シリコンバレーの外にスタートアップエコシステムを作ること

先日、ヨーロッパのスタートアップがシリコンバレーで資金を調達するべきではない理由という記事を紹介しましたが、ではシリコンバレー以外でスタートアップシーン、時にエコシステムとして機能する環境をつくることは可能なのでしょうか?カナダのモントリオールで起業家兼投資家として活躍する筆者が自身の経験を踏まえた記事ですが、まさにそんなエコシステムを作ろうと頑張っている東京を中心とした日本にとっても気づきがある内容の記事。 — SEO Japan

ここしばらく、スタートアップコミュニティを築くことに関わってきた。モントリオールでは、起業家の朝食イベントを始めたし、NextMontrealをローンチし、スタートアップ/創設者にアドバイスすることに時間を費やしたし、イベントで話したりもした。それはとても楽しかったが、相当な仕事量だった。そして今、私はHalifaxにいる。今も色んなことをやっているが、そのアプローチは異なる。最近では、個人により焦点を合わせ、成功するために必要な条件を持っていそうな人を探して、彼らに倍掛けするのだ。それは、何よりもまずスタートアップの成功によってスタートアップエコシステムは成功するのだという信念に基づいた、より個人を中心としたアプローチだ。スタートアップ―実際には、創設者/起業家―が、全ての中核なのだ。

起業家はたくさんのサポートを必要としている。それこそが、コミュニティが大きな役割を果たす場所だ。そして、Halifaxではいくつか素晴らしい活動を目にしている。幸運にも、まだ私は、真の成長にしばしば伴う数多くの馬鹿げた虚勢は目にしていない。(Halifaxを“北のシリコンバレー”だと宣言した人はまだいないのだ…少なくとも私の前では。)

最近、ケンタッキー州Louisvilleに行って、リーンアナリティクスと起業家精神について話した。私はその街をほとんど見ることはなかったが、たくさんの人に出会った。とてもフレンドリーで、とても活気があって、この地域の優れたスタートアップをサポートするために尽くしている人達だ。あるプレゼンテーションで、私は、シリコンバレーの外にスタートアップエコシステムを作るために必要なことについて話をした。そのプレゼンテーションは、以下に埋め込んである。

私が共有した多くのアイディアが、Louisvilleや他の場所で起こっている。それは良いことだ。

大部分の起業家は、今いる場所が自分のスタートアップを経営するのに相応しい場所だからそこにいるわけではない(シリコンバレーやニューヨークやその他いくつかの場所以外は)。

彼らがそこにいるのは、彼女や彼氏やパートナー、家族やその他無関係なこと(でもとても重要なこと!)が理由だ。それはそれでよい。その事実を受け入れ、起業家をサポートし彼らを成功させるために、自分の地域で自分にできる最大限のことをするのだ。世界の中で自分のいる小さな場所がスタートアップを築くのに最高の場所であるかのようなふりをしないこと…それは違うのだ。

このプレゼンテーションを見ると、私が“人を引き止めないこと”を提案しているのが分かる。それは、自分の街や地域に人を地理的に結び付けておこうと図らないことに関連している。私はいつも、“その人自身が自分が成功する可能性が一番高いと考える場所に行かせてあげるのだ”と言っている。人々は優秀な人材を失うことを恐れるため(そして実際にそうなのだが)、反対に合うだろう。でもどうだろう:あなたは、自分の街を囲む難攻不落のドームを作って、残りの世界が存在しないふりをすることはできない。これは『トゥルーマン・ショー』ではない。もしくは、新しいスティーブンキングのテレビ番組(実際に街を覆った不思議なドームのようなものに関する話)ではない。

起業家は、世界が存在するということを知っている(少なくとも知っているべきだ)し、あなたは、決して、決して、決して、創設者やスタートアップの最大の利益にならないことをしたり提案したりすることはできない。もしあなたが、あるスタートアップがシリコンバレーやトロントやニューヨークやその他の場所に移転すべきだと分かっているのなら、彼らにそう伝えるのだ。頭脳流出を恐れてそうしないことは、恥だ。長期的に見ると、良いことよりもより多くの損害を与えている。

シリコンバレーの外でスタートアップコミュニティを作ってサポートするために、あなたにできることはたくさんある。

起業家に焦点を合わせるのだ。内部から作ること、自分の力を尽くすことに焦点を合わせるのだ。子どもたちにコードを教える。簡易化した共有可能な書類を作る(例:合併書類、雇用契約書、タームシートなど)。コミュニティとして警笛を鳴らす(ただしやり過ぎないこと!)。

起業家が参加する必要もある。

ただ座って指をパチンと鳴らして、みんながあなたの助けに走ることを期待しないこと。あなたは、コミュニティに貢献しなければならない。自分の場所を選ぶのだ。いくつかのイベントで話をし、経験の少ない起業家に指導をし、高校に出向いて起業家精神について子供たちを興奮させるのだ。全てのイベントに参加しないこと(私たちは、人づきあいのいい人を必要としているのではない)。シリコンバレーに行き、そこで何が起きているのかを体験し、そのエッセンスと文化の一部を持って帰るのだ。そして、あなたが勝った時には再投資するのだ。エンジェルになり、あなたの後に続いている起業家たちにお金と時間を戻すのだ。

ほぼどんな場所でも成功するスタートアップを築くことができることは分かっている。私たちは、場所よりも、起業家の勝利を手助けすることに焦点を合わせる必要があるのだ。彼らが勝つ時、みんなが勝ち、エコシステムが姿を現す。


この記事は、Instigator Blogに掲載された「Building Startup Ecosystems Outside of Silicon Valley」を翻訳した内容です。

プレゼン資料の17ページ目のエコシステムの地図はナルホドと思う内容でした。エコシステムにはまずは成功したスタートアップが必要とはその通りと思いますし、日本を見ていても成功したスタートアップの起業家がエコシステムの道筋を築きつつありますよね。言葉の問題もあり、大半の起業家にとって日本が「自分が成功する可能性が一番高いと考える場所」でもありますし、市場自体もそれなりにありますから、独自のエコシステムは十分にできそうな気はしますが、世界を変えるような、「Big Vision」を持った起業家や事業は出にくいデメリットもある気もまたします。もちろん、小さい成功の積み重ねに大きな成功も出てくると思いますし、実際、日本からも世界を変える野望やビジョンを持った起業家は出てきていると思いますし、5年後10年後の世界が楽しみですね。ちなみに過去に紹介したドイツ東南アジアフィリピン)のスタートアップ事情はこちらから。 — SEO Japan [G+]

リーンスタートアップと資金調達、どの選択が正しいか?

リーマンショック以降の不況を受けて米国で一気に普及した「リーンスタートアップ」のスタートアップモデル。日本でも普及を見せ始めていたようですが、最近は逆に株価や景気が回復しつつある影響でかつて無かったスタートアップへの大型投資が加速化しているせいか、ブームにまでは至っていないようです。競合他社や知り合いのスタートアップ経営者が資金調達に成功したと聞くとそれだけで負けた気分になってしまう人もいるかもしれませんが、資金調達はあくまで始めの一歩、事業が成功するかどうかは全くの別問題。また投資家が参入することでデメリットも存在するわけですし、リーンスタートアップでフットワーク軽く突き進んでいった方が成功の確率が高まる可能性もあるでしょう。今回はそんなリーンスタートアップと最初から資金調達を狙うモデルを比較してみた記事をカナダの起業家兼投資家が語ります。 — SEO Japan

リーンスタートアップは、実験と学習がすべてだ。それは、アプローチにおいて客観的に率直かつ系統的になることが重要だ。それは、速く進む前にゆっくりと進むことが重要だ。それは、前進する前に後進することが重要だ。

一方、投資は、ストーリーテリングと大きなビジョンがすべてだ。それは、証明と、急激なカーブを描くけん引力が重要でもある。

では、資金調達をする時、どうやってこの2つのバランスを取るのか?

ここ数年で、リーンスタートアップの人気が出てきたため、多くのスタートアップが“私たちはリーンだ!”という信念を持って資金調達に向かった。1,2回ピボットして人気が出れば、シードキャピタルを調達した。リーンは、スタートアップと投資家にとって、会社を築くという厳しい現実に光を当てる新鮮な息吹だった(今もそうである)。投資家は、より厳密なアプローチを高く評価した;もっと現実的なものを売られているように感じたのだ…。

しかし、途中で悪いことが起きた。リーンスタートアップの効力が弱められ、ピボットの価値が下がったのだ。スタートアップは一切のビジョンもなく2,3日で現れた;しかし、リーンのドラムを叩いて、どちらにせよ資金調達に向かった。当然のことながら、リーンという言葉を繰り返し何回も聞くことに疲れた投資家の間で反動が増大した。私なら、“私たちはリーンスタートアップだ”と言って投資家に売り込むことはお勧めしない。それでは上手くいかないのだ。はっきり言って、それがこれまでに適切な戦略だったとは思わない。

重要なのは、最高のストーリーテリングおよび大きなビジョンと、爪の内側に泥のついた実践的な戦略および戦術を混合することにある。

説得力のあるストーリーを伝えて投資家の心を掴むことができなければ、あなたは彼らの注目を得られない。多くの創設者は生まれつきのストーリーテラーではないが、それはあなたが積極的に取り組まなければならないスキルなのだ。それが大きな違いを生む。優れたストーリーを鮮やかに描き出し、果てしないビジョンを表現すれば、投資家を引き込むチャンスはある。

同時に、ただ手を振り回して“こんな世界を想像して…”と力強く言って、彼らが食いつくのを期待することはできない。私はそれをすることのできる人を何人かは知っているが、大部分の人にはそれができないのだ。だからあなたは、戦略および戦術にまで詳細に触れ、あなたがどうやって自分のビジョンに向かって積極的かつ知的に実行するつもりなのかを投資家に示す必要がある。そこでリーンの出番だ。リーンスタートアップとリーンアナリティクスは、戦略と戦術が全てだ。それらは、どのように実行すべきかに関する実践的なガイドブックを私たちに与える。あなたは、最高の絵を描き、素晴らしいストーリーを紡ぎ、果てしないビジョンを共有し、そして、投資家に詳細を伝えることができる。彼らに、あなたが何を学んだのか、どのように実験しているのかを説明するのだ。そのアプローチについて自信を持って話し、それがあなた自身の想像だけに根差したものではないことを示すのだ。あなたのやっていることをしっかり固めるためにリーンの原則とアナリティクスを使用するのだ。あなたの描くビジョンとストーリーは、あなたが戦略的に実行し“終わらせる”能力を示す(リーンスタートアップとリーンアナリティクスを基本ガイドとして使って)時に、もっとリアルになるのだ。

成功する起業家は、夢を売ることができ、そして、それを実現するのが自分であることを投資家に示す/説得することができる(ここで実践的な“こと”が大きな役割を果たす)。それがストーリーテリングとリーンを混合するカギであり、回りまわって資金調達の効果的な手段としてリーンを利用するカギなのだ。


この記事は、Instigator Blogに掲載された「Lean Startup Versus Raising Capital」を翻訳した内容です。

私もたまたま別件で外部出資を募るためのビジネスプランを準備しているのですが、最初に書かれていた「投資は、ストーリーテリングと大きなビジョンがすべて」という一言には納得しました。私自身では数多くの投資や新規事業を個人・会社レベルでしてきましたが、お金があるにこしたことはないとは思いますが、ないからこそ、頭を絞りに絞って考えぬことから生まれるものってありますし、意外とそれが成功の鍵につながる気もします。記事のタイトルは二次元論で書かれていますが、リーンスタートアップで最初はできるだけ頑張って、スケールさせるために資金が必要という時に初めて調達に動く、という流れが一番うまくいくような気もするのですが、さて皆さんはどうお考えになるでしょうか。 — SEO Japan [G+]

普遍的問題はソリューションで解決できない

4月に入り新社会人も街や会社に溢れ(私の会社は新卒はいませんが・・・)、新たな事業や製品サービス、スタートアップを立ち上げようと燃えているウェブ業界人の方も多いことでしょう。新しい製品サービス、スタートアップを立ち上げる時に「それが何の課題解決をするソリューションに成り得るのか」について明確な答えがあることが重要とはよくいわれることですが、この議題を突き詰めていくとニッチな課題を飛び越えて普遍的な問題にぶち当たってしまうことがよくあります。仮にその問題を解決できればまさにイノベーションを起こせるかもしれず、思わず興奮してしまう人も多いと思いますが、簡単に物事がうまくいくわけでもなく。。。今回はそんな課題解決ソリューションの意義と意味について一歩深く考えた記事を。 — SEO Japan

“もっと多くのお金を稼ぎたい?”

人を雇うのは難しい?”

“Eメールに圧倒されている?”

もっと健康だったならと思ってる?”

大部分の人にとって、これらの質問に対する唯一の答えは、“イエス”だ。それらは分かりきったことだ。普遍の真理。普遍の問題。そして、解決不可能なこと。

あまりに多くのスタートアップが、大きなビジョンと普遍の心理を解決しようとすることを混同している。大きなビジョンは大切だ。あなたには、非常に高く、世界を変えるような目標が必要だ。しかし、普遍の問題を解決するのだと主張することは、普通、あなたが目の前にある本当の問題を理解していないことを示している。

見込み客に販売をする時、創設者は、1つの答えしかない質問で始めるという間違いをおかし、その答えを得ると、それを自らのソリューションの理由として利用する。

スタートアップ創設者:“優れた人材を採用するのに苦労していますか?”

見込み客:“はい。とても大変です。”

スタートアップ創設者:“そう思いましたよ!あなたのための完璧なソリューションがあります。”

それはこんな風に進む:大きく、当たり前の問題(普遍の真理)…私たちのソリューション…成功!

しかし、そんな風にはいかない。実際の問題や課題(そしてチャンス)は全て、…(点点点)の中にはない。

まず第一に、このような種類の質問をすることは、もしあなたが顧客の痛みについて知りたいのなら(そうすべきである)無意味だ。実際の痛みは、何段階も深く、微妙で、具体的だ。ここでは、普遍の真理“もっと健康になりたい”を分解してみよう。

ここでの本当の問題は何か?時間がないのかもしれない。しかし、それでは十分に具体的ではないかもしれない;大部分の人は1日30分のフリータイムがあるが、それでも運動をしない。もしかすると、ジムに行って他の人の前でワークアウトをするのが恥ずかしいのでは?もしかすると、ロッカールームでの体験が恥ずかしいのでは?もしかすると、単にワークアウトをする方法や、自分に適切なワークアウトが何か知らないのでは?もしかすると、一部の人にとっては上記全てのことが当てはまるが、別の人にとっては他の問題がある?

あなたは自分の顧客の問題を、玉ねぎの皮を剥くように、中心を突き止めるまで本当に理解しなければならない。“イエス/ノー”の質問をすること、特に誰もが同じ回答をするような質問は、あなたが役に立つことを知る助けにはならない。

次に、あなたが抱いている信頼の上限はあまりも大きすぎて、結果、あなたの顔にまともに当たる「これだ!(gotchyas)」を知ることができない。たとえあなたが専門知識のある業界インサイダーであるとしても、前もって発見することができていたはずの障害にぶつかる運命にある。リスクを特定せず点を繋げずに普遍の真理を解決しようとするのは確実に失敗する方法だ。

私は先に普遍の問題は解決できないことだと言った。実際にはそれは事実ではない。普遍の問題は解決できるが、それらは、あなたが心から自分の顧客を理解する時にのみ解決できる:彼らがどのように運用し、購入し、彼らが気にかけていること、彼らの痛みなど。本当に重要な大きくて困難な問題を解決したいのであれば、点を埋め、前もってこれだ!(gotchyas)を知る必要がある。普遍の問題に対するソリューションを売るのではなく、あなたが自分の顧客のために本当に変化をもたらすことを可能にする根本的な問題に対するソリューションを売れば、徐々に自分の大きなビジョンに気が付くのだ。


この記事は、Instigator Blogに掲載された「Don’t Sell Solutions to Universal Problems」を翻訳した内容です。

短いながら示唆に富んだ考えさせられる記事でした。普遍的な問題を表層だけで考えるのではなく、多重的・多面的に考えなければ、そして何より顧客のことを真に理解しなければ、課題解決になるソリューションは提供できない。いわれてみれば当たり前のことかもしれませんが、世の中ほぼ全てのスタートアップソリューションはそれを理解していないか、余りにピンポイント、単一課題の解決しかできず、そもそも普及しないか、ニッチすぎて事業として成長しきれないケースが大半です。

私の会社でもLPOというウェブマーケでもかなりニッチの分野に特化した製品を提供してきましたが、正直その分野では既に日本No.1の自信があるのですが(SEOはないです・・・)、所詮マーケットも限られているので、そこから得た顧客課題を元に新たなソリューションに拡大展開しようと試行錯誤している途中です。もちろん初めから大きく考えられればベストなのでしょうが、開発規模、人材、資金、諸々全てを解決するソリューションビジネスを展開するにはスタートアップ・ベンチャーには多くの課題がありますし、ピンポイントで初めてそこから拡げる戦略もまたあるのではと思いますし、そこでの成功を目指して頑張っていきたいと思っています。 — SEO Japan [G+]