(約430万円)からとなっている。

ヒョンデやその他の企業をグリーンウォッシングと非難することは超簡単だ。そしておそらく、これは車両の寿命を考えると最終的には正味のマイナスとなるギミックであることが判明するだろう。しかし、ここで1つ言いたいことがある。私は排ガス試験で不正を行う「クリーン」なはずのディーゼルよりも、ほとんど何もしない屋根の上に設置されたソーラーパネルで走るクルマの方を運転したいと思う。

画像クレジット:Hyundai under a license.

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ウクライナ侵攻を受けた自動車メーカーの動きまとめ

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、世界各国がロシアに対する制裁を強化している。その結果、多くの自動車メーカーを含め、企業はロシアでの事業活動を制限、停止、あるいは完全に撤退している。

本稿では、ロシアからの撤退決定など自動車メーカーの対応を紹介する。

ロシアでの生産を停止している自動車メーカー

MSCやMaersk(マースク)など多くの海運大手や物流会社がロシア発着のコンテナ輸送を停止したため、自動車メーカーはサプライチェーンの混乱により生産停止を余儀なくされている。

直近ではトヨタ自動車が3月3日、ロシアの工場での生産を4日から停止すると発表した。同社はサンクトペテルブルクに工場を1つ持ち、主にロシア市場向けのRAV4とCamryのモデルを生産している。

Daimler Truck(ダイムラートラック)は現地時間2月28に、ロシアのトラックメーカーKamaz(カマーズ)との合弁事業を含め、ロシアでのすべての事業活動を停止すると発表した。これまでロシア市場向けに3万5000台のトラックを生産してきた同JVは、2009年にMercedes-Benz Trucks Vostok(メルセデス・ベンツ・トラックス・ボストーク)とFuso Kamaz Trucks Vostok(ふそうカマーズ・トラックス・ボストーク)の2つの独立したJVとしてスタートしたが、2017年にこの2社が合併した。そして今後はKamazとの提携によるトラックは生産されず、Daimlerもこのトラックメーカーに部品を供給しない、とロイターは伝えている

また、Daimlerがスピンオフする前の親会社Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)も、Kamazの株式15%を売却すると発表した。

スウェーデンのトラックメーカーAB Volvo(ABボルボ)はロシアでの生産をすべて停止し、Ford Motor Company(フォード・モーター・カンパニー)も現地時間3月1日、追って通知するまでロシアでの事業を停止すると発表した。Fordはロシアの自動車会社Sollers(ソラーズ)との合弁事業を除けば、ウクライナで重要な事業を展開していないが、Fordは2019年にSollersに支配権を譲渡した

フランスの自動車メーカーRenault(ルノー)は現地時間2月25日、物流圧迫により部品不足が生じたため、ロシアにある自動車組み立て工場の一部の操業を停止すると発表した。調査会社IHS Markitによると、Renaultはロシアの自動車生産の40%近くを占めている。

Renaultは減産の具体的な内容を明らかにしていないが、ロシアには3つの自動車組み立て工場がある。モスクワ工場で生産されているロシア人向けの主なモデルは、Kaptur、Duster、Nouveau Duster、Arkana、Nissan Terranoだ。Renaultは、日産および三菱と戦略的提携を結んでいる。また、ロシアの自動車メーカーAvtoVAZの支配的株式を持っている。

韓国のHyundai Group(現代グループ)はサンクトペテルブルクの工場で年間約23万台を生産しており、ロシアの自動車生産の27.2%を占めている。ウォールストリート・ジャーナルによると、同社はサプライチェーンの混乱により、3月1日から5日にかけてサンクトペテルブルクの自動車組立工場を休止するが、来週には操業を再開する予定だ。同紙は、今回の閉鎖は、ロシアのウクライナ侵攻や経済制裁とは関係がないものだと報じた。現代自動車にとってロシアは大きな市場であるため、できることなら操業停止しないよう試みる可能性もある。

Volkswagen(フォルクスワーゲン)傘下のチェコの自動車メーカーSkoda Auto(シュコダ・オート)は、供給不足のため国内工場の生産を一部制限すると発表したが、ロシアでの事業は継続されている。ロシアは2021年、Skodaにとって2番目に大きな市場だった。

「ロシアとウクライナでの販売戦略については、現在、集中的に議論しているところです。最近の情勢から、ウクライナとロシアの両方における販売台数は減少することが予想されます」とSkodaは述べ、ロシアまたはウクライナ市場から撤退するかどうかは、最終的にVWが決定することになると指摘した。

日本の三菱自動車は3月1日、ロシアでの生産を停止する可能性があると発表した。三菱はPSA Peugeot Citroën(PSAプジョー・シトロエン)と合弁事業契約を結んでいて、ロシア・カルーガの組立工場でプジョー、シトロエン、三菱の車両を生産している。

販売・輸出停止

欧米の対ロ制裁の一環として、ロシアの多くの銀行が、国境を越えた迅速な決済を可能にする安全なメッセージシステムSWIFT(国際銀行間通信協会)から締め出された。その結果、ロシア国内の自動車ディーラーやバイヤーが外国車を買えなくなり、外国企業は外国車を売れなくなった。

三菱自動車は、ロシアでの生産を停止する可能性に加え、同国での自動車販売も停止する可能性があると述べた。トヨタは、ロシアへの輸出を停止すると発表した。

米国の自動車メーカーGeneral Motors(ゼネラル・モーターズ)とスウェーデンの自動車メーカーVolvo Cars(ボルボ・カーズ)は現地時間2月28日、追って通知するまでロシアへの自動車輸出をすべて停止すると明らかにした。Volvo Group(ボルボ・グループ)は、売上の約3%をロシアの購買者から得ており、同国に1つの工場を持っている。

国際的な自動車メーカーで初めてロシアへの自動車出荷を停止したVolvoは声明の中で「EUと米国による制裁を含め、ロシアとの材料取引にともなう潜在的なリスク」があるため、出荷を停止したと述べている。

GMはロシアで年間約3000台を販売し、現地に工場は持っていない。

Volkswagenのロシア部門は、追って通知するまで、あるいは欧州連合と米国が科した制裁が明確になるまで、ディーラーへの納車を一時停止する。

同じくドイツの自動車会社BMWは、3月1日時点でロシアへの輸出を停止しており、供給面での制約が予想されるため、同地での生産を停止すると明らかにしている。

Harley-Davidson(ハーレーダビッドソン)は同日、ロシアでの事業と、同国へのオートバイ出荷を停止したと発表した。このブランドは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が乗っているところを写真に撮られたことがある。ロシアは米国のバイク会社にとってあまり重要な市場ではなく、ロシアには10店舗ほどしかディーラーがない。

英国の高級車メーカー、Jaguar Land Rover (JLR、ジャガー・ランドローバー)とAston Martin(アストン・マーティン)も、取引問題を理由にロシアへの車両出荷を一時停止した。JLRは2021年にロシアで6900台を販売したが、これは世界販売の2%未満だ。Aston Martinは、世界販売台数におけるロシアとウクライナの割合は合わせたても1%だと述べた。

地政学的な状況や自動車メーカーの対応は常に変化している。最新情報については再びチェックして欲しい。

画像クレジット:Anton Vaganov / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

MotionalとViaが自動運転車による無料の配車サービスをラスベガスで開始

Aptiv(アプティブ)と現代自動車(ヒョンデ)の合弁事業として、自動運転車技術の商用化を目指すMotional(モーショナル)は、オンデマンド交通サービスを手がけるテック企業のViaと共同で、ラスベガスで新たなロボットタクシーサービスを開始した。

2020年10月に初めて提携を発表した両社は、ラスベガスのダウンタウンで一般市民に自動運転車の無料乗車を提供する。この自動運転車には、安全のために人間のオペレーターも同乗することになっている。

このサービスは2021年前半に開始される予定だったが、新型コロナウイルス感染流行による不安から、両社は開始時期を延期していた。MotionalとViaは当初、オンデマンドの相乗りロボタクシーという青写真を開発し、これらの車両が公共交通機関にどのように統合できるかを学ぶ計画だった。両社はその後、相乗りサービスの計画を破棄し、代わりに個人向けの乗車サービスの提供のみを行う予定であることを、Motionalは認めた。

この新サービスは、MotionalがLyft(リフト)との既存の提携関係を延長し、2023年までにラスベガスで商用ドライバーレス配車プログラムを開始する計画を発表してから、わずか数カ月で実現したものだ。MotionalとLyftは、2022年の後半までに運転手なしの無料乗車サービスを開始することを目指しており、一般市民はLyftのアプリを通じて、電気自動車「Hyundai IONIQ 5(ヒョンデ・アイオニック5)」をベースにしたMotionalのロボタクシーを予約できるようになる。

MotionalとViaは、当初は無料で自動運転車の乗車サービスを提供するという、Cruise(クルーズ)やWaymo(ウェイモ)と似たアプローチを取っている。ただし、Motionalは、少なくとも法的には、ネバダ州で乗車に課金することを妨げられているわけではない。

ネバダ州は、現在CruiseとWaymoが商用化を目指しているカリフォルニア州に比べて、自動運転車の公道走行に関する規制がはるかに少ない。例えば、ネバダ州では自動運転車のテストや運行において、人間の安全オペレーターが乗車するか否かということを区別していない。また同州の法律は、自動運転車を配達や配車サービスとして提供することについては何も言及していない。ネバダ州自動車局の広報担当者によれば、このことは「できない」とする規制がない以上、法的には企業が商用自動運転車サービスに課金することが可能であることを意味するという。しかし、この広報担当者は、現在新しい法律が起草されていることにも言及した。

Motionalによると、同社はラスベガスで既存のLyftの運転手付きサービスで行っているように、運賃を請求できる許可を得ていると言っているが、その許可が自動運転車に関連したものなのか、それとも市内でタクシーサービスを運営するために同社に与えられたものなのかについては、詳しく述べていない。

現段階では、MotionalとViaはサービスの宣伝と自社の学習目的のために無料の乗車サービスを提供することで、乗客からフィードバックを収集し、両社の技術を組み合わせてどのように機能するかを研究することができると、Motionalの広報担当者であるAbby O’Malley(アビー・オマリー)氏は語っている。この広報担当者は、両社が商用サービスの運営を目指しているかどうかや、またその時期については明言せず「Motionalは、この試験運用から学び、将来的にViaとのパートナーシップを拡大することを楽しみにしています」とだけ述べた。

画像クレジット:Motional/Via

米国時間2月24日より、乗客はViaアプリを使って、Motionalの自動運転技術を搭載した「BMW 5シリーズ」のロボットタクシー1台を予約できるようになる。これは、Motionalが現在のLyftのサービスで使用している車両と同じものだが、オマリー氏によると、両サービスで使用する車両群は区別されており、Chrysler Pacificas(クライスラー・パシフィカ)もまだテストに使っているとのこと。

Viaのサービス提供時間は、月曜日から金曜日の午前9時から午後5時まで。乗客は、Viaアプリで強調表示されるRTCボンネビルトランジットセンター、ラスベガス市役所、コンテナパーク、ラスベガス芸術地区、クラーク郡政府センターなど、ダウンタウンの特定のポイントで乗車および降車できると、Motionalは述べている。

Motionalによると、このロボットタクシーサービスでは、Viaのインテリジェントな予約、ルーティング、ソフトウェアアプリケーション技術を活用することで、Motionalの自動運転ロボットタクシーとその車両管理、そして車内での乗客体験に役立てているという。

「車両は、乗客からの送迎の要求に基づき、(運用設計領域の中で)その時点で最も効率的なルートを採択します」と、オマリー氏はTechCrunchに語った。「バスが取るような固定ルートではありません」。

Motionalは、Viaと一緒にラスベガスで運行している車両フリートの規模を明らかにしなかったが、オマリー氏によれば、両社は需要を綿密に観察し、将来的にサービスを拡大するための基盤を持つようになる予定だという。

画像クレジット:Motional

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ボストン・ダイナミクスの倉庫ロボットがDHLから約17.2億円の業務を受注

2021年3月、Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)は同社2番目の商用ロボット「Stretch(ストレッチ)」を発表した。箱を動かす見事なHandleコンセプトを元に作られたこのシステムは、同社の先進ロボティクス技術を倉庫・物流の舞台へと推し進めるために作られた。現在、ロボティクスで最も注目されている分野だ。

関連記事:Boston Dynamicsが恐竜的2輪ロボットで倉庫業務をデモ

米国時間1月26日、Hyundai(現代、ヒョンデ)傘下のBoston Dyanamicsは、同社初の法人顧客となる大物企業との提携を発表した。物流の巨人DHL(ディー・エイチ・エル)は、Boston Dynamicsのロボットを北米の事業所に配置する、1500万ドル(約17億2000万円)の複数年契約(両社にいわせると「投資」)を完了した。購入されるロボットの台数は明らかにされていないが、Boston Dynamicsは、今後3年間にわたり、DHL物流センターにロボット「集団」を納入するという。

Stretchは、トラックから積荷を降ろす作業から始める。発表時に製作者たちが主要な部分として強調していた機能だ。その後、他の作業も加えていき荷物処理システムの自動化を推進していく予定だ。

CEOのRobert Plater(ロパート・プレーター)氏は次のように語った。「StretchはBoston Dynamicsの最新型ロボットで、倉庫内の課題解決に特化して作られています。DHL Supply Chain(DHLサプライ・チェーン)とともに当社のロボット集団を展開し、倉庫作業の自動化を進め、そこで働く人たちの安全性を高める取り組みができることを大変うれしく思っています。私たちはStretchがDHLの事業活動に意味のある影響を与えると信じており、大規模なロボット集団が仕事をするところを見るのを楽しみにしています。

この提携は、Boston Dynamicsが現在推進している四足歩行ロボットSpot(スポット)を超えるビジネス目標の土台を築く鍵となる。荷物処理は労働集約的で極めて反復の多い重労働であり、長時間の緊張を強いられ障害点も多い。これは、商業化推進を目論むHyundai傘下の同社にとって大きな試金石だ。

一方、DHLにとっては、肉体労働力確保が困難な時期に、物流作業の一部を自動化できる好機だ。これは、配送事業を侵食しつつあるAmazon(アマゾン)らと競合する中、同社が完全オートメーション化を進めるチャンスでもある。

画像クレジット:Boston Dymamics

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(文:Brian Heater、翻訳:Nob Takahashi / facebook

起亜自動車EV6の価格は約483万円から、数週間以内に発売

Kia(起亜自動車)のEV6は、Hyundai(現代自動車)のIONIQ 5とプラットフォーム、バッテリー、モーターなどを共有し、1215ドル(約14万円)のデスティネーションチャージを含めて4万2115ドル(約483万円)からと発表された。この金額で、167馬力のモーターと、米国環境保護庁(EPA)の基準で航続距離232マイル(373km)の58kWhのバッテリーパックを搭載した後輪駆動(RWD)のベースモデル「Light(ライト)」が購入できる。このモデルは、7500ドル(約86万円)の連邦税額控除が適用されるため、3万4615ドル(約397万円)まで価格を下げることができる。

これは、IONIQ 5よりも1190ドル(約13万円)高い価格だ。この2台はプラットフォームを共有し、同様の性能を提供しているが、IONIQ 5はよりエッジの効いた角ばったデザインであるのに対し、EV6はよりクラシックで丸みを帯びたデザインになっている。

画像クレジット:Kia

KiaのEV6上級モデルは、価格がかなり跳ね上がる。77.4kWHのバッテリーパックと225馬力のモーターを搭載したRWDのEV6「Wind(ウィンド)」は4万8215ドル(約553万円)からで、EPAによる航続距離は310マイル(約498km)だ。一方、GT-Line RWDは、より豪華なオプションを装備しているが、ドライブトレインは同じで、5万2415ドル(約601万円)からとなっている。WindとGT-Lineの両モデルは、それぞれ5万2115ドル(約598万円)と5万7115ドル(約655万円)から全輪駆動(AWD)にアップデートすることができる。EPAによる航続距離は両モデルとも274マイル(約440km)に低下するが、7500ドル(約86万円)の連邦税額控除が適用される。

ちなみに、インセンティブ前の価格で、Ford(フォード)のMustang Mach-Eは4万4995ドル(約516万円)から、Tesla(テスラ)Model 3は4万6490ドル(約533万円)、Volkswagen(フォルクスワーゲン)ID.4は3万9995ドル(約459万円)だ。

IONIQ 5のロードテストでは、Hyundaiは最先端の技術を提供し、運転する喜びを感じられるレトロフューチャー的な勝者を作り出したと評価した。EV6も同じ基準に達することを期待したい。最初のモデルは、今後数週間のうちにディーラーに到着する予定だ。

編集者注:本記事の初出はEngadget。執筆者のSteve DentはEngadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:Kia

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(文:Steve Dent、翻訳:Yuta Kaminishi)

【コラム】CES 2022で、メタバースはメタバースをメタバースした

CESを前にして、CES 2012のトップテックを振り返る記事を書いた。10年前のバズワードを思い出すなど、その執筆はさまざまな理由から興味深いものとなった。

その年は、LTEとUltrabookが上位だった。一方は広く長く普及しているが、もう一方はそれほどでもなかった。つまり、その年のCESでの話題の大きさは、その寿命を表すものではない。2012年半ばには、Ultrabookの死が本格的に語られ始めていた。

2022年のCESでは、会場に人の気配はなかったが、見たところ数メートルも歩けばメタバースに行き当たりそうな雰囲気だった。FacebookがMetaにブランド名を変えてから2カ月ほど、CESのような展示会では、企業は良い製品と同じくらい良いフックに投資している。それは理解できる。例えば、Samsung(サムスン)やHyundai(ヒュンダイ)といった企業でなければ、目立つことは難しい。

中小企業の具体的な話は割愛する。Twitterのスレッドでは前述のメタにかなり精通したものだった。正直なところ、私は、スタートアップがその輝きを少しでも得ることを期待しており、それを台無しにしたくない(「Goart Metaverse」という言葉は、私が地球上で最後の瞬間を迎え、脳内にDMTが出るまで、私の精神に入り込んでいくものだ)。

CESが始まる前に、メタバースとは何であるかを知らなかった人にとって、今回のショーはあまり良いものではなかったが、メタバースには間抜けな顔のミー文字とVR機器がおそらく含まれているという事実だけは確かだ。そして、このワードをタイプしている今、おそらくメタバースの説明としてはこれ以上ないほど適切だということもわかった。

画像クレジット:Hyundai

Hyundai(現代自動車)は、CES 2022で、ロボティクスとメタバースを通じて「『人間の可能性を広げる』新たなメタモビリティコンセプトのビジョンを共有する」という同社のプレスリリースを受け取ったことが、私を突き動かしたのかもしれない。あるいは、Boston DynamicsのSpotが火星で奇妙なメタバース人形たちと一緒に過ごしている映像が添付されていたせいかもしれない。実際の火星に実際のロボットを送り込むという、SFの枠を超えた映像が、メタバースを軸に展開されているのはシュールだった。

Hyundaiのコンセプトは、メタバース的な交流のためにBoston Dynamicsのような先進的なロボットを、現実世界のアバターとして機能させるという、何とも興味深いものではないが、自動車会社である同社でさえ、このコンセプトを将来性を託しているかを物語っている。一方、Samsungは、本物が登場するまでのその場しのぎのメタバース(betaverse?)を提供した。そこは同社プロダクトの「バーチャルショーケース」となっていて、少なくともラスベガスに出向いてメタバースを実際に見せてもらうという皮肉を回避できた。

Samsungは次のように述べている

念願のライフスタイルテレビ、生活を豊かにする家電製品、スタイリッシュな最新スマートフォンが手に入りました。では、それらの革新的な製品を使って、自宅を飾ることができるとしたらどうでしょう?

これは興味深いシナリオであり、メタバースが稼働し始めれば現実のものとなる。Samsungは、メタバースでさまざまなイノベーションを起こしており、CES 2022に興味を持った人たちがオンラインでこのイベントを体験できるオプションを用意しました。

メタバースに対して強気な人たちの間では、混乱が起こっているのだろう。美容ブランドからウェアラブルまで、あらゆるところで。「メタバース」というコンセプトにまつわるこれほどの興奮を目の当たりにすると、希望に満ちた気持ちになると同時に、ダメなメタバースも現れ始めていることもいらだたしい。メタバースが確立する前に、メタバースがすべての意味を失ってしまわないだろうか。あなたのメタバースは、私のメタバースと同じくらい良いものだ。

画像クレジット:Samsung

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(文:Brian Heater、翻訳:Katsuyuki Yasui)

現代自動車、メタバースにボストンダイナミクスのロボット「Spot」を送り込む

現代自動車(Hyundai)がロボット開発に壮大な野心を抱いていることは確かだ。これまで現代自動車は積極的に資金を投入していて、特にロボットのパイオニアであるBoston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)の買収には10億ドル(約1160億円)以上を費やした。

今週開催される同社のCESにおけるプレゼンテーションでは、予想どおり、ロボットが中心的な役割を果たしている。2021年12月、現代自動車は、4輪モジュラーモビリティプラットフォームのスニークプレビューをMobile Eccentric Droid(モバイル・エキセントリック・ドロイド)という形で公開した。そして米国時間1月4日は、新しい「メタモビリティ」コンセプトに基づいて、将来に向けたより幅広い計画を発表した。

現代自動車は今後、その戦略についてより多くの情報を公開する予定であり、私たちは実際にどのようなものになるのかを知るために、何人かの幹部に話を聞くことを予定している。とりあえず、今回は「Expanding Human Reach」(人間の手の届く範囲を拡大する)という表題のもとに、バーチャルリアリティのメタバースにおけるモビリティとロボティクスの役割を模索するという大枠のアイデアが提示された。この早期の段階では、宣伝用コンセプトと実用性を切り離すのは難しいが、主な要素は、VRインタラクションの世界でハードウェアに現実世界へのプロキシのような役割を果たさせることようだ。

画像クレジット:現代自動車

現段階では、ずっとVRアプリケーションの根本的な問題となっていた、タンジビリティー(可触知性、実際に触った感覚を得ること)の欠如に関係する大きな成果がありそうだと言っておこう。現代自動車グループのChang Song(チャン・ソン)社長はこう語る。

「メタモビリティ」の考え方は、空間、時間、距離がすべて無意味なものになるというものです。ロボットをメタバースに接続することで、私たちは現実世界と仮想現実の間を自由に行き来できるようになります。メタバースが提供する「そこにいる」ような没入型の体験からさらに一歩進んで、ロボットが人間の身体感覚の延長となりメタモビリティによって日常生活を再構築し、豊かにすることができるようになります。

近い将来には、このような技術を利用して遠隔操作で製造ロボットを制御することが十分考えられる。これは、トヨタが以前から取り組んでいる「T-HR3」というシステム探求しているものだ。現代自動車によると、Microsoft Cloud for Manufacturing(マイクロソフト・クラウド・フォー・マニュファクチャリング)は、このような遠隔操作のためのゲートウェイとして利用することが可能で、このような実用的な機能を果たすシステムを想像するのは難しくないという。

画像クレジット:現代自動車

他のアプリケーションは、まだ先のことになる。現代自動車のプレスリリースによると「例えばユーザーが外出先からメタバース上の自宅のデジタルツインにアクセスすることで、アバターロボットを使って韓国にいるペットに餌をあげたり、抱きしめたりすることができるようになります。これにより、ユーザーはVRを通じて現実世界の体験を楽しむことができます」とのことだ。

このような考えは現時点ではほとんど概念的なもののようだが、現代自動車は今週開催されるCESで、最終的にはどのように見えるかのデモを提供している。新型コロナウイルスが急増する中で、TechCrunchだけでなく多くの人たちがバーチャルで展示会に参加していることを考えると、少なくとも将来的にリモートオペレーションがどのように役立つかを想像するのは簡単だ。

無生物や移動にロボットを導入する

現代自動車は、CESですべての時間をメタバースに費やしたわけではない。また「New Mobility of Things」(ニューモビリティオブシングス、モノの新しい移動方式)と題して、ロボットを使って大小の無生物を自律的に移動させるコンセプトを紹介した。

この「New Mobility of Things」のコンセプトのもとに発表されたのが「Plug & Drive」(プラグアンドドライブ、PnD)という製品だ。この一輪ユニットには、インテリジェントなステアリング、ブレーキ、インホイール電気駆動機構、サスペンションのハードウェアに加えて、物体を検知して周囲を移動するためのLiDARとカメラのセンサーが搭載されている。

このPnDモジュールは、例えばオフィスのテーブルのようなものに取り付けられるようになっている。ユーザーは、こうしたテーブルに対して自分の近くに移動するように命令したり、オフィスでより多くのスペースを必要とする特定の時間にそのテーブルを移動するようにスケジュールすることができる。

現代自動車の副社長でロボット研究所長のDong Jin Hyun(ドン・ジン・ヒョン)氏は「PnDモジュールは、人間のニーズに合わせて適応・拡張が可能です。というのも、これからの世界では、あなたがモノを動かすのではなく、モノがあなたの周りを動き回るようになるからです」と語る。「PnDは、通常は動かない無生物をモバイル化します。この能力があるからこそ、実質的にあらゆる空間を変えることができるのです。必要に応じて空間を構成することができます」。

現代自動車は、待っているバスへ人を運ぶためのパーソナルトランスポートシステムなど、PnDのさまざまな応用例を紹介した。4つの5.5インチ(約14センチ)PnDモジュールを搭載したこのポッドは、そのままこの「マザーシャトル」に合体する。

画像クレジット:現代自動車

理論的には、バスが止まると、(中に座っている人間を乗せた)ポッドが目的地までの最後の移動を行うことになる。

現代自動車がビデオで紹介したアイデアは、高齢の女性がポッドに乗り込んで待っているバスに移動する前に、1台のPnDが杖を彼女に届けるというもので、高齢者を直接ターゲットにしている。しかし、もしこれが仮に実現したとすれば、車道に1人乗りの大きな車を大量に増やすことなく、ファーストマイルとラストマイルの公共交通機関を提供するために使用することができる。

また現代自動車は「Drive & Lift」(ドライブアンドリフト、DnL)と呼ばれる、モノを持ち上げるためのモジュールも披露した。現代自動車は、DnLをそのMobED(Mobile Eccentric Droid)というロボットと組み合わせた。DnLはModEDの各ホイールに取り付けられており、上下に持ち上げることができ、ロボットが段差やスピードバンプなどの低い障害物上を移動しても水平を保つことができる。

画像クレジット:Hyundai

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(文:Brian Heater、翻訳:sako)

夕食はロボットにお任せ、レストランロボットと風変わりなドロイド

私は2022年初めのCESに向けて計画を進めてきたが、おそらく今週中には白紙に戻りそうだ。呆れるほど多数の紫外線消毒ロボットの売り込みがなくなることに奇妙な寂しさも感じるものの、一方では最新変異株(オミクロン)の急増の中で、ショーに直接参加することの是非を検討していたのだ。最終的には、今回はラスベガスに参加しないことにしたが、数週間以内にはお伝えすることがたくさん出てくると思う。

ほぼ2年前のCESとそれに続く私たちのロボットセッションが、私が直接参加した最後のイベントであったことに気づいて、とても奇妙な心持ちがしている。ロボットセッションをオーガナイズして、TechCrunchのCESへの取り組みを主導する役割を果たしてきた私は、これらの決定を軽く考えることはとてもできない。

そして、特にロボットの評価に関しては、直接会議に参加することにはまだ個人的なメリットがあると感じている。Zoom(ズーム)を通してロボットの見栄えを良くしようとしても限界があるからだ。

どちらかといえば、こうしたことすべてが、ロボットシステムの本格的な採用が、非常に近くて同時にまだ遠いものだということを痛感させる。ちなみに私は、来年のCESに向けて、本当に多数のロボットの売り込みを受けたと言っても構わない。今回のショーは、来年の動き全体を占うものになるようにデザインされている。それらは、消費者向けから産業用途まで、そしてその間のすべてのものをも幅広く含んでいる。

パンデミックが業界の興奮と投資を加速させたことは間違いないが、実際の導入スピードはカテゴリーによって大きく異なる。年末の他の記事でこれまで見てきた2つの例は、かなり進んでいる。これまでの製品と同様に、倉庫ならびにフルフィルメントのロボットは現在とても現実的なものだ。最近オンラインで何かを購入したのなら、ロボットがラインのどこかの時点で製品の入手を手伝ってくれた可能性がかなり大きい。

配達ロボットはさらに難しい。たくさんのパイロットプロジェクトが存在しているが、住んでいる地域によっては(特に大学キャンパスの近くにいる場合には)、そのうちの1台が自分向けの出前でなくても近くを走っているのを見たことがあるかもしれない。一般に、歩道は倉庫よりも管理されていない場所であり、規制上の煩雑な手続きを経て世に出す必要があるため、資金調達の成否にかかわらず、明日の朝ロボットで歩道が溢れかえっているようなことはないだろう。

今週は、そうしたロボットが配達しているかどうかはともかく、対象となる食べ物を、実際に作っているのは誰なのか、あるいは「何」なのかについて話したいと思う。

画像クレジット:Paul Marotta / Getty Images for TechCrunch

細かい話に入る前に、iRobot(アイロボット)の共同創業者でCEOのColin Angle(コリン・アングル)に、過去1年間のロボット業界を振り返り、来年の予測をしてもらえるようお願いした。

2021年のロボット / AI / 自動化のトレンドを定義したのは何でしたか?2021年には、倉庫の自動化、自動運転技術、そしてもちろん排泄物検出がブレークスルーをもたらしました。2021年は、自動化への大規模な投資が功を奏し、2020年をほぼ超えたオンラインショッピングの驚異的な増加が、目覚ましい年となりました。中米をターゲットにした自動運転トラックのテレビコマーシャルを実際に見ました。これは本当に起こっていることなのでしょうか?そして私は、ロボットの真空掃除機にまつわる汚くてめったに議論されない課題の1つが、手頃な価格で信頼性の高い視覚的物体認識の出現によって、過去のものになったと言えることを誇りに思っています。2021年はロボットにとって変革の年だったといっても過言ではないでしょう。

2022年はこれらのカテゴリーで何が起きるのでしょう?2022年に入ってからは、人々が待ち望んでいたスマートホームの本当の進歩を目にできたらと思います。現在のバージョンのスマートホームでは、複雑過ぎますし、使いやすさが貧弱過ぎます。しかし、経験を最優先するエコシステムを生み出し、能力とシステムのシンプルさにも優れ、成長を始めることができるツールが登場しつつあります。そこで私は、2022年が、一般の人々の間で業界が加速し続ける年になるだけでなく、私たちの日常生活へのロボットの思慮深い統合に重要な前進が見られる年になることを期待しています。非常に多くの面で勢いが増しているのを見られるのはエキサイティングです!

さて、私の長年の輝かしいキャリアの中では最も不快な話題転換ではあるが、排泄物の検出から食事の準備に話題を移すことにしよう(会社が「読者が減ったのは何故だ」と聞いてきたときのためにここにメモとして残しておく)。

Los Angeles Timesのテストキッチンで2009年3月11日に撮影された、レンガのオーブンから取り出されたマルゲリータピザの画像(写真クレジット:Anne Cusack/Los Angeles Times via Getty Images)

この1年はロボットによる食品調理にとって大きな年だった。パンデミックが発生する前は、この分野に関与した著名なスタートアップは極めて稀だった。特にZume Robotics(ズームロボティックス)などを含む一部の企業は、業界から去っていった。しかし、ロボット分野対するベンチャーキャピタルの大規模な流入に伴って、レストランビジネスの自動化が進んでいる。その主な2つ理由は、この2年で骨身に沁みて理解できているはずだ。第一に、米国では人材が大幅に不足しているということ。第二に、ロボットは病気になることはなく、人びとを病気にすることもないということだ。

もし私が、食品ロボットの現状を4ワードで要約しなければならないとすると、次のようになる。

  • ピザ
  • ボウル(日本でいうどんぶり物)
  • ファーストフード(1ワードにまとめてズルをした)
  • キオスク(売店)

画像クレジット:Picnic

最初の2つがリストの一番上にあるのは同じ理由だ。食品を自動化する場合には、人気があって、比較的均一なものである必要がある。もちろん、さまざまなトッピングはあるものの、ロボットにとっては、ピザを作ることは、生地、ソース、チーズ、トッピング、調理、繰り返しといった、かなり簡単な経験なのだ。Picnic(ピクニック)やXRobotics(エックスロボティックス)のような企業は、Zumeが中断したものを引き継ごうとしている。

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画像クレジット:Spyce

ボウルはピザ同様の領域を埋める。それらは近年人気が高まっていて、かなり基本的なテンプレートが確立している。サラダやキノア(食用の実)などのトッピングやベースのバリエーションがあるとしても原理はかなり単純だ。したがって、カリフォルニアを拠点とするファストカジュアルサラダチェーンのSweetgreens(スイートグリーンス)が、MITのスピンアウトであるSpyce(スパイス)を買収して、先の8月に登場したことはおそらく驚くようなことではない。この動きは、2月にサラダ製造ロボット会社Chowbotics(チャウボティックス)を買収したDoorDash(ドアダッシュ)による類似の買収に続いたものだ。

Miso(ミソ)は現在ファーストフードレースをリードしていて、数多くの大きなパートナーシップが発表されている。同社のハンバーガーフリッピング(パテ焼)ならびにフライクッキング(揚げ物)ロボットは、まだ人間のキッチンスタッフを完全に置き換えることはできないものの、世代を重ねるにつれて、ますます能力を高めている。

画像クレジット: Nommi

一方、キオスクは、主に人間を作業工程から外すように設計されている。この解決策は、前述の労働力不足のおかげで、ますます勢いを増している。システムと人間の相互作用は、主に材料投入、メンテナンス、および注文に限定されている。しかし、適切な技術があれば、Nommi(ノミー)のようにボタンを押すだけで簡単に新鮮な食材を調理することができる。たとえば最近行われたNommiとC3との提携では、Iron Chef(料理の鉄人)の森本正治氏の料理が、24時間年中無休の調理マシンに採用されている。

関連記事:ハンバーガーをひっくり返すロボット「Flippy」の能力が向上、調理前後の作業を追加

今週は、クリスマスということもあり、ニュースの流れは多少ゆっくりとしている。とはいえ私たちは、Hyundai(ヒョンデ、現代自動車)がCESのために何を準備しているのかを垣間見ることができた。Hyundaiは、Boston Dynamics(ボストンダイナミクス)の買収を含め、ロボットへの取り組みを実際に倍増させている。新しいMobile Eccentric Droid(MobED、モバイルエキセントリックドロイド)は、あらゆる意味でプラットフォームだ。それは文字通りのもので、中央に台になる部分を備えた四輪移動装置だ。また、電話会議から荷物の配達、スマートな乳母車まで、さまざまな機能を収容することができる。

画像クレジット:Hyundai

その安定化技術について、Hyundaiは次のようにいう。

偏心機構による姿勢制御システムは、地表状態に応じて各車輪の高さを調整することで、体の姿勢も安定させます。MobEDの12インチ空気タイヤは、さらに衝撃や振動を吸収するのに役立ちます。

一方、Tiger Globalはその派手な支出を続けている。今週同社は、カリフォルニア州パサデナを拠点とするElementary(エレメンタリー)のために3000万ドル(約34億3000万円)のシリーズBを主導した。Fika Ventures、Fathom Capital、Riot VC、Toyota Venturesも参加したこのラウンドによって、このマシンビジョンスタートアップの総資本は4750万ドル(約54億3000万円)になった。創業者のArye Barnehama(アーリエ・バーナハマ)CEOはTechCrunchに次のように語った。

製造業と物流は、パンデミックの前にすでに始まっていて、パンデミックの最中に大幅に増加した大規模な人手不足を経験しています。企業が、高価で見つけるのが難しいエンジニアリング人材に頼らずに、自動化を続けようとする中で、ノーコードAIソリューションを提供できる私たちのビジネスは拡大してきました。

インドを拠点とするロジスティクスロボティクス企業Unbox Roboticsの700万ドルのシリーズAラウンドは、3one4 Capitalによって主導された。Sixth Sense VenturesとRedstart Labsもラウンドに参加し、SOSVを含む多くの既存の投資家も参加した。同社によれば、調達した資金は採用、技術開発、そして新しい領域への拡大に向けられるとのことだ。

画像クレジット:Getty Images

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(文: Brian Heater、翻訳:sako)

【コラム】離陸間近なeVTOLにまつわる2021年4つのトレンド

数十億ドル(数千億円)の資金と数十件の契約と1件の法廷闘争。2021年はeVTOL(電動垂直離着陸機)にとって忘れがたい1年だった。大手航空セクターが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックによる落ち込みから徐々に回復するのに忙しい中、スタートアップはスピードを上げている。

以下に、第一線アナリストと投資家に追いつくべく、2021年eVTOLが巻き起こしたトレンドを紹介していく。これらのトレンドは今後数年も影響を与え続ける可能性が高い。

誰がSPACといった?

Archer Aviation(アーチャー・アビエーション)、Joby Aviation(ジョビー・アビエーション)、Lilium(リリウム)、Vertical Aerospace(バーチカル・エアロスペース)。eVTOLを開発している、という以外の共通点は何か。4社とも、2021年白地小切手会社との合併を発表あるいは完了した。そしてこの生まれたばかりで、現実離れしているとさえ思えるテクノロジーに、あきれるほど巨額な資金が注入されている。

もし2021年が、eVTOLの世界で何かしら記憶に残る年になるなら、巨額な資金がこの業界に流れ込んだことが主な理由だ。3つのSPAC案件だけで(JobyArcher、およびドイツのデベロッパーLilium)総額25億ドル(約2852億円)以上の資金を獲得し、Jobyの調達額はその半分近い11億ドル(約1255億円)に上る。垂直離着陸機は、SPACを挙って公開市場への乗り物に使った唯一のモビリティテクノロジーではないが、そのおびただしい案件数は、2021年の傑出したトレンドの1つであることに間違いない。

関連記事:eVTOL開発のArcherがユナイテッド航空から受注、SPAC経由で上場も

「現在のeVTOL業界が、以前、例えば1年前と何が違っているかといえばそれは資本の入手です」とMorgan Stanley(モルガン・スタンレー)の航空宇宙・防衛上級アナリストであるKristine Liwag(クリスティン・リワグ)氏は説明した。

この並外れた資金流入が意味しているのは、これらの企業は自社の飛行機が商業運用に必要な連邦航空局の認可を得るための、長くて徹底したプロセスを通過するための重要な資金を手にしているということだ。それが十分であるかどうかは別問題であり、各企業の進捗と費用効率による。

テクノロジーを商業化するための高いコストが、SPACトレンドへと走らせた可能性は高い。航空産業は資本集約的ビジネスであり、eVTOLの設計から生産、認可までには10億ドル(約1141億円)程度必要だと多くの人は考えている。

「私にとって最大の驚きは、第一線スタートアップの多くが、自社製品を認証完了までもっていくための予算を獲得する方法を見つけたことです」とIDTechExのテクノロジーアナリスト、David Wyatt(デビッド・ワイアット)氏はいう。「今ある数多くのテスト機がプロトタイプ状態から確固たる本格的eVTOLへと飛躍する大きな一歩であると感じています」。

SPAC以外でも、eVTOL企業へのベンチャー投資は少なくなかった。2021年は巨額の調達ラウンドが見られた年でもあった。たとえばBeta Technologies(ベータ・テクノロジーズ)の3億6800万ドル(約420億円)のシリーズAやXpeng(シャオペン)が支援するHT Aero(HTエアロ)の5億ドル(約571億円)のシリーズAなどだ。

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「2021年は、『認証はとれるのか?』を質問するだけの年でした」とSMG Consultingのファウンダー・パートナー、Sergio Cecutta(セルジオ・セクッタ)氏がいう。「これからの質問は、認証はいつとれますかです。『本当に飛べるの?認証は取れるの?」という段階は過ぎました。いずれも可能です。あとは、気合を入れと取りかかるだけです」

地上での動き

エアタクシー開発者が力を入れているのは飛行機だけではない。電動飛行機の市場を現実にするためには必要なことがたくさんある。地上インフラ、すなわちバーチポート(垂直離着陸要飛行場)あるいは空港内の専用エリア、および十分な電力を供給するための充電ポイントだ。

この部分でやるべきことは「やまほど」あるが、2021年にeVTOL運用会社らが、商業運用開始に必要な基盤を5年以内に確立するための作業開始に向けてスタートを切ったことは注目に値する。たとえばLiliumとABB E-mobilityは、Lilium Jetのための充電インフラストラクチャ提供で提携し、JobyとArcherは駐車場所有者のREEF Technologyと提携、Verticalとヒースロー空港は、空港運用にeVTOLを組み込む方法を共同で検討している。

Archer、Joby、Volocopter(ボロコプター)の3社もロサンゼルスのUrban Movement Labs(アーバン・ムーブメント・ラボ)と協力して、都市型エアモビリティを既存のインフラや輸送ネットワークに統合する方法を探っている。

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「各空港がこの問題を本気で考え始めていることを私は知っています」とJetBlue Technology VenturesのプレジデントであるAmy Burr(エミー・バー)氏はいう。「空港で何らかのインフラストラクチャー・プロジェクトに携わっている人なら誰でも、バーチポートを置く必要があるかどうかを考えています」。

(不確定な)発注

最後に、2021年に我々は、eVTOL機の大量発注が始まったのを見た。もちろん、United(ユナイテッド航空)がArcher Aviationに10億ドルの発注を行ったというニュースのためだ。その後、Embraer(エンブラエル)が支援するエアタクシーデベロッパーであるEve Urban Air Mobility(イブ・アーバン・エア・モビリティが発注、UPS(ユーピーエス)がBeta Technologiesに発注、そしてVertical Aerospaceが1350台の条件付き先行予約を受けるなど次々と注文が続いた。

はっきりしておく必要があるのは、どの発注も確定ではないことであり、商業製品が未だ実在していないことを考えれば当然である。開発、認証の完了が条件であり、他にも性能面の条件がある可能性が高い。

それでも、たとえ個々の企業にとっては気を抜けない状況であっても、業界にとっては有望な兆候だ。

「これらの飛行機に明確な市場が存在していることは、有望だと思っています。航行許可を得て、飛べるようになりさえすれば、市場は十分な関心を持っている、という確信を与えるものです」。

伝統的メーカーも参入を伺う

2021年で注目すべき最後のトレンドが、活発化する伝統的自動車メーカーの動きだ。ほとんどの見出しはスタートアップが占めていたかもしれないが、古くからいる伝統的企業も電動飛行機の可能性に気づき始めている(中でもBoeing[ボーイング]やAirbus[エアバス]をはじめとする伝統的航空機会社は、eVTOへの強い関心を示している。BoeingはKitty Hawk[キティ・ホーク]とWisk Aero[ウィスク・エアロ]とのジョイントベンチャー、AirbusはCityAirbus NextGenのeVTOLコンセプトを発表している)。

自動車メーカーでは、Hyundai(現代、ヒョンデ)が目立っている。この会社は2020年のCESでeVTOLのコンセプト・デザインを披露し、2021年はSupernal(スーパーナル)の名前で都市型エアモビリティ事業を正式発表した。Honda(ホンダ)はハイブリッドeVTOLの開発計画を正式発表した。同社はこれを、つながるアプリやHondaの自動車を含む「モビリティー・エコシステム」の一環と位置づけていることが注目の理由だ。そして、もちろん、中国の自動車メーカー、Xpeng Motors(シャオペン・モーターズ、小鵬汽車)は10月末、都市型エアモビリティ子会社、HT Aero(HTエアロ)が、eVTOL機コンセプト開発のために5億ドルを調達したと発表した。

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いずれの動きも注目に値する。なぜなら主要自動車メーカーはeVTOLプロジェクトを進めるために必要な資本と生産基盤の両方を持っているからだ。それは成功を保証するものではもちろんなく、これらの大企業にスタートアップと同じようなプレッシャー(もモチベーション)もないが、今後注目し続けるべきであることは間違いない。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook

現代自動車のモバイル・エキセントリック・ドロイドは奇抜なロボットプラットフォーム

私はHyundai(ヒョンデ)を褒めようとしている。この会社は一風変わったロボットを作っていて、非常にハマっている。通常の自動車生産に加えて、自動車の巨人はウォーキングカーロボットドローンからよくわからないものまでいろいろ開発している。

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結局のところ、ロボティックの実験という観点から見て、Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)は悪くないところに着地したといえるだろう。

画像クレジット:Hyundai

そして今度は、Mobile Eccentric Droid(MobED、モバイル・エキセントリック・ドロイド)だ。この4輪のセグウェイ風装置は、厳密な意味でプラットフォームだ。つまり、広範囲の異なるアプリケーションに開放されているだけでなく、文字どおり、上にモノを置くことができる。いうなれば、さまざまな環境のためにデザインされたモバイル台車であり、この上で自立型あるいは制御されたロボティック応用装置を構築できる。

同社がCES(このシステムが展示される予定)に先だって公開した色鮮やかなYouTubeビデオから判断するに、考えられる用途として、荷物配達、小さな子どもの移動、遠隔会議などがありそうだ。MobEDのその他の応用例としては、歩行が困難な人たちの移動手段も考えられる。

「MobEDプラットフォームは、既存の室内用ガイドあるいはサービスロボットの限界を克服するとともに、プラットフォームの可動性を劇的に向上することで、都市における有用性を最大限に高めるために開発しました」とHyundai Motor Group(現在自動車グループ)ロボティクスラボ責任者のDong Jin Hyun(ドン・ジンヒョン)氏はリリースで語った。「私たちは、MobEDの潜在ユーザーが、この種のテクノロジーのニーズと利用をどのように拡大していくかを見守っていきます」。

画像クレジット:Hyundai

システムの重量は50kgで最大30km/hで移動することができる。内蔵バッテリーは約4時間使用できる、とHyundaiは推定している。名称の「エキセントリック(奇抜な)」はシステムの制御メカニズムに由来している。

Hyundaiは次のように述べている。

このエキセントリックメカニズムに基づく姿勢制御システムは、地面の状態に応じてそれぞれの車輪の高さを調節することによって車体の姿勢も安定させます。MobEDの12インチ空気入タイヤが、バウンドや振動の吸収にさらに役立ちます。

同システム、およびその他のHyundaiロボットについては、2022年1月のCESで続報する予定だ。

画像クレジット:Hyundai

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(文:Brian Heater、翻訳:Nob Takahashi / facebook