NASAが火星ヘリコプターの任務を9月まで延長

火星で多忙な1年を過ごしたNASAのヘリコプター「Ingenuity(インジェニュイティ、創意工夫という意味)」だが、今後もその勢いが衰えることはなさそうだ。21回の飛行を行った後も、依然として機体は良好な状態にあるため、NASAはその任務を少なくとも9月まで延長することにした。

Ingenuityは2021年2月18日に、NASAの探査車「Perseverance(パーサヴィアランス、忍耐という意味)」とともに赤い惑星に到着した。その元々のミッションは、単に火星の薄い大気圏でヘリコプターを飛ばす能力を実証することだった。3回の飛行でその技術を証明し、地球以外の惑星における初の動力飛行を達成した後、NASAはIngenuityを運用モードに移行させ、さらに2回の飛行を行った。以来、このヘリコプターは16回の飛行を行い、その能力をさらに試しながら、PerseveranceがJezero(ジェゼロ)クレーターを運航するのを支援した。しかし、今は新しいミッションに取り掛かっている。ジェゼロ川の三角州の探索だ。

「ジェゼロ川の三角州探査は、火星における初飛行以来、Ingenuityチームが直面する最大の挑戦となるでしょう」と、NASAジェット推進研究所のIngenuityチーム責任者を務めるTeddy Tzanetosの(テディ・ツァネトス)はプレスリリースで述べている。

この地域は、IngenuityとPerseveranceの両方にとって危険な場所だ。「ギザギザの崖、角度のある地面、突き出た巨礫、砂で満ちたポケット」がたくさんあり、探査車の進路を止めたり、着陸時にヘリコプターをひっくり返す」可能性があると、リリースには述べられている。しかし、これはIngenuityがその偵察能力を証明する大きな機会だ。このヘリコプターによる観測は、Perseveranceがこれから進むべきルートに影響を与えるだけでなく、火星に微生物が生息していた証拠を探し、やがて地球に持ち帰ることができるコアサンプルを採取するという科学ミッションにも関わってくる。さらに、Ingenuityの飛行で得られたデータは、次世代の火星探査機の設計に活かされるだろう。

「1年近く前には、火星での動力制御飛行が可能かどうかさえ、私たちにはわかりませんでした」と、NASAの科学ミッション本部のThomas Zurbuchen(トーマス・ズルブチェン)副本部長は述べている。「今、私たちはIngenuityがPerseveranceの2回目の科学研究活動に参加することを楽しみにしています」。

Ingenuityは現在、当初の飛行区域からSéítah(セイタ)と呼ばれる地域を横断し、それからジェゼロ川の三角州を探索するするために、少なくとも3回は必要なフライトの1回目を終えたところだ。次のフライトはいつになるか、現時点では未定となっている。

「私にとって今度のフライトは、我々の運航日誌への22回目の書き込みとなります」と、NASAジェット推進研究所のチーフパイロットであるHåvard Grip(ホーバード・グリップ)氏は、プレスリリースで語っている。「最初にこのプロジェクトが始まった時、3回も飛べたらラッキー、5回も飛べたら大変な幸運だと思ったのを覚えています。この調子でいけば、2冊目の日誌が必要になりそうです」。

おそらく、NASAはそれほど驚いていないだろう。同航空宇宙局の火星探査機はすべて、当初のミッション期間を大幅に上回る驚異的な寿命を備えている。時にそれは火星の周期で数千日分にもなるほどだ。Ingenuityもそれに倣っているのは当然のことだ。

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech

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(文:Stefanie Waldek、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

NASAの火星を飛ぶヘリコプター「インジェニュイティー」はクアルコム「Snapdragon 801」搭載

NASAの火星を飛ぶヘリコプター「インジェニュイティー」はクアルコム「Snapdragon 801」搭載

NASA/JPL-Caltech

日本時間2月19日朝に火星へ着陸したNASAの火星探査車「パーセペランス」。同探査車は史上初めて地球以外の惑星を飛行するヘリコプター「インジュニュイティ」を搭載しています。

同ヘリコプターについてクアルコムは、主にスマートフォンに使われる同社製のSnapdragonプロセッサーを内蔵した「Qualcomm Flight Platform」を搭載していると明らかにしました。

この「Qualcomm Flight Platform」は自律飛行を念頭に開発されたドローン用の基板で、Xperia Z3など2014年の上位スマートフォンに広く採用されたSoCの「Snapdragon 801」プロセッサーを搭載。このほか、4K動画撮影やナビゲーション、飛行支援といったドローン向けの各種機能を、小型で耐久性の高いパッケージにまとめています。

発表によると、地球と火星間は、それぞれの公転軌道上の位置に応じて電波でも片道3〜22分かかることから、地球からヘリコプターをリアルタイムで遠隔操縦することは困難で、自律的に飛行する能力が求められます。また、極寒となる火星の夜から機器を保護すべく、ヘリコプターの電力の多くは保温ヒーターに配分されるため、消費電力の低さも重要となります。加えて、火星の強い放射線や変動の大きい大気にも耐える必要があります。

こうした条件を満たすため、NASAジェット推進研究所が検討した結果、クアルコムの「Qualcomm Flight Platform」が火星での飛行に必要な条件を満たすと判断されたとしています。

また、ヘリコプターだけでなく、母艦となる火星探査車の通信システムも「Qualcomm Flight Platform」を採用しており、探査車とヘリコプターが撮影した画像や映像を地球に送信します。

クアルコムの半導体はスマートフォンやオーディオ・PC・IoT・モビリティなどさまざまな領域に進出していますが、今回宇宙にも活躍の舞台が広がった格好です。

(Source:クアルコムEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:宇宙
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