不動産スタートアップのiettyがセンチュリー21・ジャパン、伊藤忠と資本業務提——2.5億円を調達し全国展開へ

左からセンチュリー21・ジャパン代表取締役社長の長田邦裕氏、ietty代表取締役社長の小川泰平氏、同取締役COOの内田孝輔氏、伊藤忠商事 建設物流部門 主任の堀慶太氏

チャットUIを用いたオンライン不動産仲介サービス「ietty」を展開するietty。1月にはチャットUIとAIを用いた接客サービスの導入・運用支援ソリューションの提供を発表した同社だが、今度は全国展開を見据えた第一歩を踏み出した。同社は3月30日、センチュリー21・ジャパンおよび伊藤忠商事との資本業務提携を行ったことを明らかにした。資本提携では、2社を引受先にした総額2億5000万円(センチュリー21が2億円、伊藤忠が5000万円)の第三者割当増資を実施している。

センチュリー21は世界最大級の不動産ネットワークである「センチュリー21」の日本本部として、国内に900店舗のフランチャイズ事業を展開している。不動産各社がそうであるように、同社も不動産テックの領域に挑戦。これまで営業支援向けクラウドの開発やマンションの自動査定システムなどへの投資を進めてきた。AIやビッグデータの活用などを視野に入れていたが、今回の提携もその延長線上にある話だという。今後はiettyが展開するチャットUIによる接客サービスの導入を進めるほか、iettyが研究中だというAIを活用したサービスの展開も視野に入れる。センチュリー21は不動産の売買仲介と賃貸仲介を展開しているが、ビジネスの中心となっているのは売買仲介。今回の提携を契機に賃貸仲介のサービスのテコ入れを図る。

ではiettyとして狙うことは何かというと、サービスの全国展開だ。iettyは現在、首都圏と関西圏のみでサービスを提供している。だがセンチュリー21のフランチャイズ店舗と組むことで、全国へのサービスを提供していく。具体的には、iettyが提供するチャット接客サービスをセンチュリー21が導入。賃貸仲介を希望するユーザーの対応をietty側で行う。そして現地での見学や契約については各地にあるセンチュリー21のフランチャイズ店舗が対応するというスキームを展開する予定だ。「東京や大阪でのiettyのサービスは順調。今度は面を増やしていきたいが、現地で拠点を構えて、採用して、というのはスタートアップ単体では難しい。iettyのコアコンピタンスはチャットUIを通じたオンラインでの接客業。一方で足回りはコストがかかるので、誰かと組む必要があった」(ietty代表取締役社長の小川泰平氏)

なおこのチャット接客事業、IDOMに次いで大手家具ECやスポーツ系ECなどからも問い合わせが来ており、今春にも1社導入が開始される予定だという。
iettyでは、賃貸物件の独自データベースの構築も検討中だという。「iettyは(チャットUIで得たビッグデータという)不動産の評価データをためることができる。それを元に、物件に対するフィードバックが可能なデータベースを1年がかりで作ろうとしている。『物件が埋まらない』と話す大家に対して、どんな理由があるかをフィードバックできるようになる。センチュリー21には『21クラウド』と呼ぶ独自の物件データベースもあるので、繋ぎ込みもしていきたい。賃貸仲介は価格競争になりがち。だが、この領域のトランザクションを押さえて上の領域、つまり不動産の管理や売買仲介などにも挑戦していきたい」(小川氏)

 

オンライン不動産のietty、「チャットコマース」の運用、導入サービスを開始——来店者数2倍の実績も

ietty代表取締役社長の小川泰平氏(左)と取締役COOの内田孝輔氏

ietty代表取締役社長の小川泰平氏(左)と取締役COOの内田孝輔氏

2016年、IT業界で話題になったテーマの1つに「チャットボット」がある。LINEやFacebook Messangerでおなじみのチャット型のUIと、人工知能(と人力)による会話を組み合わせることで、ユーザーはまるでリアルに対話しているのと同じように語りながら、目的のアイテムを検索したり購入したりできるなんて話だ。LINEやfacebookなどがAPIを公開したことも、このテーマが注目を集めるきっかけとなった。「ボット」ということで人工知能とセットで語られることも多いが、このチャットUI自体が、短いテキストでやり取りするスマートフォンのコミュニケーションと相性が良く、ユーザーがコミュニケーションを通じて目的にたどり着きやすくなるという話も聞くことも多い。

そんなチャットボット、チャット型のUIを実際の事業に使っている国内スタートアップとして名前が挙がることが多いのが、オンライン不動産仲介サービス「ietty」を展開するiettyだ。同社は2012年2月の設立以降、ユーザーが望む不動産物件の条件をあらかじめ入力しておき、それにマッチする物件をサービス側(人力およびAI)がチャット上で提案、ユーザーとの会話によって部屋決めができるというサービスを展開してきた。当時はそんな言葉すらなかったが、まさに「チャットボット」をセールスに使ったサービスだ。同社によると、現在月間数百人がiettyのチャットUIを通じて賃貸仲介物件を契約しているという。

そんなiettyは1月16日、これまでのノウハウを生かして、チャット型の接客サービスの導入および運用支援ソリューションの提供を開始することを明らかにした。このサービスでは、会話型コマースの導入に向けた自社サービスの調査から、運用プロセスの設計、チャットの導入、運用までをiettyがワンストップで行う。料金は応相談となっているが、数千万円規模のフルパッケージを提案するだけでなく、数百万円で導入検証を行う試験的なプランも想定しているという。

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また、今回のソリューション提供に先駆けてiettyの管理システムを強化。今回のソリューション事業でクライアントに提供していくと同時に、不動産業界以外のノウハウも蓄積していき、クラウド型のサービスとして単体で展開することも検討しているという。

「これまで、コールセンター業務を行う会社などがカスタマーサポートのアウトソーシング事業を展開してきたが、我々はチャットを通じてカスタマーサポートではなく、セールスを行うことができる。すでに実績を上げているし、チャットボットが万能ではないことも知っている」(ietty代表取締役社長の小川泰平氏)。「カスタマーサポートにチャットを導入すると、質問には答えるが、営業ができない。我々は営業組織としてのマネジメント体制を作ってきた。会話型サービスの成果が上がっていない、導入したいけど分からない、そういった人達に、まずは小さくPDCAを回すところから提案していく」(ソリューション事業を担当するietty取締役COOの内田孝輔氏)

すでに第1号案件として中古車販売・買取の「ガリバー」を運営するIDOMとの取り組みがスタートしているが、来店アポイントに繋がった登録ユーザーが2週間で倍近くになったという好事例も出ているという。

もちろんiettyでは既存の不動産仲介事業は継続して展開していくとのことだが、ソリューション事業では、将来的カスタマーサポートセンターならぬ、チャットセンターを立ち上げることも計画中だという。その人員確保には、2016年5月に資本業務提携を行った人材会社のプロスとも協力していく。

IDOMの事例。画面右側にあるチャットを通じて、来店者数が2倍になったという

不動産スタートアップのiettyが東大とチャットAIの共同研究、人材会社との資本業務提携も

ietty代表取締役の小川泰平氏

ietty代表取締役の小川泰平氏

「最近チャットボットやチャットUIに関する話題が多いが、チャットを用いたサービスでもっとも実績のあるスタートアップは我々ではないだろうか」——そう語るのは不動産スタートアップのiettyだ。同社は5月13日、東京大学大学院 情報理工学系研究科電子情報学専攻・山崎研究室(山崎研究室)と共同での研究・サービス開発と、総合人材サービスを手がけるプロスとの資本業務提携を発表した。

iettyが提供するのは、オンライン接客型不動産仲介サービスの「ietty」だ。会員登録をし、希望の部屋の条件を登録すると、チャットを介してiettyから条件にマッチする物件の情報が送られてくる。ユーザーはその物件情報に興味を持ったかどうかを評価し、別の物件情報の提供を求めたり、内見の予約をしたりできる。

2015年10月に資金調達を発表した際、ietty代表取締役の小川泰平氏は「AIを使った物件紹介を試験的に開始している」と話していた。現状ではユーザーが希望する賃料や間取り、最寄り駅などの条件をフックにして物件を提案するようなものだそうだが、これを今回の山崎研究室との取り組みで本格化させる。「年内にも何かしらの結果を発表したい」(小川氏)

iettyでは提供された物件情報を評価できる

iettyでは提供された物件情報を評価できる

iettyでは現在、1日約5万件の物件情報をユーザーに配信しており、その半数にユーザーからの評価が付けられているのだという。ユーザー属性、物件情報、物件の評価情報、これらのデータを掛け合わせて分析することで、ビッグデータからユーザーに最適な物件を提案する仕組みを作れないか、という話だ。「今までの不動産仲介業は、ユーザーの希望条件に合わせて営業マンが『プロの勘』で物件情報を提供してきたが、データをもとにより最適な物件情報を提供できるようにしたい」(小川氏)

この施策の背景には、最近のチャットUI、チャットボットというトレンドへの警戒心があるようだ。もちろん店舗型の不動産仲介業者がいきなりチャット形式でオンライン仲介に参入、という話ではないかも知れないが、FacebookやLINEがプラットフォームを開放すれば、仲介業者は極論誰でもオンライン接客を行うことができるようになる。それに対して先行者としてサービスを展開するiettyでは、AIを使って業務を自動化しつつ、少ないリソースで多くの顧客に対応できる仕組みを作ろうとしている。

またこれに加えて、今回資本業務提携(資金調達については金額非公開だが、業務提携の意味合いが強く、少額だとしている)したプロスから内見対応を行う営業マンを派遣することで、リアルなオペレーション部分のリソースを確保する。不動産業界は繁忙期と閑散期の差が大きい。営業リソースを固定費にするのではなく、人材派遣で変動費化することにより、閑散期のコストを削減する狙いだ。

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同社は繁忙期である3月に単月黒字化を達成。ユーザー登録も月間6000〜7000人ペースで増えているという。「2年後にもネットでの不動産仲介が解禁される動きがあるが、まずはそこでナンバーワンになりたい。ただし賃貸不動産は入り口に過ぎない。管理や売買の市場を見ると60兆円の世界。不動産デベロッパー出身なので、その領域でビジネスを描いていきたい」(小川氏)

今後はLINEやFacebookなど各種メッセンジャープラットフォームにもサービスを対応させるほか(LINEについてはLINE@でサービスを試験運用しているが、実はアクセスの4分の1がLINE経由だそう)、大阪や神奈川でのサービスも開始する予定。

リアル店舗でおもてなし、アプリで住まいのサポート–お部屋探されサイトiettyの新展開

東京・恵比寿のリアル店舗

 

ユーザーが希望条件をあらかじめ入力しておけば、不動産会社のスタッフから条件に合う賃貸情報がチャット形式で提供される、お部屋“探され”サイトの「ietty」。サービスを手がけるiettyがリアル店舗を軸にさまざまなサービスの展開をはじめた。

店舗は2月26日には東京・恵比寿に正式オープン。ウェブサイトやスマートフォンアプリ同様に賃貸情報を提供するだけでなく、不動産業経験者を中心にしたiettyスタッフがオフィス賃貸や不動産売買、リフォームといった賃貸以外のニーズにも対応していく。

「リアル店舗は『オフラインの相談窓口』という意味合いが大きい。我々は不動産のプラットフォーマーになりたいと思っている。例えば単身で賃貸に住んでいた人が結婚して広い賃貸に移り、さらに戸建てを買うといったように、ライフステージが変化していくユーザーのニーズに対して、継続的に応えていける事業者はあまりいない」(ietty代表取締役の小川泰平氏)。

「ietty トータルサポート」のイメージ

 

そうは言っても、ライフタイムイベントなんて数年に一度あるかないかというペースなのが普通だし、ユーザーと継続的な関係性を持つことができないのではないかとも思う。そこでiettyでは、「今後は例えばユーザーが引っ越しすれば、それに付随するような作業やトラブル対応の支援をしていく」(小川氏)のだという。

それが3月5日に発表された「ietty トータルサポート」だ。ietty経由で物件への入居を決めたユーザーに対して、スマホアプリ上で家賃や初期費用の相談から、設備トラブル、退去時の引っ越し手配までをチャットでサポートするという。

また店舗では、3月4日より月額15 万円以上の賃貸物件のほか、住宅売買やオフィス賃貸を希望するユーザーに対して特別なプランを提供する「ietty 大人の部屋探し」をスタートした。

このサービスでは、完全個室での接客、ウェルカムドリンクの提供、50インチのモニタを使った物件紹介、店舗から帰る際には同社負担でUberを配車(都内23区限定)といった、ちょっとゴージャスなおもてなしを提供するのだとか。


お部屋”探され”サイト運営のietty、YJキャピタルとインキュベイトファンドから約2億円の資金調達

不動産ポータルサイト「ietty」を運営するiettyが、YJキャピタルとインキュベイトキャンプから総額約2億円の資金調達を実施した。また今回の調達にあわせて、YJキャピタル代表取締役の小澤隆生氏とインキュベイトファンド代表パートナーの和田圭祐氏が社外取締役に就任している。同社はインキュベイトファンドのインキュベーションプログラムでの最優秀賞獲得を契機にサービスをスタートした。2013年10月にはアイ・マーキュリーキャピタルから約5000万円の資金調達を行っている。

iettyは“お部屋探されサイト”をうたう不動産ポータルサイトだ。賃貸物件を探すユーザーがFacebookアカウントでログインし、引っ越しの希望条件を入力すると、その条件に合わせてiettyのパートナーである不動産業者がユーザーに物件を提案してくれるというもの。ユーザーはサイト上のチャットでやりとりしながら物件を探して、内覧の予約や業者への来店の調整ができる。

これまでの不動産ポータルサイトではユーザーが自ら物件を探す必要があったが、iettyでは不動産業者が提案をしてくれる。まさに「お部屋探し」でなく「お部屋探され」なのだ。またietty代表取締役社長の小川泰平氏いわく、業者が自ら物件を紹介してくれるということで、釣り物件——すなわち好条件なためにユーザーの集客に使われるが、実際には存在しない、もしくは契約が埋まっているような物件——が存在しない。今すぐ内覧できる物件だけを紹介してもらえるというメリットがある。現在会員登録は月次1000人ペースで増加。1人が4〜5人ほどの業者から物件の紹介を受けており、20〜30%が実際に来店するという。

また最近では、5月にリリースした法人向けサービス「ietty Biz」が好調だそうだ。このietty Bizは、法人の福利厚生サービスとして提供しているもので、サービスを導入する法人の従業員であれば、ietty経由で部屋を契約した際に仲介手数料の半額保証(0.5ヶ月分以下)をしてくれるというもの。

法人には費用が一切発生しないことに加えて、iettyがサービスを展開する東京都内には、「オフィスから2駅以内に住む場合に家賃を補助する」といったルールを持つ、比較的若いIT企業が多いことから非常にウケがいいそうだ。福利厚生サービスの一環として法人に提案するため、導入時には総務担当者などを通じて一度に数百人〜数千人の従業員に情報が共有されることもあってか成約率も高い。現在このサービスは約40社が導入している。手数料半額保証ということで1件あたりの売上は落ちるが、広告出稿などもせずに良質な見込み客が獲得できているということか。

こういった状況もあって、iettyでは2015年はじめにも黒字化が見えている。「レバレッジの効く事業でもないので泥臭いことをやってきたが、既存事業についてはこのまま突っ走っていけばいい様な状況が見えてきた」(小川氏)。そして更なる飛躍に向けて、今回の資金調達をふまえて新機能の開発を進めるという。その詳細については取材では明らかにされなかったが、2015年初にもサイトリニューアルし、新機能もお披露目される予定だ。加えて、政令指定都市を中心に、サービスエリアを拡大するとしている。

なおiettyは2013年11月に開催した「TechCrunch Tokyo 2013」内で行われたスタートアップ向けのプレゼンコンテスト「スタートアップバトル」にも登壇してくれた。TechCrunch Tokyoは2014年も開催予定なので、同社のような元気なスタートアップとの出会いに興味がある方は是非とも遊びに来て欲しい。