まだ死んでいないよ、IBMの第4四半期における収益の伸びが加速

IBMが2021年第4四半期の決算を発表した。そのニュースは単に「良い」というものではなかった。ほぼ10年間、売上高がマイナス成長または低成長だった同社にとって、それはすばらしいものだった。IBMは、前年同期比6.5%増の167億ドル(約1兆9000億円)の売上を計上した(恒常為替レートベースでは8.6%増だ。ドル高により多くの企業が為替変動で対処している)。

この堅調な結果は、176億ドル(約2兆30億円)を少し上回る、はるかに控えめな0.3%の成長を記録した2021年第3四半期に続くものだ。そしてこの朗報は、同社が190億ドル(約2兆1625億円)のインフラストラクチャーサービス事業をスピンアウトした後にもたらされたものでもある。企業が大きな事業を失い、それがこんなに早く有利に働くというのは、少し直感に反するように思えるかもしれないが、それは、ほぼ完全にクラウドに集中すると判断したCEOのArvind Krishna(アルビンド・クリシュナ)氏の考えの大きな部分だったようだ。

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同社が何年も低迷し、一時は22四半期連続で売上がマイナス成長するのを見てきた。前CEOのGinni Rometty(ジニ・ロメッティ)氏が2019年に社を去り、クリシュナ氏が就任したとき、同氏は今後変化が起こること、そして自身のビジョンに属さない事業を切り離すつもりであることを明らかにしている

その中には、Kyndryl (キンドリル)を切り離し、ロメッティ氏が大きな賭けに出て数十億ドル(数千億円)をかけて大きな事業に育て上げたWatson Health(ワトソン・ヘルス)部門の大部分を売却することも含まれていた。うまくいかなかったときにクリシュナ氏は損切りを恐れず、IBMは1月21日にWatson Health事業をFrancisco Partners(フランシスコ・パートナーズ)に売却したが、その額はロメッティ氏がこの部門につぎ込んだ資金をはるかに下回り、10億ドル(約1140億円)程度と報道されている。

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クリシュナ氏は現在、IBMが2018年に340億ドル(約3兆8690億円)で買収したRed Hat(レッドハット)を中心に会社を作りたいと明らかにしている。Red Hatの部門ハイブリッドクラウドの売上高は、第4四半期に前年同期比18%増の62億ドル(約7050億円)となり、同社が期待していたような収益成長だった。

クリシュナ氏は、目を見張るような成長ではなく、IBMのような成熟した企業に期待される、着実に前進する成長を求めていることを明らかにしており、もちろん毎四半期がマイナス成長というものは望んでいない。今回の決算では、まさに同社が着実な成長の道を歩んでいたように見える。

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2021年度は、3%、0.3%、6.5%と3四半期連続のプラス成長だ。これは、屋上から叫びたくなるような成長率ではないが、この由緒ある企業が切実に必要としているプラス傾向だ。

Moor Insight & Strategiesの創設者で主席アナリストのPatrick Moorhead(パトリック・ムーアヘッド)氏は、今回の決算は少なくともIBMにとって良い兆候だと話す。「1つの良い四半期がトレンドを作るわけではありませんが、最低3つあればトレンドになると思います。近い将来、一桁台半ばの成長が見られると確信しています」

その他の明るい要素

ハイブリッドクラウドの売上高の伸びは、同社の第4四半期の成果のマトリックスから明らかに異常値だったが、考慮に値する他の明るい要素もあった。ソフトウェアの売上高は8%(恒常為替レートでは10%)増え、コンサルティング関連の売上高は13%(恒常為替レートでは16%)と大幅な伸びを記録した。

全般的に好調な結果を受けて、利益も好調だった。粗利益は95億ドル(約1兆810億円)で、2.5%の微増となった。しかし、純利益は29億ドル(約3300億円)と、税引き前ベースで183%増という衝撃的な数字となった。税引き後の利益は25億ドル(約2840億円)で、前年同期比で107%増とやや控えめな伸びとなった。

簡単に言えば、IBMのビジネスは依然として非常に儲けの多いものであるということだ。そして、何年もボリューム(売上)ベースで停滞し、減少してきた後、ようやく一連の成長を実現しただけでなく、直近の四半期ではかなり堅調に売上高を伸ばすことができた。

IBMがこれほど長く生き延びたのは偶然ではなく、おそらく我々はもっと信頼すべきだったのだろう。しかし、マイナス成長という壮絶な経過は、かなり強力な疑心暗鬼の集団を生み出した。少なくとも投資家は感心しており、時間外取引でIBMの株価は急上昇している。

同社は2022年もこの成長を繰り返せるだろうか。そうであれば、本当にカムバックといえるだろう。

画像クレジット:Sean Gallup

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(文:Ron Miller、Alex Wilhelm、翻訳:Nariko Mizoguchi

IBMが医療データ管理「Watson Health」事業の大半をFrancisco Partnersに売却

拍子抜けするような結末だが、IBMは米国時間1月21日、Watson Health事業部門のデータ資産をプライベートエクイティ企業のFrancisco Partners(フランシスコ・パートナーズ)に売却した。両社は買収額を明らかにしていないが、以前の報道では約10億ドル(約1137億円)とされていた。

今回の取引でFranciscoは、Health Insights、MarketScan、Clinical Development、Social Program Management、Micromedex、イメージングソフトウェア製品など、Watson Health部門のさまざまな資産を取得する。これによりFrancisco Partnersは、幅広い医療データを傘下に収めることになる。

IBMは2015年にWatson Healthを立ち上げた際、データ駆動型の戦略に基づいてユニットを構築することで、この分野を支配することを望んでいた。そのために、PhytelやExplorysをはじめとする医療データ企業の買収を開始した。

その後、Merge Healthcareに10億ドル(約1137億円)を投じ、翌年にはTruven Health Analyticsを26億ドル(約2955億円)で買収した。同社はWatson Healthが人工知能(AI)の推進に役立つと期待していたが、この事業部門は見込まれていた成果を上げることができず、2019年にGinni Rometty(ジニー・ロメッティ)氏に代わってArvind Krishna(アルビンド・クリシュナ)氏がCEOに就任した際には、クリシュナ氏の優先順位は異なっていた

Francisco Partnersはこれらの資産をもとに、独立した新会社を設立することを計画している。この部門が期待通りの成果を上げられなかったことを考えるとやや意外な動きではあるが、少なくとも今のところは、同じ経営陣を維持する予定だという。

Francisco PartnersのプリンシパルであるJustin Chen(ジャスティン・チェン)氏は、新会社がその潜在能力を発揮できるよう、さらなるサポートを提供する予定だという。「Francisco Partnersは、企業と提携して部門のカーブアウトを実行することを重視しています。我々は、優秀な従業員と経営陣をサポートし、スタンドアロン企業がその潜在能力を最大限に発揮できるよう、成長機会に焦点を当てて支援し、顧客やパートナーに高い価値を提供することを楽しみにしています」と同氏は声明で述べている。

IBMがこの売却を行うのは、ヘルスケア分野が盛り上がっている中でのことだ。2021年、Oracle(オラクル)は280億ドル(約3兆1825億円)で電子カルテ企業のCernerを買収し、Microsoft(マイクロソフト)は200億ドル(約2兆2733億円)近くと見積もられる取引でNuance Communicationsを買収した。どちらの取引も規制当局の承認を得ていないが、大手企業がいかに医療分野を重視しているかを示している。

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そのため、この動きはMoor Insights & Strategyの主席アナリストであるPatrick Moorhead(パトリック・ムーアヘッド)氏を驚かせたという。「傾向としてはより垂直なソリューションに移行しているので、非常に驚いています。それを考えると、いかに同部門の成績が悪かったかを潜在的に示しているともいえるでしょう」。

いずれにしても、今回の買収は規制当局の承認を待って行われ、第2四半期中に完了する予定だ。この取引には機密性の高い医療データが含まれていることから、さらに精査される可能性もある。

画像クレジット:Carolyn Cole / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Dragonfly)

IBMが排出量データ分析Enviziを買収、企業のサステナビリティ活動を支援

IBM(アイビーエム)は米国時間1月11日朝、オーストラリアのスタートアップEnvizi(エンビジ)を買収し、サプライチェーンの上下で環境への影響を測定するためのESG(環境、持続可能性、ガバナンス)製品パッケージに追加すると発表した。

両社は買収条件を公開しなかったが、IBMはEnvizi買収によって、顧客の環境面でのサステナビリティの取り組みを測定、管理、最適化するためのプラットフォームを手に入れた。つまり、2016年にWatson Healthを構築していたときと同じように、環境問題でデータ中心のアプローチをとっている。Watson Healthについては、同社が現在売却しようとしている、と報じられている。

企業は知見を推進するためのデータを必要としており、それがEnviziによって自社にもたらされるものだとIBM AIアプリケーションのゼネラルマネージャーであるKareem Yusuf(カリーム・ユースフ)氏は話す。

「Enviziのソフトウェアは、企業が事業活動全般にわたって排出データを分析・理解するための信頼できる唯一のソースを提供し、企業がより持続可能な事業とサプライチェーンを構築するのを支援するためのIBMの成長中のAI技術という武器を劇的に加速させます」とユースフ氏は声明で述べた。

EnviziのCEOで共同創業者のDavid Solsky(デイビッド・ソルスキー)氏は、今回の買収をIBMのグローバルプレゼンスを活用することで会社を拡大する方法と見ている。これは、はるかに大きな会社に飲み込まれる会社の典型的な主張だ。「今日という日は、1つの時代の終わりでもなければ、新しい時代の始まりでもありません。むしろ、前例のない速度で規模を拡大し、顧客がサステナビリティへのコミットメントに向けて前進するのをグローバルに支援することを可能にする構造への移行です」と、ソルスキー氏は買収を発表したブログ投稿に書いている。

IBMはEnviziを、IBM Environmental Intelligence Suite、IBM Maximo資産管理ソリューション、IBM Sterlingサプライチェーンソリューションを含む既存の製品パッケージに追加するAI駆動型ソフトウェアと見なしている。後者は、サプライチェーンに沿ったソーシングとトレーサビリティのためにIBMブロックチェーンを使用しており、安全性やトレーサビリティを向上させる可能性がある。

注目すべきは、同社がAIを活用したソリューションを追求し続けているにもかかわらず、今回は6年前のヘルスケア構想のように、ESGの取り組みにWatsonという名称を付けなかったことだ。おそらくIBMは、Watsonブランドが輝きを失ったと判断し、社内のすべてのAI駆動型ソリューションにその名称を付けることから脱却したのだろう。

同社は、2030年までに温室効果ガスの排出量を正味ゼロにすることを目指しているため、同じソフトウェアツールを社内で使用して、自社のサステナビリティの取り組みを推進するとしている。

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

IBM、過熱するヘルスケアビジネスの「Watson Health」を手放すとの報道

Axiosの記事によると、IBMはそのWatson Health事業部をわずか10億ドル(約1156億円)で売却するすることを検討している可能性があるという。このところますますホットなヘルスケアの分野からIBMはなぜ逃げていくのか、しかもそんなに安い金額で。

2021年12月は、Oracleが280億ドル(約3兆2365億円)を投じて、デジタルの健康記録企業であるCernerを買収した。またMicrosoftはこの春、200億ドル(約2兆3118億円)近くを費やしてNuanceを買収した。ここは医療分野で広く利用され、ヘルスケア関連の顧客が1万社ある。これは巨額な資金であり、企業各社が医療分野への参入を目指し、そのために巨額の資金を投じていることを示唆している。

IBMは2015年4月にWatson Healthを立ち上げて、大きな話題になった。それは、IBMの人工知能プラットフォームWatsonを、ヘルスケアの目的に使用するはずだった。論旨は次のようなものだった。どんなに優秀な医師でも、世の中の文献をすべて読むことはできないが、コンピューターならすばやく読むことができ、医師の専門知識を補強し、より良い結果をもたらすための行動指針を提案することができるだろう。

そしてIBMが何かやるときのお決まりのパターンとして、同年9月にはケンブリッジに豪華な本部をオープンした。パートナーシップの発表も始めた。すべての候補をチェックして、CVSやApple、Johnson & Johnsonなどとパートナーした。

そして、企業の買収を始めた。最初の買収は、医療データの企業PhytelとExplorysだった。それも、パターンの一環だ。次は医療画像データを提供するMerge Healthcareの10億ドル(約1156億円)の買収だった。さらにその後、同社の最高額の買い物である26億ドル(約3005億円)のTruven Health Analyticsの買収があった。それは合計で40億ドル(約4624億円)の買収だったが、今のOracleやMicrosoftが払った額に比べると、慎ましい額かもしれない。しかしWatson Healthが態勢を整えようとしていた2015年から2016年の頃には、巨額だった。

これらの動きはすべて、データ中心型のアプローチをWatson Healthの機械学習モデルに注ぎ込むためだった。理由はともかくとして、それは狙い通りに動かなかったが、前CEOであるGinni Rometty(ジニー・ロメッティ)氏のクラウドとAIへの注力によって会社をモダナイズする計画の一環だった。

ロメッティ氏は、2017年のHarvard Business Reviewで楽観的に語っている。

私たちのムーンショットは、世界水準の医療を世界の隅々まで届けることです。その一部はすでに実現しています。Watsonは世界最高のがんセンターで訓練を受け、中国やインドの何百もの病院に展開されています。その中には、100人程度の患者に対して、腫瘍医が1人しかいない地域もあります。そのような地域の人々は、これまで世界レベルの医療を受けるチャンスがなかったのです。Watsonは腫瘍学のアドバイザーとして、医師の意思決定をサポートします。そして、これはまだ始まりに過ぎません。

しかしロメッティ氏は2019年に去り、彼女の後を継いだArvind Krishna(アルビンド・クリシュナ)氏は異なる目標を掲げた。彼はAxiosに、ヘルスケアの大きなビジョンは楽観的すぎるかもしれない、と述べている。Constellation ResearchのアナリストHolger Mueller(ホルガー・ミューラー)氏は、その言葉がIBMの撤退の理由を説明しているだろう、という。

「IBMはハイブリッドクラウド戦略に注力しています。その過程で、注目と資本をそらし、風評被害のリスクを抱えるすべての資産を処分しようとしています。Watson Healthは確かにこの3つに当てはまるため、IBMがこの部門を売却しても不思議ではありません」とミューラー氏はいう。

IBMは今後も全社的に他の方法でヘルスケア事業を追求すると思われるが、仮にWatson Healthを捨てることになったとしても、これだけの資金を注ぎ込みながらほとんど回収できなかったため、失敗した戦略だと考えざるを得ないだろう。もちろん、それが実現しても大きな驚きではないにせよ、これはまだ噂の範疇に入るものだ。

画像クレジット:Boston Globe/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

メルセデスやBMWもCES出展を断念、パナソニックは会場での会見中止

対面でのCES出展を辞退する大企業の数が増え続けており、開幕まで残り1週間を切ったところで、さらに大手自動車メーカー2社が名を連ねた。米国時間12月29日、Mercedes(メルセデス)は、対面イベントを見送ると表明した。

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「顧客、パートナー、従業員、ゲストの健康と安全が最優先のためです」と同社は声明で述べた。「参加者の数が多く、国ごとに異なる規制があるため、すべての参加者のために堅実で安全かつ無害な計画を立てることは、残念ながら現状では不可能です。非常に残念な決定ですが、必要なことだと考えています」。

米国時間12月30日、BMWもこれに続いた。同社はメディアリリースを発表し、バーチャル記者会見への移行を発表した。「BMWグループは長年にわたり、ラスベガスで開催されるCESでイノベーションを発表してきました。パンデミックのため、BMWグループはCESで予定していたすべてのメディア活動を、ドイツからライブ配信する完全なデジタルプログラムに移行します」と述べた。

一方、LiDAR会社のVelodyne(ベロダイン)は、12月26日の週に同社の決定についてフルプレスリリースを発表し、次のように述べた。

Velodyne LiDARは、新型コロナウイルスの感染率が急上昇しているため、CES 2022に対面参加しません。従業員、パートナー、一般市民の健康と安全がVelodyneにとって最優先事項であり、この決定の主な要因です。

IBMも米国12月30日、対面イベントからの撤退を決定したことをTechCrunchへの声明の中で表明した。

新型コロナの感染状況が悪化しているため、また慎重を期して、IBMは2021年ラスベガスで開催されるCESに参加しません。バーチャルでのイベントに参加することを楽しみにしています。

また、パナソニックは、米国時間1月4日に会場での記者会見を予定していたが、新たに中止を決めた。同社は、バーチャルイベントにシフトし、会場でのプレゼンスは限定的となる見込みだ。

これらの企業は、GM(ゼネラルモーターズ)、Google(グーグル)、Microsoft(マイクロソフト)、AMD、OnePlus(ワンプラス)、MSI、Lenovo(レノボ)、Intel(インテル)、T-Mobile(T-モバイル)、AT&T、Meta(メタ)、Twitter(ツイッター)、Amazon(アマゾン)、Proctor & Gamble(プロクター&ギャンブル)、TikTok(ティクトック)、Pinterest(ピンタレスト)、そしてTechCrunchを含む多くの大手メディアの仲間入りをする。存在に気づいてもらうのにCESのような展示会に依存しているスタートアップにとって、オミクロンの懸念が高まる中で撤退を決断することは、特に難しいことだろう。しかし、展示会への参加を見送るという難しい決断をした中小企業から筆者のもとに入る連絡は増えている。

CESを運営する全米民生技術協会(CTA)は、米国時間1月5日(メディアデーは3日と4日)から始まるCESを断固として開催する姿勢を示している。

「CES 2022は、強力な安全対策を取って1月5日から8日までラスベガスで対面式で開催されます。また、ラスベガスに行きたくない、または行けない人々のために、デジタルアクセスも用意されます」と、CTAは12月22日付の声明で述べている。「私たちの使命は、業界を結集し、直接参加できない人々にもCESの魅力をデジタルで体験してもらうことに変わりはありません」。

クリスマスの日、ラスベガス・レビュージャーナルは「CESはラスベガスで開催されるべき」という見出しのCTA代表Gary Shapiro(ゲーリー・シャピロ)氏の論説を掲載した。その中で同氏は、メディアが「ドラマと有名企業のレンズを通してのみ物語を語る」と非難した。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

IBMが127量子ビット「Eagle」プロセッサー発表、「従来のコンピューターではシミュレートできない」

IPAが「量子コンピューティング技術実践講座(ゲート式)」の参加者募集を開始
IBMが127量子ビット「Eagle」プロセッサー発表、「従来のコンピューターではシミュレートできない」

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IBMは16日から開催のQuantum Summit 2021に合わせて127量子ビット(qubit)の”Eagle”量子プロセッサーを発表し、次世代量子コンピューターシステム「IBM Quantum System Two」の概要をプレビューしました。IBMは、Eagleは従来のスーパーコンピューターでは完全にはシミュレートできない初めてのプロセッサーだと主張しています。

IBMの量子技術リーダー、ボブ・スーター氏は「Eagleは、量子コンピューティングの規模拡大に向けた大きな一歩であり、100を超える量子ビットを持つIBM初のプロセッサー。このプロセッサーは、我々がいま進歩過程のどこにいて、それが順調かどうかを示す区切りのようなものだ」とこのプロセッサーを説明しました。

また従来の量子プロセッサーとEagleの設計の違いとしては、制御部を複数の物理層で配置しつつ、量子ビットを1つの層に配置したことが挙げられ、これによって複雑さは増したもののより多くの量子ビットを扱えるようになり、性能も飛躍的に向上したとのこと。

IBMが127量子ビット「Eagle」プロセッサー発表、「従来のコンピューターではシミュレートできない」

IBM

IBMの量子ハードウェアシステム開発部門のディレクターであるジェリー・チョウ氏によるとEagleプロセッサーは12月より、IBM Cloud上のExploratoryシステムとして IBM Quantum Networkの一部メンバーにのみ提供されると述べています。ExploratoryシステムはIBMの最新技術への早期アクセスとして提供されており、稼働時間や、量子ボリュームで測定される特定レベルの再現性あるパフォーマンスは保証されません。

なおEagleプロセッサーは量子ボリュームという尺度を使って説明されておらず、また量子ビットだけではその性能を具体的に示すことができないため、他の量子コンピューターと単純に比較するのは困難です。

参考までに記せば、IBMは昨年27量子ビットのシステムを発表し、それが64QV(量子ボリューム)を達成したと説明していました。またHoneywellは昨年10月に10量子ビットながら128QVを主張するモデルH1と呼ばれるシステムを発表しています。

Eagleは127量子ビットをうたっており、この数字だけを見ればこれまでの量子コンピューターよりも高性能であることは想像できます。しかし、IBMはこのプロセッサーでも量子超越性を主張していません。量子超越性とは量子コンピューターが従来のコンピューターでは無限に近い時間を擁する、ほぼ実行不可能なタスクを実行できる能力を有することを示します。これについてIBMは「Eagleはまだ従来のコンピューターが解決できない問題を解決するほどの性能を得る段階には来ていない」としました。

量子超越性については、2019年にGoogleがSycamoreシステムでその偉業を達成したと主張したものの、それはあらかじめ用意された特定の問題を解くためだけに構築されたシステムでした。一方、中国では2020年に光学的量子技術を用いた光量子コンピューター「九章(Jiuzhang)」で量子超越性を達成したとしましたが、こちらもやはりあらかじめ用意された単一のタスクをこなすためだけのプロトタイプであり、汎用的な処理を実行する能力は備えていませんでした。

しかし、Eagleプロセッサーは上に述べたように限定的ながらクラウド経由でIBM Quantum Networkで利用可能になります。「実用面」で、Eagleは世界のトップを走る量子コンピューターということになるのかもしれません。

(Source:The Quantum DailyEngadget日本版より転載)

IBMがインフラサービス事業を「Kyndryl」として正式に分社化

米国時間11月4日、IBMはそのマネージド・インフラストラクチャー・サービス事業を、正式にKyndryl(キンドリル)という新たな公開会社として分社化したことを発表した。この事業は年間190億ドル(約2兆1549億円)の収益を上げている。この動きをどう思うかはともかく、Kyndrylはかなりの売上がある1つの企業となったわけだが、それでもIBMは、この大規模な事業を切り離したほうが良いと考えていた。

投資家向けの説明によると、Kyndrylは自身のことを、レガシー企業がより近代的なビジネス方法に移行するのを支援するコンサルティング会社であると考えているという。このミッションは、IBMが近年、会社全体で行おうとしていることと一致するように思われる。

しかし、IBMが2020年、この部門を分社する意向を発表したとき、同社がレガシービジネスからの脱却を目指していたことは明らかであり、インフラストラクチャー・サービスは、新CEOのArvind Krishna(アービンド・クリシュナ)氏が掲げるハイブリッドクラウドとAIにフォーカスしたビジョンには合致しない部分であると、IBMでは考えていた。この動きが発表されたとき、以下のように筆者が分析記事で書いたとおりだ。

財務の天才でなくても、この会社がどのような方向を目指しているのかは分かるはずだ。クリシュナ氏は、たとえ短期的な痛みがともなうとしても、IBMの事業のレガシーな分野から移行を始める時が来たことをはっきりと認識していた。そのために経営責任者は、(彼らがいう)パックの行き先に資源を投入したのである。本日のニュースは、その努力の延長線上にある。

Moor Insights & Strategies(ムーア・インサイツ&ストラテジーズ)の創設者で主席アナリストを務めるPatrick Moorhead(パトリック・ムーアヘッド)氏は、両社がこの分離によって最終的に利益を得ることになると確信している。「IBMは、利益率が低く革新性が低いサービス会社を分離した最新の企業の1つです。これによって同社が最も恩恵を受けるのは、これ以上(この部門に)役員の時間を割く必要がなく、成長分野に集中できるということだと、私は考えます」と、ムーアヘッド氏は述べている。

また、ムーアヘッド氏はKyndrylについて、この新たに設立された会社は、IBMの傘下にあったときよりも自由に、ビジネスの観点から集中したい場所を選ぶことができるようになると述べている。「Kyndrylは単独でさらなる成功を収めることができるでしょう。自動化など、実際に事業の利益になる研究開発に資金を投入できるからです。成熟した事業には、別の種類の投資が必要になるものです」。そして分離した会社は、そのような重要な決定を行うことができるようになる。

Constellation Research(コンステレーション・リサーチ)のアナリストであるHolger Mueller(ホルガー・ミューラー)氏は、Kyndrylが市場で大きく先行してスタートを切ったことを指摘する。「(Kyndrylの分社は)IBMにとって、再び成長し今後の収益性を高めていくための重要な動きであり、それが企業価値を高めます。Kyndrylは自力で結果を出せることを示さなければならなくなったものの、IBMから多くの長期契約を与えられているので、それは問題にならないでしょう」と、同氏は述べている。

Kyndrylは、既存の契約があるため、少なくとも短期的には好調を維持できるだろう。だが、変化するテクノロジーの分野で、同社が長期的に独力で繁栄できるかどうかはまだわからない。いずれにしても、IBMは新しいビジョンに集中できるため、当初はおそらく収益を減らすだろうが、最終的にはこの決定から利益を得ることができるはずだ。

画像クレジット:Icon Sportswire / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

サッポロビールと日本IBMがAIによる商品開発システムをテスト運用、コンセプトから味を作り出す新たなスキーム目指す

サッポロビールと日本IBMがAIによる商品開発システムをテスト運用、コンセプトから味を作り出す新たな商法開発スキーム目指す

サッポロホールディングスは11月4日、グループ企業のサッポロビール日本IBMが、コンセプトから味を作り出す新たな商法開発スキームを目指すシステムのテスト運用の実施を発表した。2022年の実装を目指すという。

これは、140年を超えるサッポロビールの歴史の中で蓄積された味に関するデータを学習したAIが、目標とする味のコンセプトと「香味プロファイル」に合致するレシピ(推奨配合骨格と推奨香料)を出力するというもの。それにより、RTD(Ready to Drink。栓を開けてすぐに飲める低アルコール飲料)開発のDXを推進し、経験と熟練技術を伝承するという、時間のかかるプロセスを改善するという狙いがある。

同システム構築では、商品開発システムのアルゴリズム作成にあたり、過去のレシピの官能評価データと、採用した香料の特徴に関する情報をAIにまず学習させたという。これに、立案した新商品コンセプトを基に香料の特徴と目標とするプロファイルを入力すると、AIが学習したデータを基に分析を行い、目標とするコンセプト・香味プロファイルに合致するレシピを出力する。

実際に、出力されたレシピで試作を行ったところ、「コンセプトに合致した良好な香味」が得られたという。そのレシピの検討時間は、従来のやり方と比較して50%以下に抑えられた。

このシステムではまた、「従来の手法では実現できなかった新規性」のあるレシピの考案も可能とのことで、つまり「人では思いつかない創造性を伴う商品レシピ」の創出も期待されるとのことだ。

アドビが米国の全従業員に12月8日までのコロナワクチン接種を義務付け、未接種の場合は無給休暇

アドビが米国の全従業員に12月8日までのコロナワクチン接種を義務付け、未接種の場合は無給休暇

Morsa Images via Getty Images

Adobeが、12月8日までに新型コロナウイルスのワクチン接種を義務付けるとして、米国の全従業員にメールを送信しました。これは、米国のバイデン大統領による大統領命令に従うためのもの。

バイデン大統領は9月、全ての連邦政府職員と契約職員、請負業者、医療関係者に12月8日までのワクチン接種を義務付けると発表しています。Adobeは米国政府との取引が多く、2021年3月には、50州すべてと提携しAdobe Experience CloudとAdobe Document Cloudでサービスのデジタル化を支援すると発表しています。このこともあり、政府と取引をするならワクチン接種が必須になると判断したようです。

なお、社内アンケートによれば、米国従業員の93.5%がすでにワクチンを接種済みか、接種過程にあるとのことです。ワクチン未接種の場合、無給休暇の扱いになるようですが、宗教的・医学的理由でワクチンを接種できない場合は考慮するとしています。

ワクチン接種の義務付けはAdobeに限ったことではなく、IBMでも同様の措置を発表済み。また、Googleも7月に出社するすべての従業員にワクチン接種を義務付けるとしています。Appleはワクチン接種を義務付けてはいませんが、11月1日以降ワクチン未接種の従業員は毎日の検査報告が義務付けられます

(Source:CNBCEngadget日本版より転載)

買収したRed Hatは成長を続けるがIBMの苦戦は続く

IBMは、Arvind Krishna(アルヴィンド・クリシュナ)氏が2020年CEOに昇格して以来、ハイブリッドクラウドやAIにフォーカスして戦略転換を進めてきた。その中心となっているのが、2018年に340億ドル(約3兆8810億円)で買収したソフトウェア会社Red Hat(レッドハット)だ。IBMは米国時間10月20日決算発表を行い財務成績はかなり厳しいものだったが、少なくともRed Hatは勢いよく成長を続けている。

IBMの第4四半期の売上高は176億2000万ドル(約2兆110億円)だったが、CNBCの報道によると、これはアナリスト予想の177億7000万ドル(約2兆280億円)を下回った。明るい話題としては、前年同期比で0.3%という非常に控えめな伸びを示したことが挙げられる。これは大したことではないと思うかもしれないが、過去10年間、ビッグブルー(IBMのニックネーム)は前年の売上高を上回ることはなかった

Red Hatを含むクラウドおよびコグニティブソフトウェア事業の売上高は、2.5%増の56億9000万ドル(約6490億円)となった。決算発表後に行われたアナリストへの説明会で、CFOのJim Kavanaugh(ジム・カバノー)氏は、Red Hatが第3四半期に17%成長したと指摘した。「Red Hatの売上高は、インフラストラクチャアプリケーション開発と新興テクノロジーで2桁の成長を達成しました。また、OpenShiftの経常収益が40%以上増加しました」と同社のコンテナオーケストレーションプラットフォームに言及しながら述べた。

以上が良いニュースだ。悪いニュースは、需要に追いつくためには技術者を雇う必要があり、その人件費はより高額になっていて、収益を抑制していることだ。「競争の激しい労働市場では、人材獲得や定着のためのコスト増などが当社の人件費を圧迫する要因となっていますが、現在の価格にはまだ反映されていません。今後の契約でこの価値を獲得することを期待していますが、収益構造に反映されるまでには時間がかかります」とカバノー氏は述べた。

つまり、Red Hatが問題なのではなく、IBMは自社の中心的企業からもっと収益を上げる方法を見つける必要があるということだ。Constellation ResearchのアナリストであるHolger Mueller(ホルガー・ミューラー)氏は、Red Hatを単にIBMのサービスを販売するだけの存在とするのではなく、真に中立的なプレイヤーであることをハイブリッドクラウド市場に納得させるために、Red Hatをさらに成長させる必要がある、と話す。

「IBMは、企業がRedHatを使用してロックインを回避できるようにして自らをクラウドの『スイス』と位置づけることが完全にできていません。これは有効な提案ですが、世の中のCxOの心を捉えていません」とミューラー氏は述べた。

一方、IBMは2020年発表したように、インフラストラクチャサービス部門を別会社としてスピンアウトしている最中だ。これは、クラウドとAIの戦略に基づいて会社を強固にするための動きと見られているが、来月この手続きが完了すると、バランスシートからその収益を失うことになり、財務的には痛みをともなう。

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IBMがレガシーインフラ事業をスピンアウト、クラウド事業に全面的に舵を切る

その他の主要部門であるグローバルサービス部門は5%減、システム部門は12%減と大幅な減収となった。唯一、グローバルコンサルティングが12%成長したのが救いとなった。

IBMは少しずつ前進しているが、十分ではなく、また迅速でもない。IBMの株価は10月21日の取引終了時に9.56%下落した。株主は明らかにさらなる成果を求めている。Red Hatがリードしている一方で、他の部門は遅れを取り続けていて、投資家は満足していない。

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

IPAが「量子コンピューティング技術実践講座(ゲート式)」の参加者募集を開始

IPAが「量子コンピューティング技術実践講座(ゲート式)」の参加者募集を開始

IPA(独立行政法人情報処理推進機構)は10月13日、量子コンピューティング技術の普及と啓発を目的とした「量子コンピューティング技術実践講座(ゲート式)」の開催を発表した。量子コンピューティング(ゲート式)について学びたい、おもに学生や社会人を対象に、量子コンピューティングの研究開発に携わる専門家を講師に招き、全3回の日程で行われる。参加費は無料。申し込みは、connpassのページより登録。申し込み締め切りは2021年10月25日午後6時。

講演では、量子コンピューティング(ゲート式)の基礎を学ぶ。内容は、専門家による講演、「未踏ターゲット事業」修了生による実例講演、量子プログラムコンテストなど教育機会の紹介、ツールやユーティリティに関する包括的な講義などとなっている。最後に受講者は、自身で行うプロジェクトを想定したプレゼンテーションを行い、講師が講評する。「量子コンピューティングの最新事例に関する知識やプロジェクトアイデアを創出する方法が学べます」とのことだ。

開催概要

  • 日程
    第1回 2021年11月5日18:30~21:00 オンラインによる講義形式
    第2回 2021年12月3日18:30~21:00 オンラインによる講義形式
    第3回 2022年1月16日10:00~18:00 オンラインでのプレゼンテーション
  • 定員:30名(応募多数の場合は抽選)
  • 参加費:無料
  • 応募条件:オンライン受講できるインターネット環境とPCを用意できること。第1回から3回まですべて参加できること(Pythonによる基本的なプログラミングの経験が前提とされている)。一部だけの受講は不可
  • 講師
    佐藤貴彦氏(慶應義塾大学量子コンピューティングセンター 特任講師)
    鈴木泰成氏(日本電信電話コンピュータ&データサイエンス研究所研究員)
    渡辺日出雄氏(日本アイ・ビー・エム東京基礎研究所 部長、工学博士)
  • 申し込み方法connpassのページより登録を行う。締め切りは2021年10月25日午後6時

アジェンダ

  • 第1回
    ・量子コンピューティング技術における課題と取組み(渡辺日出雄氏)
    〜本領域の課題と取り組みのオーバービュー
    ・未踏ターゲット修了生講演
    ・量子コンピューティング教育に関する取組み(佐藤貴彦氏)
    〜量子プログラムコンテスト、入門用教育に関する事例紹介
  • 第2回
    ・未踏ターゲット修了生講演(矢野碩志氏/真鍋秀隆氏)
    ・量子コンピュータ利用環境に関する課題(鈴木泰成氏)
    〜ツールやユーティリティに関する包括的課題
  • 第3回
    ・受講生によるプロジェクト案プレゼンテーション(佐藤貴彦氏、鈴木泰成氏、渡辺日出雄氏)
    ・講評

日本IBMが量子コンピューター活用のハッカソン「IBM Quantum Challenge Fall 2021」を開催、高校生以上参加可能

日本IBMが量子コンピューター活用のハッカソン「IBM Quantum Challenge Fall 2021」をオンライン開催、高校生以上参加可能

日本IBMは10月6日、量子コンピューターを使って産業分野の具体的な課題に挑戦するハッカソン「IBM Quantum Challenge Fall 2021」を10月27日(日本時間10月28日9時)より10日間開催すると発表した。「量子コンピューティングの産業応用に向けて」をテーマに、量子コンピューターが「実際に何に使えるのか?」を考えるための、産業応用の課題にチャレンジする。高校生以上の人なら、経験の有無を問わず参加が可能。

参加者は、IBMが運用している量子コンピューター・プラットフォーム「IBM Quantum Lab」上で、オープンソースの量子ソフトウェア開発キット「Qiskit」を使い、金融、量子化学、AI機械学習、最適化という、将来量子コンピューティングの活用が期待される4つの重要な産業分野の課題に挑戦する。「チャレンジを通じて基礎から応用まで学ぶことができるとともに、産業応用を意識した量子コンピューティングの活用に取り組むことができます」とのことだ。

IBM Quantum Challenge Fall 2021における4つのチャレンジ

金融では、「どの会社の株をどれくらいの比率で持てばベストな資産運用ができるか」といったポートフォリオの最適化など、量子コンピューターを使用した財務上の課題解決法を考える(Qiskit Finance documentationチュートリアル参照)。

量子化学では、量子コンピューターによる分子シミュレーションをもとに、変分量子アルゴリズムを用いた有機EL発光材料の励起状態の計算方法を考える(Qiskitテキストブックの4.1.2章Qiskit Global Summer SchoolのLecture22〜27Qiskit Nature documentationチュートリアル参照)。

量子機械学習では、従来型機械学習アルゴリズムの量子拡張版を使い、機械学習においてもっとも基本的な問題となっている特定クラスの分類問題をいかに解決するかを考える(Coding with Qiskit season 2のエピソード6Qiskit Machine Learning documentationチュートリアル参照)。

最適化では、巡回セールスマン問題、最大カット問題、ナップサック問題といったNP困難問題に、量子コンピューターで挑戦する(Qiskitテキストブック「QAOA を利用して、組合せ最適化問題を解く」Qiskit Optimization documentationチュートリアル参照)。

演習問題については、東京大学と慶應義塾大学の学生が検討し、出題する予定。

「IBM Quantum Challenge Fall 2021」概要

このハッカソンは、2019年から4回開催されている。2020年5月に開かれた第2回では、45カ国から1745人が参加。2020年11月の第3回では、85カ国3320人以上から応募があった。各回の概要は下のリンクで見ることができる。

第1回:2019年9月 https://github.com/quantum-challenge/2019
第2回:2020年5月 https://www.ibm.com/blogs/research/2020/05/quantum-challenge-results/
第3回:2020年11月 https://www.ibm.com/blogs/think/jp-ja/quantum-challenge-2020-fall-results/
第4回:2021年5月 https://research.ibm.com/blog/quantum-challenge-2021-results

IBMが新型「Power E1080」サーバーを発表、エネルギー効率とパワーの劇的な向上を約束

強力なサーバーを稼働させる大規模なデータセンターでは、膨大な量の電力が使われていることを私たちは知っている。とりわけ気候変動が問題になっている今、電力消費量を削減できるのであれば、何であれ歓迎すべきことだ。その点においても注目されるのが、最新の「Power10」プロセッサーを搭載した新しい「IBM Power E1080」サーバーである。

IBMの主張によれば、競合する126台のサーバーで行っていた作業を、たった2台のE1080に集約することで、エネルギーコストを80%削減できるという(同社推定)。さらに同社は「この新サーバーは、主要なSAPアプリケーションのパフォーマンスを測定するSAPベンチマークにおいて、x86ベースの競合サーバーが使用するリソースの半分しか必要とせず、40%の差をつけて世界新記録を達成した」と述べている。

Moor Insight & Strategy(ムーア・インサイト・アンド・ストラテジー)社の創設者兼主席アナリストで、チップ業界に詳しいPatrick Moorhead(パトリック・ムーアヘッド)氏は、このシステムが達成できることについてのIBMの大胆な主張は、ハードウェア設計の観点から見て納得がいくと語っている。「SAP、Oracle(オラクル)、OpenShift(オープンシフト)のワークロードについての同社の主張は、同じ性能を得るために必要なソケットや物理プロセッサの数が単純に少なくて済むという点で、まずは納得できるものでした。これらの数値は、(将来的に)Sapphire Rapids(サファイアラピッズ)に置き換えられることになっているIntel(インテル)のCascade Lake(カスケードレイク)と比較したものです」と、同氏は述べている。

IBMのPower Systems Group(パワー・システムズ・グループ)でバイスプレジデント兼ビジネスライン・エクゼクティブを務めるSteve Sibley(スティーブ・シブリー氏)によれば、この新しいサーバー(およびそれを実行するPower10チップ)は、スピード、パワー、効率、セキュリティの組み合わせを求める顧客のために設計されているという。「ここで我々が提供する拡張性とパフォーマンスは、お客様の最も高い要求に迅速に対応して拡張でき、機敏性をさらに高めることが可能です」と、同氏は述べている。

顧客に用意された選択肢としては、E1080サーバーを買い取り、企業のデータセンターに設置することもできるし、あるいはIBMのクラウド(場合によっては他社のクラウドも)からサービスとしてサーバーアクセスを購入することもできる。または、サーバーをレンタルして自社のデータセンターに設置し、分単位で支払うことでコストを軽減することも可能だ。

「当社のシステムは、いわゆる購入のベースコストという観点からすると少々高価ですが、当社ではお客様が実際に(E1080サーバーを)サービスベースで購入し、分単位の粒度で料金を支払うこともできるようにしています」と、シブリー氏は語る。

さらに、Power10チップをベースに初めて発売されるこのサーバーは、内部でRed Hat(レッドハット)のソフトウェアが動作するように設計されており、このことはIBMが2018年に340億ドル(約3兆7000億円)で買収したRed Hatに新たな活躍の場を与えている。

関連記事:IBMが約3.7兆円でRed Hat買収を完了

「Red Hatのプラットフォームをこのプラットフォームに導入することは、RHEL(Red Hat Enterprise Linux、レッドハット・エンタプライズ・リナックス)オペレーティングシステム環境からだけでなく、OpenShift(オープンシフト、同社のコンテナプラットフォーム)からも、アプリケーションをモダナイズするための重要な手段となります。また、当社のRed Hat買収とそれを活用することのもう1つの重要な点は、Red HatのAnsible(アンシブル)プロジェクトや製品を活用して、当社のプラットフォームの管理と自動化を推進していくということです」と、シブリー氏は説明する。

2020年4月にIBMのCEOに就任したArvind Krishna(アービンド・クリシュナ)氏は、一部のコンピューティングがクラウド上に存在し、一部がオンプレミスに存在するハイブリッド・コンピューティングに会社の重点を移そうとしている。今後は多くの企業が何年もの間、同じ状況になるだろう。IBMは、Red Hatをハイブリッド環境のマネジメントプレーンとして活用し、さまざまなハードウェアおよびソフトウェアのツールやサービスを提供したいと考えている。

Red HatはIBMの傘下で独立した企業として活動を続けており、顧客にとって中立的な企業であり続けたいと考えているものの、ビッグブルーは可能な限りその提供物を活用し、自社のシステムを動かすために利用する方法を模索し続けている。E1080はそのための重要な手段を提供することになる。

IBMによると、新型サーバーの注文受付は直ちに開始されており、納品は2021年9月末より始まる見込みだという。

画像クレジット:IBM(Image has been modified)

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

東京大学とIBMがゲート型商用量子コンピューター「IBM Quantum System One」の日本初始動を発表

東京大学とIBMがゲート型商用量子コンピューター「IBM Quantum System One」の日本初始動を発表東京大学IBMは7月27日、日本初のゲート型商用量子コンピューティング・システム「IBM Quantum System One」が「新川崎・創造のもり かわさき新産業創造センター」(KBIC)において稼働開始したと発表。また発表会を開催した。

発表会では、東京大学総長 藤井輝夫氏、文部科学大臣 萩生田光一氏、科学技術政策担当大臣 井上信治氏、参議院議員および自由民主党量子技術推進議員連盟会長 林芳正氏、駐日米国臨時代理大使 レイモンド・グリーン氏、慶應義塾長 伊藤公平氏、東京大学教授・元総長 五神真氏、東京大学教授 村尾美緒氏、川崎市長 福田紀彦氏、QII協議会会長およびみずほフィナンシャルグループ取締役会長 佐藤康博氏 QII協議会メンバーおよびJSR名誉会長 小柴満信氏、IBM シニア・バイス・プレジデントおよびIBM Research ディレクター ダリオ・ギル氏、日本アイ・ビー・エム代表取締役社長 山口明夫氏が登壇した。

東京大学とIBMがゲート型商用量子コンピューター「IBM Quantum System One」の日本初始動を発表

同システムの稼働は、2019年12月にIBMと東京大学で発表した「Japan–IBM Quantum Partnership」に基づくもので、東京大学が占有使用権を有している。東京大学は同システムを活用し、企業、公的団体や大学等研究機関と量子コンピューターの利活用に関する協力を進める。

「新川崎・創造のもり」地区に位置する産学交流によるインキュベーション施設であるKBICは、川崎市の全面的な支援により、電気・冷却水・ガスなどのインフラの安定供給や耐振動環境といった量子コンピューターの常時安定稼働に必要となる最適な環境を実現しており、同システムが安定稼働することで研究活動が加速することが期待される。

東京大学、川崎市、日本IBMは、量子コンピューティング技術の普及と発展に関する基本協定書を2021年6月に締結した。3者は、量子コンピューターの安定稼働、量子コンピューター利活用の拡大や普及促進、量子コンピューターを活用した人材育成について、引き続き協力するとしている。

東京大学総長の藤井輝夫氏は、「変化の早い量子技術分野において、世界に伍して高度な社会実装を実現するためには、量子技術に関する要素やシステムの開発だけでなく、次世代人材の育成が極めて重要です。本学は研究人材の裾野も広く、すでに学部学生からハイレベルな量子教育を進めていますが、この「System One」を活用して次世代の量子ネイティブの育成をより一層進めて参りたいと考えております」と述べた。

東京大学とIBMがゲート型商用量子コンピューター「IBM Quantum System One」の日本初始動を発表

また、IBM シニア・バイス・プレジデント、IBM Researchディレクターのダリオ・ギル(Dario Gil)氏は、「IBMは、グローバルな量子エコシステムの成長と、さまざまな研究のコミュニティー間によるコラボレーションの促進に取り組んでいます」とコメント。「このグローバルな取り組みの一環として、日本の商用量子コンピューターを発表できることを誇りに思い、日本の世界クラスの学術、民間部門、政府機関による成果を楽しみにしています。共に私たちは、さまざまな分野で科学の進歩を加速するための大きな一歩を踏み出すことができるのです」とした。

東京大学とIBMがゲート型商用量子コンピューター「IBM Quantum System One」の日本初始動を発表

また、同システムの稼働に加えて、東京大学とIBMは、量子コンピューターの普及と発展に向けた活動を強化する取り組みを実施している。量子コンピューター技術の研究・開発を行うハードウェア・テストセンター「The University of Tokyo – IBM Quantum Hardware Test Center」を、東京大学 浅野キャンパス内に2021年6月に開設した。2021年8月中旬には、東京大学が設立した「量子イノベーションイニシアティブ協議会」会員企業の交流・情報共有の場として、「コラボレーションセンター」(仮称)を東京大学本郷キャンパス(理学部1号館10階)に設置する予定。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:IBM(企業)東京大学(組織)Q System量子コンピューター(用語)
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IBM社長ジム・ホワイトハーストがわずか14カ月で退任

米国時間7月2日、IBMは、Red Hatの買収にともなって入社したJim Whitehurst(ジム・ホワイトハースト)氏が、社長就任からわずか14カ月で社長を退任するという驚きの発表を行った。

辞任の理由など、詳細は発表されていないが、声明には2018年にRed Hatの340億ドル(約3兆7740億円)の買収を成功に導いた功績と、彼がその後の両社の融合に努めたことが特記されている。「ジムはIBMの戦略の構築に力を発揮しました。また、IBMとRed Hatの協調関係を確実なものとし、弊社の技術的プラットフォームとイノベーションが顧客にもたらす価値を大きなものにしました」とある。

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ホワイトハースト氏は会長兼CEOであるArvind Krishna(アルヴィンド・クリシュナ)氏のシニアアドバイザーとして社に残るが、短期間で社長職を去る理由、および今後についての説明はない。通常、このクラスの大きな買収があると、上級役員の処遇に関する合意もあるはずだが、単純にその期限が過ぎただけなのか、ホワイトハースト氏が昇進を求めているのか、そのどちらかかもしれない。彼をクリシュナ氏の当然の後継者と見ていた者もいたが、その線で考えるとなおさらのこと、今回の異動は意外だ。

Moor Insight & Strategiesの創業者で主席アナリストのPatrick Moorhead(パトリック・ムーアヘッド)氏は「ジムはIBMの次のCEOだと思っていたから意外だ。IBMの生え抜きであるクリシュナ氏と外部からの人材であるホワイトハースト氏のコンビも、すてきだった」と語る。

とにかく、IBMを主にハイブリッドクラウドにフォーカスした会社に変える仕事をしていた彼を失うと、クリシュナ氏のリーダーシップチームに大きな穴ができる。ホワイトハースト氏は、その深い業界知識と、Red Hat時代に培われたオープンソースコミュニティの信頼を武器として、IBMの変化を推進する絶好の位置につけていたことは間違いない。彼は、簡単に代わりを見つけられるような人物ではないし、今日の発表も後任については触れていない。

2018年にIBMがRed Hatを340億ドルで買収した際、両社には滝のように連なる一連の変化が起きた。まず、Ginni Rometty( ジニー・ロメッティ)氏がIBMのCEOを降りアルヴィンド・クリシュナ氏に代わった。同時に、Red HatのCEOだったジム・ホワイトハースト氏が社長としてIBMへ移籍し、長年の社員だったPaul Cormier(ポール・コーミエ)氏がRed HatのCEOを引き継いだ。

今日は、その他の異動も発表され、その中では長年IBMの役員だったBridget van Kralingen(ブリジット・バン・クラリンゲン)氏が退社し、グローバル市場担当上級副社長としての役を降りることになった。また、IBMのクラウドとデータプラットフォーム担当上級副社長だったRob Thomas(ロブ・トーマス)氏がバン・クラリンゲン氏の役を引き受けることになる。

カテゴリー:その他
タグ:IBMRed Hat人事退任

画像クレジット:Bloomberg/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

IBMと東京大学が量子コンピューター実用化に必要な部品の試験を行うハードウェア・テストセンターを開設

IBMと東京大学が量子コンピューター実用化に必要な部品の試験を行うハードウェア・テストセンターを開設

IBMは6月7日、将来の量子コンピューター技術の研究開発を行うハードウェア・テストセンター「The University of Tokyo – IBM Quantum Hardware Test Center」を東京大学浅野キャンパスに開設し、量子コンピューター動作環境を再現するプラットフォーム「量子システム・テストベッド」を設置したことを発表した。

同センターの開設は、IBMと東京大学が2019年12月に設立を発表した「Japan–IBM Quantum Partnership」に基づくもの。このパートナーシップは、「産業界とともに進める量子アプリケーションの開発」「量子コンピューターシステム技術の開発」「量子科学の推進と教育」の3つの推進を目指している。IBMはこれを「量子コンピューターの研究開発を進めるための日本の産学連携プログラム」と位置づけている。

東京大学に設置した量子システム・テストベッド

量子システム・テストベッドは、量子コンピューターに必要な部品の試験を行うための大規模なプラットフォームだ。IBMと東京大学は、日本の参加企業や団体にアクセスを提供し、量子コンピューターの実用化に不可欠な材料や部品・技術の研究開発を行うことにしている。たとえば、「高度な極低温マイクロ波コンポーネントとサブシステムおよび制御エレクトロニクス」「超伝導量子ビットを安定的に動作させるために必要な材料」「高品質な信号伝送に必要な高周波部品や配線」、さらに「極低温を実現するために必要な冷凍機やコンプレッサー」とそれらの制御技術などが含まれる。

また、ナノ構造物理や超伝導などの研究で知られる仙場浩一氏が6月1日付けで東京大学大学院理学系研究科に特任教授に着任し、各メーカーとの協業から研究開発を牽引してゆくことになった。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:IBM(企業)東京大学(組織)量子コンピュータ(用語)日本(国・地域)

IBMがクラウドアプリとネットワーク管理のTurbonomicを最大2179億円で買収

米国時間4月29日、IBMは顧客企業に提供する、ネットワークやワークロードを管理するAIベースのサービスを深化させる新たな買収を行った。同社が発表したのは、アプリケーションのパフォーマンス(特にリソース管理)やKubernetes、ネットワークのパフォーマンスを管理するツールを提供しているTurbonomic(ターボノミック)の買収だ。これは、IT運用に、より多くのAIを取り込む(IBMはそれをAIOpsと呼んでいる)という大きな戦略の一環である。

買収の金銭的条件は公表されていないが、PitchBookのデータによれば、Turbonomicは最後に行われた2019年9月の資金調達ラウンドでは10億ドル(約1090億円)近く、正確には9億6300万ドル(約1049億円)と評価されていた。米国時間4月29日の少し早い時間に流されたロイターの記事では、この取引は15億ドル(約1634億円)から20億ドル(約2179億円)と推定されていた。ある関係者によれば、この数字は正確だということだ。

ボストンを拠点とする同社にはGeneral Atlantic、Cisco、Bain、Highland Capital Partners、Red Hatなどが出資していた。もちろん最後のRed Hat(レッドハット)は、現在はIBMの傘下となっているので、理屈の上ではIBMも投資者だったのだ。Red HatとIBMは、通信事業者、エッジ、企業のユースケースに対応した、さまざまなクラウドベースのツールを開発してきた。

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今回の買収は、その動きをさらに拡大するものであり、また、最近のIBMが積極的に取り組んでいる分野でもあるのだ。2020年11月にIBMは、アプリケーションパフォーマンスマネジメントを自社の一員とするために、Instana(インスタナ)を買収したが、今回のTurbonomicの買収はそれを補完するものであり、2つの技術のツールは統合されるだろうとIBMは述べている。

Turbonomicのツールは、オンプレミスやクラウドのワークロード単体に対して有効なだけでなく、通常は複数のクラウド環境にまたがって拡張されるワークロードを含む、ハイブリッドクラウドアーキテクチャにおいて特に有効だ。ハイブリッドクラウドアーキテクチャは、コストや場所、その他の実務的な理由から、人々がより多くのレジリエンスを求めるアーキテクチャかもしれないが、実際のところ、管理が大変であることは間違いがない。Turbonomicのツールは、管理を自動化し、パフォーマンスを分析し、ネットワーク運用エンジニアに対して、利用上の要求を満たすための変更を提案する。

TurbonomicのCEOであるBen Nye(ベン・ナイ)氏は声明の中で「企業はアプリケーションをクロスクラウドで実行する際の規模と複雑さの課題を管理するために、AI駆動のソフトウェアを求めているのです」と述べている。「Turbonomicは、お客様に行動を提示するだけでなく、実際の行動を起こさせることが可能です。IBMとTurbonomicの組み合わせにより、たとえピーク時でも目標とするアプリケーションのレスポンスタイムを継続的に保証することができます」。

IBMにとっては、サーバーを中心としたレガシービジネスから、サービス、特に未来のインフラであるクラウドベースのネットワーク上へのサービスへの移行が進んでいることを示す、また別の兆候だ。

IBM Cloud and Data Platform(IBMクラウドアンドデータプラットフォーム)担当副社長のRob Thomas(ロブ・トーマス)氏は「IBMは、ハイブリッドクラウドとAIの企業として未来を再構築し続けます」と声明の中で述べている。「Turbonomicの買収は、この戦略を推進するために最もインパクトのある投資を行い、お客様がデジタルトランスフォーメーションを推進するための最も革新的な方法を見つけられるようにするという、当社のコミットメントを示すもう1つの例なのです」。

ネットワークとIT運用の世界におけるAIの可能性の大部分は、企業がいかに自動化に頼ることができるようになるかという点にあり、IBMはこの分野にも積極的に取り組んでいる(この技術のまったく異なる応用であるビジネスサービス分野では、同社は2021年4月、イタリアのMyInvenioを買収し、プロセスマイニング技術を自社に導入した)。

一方、自動化によって期待されるのは、運用コストの削減であり、これはハイブリッド・クラウドの展開において、ネットワークのパフォーマンスと可用性を管理するための重要な課題だ。

IBM Automation(IBMオートメーション)のゼネラルマネージャーであるDinesh Nirmal(ディネッシュ・ナーマル)氏は声明の中で「私たちは、AIによる自動化は避けられないものになり、そのことは情報を中心としたすべての仕事の生産性向上に役立つと考えています」と述べている。「だからこそIBMは、ビジネスプロセスとITにまたがるAIを活用した自動化機能を、ワンストップでお客様に提供するための投資を続けているのです。Turbonomicが加わったことで、お客様はハイブリッドクラウドのインフラ全体、そして企業全体で何が起こっているのかを完全に可視化できるようになり、そのことで当社のポートフォリオはさらに大きく前進することになります」。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:IBMTurbonomic買収クラウドコンピューティング

画像クレジット:sdecoret / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:sako)

関西学院大学と日本IBMが授業と同内容の「AI活用人材育成プログラム VL版」を企業・自治体・大学に提供開始

関西学院大学と日本IBMが実際の授業と同内容の「AI活用人材育成プログラム VL版」を提供開始、2024年度に受講者年間5万人を目指す関西学院大学は4月27日、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)と共同開発した「AI活用人材育成プログラム バーチャルラーニング版」(VL版)について、2021年7月より企業・自治体・大学に対し有償提供を開始すると発表した。2024年度に受講者を年間5万人に拡大するとしている。

価格は1科目につき税込2万2000円/年、同じ科目の2年目以降の再受講は税込6600円/年で履修可能となり、継続的な学習による知識の定着を目指す。2021年度は年間5000人の社会人の受講利用を見込んでおり、2021年7月より大同生命保険が本社職員1500人の受講を予定している。関西学院大学と日本IBMが実際の授業と同内容の「AI活用人材育成プログラム VL版」を提供開始、2024年度に受講者年間5万人を目指す

関西学院大学と日本IBMが実際の授業と同内容の「AI活用人材育成プログラム VL版」を提供開始、2024年度に受講者年間5万人を目指す

VL版は、初学者でもAI活用の実践的な知識・スキルを体系的に修得できるよう設計した「AI活用入門」「AI活用アプリケーションデザイン入門」、「AI活用データサイエンス入門」の3科目(1科目20時間程度)で構成しており、すべてオンライン(オンデマンド)での開講となる。

これら内容は学内開講プログラムと同じで、音声や字幕によるガイダンス、講師の解説、デモ動画、オンラインでの演習、時間制限付きの課題研究、ランダムテストなどの多様な機能を有するオンライン・プラットフォームとなっているという。またプロシーズが提供するLMS「Learning Ware」(ラーニングウエア)を利用しているため、企業・自治体・大学側でのシステムの導入は必要ないそうだ。

学習者の質問に対しては、IBM Watson Assistantを搭載したチャットボットで回答する仕組みを構築しており、提携する企業・自治体に所属する社会人は、時間や場所の制限なく、いつでもどこでも何度でも受講が可能。

受講時間は、1科目あたり20時間程度。単元ごとに設定されているオンラインテスト(ランダム出題)すべてを一定の正解率でクリアすれば合格し、修了証と、オープンバッジ・ネットワークがブロックチェーンで管理するデジタル修了証「オープンバッジ」が発行される。オンラインテストの正解率、講義の早送り・スキップ禁止などの条件を解除する設定も可能だが、その場合は修了証は付与されない。またオープンバッジは、IMS Global Learning Consortium(IMS Global)が定める国際技術標準規格に準拠したものとなっている。

2022年度以降、「AI活用実践演習A(JavaによるWebアプリケーションデザイン)」「AI活用実践演習B(Pythonによる機械学習・深層学習)」「AI活用実践演習C(Webデザイン)」の3科目を提供科目として順次追加し、2024年度には合計6科目を提供する。

今後は企業や自治体をはじめ大学にも提案し、2022年度からは社会人、高校生などにも展開。2024年度には受講者を年間5万人に拡大させることで、関西学院大学と日本IBMは、AI人材の創出に貢献する。

関西学院大学と日本IBMが実際の授業と同内容の「AI活用人材育成プログラム VL版」を提供開始、2024年度に受講者年間5万人を目指す

関西学院大学は、「AI・データサイエンス関連の知識を持ち、さらにそれを活用して、現実の諸問題を解決できる能力を有する人材」の育成を目的に、2017年より日本IBMと共同プロジェクトを立ち上げ、「AI活用人材育成プログラム」を開発した。

関西学院大学による学術的な知見と、日本IBMのコンサルタントやデータサイエンティストによる多様なAIの社会実装の先進事例を反映した実践型プログラムとして10科目で構成しており、2019年4月より文系理系問わず全学部生を対象に開講しているという。

2021年度には「AI活用入門」「AI活用アプリケーションデザイン入門」「AI活用データサイエンス入門」の基礎3科目をe-ラーニング化しVL版として開講したところ、AIリテラシーの修得を目的とする「AI活用入門」のVL版初年度春学期の履修者は2071人に上り、学生のAIに関する関心の高さが示されたという。

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カテゴリー:EdTech
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IonQがIBMの量子コンピュータ開発キット「Qiskit」をサポート

先にSPACを通じて上場したイオントラップによる量子コンピューティング企業のIonQが米国時間4月12日、同社の量子コンピューティングプラットフォームをオープンソースのソフトウェア開発キットであるQiskitと統合すると発表した。つまりQiskitのユーザーはコードに大きな変更を加えることなく、自分のプログラムをIonQのプラットフォームに持ち込むことができる。

これは一見大したことはないように思えるが、QiskitはIBM Researchによって設立されたIBMの量子コンピュータ用デフォルトツールであることは注目に値する。IBMとIonQ(公平を期すためにいうと、この分野の他の多くの企業も)の間には健全な競争関係があり、その理由の1つは両社がそれぞれのプラットフォームの中核で非常に異なる技術を採用しているからだ。IonQはイオントラップに賭けており、これによりそのマシンは室温で稼働できるが、IBMの技術ではマシンを過冷却する必要がある。

IonQは今回、Qiskit用の新しいプロバイダライブラリをリリースし、GitHub上のQiskitパートナーリポジトリの一部として、またはPython Package Index経由で利用可能な、Qiskit用の新しいプロバイダライブラリをリリースした。

IonQのCEO兼社長のPeter Chapman(ピーター・チャップマン)は「IonQは当社の量子コンピュータとAPIをQiskitコミュニティが簡単に利用できるようにすることに興奮しています。オープンソースはすでに、従来のソフトウェア開発に革命を起こしています。今回の統合により、広く適用可能な第一世代の量子アプリケーションに世界が一歩近づくことになります」。

一方で、これはIonQがIBMを少しいじめているようにも見えるが、Qiskitが量子コンピュータを扱うデベロッパーの標準になったことも認めているともいえる。しかしこのようなライバル関係を別にすれば、私たちは量子コンピューティングの初期段階にあり、まだ明確なリーダーがいないため、量子コンピュータ向けのアプリケーションを開発したいと考えている開発者にとっては大きなメリットとなる。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:IonQIBMQiskit量子コンピュータ

画像クレジット:Kai Hudek, IonQ

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:塚本直樹 / Twitter

Celonisがプロセスマイニングソフトウェア販売でIBMと提携

ワークフローを改善するためには、現在の仕事の進め方をよく理解しなければならないが、特に大企業では想像するよりもかなり複雑な作業になる。それを助けてくれるのがCelonisだ。同社は、専用のソフトウェアで組織内の仕事の流れを把握し、同じ仕事をより効率的に行う方法を提案する。ワークフローの構成や流れを可視化する作業を、プロセスマイニング(process mining)と呼ぶ。

米国時間3月31日、IBMとの重要な提携を発表した。これにより、IBM Global Servicesが世界中の1万名のコンサルタントをCelonisで訓練することになる。社員数約1200名のCelonisがIBMの大きな営業とコンサルティングの部門にアクセスすることになり、IBMは、ワークフローオートメーションと呼ばれるトレンドのフロントエンドを深く理解する機会を得る。

Celonisの最高収益責任者(CRO)であるMiguel Milano(ミゲル・ミラノ)氏によると、プロセスのデジタル化はここ数年のトレンドだという。新型コロナウイルスで加速され、今回の2社の協働関係にもその影響はあるとのことだ。「インテリジェントなワークフロー、企業の業務遂行を支援するために構築されたワークフローが、このパートナーシップの核心であり、現在市場で起こっているトレンドの核心でもあります」とミラノ氏はいう。

これには、IBMが2018年に340億ドル(約3兆7600億円)で買収したRed Hatも関係している。この2社は、Celonisのクラウドベースの技術を、オンプレミスとクラウドのハイブリッド世界を相手にしているRed Hatと組み合わせれば、どこで生じた仕事であれ、従来よりもずっと強力なソリューションでフォローできると考えている。

IBM Servicesの上級副社長Mark Foster(マーク・フォスター)氏は、次のように説明する。「私の考えでは、CelonisのソフトウェアをRed HatのOpenShift環境に持ち込めば非常に強力なものになります。なぜなら、すでに極めて強力なオープンソリューションが、このハイブリッドクラウドの全域で運用され、それらがメインフレームとプライベートクラウドとパブリッククラウドすべてを対象とするOpenShiftのパワーを利用していけるためです。データもこの3つの世界すべてが利用し、今後も継続して利用していけます」。

IBMは2020年夏に、ロボットのプロセスオートメーションのベンダーであるWDG Automationを買収したが、今度はCelonisを買う気かもしれない。しかしフォスター氏によれば、このパートナーシップは、同社のもっと広いエコシステムとパートナーしていく企図の一環であるという。

「エコシステムの主要なメンバーとパートナーしていくことは、IBMの何よりも優先するフォーカスであり、今回もまさにその一環です。相手企業の規模は大小さまざまでも、今回は特に、プロセスマイニングという1つのカテゴリーでトップの座にある企業と関係を結ぶ好機であり、IBM Red Hatの技術を利用できる好機でもあると捉えています」とフォスター氏はいう。

両社は今回の公式発表前からすでに、一緒に仕事をしており、パートナーシップはその成果でもある。お互いがさらに関わり合っていくことにより、両社はより密接に協力して、IBMの数千人のコンサルタントに技術について教育訓練し、また一方では今後、CelonisのソリューションをRed HatのOpenShiftに統合することになる。

買収のようでもある大きな契約だが、ミラノ氏によれば、同社の戦略をさらに多くのシステムインテグレーターとともに実行していく近年の方針の一環であり、中でもIBMは大きなパートナーだが、唯一ではないという。

「私たちは現在、システムインテグレーターのコンサルティングが仕事の主な対象になりつつあります。そうした戦略の先頭にあるのが、IBMのようなコンサルティング企業であり、今回の契約は私たちの戦略の大きな要になるものです」とミラノ氏はいう。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:IBMCelonis

画像クレジット:mbortolino/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)