PayPalやIntuit、Squareが新型コロナ緊急融資プログラムへ参加

フィンテック企業はこの数週間、中小企業向けの米国政府の緊急融資プログラムに参加できるようロビー活動を続けてきた。その努力がついに報われた。PayPal(ペイパル)、Intuit(インテュイット)、Square(スクエア)の米中小企業庁(SBA)の給与保護プログラム(PPP)への参加が承認された。これは、従業員への給与を少なくとも8週間払い続けている中小企業を返済免除条件付き融資で支援する制度だ。

3500億ドル(約38兆円)の中小企業向け融資プログラムは、議会の2兆ドル(約220兆円)の新型コロナウイルス対応の景気刺激策の一部であり、従業員500人未満の企業が対象だ。

PayPalは4月10日に参加への承認を得た後、SBAのプログラムの下で融資を提供できる最初のノンバンクの1つとして承認されたと発表した

同社はすでに本日まで中小企業向けの貸し手として営業している、と指摘した。PayPalは2013年以降、事業主に長期・短期の資金を融資している。これまで30万5000以上の中小企業に150億ドル(約1兆6000億円)を超える資金を融資した。

PayPalの社長兼CEOのDan Schulman(ダン・シュルマン)氏は声明で「当社は、中小企業がこの困難な時期を乗り切るために、資本と専門知識を活用して支援したいと考えている」と述べた。「申請していた最初の融資が実行された。今後数日以内にさらに多くの融資が実行される予定だ。CARES(コロナウイルス支援・救済・経済安全保障)法により、PayPalのような会社が、深刻な影響を受ける企業に資金を迅速に届けられるよう配慮した議会の指導者らと政権のおかげだ」と付け加えた。

一方Intuitは4月13日、新型コロナ危機対応のために始めた複数の新しいプログラムと、今回の政府援助制度について詳しく説明した。直近ではIntuit Aid AssistというWebサイトを立ち上げた。このサイトでは、中小企業の経営者や自営業者がSBA管轄のCARES法の下で連邦政府の救済措置を受ける要件を満たしているか、無料で判定できる。

PayPalと同様、Intuit傘下のQuickBooks Capital(クイックブックス・キャピタル)も4月10日、SBAのPPPに関してノンバンクの貸し手として承認を受けた。中小企業のオーナーは連邦政府の救済措置の適格性を満たすかQuickBooks Capitalのソフトウェアで判断できる。自動化によって申請プロセスも簡素化されている。適格であれば、SBAと連携しつつ、PPP融資を実行する。QuickBooks Capitalが救済措置へのアクセスを迅速化する。

「消費者や中小企業の多くが家計や帳簿のやりくりに必死だ。嵐を乗り切るために必要となる収入の消失や貯蓄の欠如に直面している」とIntuitのCEOであるSasan Goodarzi(ササン・ゴッダルジ)氏は述べた。「米国政府は待ち望まれていた救済策導入に踏み込んだ。当社も支援のため政府と密接に連携していく。当社の迅速にイノベーションを生み出す能力と人工知能の技術を活かして、米国人がさまざまツールを検討し、必要とする救援措置に速やかにアクセスできるよう支援する」

また、Intuitは最近、景気刺激策に基づく給付登録サイトを開設した。これはTurbo Tax(税務申告ソフト)を利用した新しいサービスで、ユーザーは登録すると政府から給付を受け取ることができる。同社によると、2週間も経たないうちに、16万5000人以上の米国人がこのサービスを利用し、2億3000万ドル(約250億円)を超える連邦政府による給付のための登録がなされた。

4月13日にはSquare Capital(スクエアキャピタル)がPayPalとIntuitに加わり、PPPの貸し手としてSBAの承認を得たと発表した。同社は今週、Celtic Bank(セルティック銀行)と協力してPPP融資の申請を開始する予定だという。

Square Capitalは申請が通り次第、Square Dashboard通じて小売業者に通知すると述べた。申請データを自動で確認できる雇用主から始める。

オンライン融資企業やフィンテック企業は過去数週間にわたり、SBA認可の融資業者として業務ができるようロビー活動を続けている。

米財務省は4月9日、フィンテック企業がSBA融資プログラムへの承認を申請できる様式を発行することで対応した。だがNBCニュースは最近、一部の未承認のオンラインフィンテック企業が救済を求める企業の融資申請を受け付けていたことを明らかにした。たとえば、Kabbage(カバッジ)は当初、認可業者ではないことをウェブサイトで明示していなかったとNBCは報じた。

フィンテックテクノロジーのリーダーによるアライアンスであるFinancial Innovation Nowは3月、中小企業への資金供給に銀行とともに参加できるよう要求する書簡を議会に提出した。Square、PayPal、Intuit、Stripeなどが参加するアライアンスは、「企業へのリーチ、構築した関係、デジタル技術によって従来の金融機関よりも迅速に、最も打撃を受けやすい企業に手を差し伸べることができる」と主張している。

画像クレジット:Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Mizoguchi

スタートアップの不安、スタートアップの大志

リキャピタリゼーション。レイオフ。スローダウン。CEOの交代。予算カット。規模縮小。

この数カ月間で、スタートアップの大型エグジットがいくつも達成され、米国時間2月25日にはIntuit(インテュイット)が71億ドル(約7830億円)でCredit Karma(クレディット・カルマ)を買収するというフィンテック界の輝かしい瞬間も迎えたが、スタートアップの世界では厳しい状況が続いており、方々でレイオフが行われている。その中心はおそらくソフトバンク・ビジョン・ファンドのポートフォリオだが、それに留まるどころの騒ぎではない。評判も悪く、知名度もないスタートアップは、どんどんシャッターを下ろしている。しかも、2020年の投資家たちの心情を左右するであろう新型コロナウイルスのようなグローバルでマクロな懸念をそこに織り込む余地すらない。

スタートアップの世界は、少々停滞し始めている。可能性が消えそうだという感覚がある。作ろうと思ったものはみな、すでに作られていて、技術そのものは世間の冷たい目で監視され、イノベーションはままならない。

多分、すべて本当だろう。しかしやれることは、まだまだたくさん残ってる。

どの経済セクターも、今なお抜本的な立て直しを必要としている。医療はまだほとんどデジタル化されていない。パーソナル化も一切されておらず、根拠に基づく、またはデータに基づく医療もほとんど進んでいない。住宅やインフラの建設コストはうなぎ登りだが、エンドユーザーが受ける利益は実際にはほとんどない。学資ローンの債務危機に苦しむ人たちも大勢いるというのに、学校制度は100年前からほとんど変わっていないように見える。

気候変動によって地球がますます浸食される中、数十億の人たちがインターネットを利用して産業と知識の経済圏に加わるようになり、先進国と同じ利便性を求めている。地球上のすべての人たちに空調、住宅、交通、医療などなどさまざまなものを提供するには、どうしたらいいのか。私たちは、二酸化炭素排出量を削減しつつGDPを100倍にしなければならない。数十億の人たちが我々を頼りにしているのだ。

組織の中において、私たちはデザイン、データ、意志決定をうまく組み合わせて製品のイノベーションと成長を生み出す方法を、ようやく理解し始めたところだ。昨日、私は、同僚のJordan Crook(ジョーダン・クルック)の目を通して見たデザイン界の変遷に関する記事を読んで、プロタイピング用のツールについて記事を書いた。たしかに、ツールは良くなっている。だが、無数の人たちが努力することなくデザインできるようになったとしたら、どうなるだろう? または、無数の人たちがコーディング不要のプラットフォームをもっと広く利用するようになったら、何が起きるだろうか? 我々は何をすれば、そうした人たちの創造力を後押しできるだろうか?

デジタル製品での一般的な体験を考えてみるのもいい。スマートフォンは高速になった。そのカメラで撮影できる写真も高精細になった。それでいて、手に持ったときの質感は変わらぬままだ。だがそれは本当の意味で、さまざまな利便性をきれいに融合させているだろうか? 私は今でも、ファイルの同期、電子メールのチェック、カレンダーへのランチミーティングの予定のリンクを行い、指で前後にフリックするときに細かい見落としがないか気をつけている。毎日のソフトウェアの利用がすっかり日常化したことで、特に指導を受ける必要もなく現代の技術で簡単に行えることを、笑えるほど初歩的なツールでやっているという現実に気づかなくなっている。

データもしかり。ビジネス、娯楽、行政におけるデータ革命は、ようやく幼年期を迎えたあたりだ。データは、大企業の周囲には散乱しているようだが、それが意志決定に何らかの影響を与えるまでには、今日でもほとんどなっていない。データをもっと効率的に利用できるようになったら、何が起きるだろうか? 今の無骨なビジネスインテリジェンスツールよりも高速にデータを調査できたとしたら、どうだろう? データの最適な調査パターンを、地球上のあらゆる個人が利用できるようになったとしたら、どうだろう? ごく簡単な意志決定においてすら、最善のAIモデルを即座かつ簡単に作って解決できるようになったとしたら、どうだろう?

例を挙げればきりがない。特定の市場から、コミュニティーの中のダイナミクスまで、そして社会と企業、エンドユーザーと、エンドユーザーに提供される製品に至るまで、現状はイノベーションサイクルの終点からはほど遠い。数百もの自動車メーカーと関連企業が最終的に現在のひと握りの巨大メーカーに統合されてしまった100年前のデトロイトとは違う。やれることはまだたくさんある。FAANGだけで対応できる数ではない。

適切な集団の中でさえ、何をやるべきかを知ることと、何をやらなければならないかを知っていることとの違いが、広く重大に受け止められていないのが奇妙に思える。今日、取り組む価値のある解決されていない課題は山ほどある。それは何千万もの人々の生活を支えるばかりでなく、数十億ドル(数千億円)規模の経済そのものになる可能性をも秘めているのだ。

だから、私たちは気持ちを切り替えなければいけない。私たちは、失敗したスタートアップのこと、それが成し遂げられなかった大志のことをしっかりと憶えておかなければいけない。いつ間違いが発生したのかを認識し、その煽りを受けた人たちの気持ちを考える必要がある。この業界のネガティブなニュースに蓋をしてはいけない。無視すれば、同じ過ちを犯してしまう。

とはいえ、雪崩のように押し寄せるネガティブなニュースや批判的な分析結果に立ち向かうには、ポジティブな気持ちが不可欠だ。未来を、変革を、私たち全員にまだ残っているパワーを見据えて、今すぐ方向転換をしよう。やらなければならないことが山ほどある。まだ日は昇ったばかりだ。

画像クレジットFlashpop  / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

シリコンバレーの偉大なメンター、ビル・キャンベルが逝去。愛情あふれる追悼文が寄せられる

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フットボールの古い諺がある。「重要なのは注ぎ込んだ時間ではなく、その時間に何を注ぎ込んだかだ」。

ビル・キャンベル ― 誰からも畏敬された元コロンビア大学アメリカンフットボール
部コーチは、1990年代にIntuitのCEOを4年間務め、今年1月まで会長だった。彼は数多くの起業家たちに魔法を注ぎ込んだに違いない。

その大勢が今日悲しみにくれている。ビル・キャンベルは今日(米国時間4/18)、75歳で逝去した。家族によると死因はがんだった。

今日、起業家・投資家のBen Horowitzは、多くのファウンダーがキャンベルとの関係を表現しようとしたことを受け止めたかのような文章を書いた。「人生で苦闘に直面したときには必ず、ビルに電話をかけた。かけたのは彼が何か不可能な質問の答えを持っているからではない。かけたのは彼が私の感じていることを100%理解してくれるからだった。彼は私を理解してくれた。ビルのようにそれができる人を他に誰も知らない。どんな時でも私を理解してくれる人物。100回は電話をかけたに違いない。彼なら私の気持ちを感じてくれるとわかっていたから」

気持ちは広く伝わった。ペンシルバニア州生まれのキャンベルは、長年にわたり地元の学区に 2000万ドル近くを寄付し、後にカリフォルニア州アサートンのSacred Heart Schoolで中学2年生を指導した。彼はシリコンバレーの優れた人々の「コーチ」として知られていた。

その中には、Alphabet会長のEric Schmidt(キャンベルをGoogleの取締役に何年も誘い続けたが失敗した)やAppleの共同ファウンダー、スティーブ・ジョブズのように人より幸運な人たちもいる。

2014年のFortune誌のインタビューによると、ジョブズとキャンベルはパロアルトの近所同志で、ジョブズはしばしばキャンベル家を訪ね、ドアをノックしたり、バックヤードのプールサイドに座ったりしていた。1997年のApple復帰後すぐ、ジョブズが「ある日やってきて、プールサイドのベンチにふたりで腰かけた」とキャンベルはFortuneに語った。「そして彼はこう言った、『Appleの取締役になってくれないか』と」。

キャンベルはこう付け加えた。「あんな切迫感は、コロンビア大学の理事を依頼された時以来だった。私はためらうことなく言った。『もちろん』」

Forutuneの2008年の記事でキャンベルはジョブズについて、「彼には非常に人間的なところがある」と言った。

Appleは今日本誌に送った声明の中で、キャンベルについてこう書いている。「Appleの多くの人々にとってコーチであり、メンターであり、何十年にもわたって幹部としてわれわれ家族の一員であり、アドバイザーであり、最終的には取締役だった。彼は他の人が信じない時にAppleを信じた、良い時にも悪い時にも。彼がわが社に与えた貢献は言い尽せない。彼の英知、友情、ユーモア、そして人生への愛を忘れることはできない」

Eric Schmidtはキャンベルへの賛辞の中でこう書いている。「ビル・キャンベル。われわれの非常に親しい友人が今日午前に亡くなった。巨大なハートの持ち主で、会う人全員を抱きしめ、メンターを越えた存在だった。われわれがGoogleを作るのを数え切れない方法で手伝い、成功をもたらした。われわれは彼を外部コーチとしてスタートしたが、すぐに彼は経営のエキスパートになった。スタッフミーティングに参加し、幹部と会い、会社のリーダーたちと長い時間を過ごした。取締役会設立を手伝い、会社のカルチャー構築にも手を貸してくれた。わが社のファウンダーたちとは非常に密接にあらゆる方法で共に仕事をした」

「Google、そして今のAlphabetの成功に対する彼の貢献は計りしれない。彼の遺産は全員の顔に彼がつくった笑願と、彼がコーチしたシリコンバレーの偉大なリーダーたちだ。ビルは真に才能ある人物であり、世界は今日、偉大なリーダーを失った。」

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook