良いことも悪いことも人のリアルな経験が反映されるソーシャルネットワークを目指すInpathy

ソーシャルメディアがメンタルヘルス、特に10代の若者のメンタルヘルスに与える悪影響については、数え切れないほどの研究がなされている。

しかし、私たちの多くはSNSをやめることができない。たとえそれが自分自身に悪影響であっても。

Facebook(フェイスブック)やInstagram(インスタグラム)に投稿されるハイライト映像と自分の人生を常に比較することは、ばかばかしいほどに偏っている。というのも、これらのプラットフォームのユーザーの大半は、自分のありのままの写真を投稿したり、悲しいニュースや悪いニュースを他人と共有したりしないからだ。

そこに、新しい「健康な」タイプのソーシャルネットワークInpathy(インパシー)が登場した。Ziarekenya Smith(ジアレケンヤ・スミス)氏は「ソーシャルメディアを透明化し、気分を正常化し、人間の経験を再現する」ことで、人々のソーシャルメディアの利用方法に革命を起こすというミッションを掲げ、2015年に同社を設立した。最終的な目標は、ソーシャルネットワークの世界により多くのウェルネスをもたらすことだ。

スミス氏は、デジタルアートとデザインの分野でキャリアをスタートさせた。初期の成功にもかかわらず、彼はその仕事が期待していたほど個人的に充実しているとは感じなかった。不安や抑うつの症状を感じるようになり、その気持ちをソーシャルメディアで表現したいと思うようになった。しかし、彼はそれを止めた。

「社会の不文律では、完璧でなければ、人生について話してはいけないことになっています」。とスミス氏は振り返る。「だから、私は自分の気持ちを胸にしまっておいたのです。しかし、私は自分自身に問いかけました。なぜそうなのか?」。

デトロイトを拠点とするInpathyのコンセプトは、彼が感じた痛みと葛藤、そして、現在のソーシャルメディアの構造は、長期的には持続可能ではないというスミス氏の信念から生まれた。

「お金を稼ぐにはいいけれど、本当の意味での人間の幸福には向いていません」スミス氏はTechCrunchの取材に対し語った。「私の目には、その核となっている部分を修正しなければならないと思えたのです」。

Inpathyは、完璧さだけではなく、よりバランスのとれた人生経験を提供することを目指している。良いことも、そうでないことも、悪いことも、自分の生の感情を共有する場を提供することを目指している。

「誰にでも浮き沈みはあります。その浮き沈みのタイムラインを見れば、その人の成長をより感謝することができます」とスミス氏はいう。「私たちはみんな、負け犬の物語が好きなのです」。

Inpathyのユーザーは、自分のストーリーやコンテンツを写真や文字ではなく、音声や動画で共有し、スミス氏が望む没入感のある体験を提供する。

Inpathyは、ユーザーに気分を尋ね、その気分の尺度が「怒り」「悲しみ」「喜び」といった気分でフィルターをかけられる他のユーザーにも見えるようになっている。

「私たちは感情を正常化し、透明なシステムを作りたいのです」とスミス氏はいう。「私たちが同じ土俵に立つためには、透明でなければなりません。そうすると、人々は『これは私だけのことではない。これが普通なんだ』と気づくことができます」。

フォローボタンや追加ボタンはない。Inpathyでは双方向のコミュニケーションが可能で、ユーザーは「友達」になることができる。

「私たちはロボットではありません。お金持ちだろうが、貧乏だろうが、地位に関係なく喜びや苦しみを感じるものです」とスミス氏は語る。「これが人間というものです。Inpathyは、人間であることがOKだと示すのです」。

このサイトでは、荒らしやいじめに対しては厳しく、それらを生涯にわたって禁止している。誰かがInpathyで何かを共有する勇気を出した後に、荒らしにあって、再び心を開くのが怖くなるということを考えて、この方針が決まった。

画像クレジット:Inpathy

今のところ、スミス氏はクラウドファンディングで資金を調達し、適切な投資家を見つけるまでは、基本的に自力で運営しています。

「私たちは、投資家に好印象を与えるためだけに機能を追加しなければならないような立場にはなりたくありません」と彼はいう。「ビジョンは非常に重要です」。

「今、ソーシャルメディアの状況を見てみると、テレビはYouTube(ユーチューブ)、短編動画はTikTok(ティックトック)、写真はInstagram(インスタグラム)、ニュースやトレンドはTwitter(ツイッター)、エンターテインメントはFacebook(フェイスブック)、ビジネスはLinkedIn(リンクドイン)、瞑想はHeadspace(ヘッドスペース)、デートはTinder(ティンダー)を使っています」とスミス氏は付け加える。「しかし、生の体験やただ自分自身でいるために、どこに行きますか?」。

スミス氏が思うようにいけば、Inpathyに。

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画像クレジット:Founder Ziarekenya Smith / Inpathy

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Yuta Kaminishi)