垂直農法スタートアップInfarmがカタールに果物の栽培センターを計画

欧州の垂直農法企業であるInfarm(インファーム)は今週、シリーズDラウンドで2億ドル(227億円)を調達したことを発表した。カタール投資庁(QIA)の主導した今回のラウンドは、2020年の1億7000万ドル(約193億円)の資金調達に続くもので、これにより社の資金調達総額は6億ドル(約680億円)を超えた。評価額も10億ドル(1134億円)を「大きく」超え、欧州初の垂直農法ユニコーン企業としての地位を確立している。

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「気候変動に強い垂直農法でグローバルな農業ネットワークを構築することは、Infarmの中核的な使命です。だからこそ、今回の資金調達を発表できることに私たちは興奮しています」と、共同創業者兼CEOのErez Galonska(エレツ・ガロンスカ)氏はリリースの中で述べている。「今回の戦略的な投資は、当社の急速なグローバル展開を支え、研究開発を強化するものです。それによって私たちは、欧州、アジア、北米、中東の消費者の近くで、より多くの種類の作物を栽培できるようになります。それは、近い将来、果物と野菜のバスケット全体を栽培し、高品質な生産物を手頃な価格ですべての人に提供するという当社の野望を達成するための新たな一歩です」。

今回調達した資金の多くは、米国、カナダ、日本、欧州などを視野に入れたInfarmの国際的な事業拡張計画に充てられる。また、同社はアジア太平洋地域や中東へのさらなる拡大も予定している。

QIAが今回のラウンドに参加したことが、後者の大きな原動力になることは間違いない。今回の提携の一環として、同社はカタールにトマトやイチゴなどの果物を栽培するための栽培センターを設立する計画を発表した。制御された屋内環境で比較的容易に栽培できることから、これまで主流であった葉物野菜やハーブの栽培からの脱却を目指している多くの垂直農法企業にとって、果物は強力な後押しとなっている。

「責任ある長期投資家として、QIAの目的は将来の世代のために価値を創造することです。私たちは、垂直農法を、世界のあらゆる地域の食糧安全保障を向上させる手段であると考えています」と、QIAのMansoor bin Ebrahim Al-Mahmoud(マンスール・ビン・エブラヒム・アル・マフムード)氏は、同じリリースで述べている。「私たちは、Infarmと協力してカタールに同社初の栽培センターを開発し、カタールの食糧安全保障と経済の多様化に貢献できることを楽しみにしています」。

垂直農法は確かにこの地域にとって理に適っている。生産者は、標準的な農法よりもはるかに少ない水で、気候制御された建物内で作物を生産する能力を得られるからだ。2018年には、Crop One(コープ・ワン)が、UAEに13万平方フィートの農業施設を開設すると発表している。もちろん今後、このような懸念は、1つの地域に留まるものではなくなるだろう。

画像クレジット:Infarm

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)