産業用ロボット大手ファナックがAI利用でオートメーションをオートメーションする

工場等の製造工程はオートメーションによってすでに相当合理化されているが、しかしそれらのマシンは有能な技術者が苦労して訓練しなければならない。産業用ロボットの大手ファナックは、ロボットをもっと訓練しやすくして、オートメーションを製薬などより幅広い産業が利用できるものにしたい、と考えている。同社は米国時間4月18日に行われたTechCrunchのイベント「Robotics + AI Sessions」で、人工知能を利用する新しいツールを発表した。それは、簡単なアノテーションとセンサー技術によりロボットに容器から正しいオブジェクトを取り出すよう教え、訓練工程を従来より数時間も短縮する。

Bin-picking(ビンピッキング、より単純にはピッキング)はその名のとおり、ロボットアームを容器(bin)から正しい品物を取り出せるよう訓練して、一括注文した部品を正しく選り分けるなどの面倒で時間のかかる仕事をやらせる。そのために部品のサンプルを写真に撮り、ロボットが視覚センサーで目の前の部品とマッチできるようにする。従来のビンピッキングロボットの訓練では、正しいパーツを取り出せるようにたくさんのルールを教えなければならない。

ファナックのロボット事業本部本部長の稲葉清典博士はこう語る。「以前はそのためのルールを作るために大量の試行錯誤ややり直しが必要で時間もかかり、とても面倒だった」。

たとえば積まれた部品の山を見て、そこに目的の部品を見つけるためのルールがある。あるいはその中でいちばん目立つもの、目立つという概念を教えなければならない。エラーを犯したら人間オペレーターがそのことをロボットに教え、訓練をやり直す。オートメーションを導入してまだ日の浅い産業では、ロボットを訓練するための技術者やオペレーターを確保することが難しい。

そしてそこに、ファナックの新しいAIベースのツールが登場して、訓練工程を単純化する。人間オペレーターは容器に乱雑に放り込まれているパーツの写真を見て、ロボットに取り出させたいパーツの例を画面上でタップする。それは、幼児におもちゃの片付け方を教えるのに似ている。これは通常のAIベースの視覚センサーを訓練する場合に比べてかなり短時間で済み、同時に複数のロボットを訓練できる。

稲葉氏はこう語る。「人間が物を動かすときと同じやり方をロボットに人間オペレーターが教えるのは、きわめて難しい。しかしAIを利用すれば、従来のやり方よりももっと直観的にロボットに教えることができる」。彼によると、この技術はまだ初期的な段階なので、実際に工場の組立ラインで使えるようになるためには、さらなる研究開発が必要、という。

画像クレジット: Bloomberg/Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

製造業の自己革新を懸けてSiemensが$100MのVCファンドを創設

ヨーロッパ最大のエンジニアリング企業Siemensの投資部門Siemens Venture Capitalが、このたび新たに1億ドルのファンドを立ち上げた。このファンドの投資目的は、オートメーションの新しいやり方など製造業に革命と革新をもたらすデジタル技術を追究する若い草創期のスタートアップの育成だ。同社は過去二か月ですでに、3D視覚化のLagoaと、次世代のサイバーセキュリティソフトを作るCounterTackの二社に投資を行っている。

既存企業系のベンチャーキャピタルはこれまで、“鈍い”と評されることが多かったが、本誌TechCrunchの昨年11月の記事にも見られるように、最近では専業VCと変わらぬ鋭敏な動きを見せるところもある。事実、2013年10月には48件のVC投資ラウンドが総額7億1900万ドルの投資を行い、しかもその14%がCVC(corporate venture capital, 企業のベンチャーキャピタル)からの出資だった。CrunchBaseのデータによると、それはCVCの参加率が昨年で最高の月だった。

SiemensやGEなどのエンジニアリングと製造業のコングロマリットは、自分たちのデバイスやマシンが捉えたデータやインサイトを有効利用したいと考えている。またインターネットとそのほかのデジタル技術を組み合わせた新しい製造技術をGEらは“Industrial Internet”(産業インターネット)と呼んでいる。The New York Timesの昨年11月の記事は、これまでの古いエンジニアリングとソフトウェアによる新しいソリューションが、明確に区別されるというよりむしろ、今では両者が融合しつつある、と述べている。とくにその傾向を顕著に裏書するのが、“物のインターネット(Internet of Things, IoT)”と呼ばれる新しいネットワーキング技術の勃興だ。それにより、極論すれば、Generl ElectricもGoogleもある面では共にソフトウェアを基盤とする物作り企業となり、両社の業態が見かけ上同じになってしまうのだ。

Siemensの企業~産業界向け部門Siemens Industry SectorのCEO Siegfried Russwurmは、次のように述べている: “製造業の企業がグローバルなマーケットプレースで競争するためには、今やデジタル化とソフトウェアがますます重要だ。今回のファンドは、Siemensの“Industrie 4.0”(第四次産業革命)戦略の一環として、製造業と産業の自動化のあり方を変える可能性のある、革新的な技術とビジョンに資本を提供していく”。

同社の声明文によると、この新たなファンドは創生初期のスタートアップ企業を支援し、彼らとのパートナーシップを育むことによって、彼らの新しい技術により、長期的には既存市場の変革と、まったく新しい市場の創造を喚起していく。

今Siemensに、このファンドに関するより詳しい情報を求めているので、得られ次第この記事を更新したい。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))