SF作家テッド・チャンの『商人と錬金術師の門』を読む

もし、自分の過去や未来を訪れることができたら、われわれは何をするだろうか? 自分のタイムラインを書き換えるのだろうか? それとも、実際にはタイムラインがわれわれをもっと強く方向づけるだろうか。

これは非公式TechCrunchブッククラブベータテストで、最初のディスカッション投稿である。最初の題材はテッド・チャンのSF短編コレクション『息吹』(Exhalation)。今後もさまざまなテクノロジーとその社会に与える影響について広く探求していくのでお楽しみに。

コレクションで最初に収録されている作品は『商人と錬金術師の門』[The Merchant and the Alchemist’s Gate ]。特定の間隔で時間を前後に移動できる「門」について書かれた物語だ。チャン氏はおなじみのタイムトラベルマシンを題材にして、人間が自分の命や自分が影響を与える命をどう考えるかについて深く内省するために、タイムトラベルマシンをこれまでとは違う扱いにしている。

この第一週では、私や読者が詳しい感想を述べる前に、内容に関する質問をいくつか紹介する。読者の感想は danny+bookclub@techcrunch.comにメールして、下のコメント欄にも書いて欲しい。RedditやTwitterのいくつかのコミュニティーでもすでに議論が始まっている。

友人でExtra Crunchの寄稿者でもあるEliot Peper(エリオット・ペッパー)氏が、作品の核心と彼が考える一節、そして自身の感想を書いてくれた。

「過去と未来は同じでありどちらも変えることはできない。もっとよく知ることができるだけだ。私の過去への旅は何も変えることがなかったが、そこで知ったことはすべてを変え、それ以外ではあり得なかったことを理解した。もしわれわれの命がアラーの書いた物語の数々であるなら、われわれは観衆であると同時に俳優であり、その物語を生きることによって教訓を得ることができる」

この一節に私は深く共感した。なぜなら私がチャンのSFを愛読する理由のひとつを示唆しているからだ。未来を垣間見るのではなく、現在をより深く、新鮮な角度から観察する。その中で教訓を得る。

来週、米国時間1月21日に、この短編に関する詳細な感想とともに、2番目の短編で表題作の『息吹』についても同様の読書ガイドをお送りする予定だ。

『商人と錬金術師の門』について、読者から寄せられた質問をいくつか掲載する。

  • チャン氏は運命の意味をどう伝えようととしているのか? われわれは本当に「観衆であると同時に俳優」なのか?
  • わたしたちの命の代理店は存在するのか? 自らの行動で未来に影響を与えることなど本当にできるのだろうか?
  • 自分たちに起きていることをどのように観察すべきなのか? 起きていることをよく考えることは、理解と満足をもたらすのに十分なのか、それとも満足感を得るためにはすべての結果に利害関係をもつ必要があるのか?
  • チャン氏はなぜこの時代と背景(歴史上のバグダッド)をこの短編の舞台に選んだのか?
  • 同じく、なぜ彼はこの短い物語に3つの話を盛り込んだのか? この手法はわれわれ読者になにをもたらすのか?
  • 新たなテクノロジーをどう受け入れるかに関して、門の存在はなにを示唆しているのか? そんな驚きの道具がこれほど簡単に受け入れられることは信じられるのか?
  • この門は中立なのか? 善や悪のために使われることはあるのか、それともユーザー自身に依存するのか?

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook