吉野家とIdeinがAIオープンイノベーションプログラム「⽜丼テック」の募集開始

吉野家とIdeinがAIオープンイノベーションプログラム「⽜丼テック」の募集開始吉野家Idein(イデイン)は11月4日、新しい吉野家の形を共創するためのオープンイノベーションプログラム「⽜丼テック」を共同開催し、共創パートナーを同日より募集する。応募締切は2020年12月4日。

「牛丼テック」概要

  • 対象者: 個⼈・法⼈・分野・業種を問わず、「テーマ1: 顧客満足度向上」「テーマ2: サービス品質改善」の加速といった⽬的にかなうソリューションを提供できるすべての⽅
  • 選考基準: 「⽜丼テック」プログラムの⽬的に対する適性、提案ソリューションの実現可能性など
  • 応募費⽤: 無料。最終審査を経て共創パートナーとして採択され、協働に至った際に開発などで発生する費用などについては、別途協議の上契約などを締結することを想定
  • 応募⽅法: 牛丼テック応募フォームより応募
  • 募集開始: 2020年11月4日
  • 応募締切: 2020年12月4日

牛丼テック説明会(オンライン)

  • 説明会参加申し込み期限: 11月19日15時
  • 説明会開催日時: 11月20日13時~14時
  • 説明会参加申し込み: 牛丼テック説明会申込フォームより応募(牛丼テック応募フォームとは別URLである点に注意)

共創パートナーにもたらされる機会

  • PoC(実証実験)実施: 吉野家の実店舗でのPoC機会を提供。本事例は共創パートナーの実績として広報活動などに活用可能
  • ビックデータ活用: 吉野家の店舗でセンシングしたビックデータを、共創パートナーの分析ソリューション・コンサルティングに活用可能
  • 本導入検討: プログラムの結果を踏まえ、主催企業における実運用に向けた協議の機会を提供
  • 牛丼券(365日分): 共創パートナーのソリューションが導入された実店舗において、当該ソリューションによる店舗競争力向上を顧客目線かつ長期時系列で実感できる
  • 社名入り特製吉野家どんぶり(上位3社): 共創パートナーの社名が入ったどんぶり(各社1個)。採用ソリューションによって改善されたテイクアウトのオペレーションを実感し、自宅で特製どんぶりを使用した吉野家牛丼を完全に再現できる

現在吉野家とIdeinは、吉野家店舗の顧客満⾜度向上及びサービス品質改善を実現するための店舗センシングプロジェクトで協働している。

Idein開発のActcastは、Actcastは、エッジデバイス上で画像解析AIなどを実⾏して実世界の情報を取得し、ウェブと連携するIoTシステムを構築・運⽤するためのプラットフォームサービス(PaaS)。AI/IoTシステムの開発・導⼊・活⽤には多くの要素があり、Actcastでは様々なパートナー企業が有する場や技術、リソースのエコシステムを通じて最適な組み合わせを実現可能という。

吉野家とIdeinがAIオープンイノベーションプログラム「⽜丼テック」の募集開始

吉野家とIdeinがAIオープンイノベーションプログラム「⽜丼テック」の募集開始

同プログラムでは、応募した共創パートナーのソリューションとActcastを組み合わせることで、店舗センシングプロジェクトが掲げる以下テーマへの取組を加速させることを⽬的としている。

吉野家とIdeinがAIオープンイノベーションプログラム「⽜丼テック」の募集開始

  • テーマ1: 「顧客満足度向上」。レジ前の人数カウント、サイネージのインプレッション把握、サイネージのコンバージョン把握など
  • テーマ2: 「サービス品質改善」。返却口の状況把握、箸の残量測定、キッチンの温度、トイレの清掃回数検知、ダスターの一検知、店舗の清掃状況(モップ動作など)の検知など

同プログラムにおける参加者との共創イメージ

同プログラムにおける参加者との共創イメージ

(1)共創パートナーによるアプリケーション開発、(2)実店舗でのセンシング、(3)データをエッジ処理、プライバシー保護に配慮してデータ収集、(4)収集データを活用した付加価値情報の創造、(5)店舗運営に活用し顧客足度の向上とサービス品質改善を実現

想定される共創パートナーの主な属性

  • AIアルゴリズム開発者: 今回の取り組みではActcastプラットフォームを利用することから、参加者はアイデアと機械学習モデルの作成に専念でき、それを実店舗でのPoCを実施できるだけでなく、将来的なビジネスのスケールを目指すことが可能。上記の共創イメージにおける(1)に該当
  • BIツール提供者: 吉野家の実店舗で収集された生きたデータを分析し、店舗競争力の強化に資する付加価値情報を創造する機会が提供され、将来的なビジネス機会となりえる。上記の共創イメージにおける(4)に該当

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カテゴリー: 人工知能・AI
タグ: IoT(用語)Idein吉野家日本

安価な汎⽤デバイスで高速エッジAIを実現する「Actcast」のIdeinが20億円を調達

安価な汎⽤デバイスで高速エッジAIを実現する「Actcast」のIdeinが20億円を調達

Idein(イデイン)は10月28日、エッジAIプラットフォーム「Actcast」(アクトキャスト)の事業拡⼤に向け、第三者割当増資により20億円の資⾦調達を実施ししと発表した。引受先は、アイシン精機、KDDI(KDDI Open Innovation Fund3号)、双⽇、DG Daiwa Ventures(DG Lab 1号投資事業有限責任組合)、DGベンチャーズ、伊藤忠テクノソリューションズ、いわぎん事業創造キャピタル(岩⼿新事業創造ファンド2号投資事業有限責任組合)。これにより累積資⾦調達額は約33億円となる。

安価な汎⽤デバイスで高速エッジAIを実現する「Actcast」のIdeinが20億円を調達Ideinは、2020年1⽉にActcastの正式版をリリース。Actcastエコシステムにおいて重要なパートナプログラム「Actcast partners」を拡⼤させ、現在71社が参画している。さらに4⽉には事業開発部を創設し、すでに複数の事例・PoC案件を抱えており、Actcast事業の本格的な拡⼤に向けたスタートラインにあるという。同社は、Actcast事業の拡⼤をより着実に実現させ、さらなる成⻑への⾜がかりとすべく、事業戦略ラウンドとして位置づけた資⾦調達を実施したとしている。

また引受先の多くが、事業会社およびその関連会社であり、Actcastの⾃社および事業での活⽤について取り組む重要なパートナーとなっている。Ideinは、今回の資⾦調達を経て、そのパートナーシップをより強固なものとし、Actcast事業の拡⼤を加速させていく。

安価な汎⽤デバイスで高速エッジAIを実現する「Actcast」のIdeinが20億円を調達

Actcastは、エッジデバイス上で画像解析AIなどを実⾏して実世界の情報を取得し、ウェブと連携するIoTシステムを構築・運⽤するためのプラットフォームサービス(PaaS)。セキュリティ、産業IoT、リテールマーケティング、MaaSなど様々な分野で利用可能としている。

安価なデバイスを⽤いてエッジ側で解析を行うことで、不要な情報を送信せず運⽤コストを削減すると同時に、本社側データベースなどに個人情報につながるデータを蓄積しないなど、プライバシーへの配慮も⾏いながらAI/IoTシステムの普及を実現するという。

Ideinによると、AI/IoTシステムにおいて、クラウドだけでなくエッジの計算資源を活⽤しようという⼤きな流れがある⼀⽅、現状ではその実⽤化には課題が存在しているという。その課題を解決する⾰新的な技術およびプラットフォームとしてActcastを開発した。

Ideinは、安価な汎⽤デバイス上での深層学習推論の⾼速化を実現した、世界にも類を⾒ない⾼い技術⼒を有するスタートアップ。同社技術を⽤いたエッジAIプラットフォームActcastを開発し、実⽤的なAI/IoTシステムを開発・導⼊・活⽤する開発者・事業会社へのサービス提供。今後もパートナー企業とともに、AI/IoTシステムの普及に貢献していく。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:IoTActcastIdeinエッジコンピューティング資金調達日本

安価なエッジデバイスにディープラーニング搭載、AIoT時代の開発基盤構築へIdeinが8.2億円を調達

「やりたいのはセンシングをソフトウェアを用いて高度にしていくこと。画像認識や音声認識などの信号処理技術によって、従来の物理的なセンサーでは取れなかった実世界の情報を取得してソフトウェアで分析できるようになった。自動車産業を代表に、製造や物流など様々な分野がソフトウェアでビジネスをしていく形に変わる中で、その基盤となるサービスを提供したい」

そう話すのはIdein(イデイン)で代表取締役を務める中村晃一氏だ。近年サーバーではなく末端のデバイス(エッジデバイス)で画像や音声データを処理する「エッジコンピューティング」が注目を集めているが、Ideinは安価なエッジデバイスにディープラーニングを搭載する技術を持つスタートアップとして知られる。

7月には手軽にエッジコンピューティング型のシステムを構築・運用できる開発者向けプラットフォーム「Actcast」のβ版を公開。今後はActcastのADKを用いて開発したアプリケーションを売買できるマーケットプレイス機能などを備えた正式版のリリースも見据えている。

そのIdeinは8月19日、グローバル・ブレインなど複数の投資家を引受先とした第三者割当増資により総額8.2億円の資金調達を実施したことを明らかにした。調達した資金は同社のメインプロダクトであるActcastの本格的な事業展開に向けた人材採用の強化や業務環境の拡充に用いる計画だ。

Ideinとしては2017年7月に数社から1.8億円を調達した後、2018年2月にアイシン精機と資本業務提携を締結して以来の資金調達。今回同社に出資した投資家陣は以下の通りだ。

  • グローバル・ブレイン6号投資事業有限責任組合及び7号投資事業有限責任組合(グローバル・ブレイン)
  • HAKUHODO DY FUTURE DESIGN FUND投資事業有限責任組合(博報堂DYベンチャーズ)
  • Sony Innovation Fund by IGV(Innovation Growth Ventures)
  • SFV・GB投資事業有限責任組合(ソニーフィナンシャルベンチャーズとグローバル・ブレインが共同設立)
  • DG Lab1号投資事業有限責任組合(DG Daiwa Ventures)

エッジコンピューティングを普及させるために必要なこと

ここ数年エッジコンピューティングがホットな領域となっている背景には、サーバー集約型(オンプレ・クラウド型)AIシステムの課題がある。

「従来のソフトウェアと違いAI技術を使ったサービスの大きな違いは常時動き続けるのが基本。扱うのは画像や音声といったデータのボリュームが大きいもので、膨大な生データを処理するため計算の負荷も高い。結果的に通信コストとサーバーコストが従来のWebサービスとは比べ物にならないくらい、桁違いにかかってしまう」(中村氏)

高コストであることが現在AIの発展を阻害している1つの要因であり、まずはそれを解決したいというのがIdeinの考えだ。末端デバイスで計算を行うエッジコンピューティングの場合、サーバーに送るのは必要なデータのみ。通信回数が桁違いに減るので通信コストを削減でき、計算用のサーバーがいらないためサーバーコストも抑えられる。

加えてサーバーのスペックがボトルネックになることによるスケーラビリティの問題を回避できるほか、プライバシーの観点でも個人情報や機密情報が漏洩するリスクも減らせる。

もちろんエッジコンピューティングを普及させるためにはクリアしなければいけない課題もある。中村氏が主要なものとして挙げるのが「エッジデバイスの価格」「ソフトウェアの入ったデバイスがばら撒かれた際のシステム開発やメンテナンス」「ビジネスモデル」の3点だ。

「サーバーでやっていた計算をデバイスに持っていくので高額になりがち。画像認識機能を持ったカメラが1台数十万円で販売されているのが現状だ。また様々な場所にソフトウェアの入ったデバイスがばら撒かれた時、たとえば数千個のデバイスに1個1個ソフトウェアが入っている場合にどのようにメンテナンスを行うのかはものすごく重要なポイントになる」

「ビジネスモデルもやっかいな問題。デバイスにソフトウェアを乗っけるので、組込みソフトウェアのライセンス販売のようなビジネスになりやすく、クラウドでサブスクリプション型のサービスとはギャップがある」(中村氏)

安価なデバイスへディープラーニング搭載、遠隔運用の仕組みも

この3つの課題をクリアし、幅広い開発者がエッジコンピューティング型のシステムを構築する手助けをするのがActcastだ。

前提としてIdeinは自社のエッジ技術を使った受託開発を主力にしているわけでも、ディープラーニング用のコンパイラを販売しているわけでもない。開発者向けのクラウドサービスを提供するスタートアップであり、サービスのユーザーである開発者に対してエッジ技術を無償で提供している。

同サービスの特徴の1つは安価なエッジデバイスで高度な計算ができること。これは上述した「エッジデバイスが高額になってしまう」問題を解決する技術であり、前回の記事で詳しく紹介した点だ。

IdeinではかねてからRaspberry Pi上でディープラーニングモデルによる高度な計算を実行できる仕組みを研究してきた。エッジAIに取り組むプレイヤーはいくつか存在するが、演算量をできるだけ減らすためにモデル圧縮を採用する企業が多い。一方でIdeinはモデル圧縮ではなく“プロセッサー側をハックする”というアプローチをとった。

「自分たちがやったのはプロセッサー側に乗っているGPUを汎用的な計算に使えるように、アセンブラからコンパイラまでソフトウェアスタックを丸ごと作るということ。プロセッサーの引き出せる性能を上げるとともに、高い効率で使えるコンパイラ技術を研究した」(中村氏)

中村氏によるとモデル圧縮を採用した場合「精度の維持が難しい」ことに加え「開発者が作ることのできるアプリケーションに制約が出てくる」ことがネックになるそう。Ideinは別のアプローチを取ることで安くても精度を落とさず、なおかつ開発者がより自由にアプリケーションを作りやすい仕組みを整えた。

ユーザーはActcastのSDKを利用すると追加のハードウェアを用意せずともRaspberry Piのみでエッジデバイス向けのアプリケーションを開発することが可能。TensorflowやChainerなど既存のフレームワークで開発したモデルをそのままの精度で動かせる。

また中村氏いわくこの技術ばかりがフォーカスされがちなのだそうだけれど、実はより重要なのが「遠隔からソフトウェアを書き換えられること」だという。

「AI技術のようなものは開発者もユーザーも最初から正確なニーズを掴むのは難しく、やりながらアップデートすることが重要。やればやるほどデータも蓄積され精度が上がるので『1回作りきって現場に設置したら終わり』というやり方では上手くいかない。Actcastでは核となるアプリケーションの遠隔インストールや設定変更機能を始め、エッジコンピューティングシステムを構築しようとする際に必要な『ディープラーニング以外の部分』を一通り揃えている」(中村氏)

正式版ではApp Storeのようなマーケットプレイスの仕組みを

上述した特徴に加え、今後予定している正式版には同社のビジネスのキモとなる「マーケットプレイス」など新しい概念も追加される。

これはApp Storeのような感覚で、ActcastのSDKを使って開発したアプリケーションを売り買いできる仕組みだ。各アプリの価格は1デバイス、1日単位で自由に設定可能。エンドユーザーはミニマムで様々なアプリを試すことができ、ベンダーもいいものを作ればサブスク型のスケーラブルなビジネスを確立するチャンスを手に入れられる。

中村氏によるとエンドユーザー側からは特にリテールやセキュリティ業界からの問い合わせが多いそう。Actcastを上手く使えば従来は受託開発会社などと時間とコストをかけてPoCから取り組んでいたようなプロジェクトも、より安価に最小単位から現場でテストできる。これまでコストなどが理由でAI活用に踏み切れなかった企業や個人にとっても新しい選択肢になるだろう。

このマーケットプレイスはIdeinにとっての収益源でもあり、同社はApp Storeと同様にベンダーから手数料を得る計画。開発用ツールの提供などは無償で行うことで、より多くのベンダーが参加しやすい環境を作っていきたいという。

IdeinではActcastのパートナープログラムも展開中で(現在は24社が参加)、多くのパートナーとの協業を通じて魅力的なプラットフォームサービスの構築を目指すとのことだ。

エッジで安価にディープラーニング活用、Ideinが1.8億円を調達

処理性能が高くないエッジデバイスでディープラーニングを使った画像認識などを実用化する技術を開発するスタートアップ企業のIdein(イデイン)は今日、グローバル・ブレインDG LabファンドからシリーズAラウンドとして合計1億8000万円の資金調達を実施したことを発表した。Ideinは2015年4月の創業で、これまでエンジェル投資家や日本政策金融公庫などから3000万円の資金を得て、受託や研究開発を進めてきた。2016年末には黒字化しているが、「高度センシングデバイス」と、それらを使うためのクラウド側のインフラをSaaSで提供するという狙いでビジネスをスケールさせるという狙いだ。

クラウドではなくエッジでDLを活用

静止画や動画を解析して「そこに何が映っているのか」「何が起こっているのか」を理解するコンピュタービジョンという研究と応用の領域が、ディープラーニングによって近年劇的に性能が向上している、というのは皆さんご存知のとおり。GoogleやAmazon、Microsoft、IBMが次々とAPIを公開して民主化も進んでいる。もう各企業がモデルのトレーニングをしたり、開発者がディープラーニングのライブラリの使い方を学ばなくてもディープラーニングの恩恵を受けることができるようになってきた。

問題は画像を認識する場所だ。

APIベースにしろ、自社でディープラーニングを使うにしろ、今のところ多くの処理はサーバー上(クラウド上)で起こる。サーバー上で認識(推論)するということは、そのための画像データをネットワークで送信する必要があるが、その通信コストは用途によってはペイしないかもしれない。監視系のIoTなんかが、そうした応用の1つだ。

Idein創業者で代表の中村晃一氏は「画像認識APIを呼び続けるよりもエッジデバイスでディープラーニングを使うことで安くできます。普通にクラウドでやると通信コストは月額数十万円になり、これは削りづらいところです」と話す。

認識するのは画像だけではなく、音や加速度といったセンサーも組み合わせる。ポイントはセンサーから入ってきた情報をクラウドに投げるのではなく、エッジ側でディープラーニングを使った処理をしてしまうところ。サイズが小さく構造化したデータをクラウドやサービスに接続することでデータ収集や監視を行うのが狙い、という。

Idein創業者で代表取締役の中村晃一氏

例えばヘルスケアや介護の見守りの領域で応用が可能だ。医療関係の知人から「睡眠時無呼吸症候」の相談を受けて2014年末に試作した電球型のセンシングデバイスで手応えを感じたことが、そもそもの今回の取り組みのスタートという。「実際に3Dプリンターを使って3ヶ月ほどで作ってみたら、デバイスでイベントを取得するというのは他にも需要がありそうだ、これは結構いけるぞと思ったんです」(中村氏)

中村氏をはじめIdeinの11人のチームメンバーは情報科学系の研究者とエンジニア。中村氏は 東京大学情報理工学系研究科コンピューター科学でコンパイラの最適化技術に取り組んだりしていたそう。

Ideinの強みは、汎用のRaspberry Pi上で高速にディープラーニングを使うソフトウェア環境を整えたこと。Ideinが使っているのはプロセッサもソフトウェアも汎用のものだ。Raspberry Piはスマホと似たプロセッサだし、ディープラーニングにはChainerやCaffeといったオープンソースのライブラリを使う。難しいのはRaspberry Pi搭載のGPUであるVideoCore IVを使うために、アセンブラ、コンパイラ、数値計算ライブラリなど一通りのツールチェーンを自分たちで作った部分という。これによって10倍から30倍の高速化となり、以下の動画にあるように、30ドル程度の汎用デバイスでGoogleNet(Googleが配布している画像認識の学習モデル)による認識時間が0.7秒という実用的な速度になっている、という。

戦略としてはライブラリの一部はオープンソースとしていき、むしろソフトウェアのデプロイ(エッジデバイスに配布する)や管理、センシングで得たイベント情報のネット側のつなぎこみの部分で課金をしていくモデルを考えているそう。センサー自体も高度なものである必要がないほか、ソフトウェアのアップデートによって、新しい学習モデルを使った認識機能を増やしていくことができる。例えば顔認識は最初から組み入れつつ、後から顔の方向や表情を取得するといったようなことができるそうだ。