労務管理のSmartHRが保険領域に参入、年内に第一弾プロダクト

労務管理クラウド「SmartHR」などを提供するSmartHRは1月23日、新会社SmartHR Insuranceを設立して保険業界にテクノロジーで変革をもたらす「InsurTech(インシュアテック)」の領域に参入すると発表した。

SmartHRはこの背景について、「保険業界は国内41兆円と言われる巨大産業である一方、FinTech領域に比べて、この領域でビジネスを営むスタートアップが少ないのが現状」とコメント。具体的にどのようなサービスを提供するかは明らかになっていないが、2019年内には第一弾となるプロダクトをリリースする予定だという。

SmartHR Insuranceの代表取締役を務めるのは、SmartHR CEOの宮田昇始氏とKyashでVP of Productを務めた経験を持つ重松泰斗氏の2人。同社は「保健領域における非合理の解消に挑戦する」と新たなチャレンジを前に意気込みを見せた。

2015年に開催されたTechCrunch Tokyoスタートアップバトルで最優秀賞を飾ったSmartHR。2018年9月の時点では導入社数が1万6000社を越え、サードパーティストアを軸にした新たな成長戦略を発表していた。今回のInsurTech参入は、去年始まったSmartHRの進化が加速しつつあることを表しているのだろう。

7つの質問に答えるとオススメ保険を教えてくれるロボアドバイザー「Donuts」が5000万円調達

ロボット保険アドバイザー「Donuts(ドーナツ)」を開発するSasuke Financial Labは3月2日、Klab venture PartnersGlobal Catalyst Partners Japanマネックスベンチャーズを引受先とする第三者割当増資を実施した。調達金額は5000万円だ。また、同社はこれに併せてDonutsの事前登録の開始も発表した。サービスローンチは今年4月を予定している。

Donutsは、ユーザーが7つの質問に答えていくだけで自分に適した保険商品をレコメンドしてくれるWebアプリだ。質問されるのは「お金を遺したい人はいるか」、「貯蓄はいくらか」などの簡単なもので、保険に関する深い知識がなくても自分に適した保険商品にたどり着ける仕組みになっている。

個人的にすごく好感を持てたのが、ロボアドバイザーであるDonutsならではの“正直さ”だ。取材でサービスを見せてもらったとき、少し意地悪をして、7つすべての質問に「(資金を遺したい人は)いない」などのネガティブな答えを返してみた。するとDonutsは、「あなたにオススメする保険はない」と言い切った。

人間の営業員の場合、話している相手に対して「あなたには保険は必要ないのでお帰りください」と言うのは難しい。それには大人の事情もあるから仕方がないことは分かるけれど、ユーザー目線で言えば、必要ないならないと言い切ってもらいたいのが本音だ。

記事執筆時点において、Donutsが提携する保険会社はアフラックの1社のみだ。同社はアフラックに加えて3社の保険会社と提携に向けた準備を進めている最中で、4月に予定されているサービスリリース時点では、これら4社が提供する20〜30の保険商品を取り扱う予定だとしている。

保険はまだまだ対面が主流

日頃からテクノロジーに慣れ親しんだTechCrunch Japan読者の中には、「今の時代、インターネットで選んだ保険に加入するなんて常識」と思う人も多いだろう。だが、どうも世間はそうじゃないらしい。

生命保険文化センターの調査(2015年)によれば、2010年から2015年のあいだに民間保険に加入した調査対象者のなかで、インターネットを含む「通信販売」を加入チャネルとして選んだのは全体の5.6%だったという。この通信販売にはテレビや雑誌なども含まれているから、純粋にインターネットで保険に加入した人だけに限ればわずか2.2%という結果だ。

この結果は、保険販売の現場ではいまだに対面営業が主流だという現状を表していて、Donutsには分が悪い結果のようにも見える。

でも、もう1つ面白い数字がある。同じ調査のなかで、保険の情報収集にテレビやネット、雑誌などの「人を介さないチャネル」を使ったと答えた人は全体の16.2%だったのだ。つまり、インターネットを含む人を介さない方法で情報収集しているにもかかわらず、結果的には対面営業で保険を加入した人はいる。

2つ目のアンケート調査は複数回答が可能なタイプなので単純には計算できないが、それを承知で計算すると、インターネットで調べたものの、結局は対面営業で保険に加入した人が全体の10%ほどはいるのではないかと推測できる。

この中には、やはりネットだけで保険に加入するのは不安だと感じ、結局は対面営業を選んだという人もいるだろう。実際、前回調査と比べると通信販売を選んだ人の割合は3%ほど低下している。形の見えない金融商品だからこそ、できれば人の力を借りたいという人が多いのは十分に理解できる。

しかしその一方で、自分で保険について調べてみたものの、結局どの商品が自分に適しているのかよく分からずにさじを投げてしまったという人もいるはずだ。だから、本当に分かりやすい方法で自分に適した保険を示してくれるWebサービスやアプリがあるとすれば、そこには一定のニーズがあると僕は思う。取り扱う保険商品のラインナップが少ないなど、Donutsにはまだ超えなければいけないハードルはあるけれど、彼らがそんなニーズを掴める可能性は大いにあるだろう。